雪氷
Online ISSN : 1883-6267
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67 巻, 1 号
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
  • 橋本 重将, 清水 増治郎, 宮崎 伸夫, 中尾 正義
    2005 年 67 巻 1 号 p. 3-9
    発行日: 2005/01/15
    公開日: 2010/02/05
    ジャーナル フリー
    2001年2月22日から23日にかけて新潟県長岡市の防災科学技術研究所長岡雪氷防災研究所にて野外観測を実施し,0℃等温状態にある積雪内部層での雪粒子の成長速度と含水率の関係を調べた.日中1~2時間毎に含水率と粒径解析のための写真撮影を行ったところ,含水率は観測期間中ほぼ10%前後を保っていたことが確認された.含水率の変化による雪粒子の成長速度は,10%前後の含水率の積雪においては小さいことが判明した.また,含水率10%での雪粒子の成長速度は,含水率50%時の約1/14の速さを示した.
    また,0℃等温状態で熱や物質の出入りがない系での融解および凍結による雪粒子の同位体比の変化をモデル化した.さらに観測で得られた雪粒子の成長速度を用いて雪粒子の同位体比の変化を計算し,過去の研究で観測された雪粒子の同位体比の変化との比較を行った.その結果,積雪層中を流下する間隙水の同位体比が,雪粒子の同位体比の変化に大きく寄与することが示唆された.
  • 第2報:定常運転における熱交換特性と必要寸法の評価
    河田 剛毅, 廣地 武郎, 山田 修一, 白樫 正高, 服部 賢
    2005 年 67 巻 1 号 p. 11-21
    発行日: 2005/01/15
    公開日: 2009/08/07
    ジャーナル フリー
    バッチ式実験における氷水間の伝熱特性に関する前報の研究により,氷水直接接触式熱交換器(DCHE)として鉛直円筒形で水の流れ方向を上向きとする構造のものが実用上最適と判断された.本研究では,この形のDCHEについて,実用化したときの運転条件と必要寸法の関係を明らかにするために,連続運転実験用の装置を製作し,定常運転時における熱交換特性を調べた.用いた氷粒子は粒径10mm程度のチップアイスと天然のざらめ雪である.氷層厚さに対しては熱交換部入口に対する出口の代表温度差比が支配的であり,両者の関係はDCHEの寸法,供給氷分率,流速によらず概略1本の関係式で表された.同じ代表温度差比に対する氷層厚さはチップアイスよりもざらめ雪の方が大きくなった.氷層単位体積・温度差あたりの交換熱量は氷量によらずほぼ器内流速に比例した.以上の結果をもとに,需要家側熱交換装置としてDCHEを既存のプレート式熱交換器(PHE)と組み合わせ,与えられた運転条件に対応するDCHEの寸法を決定する手順を提示した.この手順により得られたDCHEはPHEに比べ極めてコンパクトになり,したがって,既設の冷水輸送式システムに対しても容易に適用できる可能性が示された.
  • 松木 兼一郎, 山下 千尋, 柳澤 文孝, 阿部 修
    2005 年 67 巻 1 号 p. 23-32
    発行日: 2005/01/15
    公開日: 2010/02/05
    ジャーナル フリー
    2002/2003年冬季の着氷の化学的な特徴を見出すため,2002年12月から2003年4月まで,山形県山形市の蔵王地蔵山頂駅前(標高1661m)で着氷を採取し,化学分析と粒子解析を行った.蔵王山の西方には,火山や大きな人為起源の排出源がなく,広域的な大気汚染の監視には適している.2000/2001年冬季は,大規模な黄砂現象が発生したが,2002/2003年冬季は,顕著な黄砂現象は確認されなかった.そこで,両年度を比較し,化学的特徴を検討した結果,以下の諸点が明らかとなった.
    (1) 2002/2003年冬季の着氷のpHは3.4~6.6で推移し,平均は4.2±0.6であった.また,酸性化成分(nssSO42-, NO3-)の合計と中和成分(nssCa2+, NH4+)の合計を比較すると,最初の2試料を除いて,常に酸性化成分過剰であった.
    (2) nssSO42-, NO3-とNH4+濃度の平均値は2000/2001年冬季と2002/2003年冬季でほぼ同じであったが,nssCa2+については,2000/2001年冬季は2002/2003年冬季のおよそ2倍の濃度であった.
    (3) 2002/2003年冬季の着氷に含まれている粒子濃度は2000/2001年冬季のおおよそ半分であった.また,2000/2001年冬季と2002/2003年冬季共に粒子濃度とnssCa2+濃度のピークは,特に2月以降において,ほぼ一致している.
    (4) 2002/2003年冬季の着氷は,顕著な黄砂現象が発生せず,黄砂由来の粒子状物質からのnssCa2+の寄与が小さかったことから,中和が進展せずに推移した,と推測される.
  • 「新潟県中越地震・雪氷災害調査検討委員会」の発足と活動状況(中間報告)
    上村 靖司
    2005 年 67 巻 1 号 p. 33-38
    発行日: 2005/01/15
    公開日: 2009/08/07
    ジャーナル フリー
  • 湖水流動系の観点から
    知北 和久
    2005 年 67 巻 1 号 p. 39-49
    発行日: 2005/01/15
    公開日: 2010/02/05
    ジャーナル フリー
    近年の地球温暖化による氷河の急速な縮小・後退によって,ヒマラヤの氷河では末端にある湖の拡大と決壊洪水が今日の大きな問題となっている.ここでは,これまでの観測結果に基づき,主に湖水の流動系の観点からその拡大機構についてまとめてみた.ここで対象となるのは,現在も拡大を続けている東ネパールのツォー・ロルパ湖とイムジャ湖,ブータンのルゲ湖である.現在,三湖は共に表面積約1km2,貯水量107m3のオーダーであるが,湖水の水温・密度構造に大きな違いがみとめられる.これは,三湖の間で,(a)湖の下流にあるエンド・モレーンやdead-ice zoneの地形構造,および(b)湖の上流に接する氷崖の基部からの高濁水の流入,の条件が異なるからである.(a)について,イムジャ湖やルゲ湖ではエンド・モレーンやdead-ice zoneが湖面より20~30m高く,これが障壁となって湖面付近で谷風が弱くなる.この地形効果が湖表層の吹送流を弱め,日射によって暖められた表層水を氷崖に向かって輸送する能力を弱める.逆にエンド・モレーンの高さが湖面とほとんど変わらないツォー・ロルパ湖では,谷風によって上層で湖水の鉛直循環が強化され,湖面下の氷崖基部やさらに湖底下氷体の融解を促進する.この氷崖基部の融解促進は,氷崖全体を不安定にし,氷崖のカービングを引き起こす原因となる.(b)については,ツォー・ロルパ湖とルゲ湖で観測され,高濁流入水は垂直循環流と混合し,懸濁密度流として湖内を貫入・拡散する.ツォー・ロルパ湖では,この流れによって鉛直水循環の熱の一部がより下層へ拡散し,湖底の氷体の融解を促す.イムジャ湖では,氷崖基部に高濁水の流入がないため密度成層が弱い.他方で,表層の吹送流も弱いため日射熱の配分は湖全体に緩やかに行われ,拡大速度は相対的に小さい,と判断される.
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