南極半島ジェームズ・ロス島リンク台地において,気温(1995~2004年)と地温(1997~2003年)の観測を行った.リンク台地の年平均気温は-6.7℃(1996~2004年)であったが,気温の変動が大きく,年間を通して気温が正になる時期があった.夏期には,地表面付近で0℃をはさんだ温度変化が頻繁に観測された.
近年の顕著な温暖化に伴い,南極半島地域では,活動層厚が変化してきた可能性がある.そこで,リンク台地での現在の気温と活動層厚との関係と,周辺基地の過去の気温データを用いて,1971年以降の活動層厚変化を復元した.その結果,この期間に活動層厚は増加する傾向を示し,1970年代には活動層厚は60cm前後であったが,1995年が過去33年間で最も厚く80cmを超え,1996年以降は70cm前後であったと推測された.活動層が厚くなったことにより,現在の地形形成にかかわる斜面物質移動量は1970年代に比べて大きくなっていると考えられる.
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