炎症は,生体内外からの刺激に対する防御反応であり,病原体や死細胞などの排除および損傷組織の修復過程において重要な役割を担う.一方で,生体には炎症応答の抑制機構も備わっている.これら炎症の惹起および収束機構の破綻は,自己免疫疾患や糖尿病,がんなど様々な疾患の発症,増悪に寄与すると考えられている.
炎症誘発においてプロスタグランジンやロイコトリエン,血小板活性化因子などの生理活性脂質が寄与することは,広く知られている.また,Toll様受容体(Toll-like receptors: TLR)が刺激されたマクロファージではリピドームが劇的に変化し,これが異常な炎症応答の増強に寄与することも報告されており,適切な炎症応答のためには,厳密な脂質代謝調節が重要であることがうかがえる.一方で,抗炎症(炎症収束)過程に関しては,脂質代謝変動の有無を含め,その詳細な分子メカニズムについては明らかになっていなかった.本稿では,抗炎症性サイトカインであるインターロイキン10(interleukin-10: IL-10)のシグナル欠損における特定の脂質代謝変動の重要性を示したYorkらの報告を紹介する.
なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
1) Fullerton J. N., Gilroy D. W., Nat. Rev. Drug Discov., 15, 551-567(2016).
2) Heller A. et al., Drugs, 55, 487-496 (1998).
3) Hsieh W. Y. et al., Cell Metab., 32, 128-143.e5(2020).
4) York A. G. et al., Nature, 627, 628-635(2024).
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