頭蓋内硬膜動静脈瘻の診断頻度は, 脳ドックを含めたスクリーニングMRIの普及により増加傾向にある. 血行動態や発生学的観点からの分類が報告されており, 臨床予後予測としての有用性が高い. 静脈環流障害では, 急性の頭蓋内出血や静脈性梗塞で発症するため, 詳細なシャント構造と血行動態の評価による適切な治療介入が求められる. 治療法については, Onyx導入以後, 血管内治療の根治性が向上しており, 多く症例で血管内治療が第一選択となり得るが, 安全性から外科的治療が優先される部位も存在する. 血管内治療, 外科治療, 定位放射線を適切に選択, あるいは併用することにより, 高い根治性と安全性を追求することが今後も求められる.
脊髄動静脈シャント疾患は罹患率が低いものの, 脊髄障害を生じる重要な原因である. 診断・治療のために脊髄血管撮影が必須だが, 脳血管撮影より件数が少なく複雑なため, 手技や読影の習熟が難しい. 硬膜動静脈瘻と硬膜内逆流静脈を伴う硬膜外動静脈瘻はいずれも高齢男性に多くうっ血性脊髄症で発症するが, 血管解剖は異なる. 適切な治療のために正確かつ詳細な診断が必須であり, そのためにはslab maximum intensity projection画像などの断層像が有用である. いずれの疾患の治療も硬膜内への逆流静脈を遮断する必要があることはコンセンサスが得られているが, 治療選択・治療戦略に関しては議論の余地がある.
脳血管障害を引き起こす主たる原因は血管壁にある. MRIを用いた血管壁イメージング (MR-vessel wall imaging : VWI) は, 血管壁を可視化することにより脳血管病変の診断や病態把握に有用な可能性があり, 注目を集めている. 主にT1強調画像で血管内腔の血流信号を抑制することで (black blood法), 周囲構造物とのコントラストを利用して血管壁を評価する手法である. 本稿では, 脳神経外科医が関わることが比較的多い脳血管障害におけるVWIについて概説し, その臨床応用について紹介する.
頚動脈狭窄症の診断と治療に関して, 従来は虚血症候の有無と狭窄度のみで治療適応が論じられてきたが, 狭窄率のみではなく, プラーク性状が重要な役割を果たすことが明らかにされている. 狭窄率が同等であっても, プラーク内出血や脂質コアを多く含む炎症性活動の活発な病変は, 虚血発症リスクの高い 「不安定プラーク」 であり, プラーク内出血や脂質コアが少なく線維性成分に富む病変は, 虚血発症リスクの低い 「安定プラーク」 と考えられている. プラークイメージングの存在意義は 「不安定プラーク」 を特定し, 適切に臨床に応用していく点にあるものと考える. 本稿では現在あるプラークイメージングをサマライズし, 今後の課題について述べる.
Aggressive pituitary tumorは下垂体腫瘍の2%未満と頻度が少ない. 今回われわれは, 初回治療後長期の経過を経てaggressive pituitary tumorとして再発した下垂体腫瘍の症例を経験した.
症例は72歳男性. 24年前にadrenocorticotropic hormone (ACTH) 産生下垂体腫瘍に対して経蝶形骨洞的腫瘍摘出術と放射線治療を施行された. 今回, 頭痛の精査で左側頭葉内側に腫瘍性病変を認め, 開頭腫瘍摘出術を行い, 病理組織学的にPitNET, corticotroph tumorと診断した. 術7カ月後に残存腫瘍が増大し, aggressive pituitary tumorと診断した. 残存腫瘍に対し局所放射線照射を追加し, 4カ月の経過で腫瘍は縮小傾向である.
Aggressive pituitary tumorやmetastatic PitNETの治療は集学的に行われることが多いが, いまだ各治療法の有効性に関しては確立されておらず, 今後同様の症例の蓄積が必要である.
トルコ鞍部囊胞性病変には治療方針・予後の異なる多彩な腫瘍性, 非腫瘍性病変があるが, これらの病変が骨破壊を伴い進展することはまれである. また, トルコ鞍部囊胞性病変において, radicalな手術を必要とする頭蓋咽頭腫との鑑別は重要である. 画像上, 術中所見上, 病理所見上, 頭蓋咽頭腫との鑑別に難渋した骨破壊を伴うラトケ囊胞の1例を経験したので文献的考察を交えて報告する.