耳鼻と臨床
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38 巻, 3 号
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  • 古川 實人, 鮫島 靖浩, 犬童 直哉, 村上 公輝, 山崎 滋, 松岡 浩明, 楊 栄寧, 猪川 勉, 石川 哮
    1992 年 38 巻 3 号 p. 195-199
    発行日: 1992/05/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    69歳, 男性, 喉頭癌症例の一次治療後, 副咽頭間隙再発に対して, 外頚動脈結紮した後, 浅側頭動脈からの動注chemo-immunotherapyを施行し, 再発腫瘍の著明な縮小を得ることができた. 再発した腫瘍が右上側頚部から副咽頭間隙にあり, 従来の動注化学療法では治療効果が望めない部位であつた。しかし, 外頚動脈を結紮後, 浅側頭動脈からのDASにより, 外頚動脈領域がすべて造影され, tumorstainをみとめた.
    この動注方法により, 抗癌剤 (CDDP, 5FU) およびキラー細胞を, 腫瘍組織を含めて外頚動脈領域に広く投与することが可能となり, 著明な癌縮小効果をもたらしたものと思われる.
  • 木村 謙一
    1992 年 38 巻 3 号 p. 200-213
    発行日: 1992/05/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    1) 正常者5名において平均加算時の振幅と位相のバラツキが最小限となるようにディジタルフィルタの帯域幅を400-1520Hzに設定し, topography作成に必要な安定した再現性のあるABR波形を記録できた.
    2) 正常者30名におけるABRの潜時, 振幅, 面積の正規性と個体間の変動の検討から, P I波, P III波, P V波潜時およびそれらの頂点間潜時, P I波, P III波, P V波, N III波, NV波およびIII波, V波振幅, P III波, P V波, N III波, NV波およびIII波, IV/V波面積を有意差検定脳電図 (SPM) の適切な指標として選択した.
    3) ABRのSPMを小脳橋角部腫瘍と橋部腫瘍の2症例に応用し, 潜時の異常が限局した部位に見られたり振幅や面積の異常を示す部位が各波によって異なるなど, 単一誘導では観察できない情報が得られた.
    以上から, 従来困難視されていたABRtopographyにおけるSPMが作成され, 機能的画像診断として臨床応用可能と考えた.
  • その縦隔洞進展についての検討
    安藤 敬子, 佐藤 公輝, 田淵 伴秀
    1992 年 38 巻 3 号 p. 214-219
    発行日: 1992/05/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    深頸部膿瘍3例の治療経験を報告し, 炎症が舌骨以下にまで拡がった場合の予後について文献的考察を加えた.
    1. 縦隔への進展, ガス産生菌感染, 慢性肝・腎不全が深頸部膿瘍の予後を不良にする.
    2. 縦隔へは発症後7日以内に進展していることが多い. 頸部外切開の時期が遅れたことが縦隔進展の原因ではない.
    3. 縦隔進展の診断にはCTが必須である.
    4. 縦隔ドレナージより開胸の方が救命率が高い.
    5. 糖尿病は予後に対する影響が少ない.
  • 宮永 敏, 笠野 藤彦, 東野 哲也, 松元 一郎
    1992 年 38 巻 3 号 p. 220-224
    発行日: 1992/05/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    小児の鼓室形成術の適応に関しては様々な報告がある. 小児では一般に急性中耳炎に罹患しやすく, また耳管機能も成人に比べ不良であるので特に鼓室形成術の手術年齢の下限についてはなお論議され賛否両論がある. 今回, 県立宮崎病院耳鼻咽喉科における昭和60年から平成2年までの5年間の12歳以下の慢性中耳炎に対して施行した鼓膜形成術の成績を年齢別に分析し, その手術適応について検討した. 次の結果を得た.
    1) 小児では聴力回復が著しい. 2) 穿孔閉鎖後の長期予後はよい. 3) 術後の経過観察が重要である. 4) 小児に対する鼓室形成術は年齢に関係なく積極的に施行すべきである.
  • 奥野 秀次, 畑 裕子, 小松崎 篤
    1992 年 38 巻 3 号 p. 225-229
    発行日: 1992/05/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    1986年10月より1989年12月までに東京医科歯科大学耳鼻咽喉科で手術を行い, 術後中耳炎外来で経過を観察した真珠腫症例60例62耳のうち, 両側中耳炎症例や非術側に感音難聴のある例などを除いた34例34耳を対象として術前後の骨導閾値の変化を検討した.
    その結果, 術前骨導閾値を上昇 (悪化) させるとされる耳小骨病変を改善することで骨導閾値が下降する可能性があること, および軽度な半規管瘻孔や前庭窓の肉芽病変ではその処置を丁寧に行えば, 注意はいるものの, 骨導閾値を上昇させないことがわかつた.
  • 長田 恵子, 水谷 陽江, 内野 盛恵, 児玉 章
    1992 年 38 巻 3 号 p. 230-235
    発行日: 1992/05/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    1) 発症後早期に発見された, 42歳, 女性の嗅神経芽細胞腫の症例について報告した.
    2) Kadishらの分類では, 本症例は頭蓋底の骨欠損はみられたが腫瘍が鼻腔内に限局したA群であった.
    3) 治療は手術, 放射線療法および化学療法の三者併用療法を行った.
    4) 本邦31症例および外国文献について, 臨床, 治療, 予後に関する検討を加えた.
  • 組織型, 大きさと手術法について
    小田 明子, 高橋 裕子, 児玉 章
    1992 年 38 巻 3 号 p. 236-240
    発行日: 1992/05/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    今回私達は, 副咽頭間隙神経鞘腫の1症例を経験した. 症例は36歳男性で, 腫瘍は下顎角内側に認められ, 頸部外切開法にて全摘出した. 術後にHorner症状と嗄声を認めたが, 嗅声は術後約3カ月で軽快した.
    最近10年間に本邦で報告された副咽頭間隙腫瘍は176例であり, 多形腺腫と神経鞘腫でその70%を占めていた. また, 176例中, 腫瘍の大きさについて記載のあつた副咽頭間隙良性腫瘍55例につき, その組織型, 大きさと手術法などについて文献的考察を行つた.
  • 出井 教雄, 野村 公寿
    1992 年 38 巻 3 号 p. 241-246
    発行日: 1992/05/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    腎機能障害患者20名について, アミノグリコシド系抗生物質による前庭障害をretrospectiveに調べた. 18例は腎不全 (HD8名, CAPD10名) であり, 2名は一過性腎機能障害である. 主な処方は結核に対するストレプトマイシン (SM) と, 腹膜炎に対するゲンタマイシン (GM) である. 前庭症状は15名に認められた. 前庭症状が出現するまでの平均投与量SMで7.1g, GMで1013mgと少なかつた. 前庭症状は改善する例が多かつた. Jumbling現象は9例に認められたが, このうち温度眼振検査 (氷水) と減衰振子様回転検査の両方で無反応のものは2例のみであつた. 経過観察により, 7例はJumbling現象が改善した. 耳鳴はなく, 聴力障害は1例に認められた.
  • 藤森 正登, 中川 雅文, 芳川 洋
    1992 年 38 巻 3 号 p. 247-251
    発行日: 1992/05/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    1980年1月から1989年12月までの, 順天堂大学病院における副鼻腔嚢胞の患者226名に対して, 臨床的検討を行つた. 226名の患者のうち, 186名は術後性嚢胞に分類され, 38名は原発姓嚢胞, 2名は外傷性嚢胞に分類された. 発生は40代に多かつた. 男女比は, 術後性嚢胞では1.6:1原発性嚢胞では1.1:1であつた. 部位は術後性嚢胞では上顎洞に最も多く認め, 原発性嚢胞では篩骨洞, 前頭洞に最も多く認めた. 頬部痛や腫脹は上顎洞嚢胞にしばしばみられた. 眼瞼腫脹や眼球突出は前頭洞嚢胞に認めた. 視力障害や眼球運動障害は篩骨洞嚢胞や蝶形骨洞嚢胞に認めた. 術後性嚢胞は初回の副鼻腔炎の手術から16~30年後に発生する傾向があり, 66%の患者は16~20歳に初回の副鼻腔炎の手術をしていた.
  • 鼻茸に対する局所ステロイド剤の作用機序
    荻野 敏, 入船 盛弘, 原田 保, 阿部 能之, 松永 亨
    1992 年 38 巻 3 号 p. 252-258
    発行日: 1992/05/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    一側鼻茸摘出術後, 対側に局所ステロイド剤 (リノコート) の噴霧を1週間行い, 鼻茸など鼻自他覚症状の改善度をみた. 24例中約40%の症例で中等度改善以上の効果が認められた.
    作用機序解明のために鼻茸中のアラキドン酸代謝物 (AAM), ヒスタミン (HA) の測定を行つたところ, AAM含有量は改善群では非改善群に比べ高値を示した. 又改善例では, リノコートの噴霧をうけた鼻茸中のAAM含有量は, 非治療側鼻茸 (初回切除側) のそれよりも低下する傾向が認められた. HAには著明な違いは認めらなかつた.
    以上より, 局所ステロイド剤の作用機序のひとつとしてアラキドン酸代謝が関係していると思われた.
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