耳鼻と臨床
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39 巻, 1 号
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  • 調 賢哉, 調 信一郎
    1993 年39 巻1 号 p. 1-6
    発行日: 1993/01/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    口腔上顎洞痩孔はその大部分が歯性上顎洞炎の原因歯の抜歯後に生じるものであるが, 痩孔が大きく慢性化した症例では閉鎖手術が必要となつてくる. この痩孔の手術的閉鎖についてはそれが困難なために種々の方法が試みられている. 私どもは従来より笹木実教授が発表されたSasaki-Zangeの法およびその変法 (久保, 調) すなわち上顎洞対孔粘膜弁利用による閉鎖法を行うことにより成功していたのであるが, 今回, 同法を行うことが不可能であつた4症例 (十分な広さの下鼻道弁作製が不可能) に対し, 上顎洞根治手術を完全に行い, 側頭筋膜または大腿広筋膜を採取, 上顎洞側より痩孔に移植, 充填することにより閉鎖に成功した.
    この筋膜は補修材料として最近よく使用され, その優秀なことは周知の通りであるが, 口腔上顎洞痩孔の閉鎖に用いた報告はないようである. この筋膜移植による方法は手術不可能例がなく適応を広く考えてよいと思う.
  • 古謝 静男, 長田 紀与志, 神谷 聰, 渡久山 章雄
    1993 年39 巻1 号 p. 7-12
    発行日: 1993/01/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    当科で経験した腺様嚢胞癌14例を検討した. 年齢範囲は26歳~72歳, 平均年齢45.8歳, 性別では男性7例, 女性7例で同数であつた. 病悩期間は平均2.4年, 発生部位は耳下腺4例, 上顎洞3例, 硬口蓋2例, その他5例であつた. 進行度はStage IIIおよび Stage IVが8例で過半数を占めていた. 治療は外科的治療が第一選択で, 14例中12例に根治的外科治療が施行されていた. 外科的切除の際は広範な切除が要求され, 切除断面残存, 再発に対しては70Gy以上の照射線量が必要と考えられた. 症例により化学療法と放射線療法の併用が有効であつた.
    また初回治療を成功裏に行うことが, 遠隔転移防止につながると考えられ, とくに組織的にsolid patternの存在する例では, 広範な切除と術後照射を十分行うことが重要と考えられた. 14例中死亡した2例は肺転移が原因であつた.
  • 山下 耕太郎, 澤木 修二, 谷内 晶子, 中川 千尋, 柊 光一, 西本 喜胤, 古川 政樹
    1993 年39 巻1 号 p. 13-22
    発行日: 1993/01/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    1. 副鼻腔炎においてNFLXとSCMCを併用することの意義をNFLX単独投与群38例, SCMCを併用する群36例につき検討した. 有効率は単独群58%, 併用群86%であり, SCMC併用群が良好な結果を示した. なお併用効果はとくに慢性急性増悪例で顕著に認められた.
    2. 鼻汁の性状の改善における有効率は単独群73%, 併用群86%, 鼻汁分泌量改善度でも単独群84%, 併用群92%で, ともに併用群が良好な結果を示した.
    3. NFLXとSCMCの併用は副鼻腔炎に対する有用な治療法と考えられた.
  • 吉川 茂樹, 池田 佳充, 西平 修, 福井 仁士
    1993 年39 巻1 号 p. 23-27
    発行日: 1993/01/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    突発性にめまい, 難聴を生じた小児頭蓋内海綿状血管腫症症例を報告した. 8歳の女性が突然にめまい, 左難聴を自覚した. 入院時には難聴, ふらつき以外の他の脳神経症状はみられなかつた. CT, MRIを行い, 左中小脳脚から橋の一部に小腫瘤が発見された. 腫瘤は摘出され, 病理学的検査で海綿状血管腫と診断された. 小児の頭蓋内海綿状血管腫はきわめてまれな疾患であるとされていたが, 近年MRIの普及により報告が急増している. その初発症状のほとんどがてんかん, 痙攣発作であり, われわれの経験した症例のようにめまい, 難聴を初発症状とした報告は少ない. これは血管腫が中小脳脚から橋に限局していたことによる局所症状と考えられる. 突発性に発症した難聴には神経耳科学検査を十分に行い, 中枢病変が少しでも疑われれば, CT, MRIを用いた画像診断を行つて中枢病変を除外しなければならない. とくにMRIは濃度分解能に優れ, きわめて有用である.
  • 酒井 昇, 石川 和郎, 佐藤 公輝, 寺倉 直明, 松島 純一, 浅井 俊幸, 栗原 秀雄, 犬山 征夫
    1993 年39 巻1 号 p. 28-31
    発行日: 1993/01/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    鼓膜形成術後における難治性の小穿孔例に対する簡単な外来的閉鎖術の新しい方法を紹介した. 術式は鼓膜麻酔液で鼓膜の表面を麻酔した後穿孔縁上皮を除去し, この上に軟骨部外耳道下壁からの小皮膚移植片をオーバーレイ法で置くものである. この方法を施行した7例中, 閉鎖成功例は6例で85。7%と高率であり, 症例の中には3年以上の安定した閉鎖状態を得ているものもある. 本法は美容的にも優れ, 麻酔侵襲は少なく, また外耳道のパッキングを必要としないなどの利点を有する.
  • 伊藤 信輔, 武富 正夫, 平木 基裕, 井立 睦子, 黒木 岳人, 神戸 孝夫
    1993 年39 巻1 号 p. 32-34
    発行日: 1993/01/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    久留米大学耳鼻咽喉科において1988年に施行した耳の手術後に発症した耳鳴について検討した. 発症の頻度は, 中耳炎に対する鼓室形成術83例中12例 (14%), アブミ骨手術3例中1例 (33%) であつた. 顔面神経減荷術10例, 内リンパ嚢手術7例, 奇形に対する鼓室形成術3例および経迷路的聴神経腫瘍摘出術2例では, 手術によつて既存の耳鳴が増悪したり, 新たに耳鳴の生じた例はなかつた. 乳突削開を施した例において耳鳴の発症したのは中耳炎例に限られていた. 中耳炎に対する術式の違いによる耳鳴の発症頻度には有意の差はなく, 気導および骨導値の変化との関連は認められなかつた. また術前の骨導値との関連もなかつた. 耳鳴は3カ月の経過観察の間に, 6例は消失, 5例は軽減, 2例は不変であった.
  • 谷本 秀司, 奥田 稔, 石田 祐子, 藤倉 輝道, 池田 雅一, 浪松 昭夫, 吉村 弘之, 呉 晃一郎
    1993 年39 巻1 号 p. 35-41
    発行日: 1993/01/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    ステンレス研磨用のos-oilで通年性鼻アレルギー患者の病像が増悪した症例を経験し, そのメカニズムを明らかにするためモルモットを用い検討した.
    その結果, OS-oil点鼻による鼻誘発反応は軽度であり, メサコリン誘発による鼻粘膜過敏性の検討では, 正常飼育モルモットに比して, 鼻汁分泌量の増加および反応閾値の低下が有意に認められ, 抗卵白アルブミン血清で受動感作したOSモルモットにおける抗原誘発反応は, 正常モルモットでの反応に比して有意に増強した. os-oilの皮内反応は陰性であつた. 鼻粘膜・肺組織に軽度炎症性細胞の浸潤が認められた.
    これらより, OS-oilには鼻粘膜障害作用および抗原性が少なく, 反復暴露により鼻粘膜過敏状態となり, 鼻アレルギー症状の悪化することが示唆された.
  • 泰地 秀信, 猪狩 武詔, 山田 耕三, 長嶺 真生料, 金井 弥栄
    1993 年39 巻1 号 p. 42-48
    発行日: 1993/01/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    鼻症状または耳症状で発症したWegener肉芽腫症 (WG) の4症例 (限局型3例, 全身型1例) を報告する. さらに, 耳鼻科でWGを早期に診断するための手順を考察した. 抗生物質に抵抗性の中耳炎や, 鼻中隔穿孔, 鞍鼻, 鼻粘膜の肉芽腫性変化などがみられたときには, 血液検査および病変部の生検を行うべきである. 血液検査で血沈の異常な亢進, RA陽性, CRP強陽性, A/G比低下, フィブリノーゲン値上昇などがみられたときにはWGを強く疑う. 病理学的診断では壊死病変, 血管炎, 多核巨細胞, 炎症細胞浸潤 (とくに好中球) に注目して行う. ANCA (抗好中球細胞質抗体) による血清学的診断も有用である.
  • 血管運動性鼻炎に関する試験
    奥田 稔, 海野 徳二, 佐々木 好久, 冨田 寛, 馬場 駿吉, 松永 亨, 犬山 征夫, 福田 諭, 形浦 昭克, 朝倉 光司, 小島 ...
    1993 年39 巻1 号 p. 49-65
    発行日: 1993/01/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    血管運動性鼻炎患者に, Fluticasone propionate点鼻液200μg/日を原則として2週間以上, 最長21週投与し, 本剤の有効性および安全性を検討し, 以下の結果を得た.
    1. 総投与例数は79例であつた.
    2. 最終全般改善度は解析対象とされた55例のうち,「中等度改善」以上および「軽度改善」以上改善率はそれぞれ73%および93%と高い値を示した.
    3. 副作用は1例に軽度の動悸がみられた. 臨床検査値異常は認められなかつた.
    以上より, Fluticasone proplonate点鼻液は血管運動性鼻炎に対して有効で安全な薬剤であることが確認された.
  • 通年性鼻アレルギーに対する長期投与試験
    奥田 稔, 海野 徳二, 佐々木 好久, 冨田 寛, 馬場 駿吉, 松永 亨, 犬山 征夫, 福田 諭, 形浦 昭克, 朝倉 光司, 小島 ...
    1993 年39 巻1 号 p. 66-85
    発行日: 1993/01/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    通年性鼻アレルギー患者に, Fluticasone propionate点鼻液200μg/日または400μg/ 日を原則として4週間以上, 最長22週間投与し, 本剤の有効性および安全性を検討し, 以下の結果を得た.
    1. 総投与例数は83例で, その内訳は200μg/日投与68例, 400μg/日投与15例であつた.
    2. 最終全般改善度は,「中等度改善」以上改善率で約90%と高く, ほぼ全例に「軽度改善」以上の改善が認められた. また, 持続効果を検討し得た症例では, 投与終了1週間後にも約70%の症例で効果の持続が認められた.
    3. 副作用は1例に, 臨床検査値異常は3例に認められたが, いずれも軽度であり, 投与の長期化に伴い発現率が上昇するような傾向は認められなかつた.
    以上より,Fluticasone propionate点鼻液は優れた有効性を有し,長期連続投与しても安全な薬剤であることが確認された.
  • 通年性鼻アレルギーに対するFluticasone propionateエアゾール剤との比較試験
    奥田 稔, 冨田 寛, 馬場 駿吉, 大西 正樹, 池田 雅一, 小山 英明, 山田 久美子, 佐藤 かおる, 目澤 朗憲, 菊池 恭三, ...
    1993 年39 巻1 号 p. 86-106
    発行日: 1993/01/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    通年性鼻アレルギー患者を対象にFluticasone propionate点鼻液とエアゾール剤の有効性および安全性を評価者側の単盲検法 (Single-blind method) により比較検討した.
    解析対象例176例について200μg/日, 1日2回2週間連続投与により評価を行った結果, 両剤ともに高い改善率 (中等度改善以上: 点鼻液81%, エアゾール剤70%) を示し, また副作用・臨床検査値異常変動の発現頻度が低かったことを反映し, 概括安全度においても高い安全性 (問題なし: 点鼻液99%, エアゾール剤100%) を示した.
    これらのことより, 効果・安金性を総合的に評価した有用度において, 両剤の高い有用性 (有用以上: 点鼻液81%, エアゾール剤73%) が確認され, Fluticasone propionate点鼻液とエアゾール剤はともに通年性鼻アレルギー患者の治療に有用な薬剤であると考えられた.
  • 通年性鼻アレルギーに対するクロモグリク酸ナトリウム点鼻液との比較試験
    奥田 稔, 海野 徳二, 佐々木 好久, 松永 亨, 高橋 光明, 北南 和彦, 荻野 敏, 犬山 征夫, 福田 諭, 形浦 昭克, 朝倉 ...
    1993 年39 巻1 号 p. 107-127
    発行日: 1993/01/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    通年性鼻アレルギー患者201例を対象に, Fluticasone propionate (FP) 点鼻液の有用性を客観的に評価するため, クロモグリク酸ナトリウム点鼻液を対照薬として単盲検法により群間比較試験を行った.
    その結果, 最終全般改善度ではFP群はクロモグリク酸ナトリウム群に比べ有意に優れた改善度を示し, 概括安全度では両群間に有意な差はみられなかつた. 最終全般改善度と概括安全度から評価された有用度はFP群, クロモグリク酸ナトリウム群それぞれ「きわめて有用」49%, 12%,「有用」以上83%, 37%,「やや有用」以上97%, 76%であり, FP群はクロモグリク酸ナトリウム群に比べ有意に優れた有用性を示した.
    以上より, FP点鼻液はクロモグリク酸ナトリウム点鼻液に比べ優れた有効性と同程度の高い安全性を示し, 通年性鼻アレルギーに対し有用性の高い薬剤であることが確認された.
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