1. 抗生物質の普及した現在においては, 稀と思われる前頭洞膿嚢胞から眼窩蜂窩織炎を生じ, さらに高度の視力障害をきたした2例, および失明に至つた1例を報告した.
2. 視力が僅かに残つていた2症例とも, ただちに前頭洞篩骨洞根治手術を行い, 新セフェム系抗生剤点滴静注および抗菌剤内服を行うことによつて視力も回復し, 治癒した. しかし, 最初から視力を完全に失つていた1例は遂に回復しなかつた.
3. 第1, 第2例においては, CT所見 (水平断, 冠状断) により, 眼窩上内側, 浅部より深部に至るまで膿瘍があり, その周辺に蜂窩織炎があると診断していたが, 手術所見によつて確認された.
4. 前頭洞炎から視力障害をおこすことは比較的稀であるが, この3症例の高度の視力障害の原因としては, 術前CT所見および手術所見によつて知り得たように, 眼窩深部にまで及んでいた膿瘍および蜂窩織炎による匐行性浮腫か, または化膿性炎症の視神経への直接波及であろう.
5. 眼窩膿瘍および蜂窩織炎の治療としては, CTによつて知り得た病巣の広がりによつては保存的治療が可能である. 視力が一度完全に失われると回復は非常に困難であるので, 視力障害があれば, ただちに根治手術を行うべきである.
抄録全体を表示