耳鼻と臨床
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54 巻, 4 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
  • 白土 秀樹, 中島 寅彦, 平川 直也, 瀬川 祐一, 山元 英崇, 松山 勝哉, 小宗 静男
    2008 年 54 巻 4 号 p. 179-185
    発行日: 2008/07/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    症例は30歳,男性。1年前から左頸部腫瘤を自覚,次第に増大したため近医受診,当科紹介受診となった。初診時,左頸部鎖骨上窩に長径10cmの境界明瞭な腫瘍を認め,全身麻酔下に左頸部腫瘍摘出術を施行した。腫瘍は下端が腕頭静脈まで進展しており,胸骨正中切開を併施した。術中迅速組織診では“小円形細胞腫瘍”との診断であり,免疫染色を含めた術後最終診断にてmyoepithelial carcinoma (悪性筋上皮腫) の診断を得た。頸部および上縦隔に対して術後照射をtotal 45Gy施行し,現在明らかな再発,転移の所見は認めていない。myoepithelial carcinomaは主として耳下腺などの大唾液腺に発生する腫瘍で,本症例のように上縦隔軟部組織発生のものは非常にまれである。組織学的には小円形細胞腫瘍に属し,悪性リンパ腫,Ewing肉腫などとの鑑別が必要で,診断は凍結標本による分子生物学的診断を含めて総合的に行われる。
  • 7cm以上の3例の検討
    益田 宗幸, 若崎 高裕, 玉江 昭裕, 小宗 徳孝, 原 崇
    2008 年 54 巻 4 号 p. 186-194
    発行日: 2008/07/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    比較的大きな副咽頭間隙腫瘍 (PPST) に対しては下顎骨正中離断によるアプローチがとられる傾向が見られたが,現在では,下顎骨正中離断を行わなくても,経頸部アプローチ (transcervical approach〔TCA〕) あるいは経耳下腺-頸部アプローチ (transparotid -cervical approach〔TPCA〕) で,大半のPPSTが比較的安全に摘出できることが確認されている。これらの手技に伴う適応,限界,ピットフォールを7cm以上のPPST3例を通して解説したい。症例1は10cmの神経鞘腫,症例2は耳下腺深葉の悪性腫瘍,症例3は再発性の多形腺腫である。
  • 梅野 好啓, 安松 隆治, 中島 寅彦, 門田 英輝, 白土 秀樹, 平川 直也, 小宗 静男
    2008 年 54 巻 4 号 p. 195-199
    発行日: 2008/07/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    Fibromatosisは組織学的には良性腫瘍であるが,臨床的には強い局所浸潤傾向を示し,外科切除後も再発を来しやすいという悪性疾患さながらの特徴を有するといわれている。今回われわれは,頸部腫瘤を主訴に来院し,副咽頭間隙にfibromatosisを認めたPerformance status (PS) の低い73歳の症例を経験した。PSを考慮して当初手術をせず経過観察を行ったが腫瘍の増大を認め,疼痛も出現してきたためステロイド療法を施行した。さらにその後放射線治療を行い,腫瘍の縮小と疼痛改善を認めた。
  • 佐藤 孝宣, 阿部 晃治, 中川 伸一, 武田 憲昭, 近藤 英司, 宮崎 かつし
    2008 年 54 巻 4 号 p. 200-205
    発行日: 2008/07/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    外傷により眼窩先端症候群を生じた一例を経験した。症例は55歳,男性で,作業中の事故により上顎骨前壁を受傷し,破壊された上顎骨の骨片が眼窩先端部に陥頓し,嗅覚低下,左視力消失と左瞳孔散大,左対光反射消失,全方向性の左眼球運動高度障害,左顔面の知覚低下,左の鼻翼部の欠損を引き起こした。画像上視神経の損傷が認められ,視力改善の見込みが無いため同日は開放創の洗浄と閉鎖を行い,受傷後10日目に全身麻酔下に骨片の除去を行った。手術的治療により,眼球運動の改善は認めたが,視力障害は残存した。眼窩先端症候群は動眼神経,滑車神経,外転神経,三叉神経,視神経の障害によりさまざまな症状を呈する病態であり,ステロイド投与,手術的治療が行われるが,視力予後は不良である。
  • 田村 知子, 樋口 仁美, 山野 貴史, 菅村 真由美, 上野 哲子, 江崎 嘉十, 柴田 憲助, 末田 尚之, 坂田 俊文, 中川 尚志
    2008 年 54 巻 4 号 p. 206-211
    発行日: 2008/07/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    クリニカルパスは,入院中に行う患者指導,検査,手術,与薬,処置,食事などについて時間軸に沿ってまとめたもので,医療の質の向上,医療資源の有効活用,患者のインフォームドコンセントの向上を目的としている。福岡大学病院耳鼻咽喉科では2000年に口蓋扁桃摘出術クリニカルパスを導入した。われわれは当科におけるパス導入前後の扁桃摘出症例についての比較検討を行った。在院日数が,パス導入により短縮した。術後6日目において,パス導入後の方が,鎮痛薬を常用している割合が低く,かつ食種も常食の割合が増えていた。パス導入後において手術適応疾患で比較したところ,慢性扁桃炎罹患者がその他の疾患による手術症例 (病巣感染症,扁桃肥大) に比べ,術後鎮痛薬を常用していた。しかし,食種に差は認められなかった。
  • 菊池 良和, 平川 直也, 賀数 康弘, 瀬川 祐一, 中島 寅彦
    2008 年 54 巻 4 号 p. 212-216
    発行日: 2008/07/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    鼻腔に発生した非常にまれなsinonasal hemangiopericytomaの一例を経験した。症例は46歳,女性。鼻閉を主訴に当院紹介受診し,良性鼻腔血管原性腫瘍として4年間経過観察されていたが,腫瘍の増大を認め,診断を兼ねて摘出術を行った。術前に自己貯血・血管塞栓術を行い,手術ではlateral rhinotomyで良好な視野を得て腫瘍を摘出した。病理結果はlow grade malignancyであるsinonasal hemangiopericytomaであった。術後6カ月経過した現在,再発は認めていない。血管原性腫瘍は易出血性のため術前の病理診断が困難な場合が多いが,悪性疾患の除外も兼ねて診断確定のため比較的早期に摘出術を検討する必要がある。
  • 古後 龍之介, 白土 秀樹, 福島 淳一, 平川 直也, 中島 寅彦
    2008 年 54 巻 4 号 p. 217-221
    発行日: 2008/07/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    口腔発生唾液腺型悪性腫瘍は比較的まれな疾患であり,小児発生例はさらにまれである。今回,われわれは9歳男児に発症した口腔発生腺房細胞癌の1例を経験した。6歳時より口腔前庭に腫瘤を自覚していたが,腫瘤が縮小しないため当科紹介受診となった。臨床経過および画像所見にて,当初良性腫瘍が疑われたため,初回手術で腫瘤の核出術を行ったが,術後病理組織診にて腺房細胞癌 (acinic cell carcinoma) と確定したため,周囲組織の追加切除を行った。追加切除病理にて明らかな腫瘍の残存を認めなかったため,放射線治療・化学療法などの治療は行わず,外来で厳重経過観察中である。口腔発生の腺房細胞癌に関しては低悪性度腫瘍である故に外科的切除が第一選択であるが,再発転移を含めた慎重な経過観察を要する。
  • 福島 淳一
    2008 年 54 巻 4 号 p. 222-225
    発行日: 2008/07/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
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