外傷により眼窩先端症候群を生じた一例を経験した。症例は55歳,男性で,作業中の事故により上顎骨前壁を受傷し,破壊された上顎骨の骨片が眼窩先端部に陥頓し,嗅覚低下,左視力消失と左瞳孔散大,左対光反射消失,全方向性の左眼球運動高度障害,左顔面の知覚低下,左の鼻翼部の欠損を引き起こした。画像上視神経の損傷が認められ,視力改善の見込みが無いため同日は開放創の洗浄と閉鎖を行い,受傷後10日目に全身麻酔下に骨片の除去を行った。手術的治療により,眼球運動の改善は認めたが,視力障害は残存した。眼窩先端症候群は動眼神経,滑車神経,外転神経,三叉神経,視神経の障害によりさまざまな症状を呈する病態であり,ステロイド投与,手術的治療が行われるが,視力予後は不良である。
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