耳鼻と臨床
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59 巻, 4 号
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原著
  • 井野 千代徳 , 一色 信彦, 松島 康二 , 多田 直樹, 井野 素子, 溝口 兼司 , 田邉 正博
    2013 年 59 巻 4 号 p. 147-161
    発行日: 2013/07/20
    公開日: 2014/08/01
    ジャーナル フリー
    痙攣性発声障害(SD)は心因性疾患ではなく局所性ジストニアとされているが、多数例を診る中で SD 患者にも陰性の感情を認めることも少なくない。そこで、62 例の SD 患者を対象にしてその特徴を調べる目的で問診、心理検査そしてアンケートなどを行い、その結果を心因性疾患とされるほかの耳鼻咽喉科疾患と比較を行うことで検討した。SD 患者は 30 歳未満の症例が多数を占め、病悩期間が 2 年以上の症例が多かったことが咽喉頭異常感症と舌痛症と大いに異なっていた。CMI (Cornell Medical Index) で神経症傾向以上を示した症例は 12.9%とほかの心因性疾患とされるそれら疾患に比して著しく低かった。 しかし、その内容の検討より SD 患者は「易怒性」と判定される例が上記疾患に比して高かった。SD 患者の多くはその発症時、声をよく使う環境下にあり原因のいかにかかわらず声の詰まりを経験し悩んでしまう不安障害 (SAD) のごとく神経症的に不安・怯えでは無く、ある種のいら立ちをもって悩んでしまう。SD 患者の多くは電話を苦痛にとらえているが、特に騒音下での電話に苦痛を覚えることを特徴とする。大きな声を出そうとすることが原因ととらえているが、コミュニケーションスタイルのゆがみも疑われる。SD は「性格」、「環境」そして「予期不安・身構え」、「長い病悩期間」があり発症し、「予期不安・身構え」より生じる「声門下圧の上昇」とそれによって生じる「声帯の締まりの増強」によって生じる二次的な回路で強化される。治療はこの二次的に生じた回路の解消であるが容易ではなく、治療法としては一色の甲状軟骨形成術 (Ⅱ型) が最良と論じた。
  • − ブロー液、ポビドンヨード、強酸水の比較 −
    山野 貴史, 菅村 真由美, 樋口 仁美, 上野 哲子, 中川 尚志, 森園 哲夫
    2013 年 59 巻 4 号 p. 162-166
    発行日: 2013/07/20
    公開日: 2014/08/01
    ジャーナル フリー
    日常臨床において、耳洗浄や点耳などの使用されているブロー液(13%酢酸アルミニウム溶液) とポビドンヨード (商品名:イソジン液 10%®))、強酸水の内耳毒性と MRSA に対する殺菌効果について検討した。内耳毒性はモルモットを使用した動物モデルを作製し、蝸牛複合電位 (compound action potential : CAP) を測定した。殺菌作用は、ヒト耳漏から採取した MRSA を寒天培地に塗布し、薬剤を滴下してその阻止円を測定することで検討した。ブロー液と 5 倍希釈のポビドンヨードで殺菌作用が認められた。30 分の投与では、ブロー液でみられた内耳毒性はポビドンヨード(10%イソジン液) には認めなかった。強酸水は殺菌効果も内耳毒性も認めなかった。
  • − 最近の治療の傾向について −
    玉江 昭裕, 松本 希 , 柴田 修明, 君付 隆, 小宗 静男
    2013 年 59 巻 4 号 p. 167-174
    発行日: 2013/07/20
    公開日: 2014/08/01
    ジャーナル フリー
    2005 年から 2010 年までの間に当科を初診し、当科で初期治療を行った 20 例の外耳道癌症例について検討した。Pittsburgh 分類を用いた TNM 分類は T 1 が 3 例、T 2 が 3 例、T 3 が 4 例、T 4 が 10 例であり、T 2 の 1 例、T 4 の 3 例が N 1、T 4 N 1 症例の 1 例が M 1 であった。以上により病期は stage Ⅰが 3 例、stage Ⅱが 2 例、stage Ⅲが 4 例、stage Ⅳ が 11 例であった。組織型は 18 例が扁平上皮癌で、1 例は基底細胞癌、1 例は verrucus carcinoma であった。全症例の疾患特異的 5 年生存率は 77.4%、stage Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ症例は 100%、stage Ⅳ症例は 56.7% であった。また、stage Ⅳ症例の手術症例は 5 例中 3 例生存、2 例原病死、stage Ⅳの非手術症例は 6 例中 3 例生存、2 例が原病死、1 例が他病死であった。近年は中耳進展例に対しても側頭骨亜全摘術は行わず側頭骨外側部分切除術を施行し、放射線化学療法と組み合わせて治療しているが成績は改善している。現在の治療方針は妥当と考えられた。
  • 小泉 優, 岩崎 宏 , 山田 梢, 末田 尚之 , 菅村 真由美, 上野 哲子, 宮城 司道, 中川 尚志
    2013 年 59 巻 4 号 p. 175-182
    発行日: 2013/07/20
    公開日: 2014/08/01
    ジャーナル フリー
    症例は 50 歳、男性。慢性咳嗽とリンパ節腫脹が出現したため、内服加療を受けていた。 改善を認めなかったため、1 カ月後に紹介となった。血清 sIL-2R が 864 U/mℓ と高値であったため、悪性リンパ腫を疑って、リンパ節生検を施行した。病理診断はリンパ節炎であった。以後、外来で抗生剤投与を行ったが、改善を認めなかった。血液検査を追加、施行したところ IgG4 が 1,100 mg/dℓ と亢進していた。IgG4 関連疾患を疑い、再度全身麻酔下に顎下腺摘出術とリンパ節摘出術を施行した。免疫染色を行い IgG4 陽性形質細胞の組織への浸潤を認め、確定診断に至った。プレドニン30mg/day より開始し、2 週間で10 %の漸減療法を行った。顎下腺、リンパ節は縮小し、呼吸器症状も落ち着いた。IgG4 も 300 台まで低下を認めたが、完全寛解には至っておらず、プレドニン 20mg/day で維持している。
  • 大庭 哲, 山野 貴史, 原田 博文, 坂田 俊文, 中川 尚志
    2013 年 59 巻 4 号 p. 183-185
    発行日: 2013/07/20
    公開日: 2014/08/01
    ジャーナル フリー
    われわれは顎関節脱臼により気付かれた薬剤性ジスキネジアの 1 例を経験したので報告する。症例は 15 歳、男性。既往歴、家族歴、アレルギー歴等に特記事項なし。習慣性扁桃炎に対し、全身麻酔下に両側口蓋扁桃摘出術を施行。術当夜から強い嘔気と不穏状態があり、術後 2 日目の朝までにメトクロプラミド 10 mg を計 5 回、ハロペリドール 2.5 mg を計 2 回投与した。術後 1 日目の夕方、顔面の軽いゆがみを、術後 2 日目の朝、右顎関節脱臼と舌の運動不良を認めた。メトクロプラミドの副作用と判断し、投与を中止した。術後 3 日目に過剰な筋緊張は緩和し、術後 7 日目には固形物以外の経口摂取が可能となり、術後 10 日目に退院した。術後 3 カ月目に舌のジスキネジアは完全消失した。メトクロプラミドによるジスキネジアが示唆され、術後の脱水、ハロペリドールの併用が助長したものと思われた。
臨床ノート
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