耳鼻と臨床
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49 巻, 6 号
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  • 中川 尚志, 松原 篤, 白土 秀樹, 中条 恭子, 賀数 康弘, 後藤 弘毅, 小宮山 荘太郎
    2003 年 49 巻 6 号 p. 415-420
    発行日: 2003/11/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    さまざまな臨床像を呈したニカワ状中耳分泌物中に好酸球を含む中耳炎の3症例を報告した。中耳粘膜でなく、分泌物で好酸球が検出されやすかった。気管支喘息を合併した好酸球性中耳炎症例においては鼓膜切開により症状の改善がみられ、中耳の換気不全が誘因になる好酸球性中耳炎があることが示唆された。気管支喘息を合併しない症例でニカワ状の中耳分泌物に好酸球が含まれる場合、好酸球性中耳炎と診断できるのか、問題提起を行った。
  • 馬 秀嵐, 井脇 貴子, 久保 武
    2003 年 49 巻 6 号 p. 421-425
    発行日: 2003/11/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    近年、小児に対する人工内耳手術の割合は急速に増加しているが、小児人工内耳は成人にはない種々の特殊性があり、機種の選択、手術手技、合併症の予防などは成人以上に重要である。今回、大阪大学で人工内耳埋め込み術を受けた小児47例をNucleus N24® 装用群とClarion S®装用群に分け、機種による手術方法の違いを比較検討した。Nottingham大学の聴覚活用進歩プロフィ-ルlistening progressを使用し、術前、術後の聴取能の変化を経時的に検討した。結果、Nucleus N24®の場合では手術侵襲が小さく、挿入電極数は32本のうち、平均27.6本であったのに比し、Clarion S®の場合では広く深い範囲の骨溝の削開が必要であり、挿入電極数は16本のうち、平均15.8本であった。術後聴取能の改善度は音入れ3カ月目まではNucleus N24®の伸びが大きいが、3カ月目から6カ月目まではClarion S®の伸びが大きい傾向が見られたが、結局、音入れ1年後に両群とも満点に近い聴取能力が認められた。
  • 雑音提示方法の相違による影響について
    亀井 昌代, 小林 由佳, 小田島 葉子, 佐藤 宏昭, 村井 和夫, 米本 清
    2003 年 49 巻 6 号 p. 426-431
    発行日: 2003/11/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    音場において聴力正常例10例、感音難聴症例15例について雑音負荷語音聴力検査を施行した。雑音提示方法は、1) 被験者に対し左右45度の位置に設置した2個のスピーカから同一雑音源を用いた相関雑音の負荷と、2) 異なった雑音源を用いた無相関雑音負荷、3) 被験者正面に設置した1個のスピーカから提示した雑音負荷の3種類とした。その結果、正常例のS/N-10dBにおける語音明瞭度は相関雑音負荷条件下で67.5%、1個スピーカからの雑音負荷条件下で55.5%、無相関雑音負荷条件下で33.5%であり、無相関雑音負荷で有意に語音明瞭度が低下した (p<0.01)。感音難聴症例でも同様に無相関雑音負荷条件下に有意に低下が見られた (p<0.01)。従って、雑音負荷語音検査を行う場合、ISO 8253-3に記載されている無相関雑音負荷条件で行うことが望ましいと考えた。
  • マウス口腔底モデルによる評価
    王 雪峰, 中島 寅彦, 倉富 勇一郎, 益田 宗幸, 安松 隆治, 東 芳, 山本 智矢, 小宮山 荘太郎
    2003 年 49 巻 6 号 p. 432-436
    発行日: 2003/11/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    エレクトロポレーション (EP) 法は細胞に電気パルスを与えることにより細胞内への化学物質やDNAの取り込みを増強させる方法であり、ブレオマイシン (BLM) などの抗癌剤との併用 (電気化学療法) により薬剤の抗腫瘍効果を高めることが知られている。われわれはマウス口腔底モデルを用いて頭頸部扁平上皮癌に対する電気化学療法の効果を検討した。ヒト頭頸部扁平上皮癌由来のYCU-N細胞 (5×106/site) を6週齢ヌードマウスの口腔底に移植し頭頸部癌のin vivo局所モデルを作成した。小結節形成時 (8日目) にBLM (20μg/site)、電気パルス (50V/cm、100V/cm)、および両者併用を行い、抗腫瘍効果の検討を行った。また治療後9日目に摘出したマウスの下顎骨標本を用いて癌細胞の増殖、浸潤能に対する効果の検討を行った。BLM、電気パルス併用群は BLM単独投与群に比し相乗的な抗腫瘍効果が認められた。コントロ-ル群の腫瘍は筋肉、血管および顎下腺への浸潤が認められた。併用群では、腫瘍細胞の壊死像を認め、細胞増殖能がBLM単独群に比し有意に抑制されていた。低電圧エレクトロポレーション法による頭頸部癌電気化学療法は頭頸部癌への臨床応用の可能性があると考えられる。
  • 谷口 雅信, 渡邉 昭仁
    2003 年 49 巻 6 号 p. 437-440
    発行日: 2003/11/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    鼻中隔膿瘍の2例を経験したので報告する。症例1は8歳男性で、1週間前に鼻部を打撲してから鼻痛があり、徐々に鼻閉が増強するため受診した。鼻中隔前方および鼻背部に腫脹を認め、鼻中隔への穿刺にて膿汁が吸引され鼻中隔膿瘍と診断された。治療は穿刺排膿術に加えて抗生剤投与を行ったが、鼻痛および鼻中隔腫脹は完全には消失せず、全身麻酔下に切開排膿術を施行し、その後合併症なく治癒した。症例2は41歳女性で、慢性副鼻腔炎にて約50日前に内視鏡下鼻内副鼻腔手術を受けており、数日前から徐々に増強する鼻閉を主訴に受診した。鼻中隔前方の腫脹を認め、穿刺にて膿汁が吸引され鼻中隔膿瘍と診断された。治療は穿刺排膿術に加え抗生剤投与を行い、合併症なく治癒した。発症時に鼻副鼻腔に急性炎症所見を認めず、また明らかな鼻部外傷や鼻中隔手術の既往もなく、原因は特発性と考えられたが、手術的操作が影響した可能性も否定できないと考えられた。
  • 荻野 敏, 福録 恵子, 角谷 千恵子
    2003 年 49 巻 6 号 p. 441-444
    発行日: 2003/11/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    スギ花粉症患者18名を対象に、スギ花粉の飛散前と飛散ピーク時にピークフロー、1秒率など呼吸機能検査を行った。飛散ピーク時に軽度以上の鼻症状を訴えたのは10名 (55.6%)、眼症状12名 (667%)、咳、のどの違和感などの呼吸器系の症状を訴えたのは4名 (22.2%) に認められたが、いずれも症状は軽く、喘鳴を訴えた症例はいなかった。肺活量 (VC)、パーセント肺活量 (%VC)、1秒率 (FEV 1%)、ピークフロー (PF)、いずれにおいても有意な変動は認められず、呼吸器系症状の有無によっても変動は認められず、喘息と診断し得る検査結果を示した症例は認められなかった。このように、スギ花粉により典型的な喘息を起こす症例はまれと思われるが、軽いとはいえ5人に1名、のどの症状を訴えたことから、花粉の飛散量、症例によってはその可能性も否定はできない。one airway、one diseaseの考えから、花粉症患者に対しても常に一つの気道として下気道症状にも目を向けていく必要があるものと思われる。
  • 特に脳梗塞病型別の嚥下障害について
    巨島 文子, 尾原 知行, 牧野 雅弘, 小田 健一郎
    2003 年 49 巻 6 号 p. 447-453
    発行日: 2003/11/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    脳梗塞により嚥下障害を呈する患者は多く、予後を決定する重要な因子である。近年、画像診断の進歩により、急性期に責任病巣を明確に描出可能となり、発症機序に基づいた治療方針の決定が可能となった。嚥下障害に関しても早期に病態の評価を行い機能訓練を開始する必要がある。逆に障害部位や発症機序により嚥下動態の推測を行うには詳細な画像所見と嚥下動態との照合を要する。障害部位は大きく、核上性・核性嚥下障害に分けられる。さらに前者は皮質・皮質下型、基底核型および脳幹型の3型に分類が可能である。脳幹型の場合には孤束核・疑核への病巣の広がりにより重症度が異なるため、核性嚥下障害を含んでいるか判別する必要がある。
  • 咽頭食道造影検査と比較した信頼性とその有用性の検討
    唐帆 健浩, 兵頭 義浩, 松村 優子, 北川 洋子, 田部 哲也, 北原 哲
    2003 年 49 巻 6 号 p. 454-458
    発行日: 2003/11/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    嚥下障害患者に対して、内視鏡を用いた嚥下機能検査と咽頭食道造影検査を実施し、誤嚥の検出精度に関して両者を比較し、内視鏡検査の信頼性を検討した。対象は、誤嚥を疑われて当科を受診した86例である。患者の原疾患は、脳血管障害30例、ALS7例、脳腫瘍術後7例などである。誤嚥に関して内視鏡検査と造影検査は高い連関性を示した。内視鏡検査にて誤嚥を認めたのは86例中40例であり、このうち造影検査でも誤嚥を認めたのは32例であった。造影検査での誤嚥検出を基準とすると、誤嚥に関する内視鏡検査の鋭敏度は74%、特異度は81%であった。両検査は、嚥下機能検査として相補するものであり、特に内視鏡検査は誤嚥のスクリーニングに有用と考える。
  • 小野 真知子, 佃 守, 河合 敏, 持松 いづみ, 廣瀬 肇, 陰里 ゆうみ
    2003 年 49 巻 6 号 p. 459-463
    発行日: 2003/11/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    食道入口部の開大不全の原因は、(1) 輪状咽頭筋の弛緩障害、(2) 喉頭挙上障害、(3) 不十分な嚥下圧の三つである。食道入口部の開大障害による嚥下障害症例に対して輪状咽頭筋切断術が施行されることが多いが、効果の不十分な症例もあることが報告されている。今回、副咽頭間隙腫瘍の手術時に迷走神経が傷害され嚥下障害を来した2症例の観察から、食道入口部の食塊の通過には、食道入口部圧の低下よりもむしろ十分な咽頭圧の上昇の方が重要であることが示唆されたので若千の考察を加えて報告した。
  • 馬場 均, 巨島 文子, 齋藤 敦志, 立本 圭吾
    2003 年 49 巻 6 号 p. 464-468
    発行日: 2003/11/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    橋出血、延髄梗塞による咽喉頭の不随意運動を伴った嚥下障害症例に対し、音声を温存した誤嚥防止手術を施行した。術後、在宅療養が可能となり、現在まで肺炎の罹患は認めていない。経管栄養を併用しているが経口摂取も可能となった。また術前後で音声機能の悪化は認めなかった。喉頭蓋管形成術は音声温存にこだわる高度誤嚥症例に対し有用な術式であると考えた。
  • 末廣 篤, 土師 知行, 堀 龍介, 山本 達之, 守屋 真示, 八木 伸也, 竹林 慎治, 花本 美和子
    2003 年 49 巻 6 号 p. 469-473
    発行日: 2003/11/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    過去5年間に15例の喉頭気管分離・気管食道吻合術を施行し、全例で誤嚥性肺炎の防止が可能であった。気管食道吻合には新たに考案した方法を用い、高位の気管切開例にも実施することができた。気道分泌物の減少やカニューレが不要になったことなどで、患者だけでなく介護者の負担も減り、生存している11例中9例で在宅介護が可能となった。生存している症例の過半数で経口摂取が可能となったが、原疾患や全身状態によっては術後も経口摂取ができない例もあり、術前の十分な説明が必要である。本手術は発声機能を犠牲にするものの、本人の生命予後に対してだけでなく、介護の面からも有用であり、適応のある症例には積極的に手術を行うべきであると考える。
  • 山下 弘之, 久保 和彦, 山本 智矢, 小宮山 荘太郎
    2003 年 49 巻 6 号 p. 474-476
    発行日: 2003/11/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    1. 脳血管障害による嚥下障害症例4名に対し輪状咽頭筋切断術および喉頭挙上術を行った。2. 4名中2名は完全に経口摂取が可能となり鼻腔栄養から離脱できた。3. 改善を認めた2症例はADLが良好であり、改善を認めなかった2症例はADLが不良であった。4. 嚥下障害の程度と改善度には関係がなかった。
  • 松本 州司, 中平 光彦, 福島 慶, 中谷 宏章, 竹田 泰三
    2003 年 49 巻 6 号 p. 477-480
    発行日: 2003/11/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    嚥下障害に対する長期経管栄養により銅欠乏症を生じた症例を経験したので報告する。症例は43歳、男性。左椎骨動脈の解離性動脈瘤破裂後生じた嚥下障害に対して、リハビリ専門病院にて嚥下訓練を受けたが改善が得られず、胃瘻による長期経管栄養を8カ月間行っていた。嚥下改善手術目的で当科を受診しその術前検査で貧血と白血球減少を認めた。精査の結果、血清銅とセルロプラスミン値が低値を示した。さらに、使用されていた経管栄養剤の銅含有率も極めて少ないことが判明した。治療として経静脈的にミネラリン®1A/Bを1カ月間投与し貧血、白血球数の改善が得られたことから、経管栄養に伴う銅摂取不足による銅欠乏症と診断した。その後の外科的治療により誤嚥なく少量の経口摂取が可能となった。長期にわたり経管栄養のみに依存している症例では、使用している経管栄養剤の微量元素の組成に注意し定期的な血液検査が必要と考えられた。
  • 2003 年 49 巻 6 号 p. 481-490
    発行日: 2003/11/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
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