耳鼻と臨床
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68 巻, 5 号
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症例報告
  • 大塚 雄一郎
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 68 巻 5 号 p. 329-333
    発行日: 2022/09/20
    公開日: 2023/09/20
    ジャーナル フリー

    多形腺腫はまれに鼻副鼻腔に発生することがある。鼻中隔に発生した多形腺腫例を報告する。症例は 58 歳、男性。主訴は右鼻閉と右鼻出血、右前鼻孔を塞ぐ表面平滑な腫瘍を認めた。画像検査では右前鼻腔に軟部組織陰影を認め、CT では軽度の造影効果を有した。MRI では T1 強調像で等信号、T2 強調像で不均一な高信号を示し、均一な造影効果を有した。術前の病理生検では異形を伴う乳頭腫の疑いであった。全身麻酔下に内視鏡手術を行った。基部は鼻中隔粘膜で 1 cm の安全域を設けて切除した。術後の病理検査で多形腺腫と診断した。鼻副鼻腔の多形腺腫は良性腫瘍であるが大唾液腺同様に悪性化する可能性があり、その鑑別は重要である。術前に診断が確定しないこともあり、確実な切除と術後の経過観察が重要である。

  • 三浦 智也 , 葛西 崇, 山口 大夢, 太田 修司, 松原 篤
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 68 巻 5 号 p. 334-339
    発行日: 2022/09/20
    公開日: 2023/09/20
    ジャーナル フリー

    今回われわれは、放射線化学療法が奏功した EBER(Epstein-Barr virus encoded small RNA)陽性蝶形骨洞癌の 1 例を経験したので報告する。症例は 56 歳、男性。難聴、眼球運動障害など多彩な脳神経症状を呈し、鼻内視鏡下に生検した結果、EBER 陽性非角化型扁平上皮癌の診断となった。頭蓋底に広範囲に浸潤しており根治手術は困難と判断し、放射線化学療法を選択した。シスプラチン併用 IMRT(intensity modulated radiation therapy)を施行後、追加治療として S1(テガフール、ギメラシル、オテラシルカリウム)内服治療を行った結果、CR(complete response)判定となった。治療後 2 年、明らかな再発転移は認めていない。蝶形骨洞癌の治療方針決定には、年齢や PS(performance status)、腫瘍の進展度、および EBER を含めた病理組織学的検討が重要と考えられる。

  • 二宮 啓彰, 波多野 孝, 塩野 理, 西村 剛志, 谷垣 裕二, 折舘 伸彦
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 68 巻 5 号 p. 340-345
    発行日: 2022/09/20
    公開日: 2023/09/20
    ジャーナル フリー

    従来、鼻腔異物に比較して副鼻腔異物の報告はまれとされているものの、近年歯科治療の発展に伴い、医原性副鼻腔異物の報告例は増加している。今回われわれは、副鼻腔異物に真菌感染を合併した 2 例を経験したため報告する。副鼻腔異物の症状は、無症状で経過するものから、急性あるいは遅発性に副鼻腔炎症状を伴うものまで症例によりさまざまであるが、異物に真菌感染を合併する場合もあるため、無症状であっても摘出が望ましいと考えられる。治療方法は近年侵襲の少ない内視鏡下鼻副鼻腔手術による摘出が増えてきており、異物の部位や大きさによって適切な術式を選択することが必要と考えられた。

  • 宮﨑 孝, 松尾 美央子, 次郎丸 梨那, 橋本 和樹, 若崎 高裕, 安松 隆治, 中川 尚志
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 68 巻 5 号 p. 346-351
    発行日: 2022/09/20
    公開日: 2023/09/20
    ジャーナル フリー

    杙創は、先端の鈍な棒状の物体が身体に突き刺さる外傷形態の一つである。口腔・咽頭外傷は、器具を口腔内に挿入したまま、転倒した際に発症することが多く、原因器具は、歯ブラシが最多とされる。今回、われわれは、副咽頭間隙を貫通した歯ブラシ杙傷の 1 例を経験した。症例は 67 歳の女性で、歯ブラシをくわえたまま転倒した。歯ブラシは中咽頭左側壁から副咽頭間隙を貫通し、左後頸部の筋間に刺入していた。また異物によって内頸動脈は著しく狭窄していた。頸部外切開によって歯ブラシのヘッド側から異物を摘出したが、抜去による出血はなく、その後の感染症の併発もなく治癒した。咽頭杙創の場合、不用意な抜去は血管損傷による大出血や神経障害の可能性があるため、造影 CT や血管造影等で正常構造物との関係を把握した上で、適切な抜去法を選択する必要がある。また杙創は受傷後数日経過してから、膿瘍等の感染症や外傷性内頸動脈閉塞症などの重篤な合併症を来すこともあり、適切な抗菌薬治療や神経学的所見の経過観察などを怠らないことが重要であると考えられた。

  • 鈴木 智陽, 梅﨑 俊郎, 井口 貴史, 松原 尚子, 小出 彩佳, 澤津橋 基広
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 68 巻 5 号 p. 352-358
    発行日: 2022/09/20
    公開日: 2023/09/20
    ジャーナル フリー

    症例は 12 歳、男児。出生直後よりチアノーゼが出現し、喉頭ファイバースコピーで声門下狭窄の診断となり、他院で緊急気管切開術が施行された。以後、気管カニューレを近医で適宜交換し、経過観察されていたが、積極的な治療介入はなされていなかった。今回、気管孔閉鎖希望があり、当院へ精査加療目的に紹介受診となった。術前の CT では軟骨腫や軟骨肉腫も疑われ、声門下狭窄症に対して、喉頭戴開下声門下喉頭狭窄切除手術および T チューブ留置術を施行した。摘出標本は腫瘍性病変ではなく、軟骨組織との診断であり、輪状軟骨の anomaly による先天性声門下狭窄と診断した。術後経過は良好であり、術後約 3 カ月で T チューブを抜去し、術後約 1 年 4 カ月で気管孔閉鎖に至った。今回、先天性声門下狭窄に対して、外科的治療が奏功した 1 例を報告するとともに、同疾患の発生・病態についても若干の文献的考察を交えて提示する。

第36回西日本音声外科研究会
症例報告
  • 髙島 寿美恵, 副島 駿太郎, 西 秀昭, 原 陽子, 熊井 良彦
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 68 巻 5 号 p. 361-365
    発行日: 2022/09/20
    公開日: 2023/09/20
    ジャーナル フリー

    交通外傷による喉頭外傷は、体表に明らかな異常がない場合でも骨折による粘膜損傷を生じている可能性があり、気道狭窄を念頭に置いた初期対応が必要になることは言うまでもない。さらに気道が確保され、呼吸や循環動態が安定しても喉頭枠組みへの骨折があれば整復が必要になり、骨折による枠組みのずれや粘膜損傷による瘢痕等で遅発性に嗄声が出現することもあり、急性期を過ぎた後も音声治療の介入を要することがある。今回、トラックとの衝突で喉頭外傷を来した 27 歳の症例を経験し、緊急気道確保から嗄声の音声治療までを経験したため報告する。

  • 有賀 健治, 細川 清人, 鈴木 基之, 小川 真, 猪原 秀典
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 68 巻 5 号 p. 366-371
    発行日: 2022/09/20
    公開日: 2023/09/20
    ジャーナル フリー

    内視鏡下経口的咽喉頭手術(transoral videoendoscopic surgery:以下 TOVS)により腫瘤の全摘が可能であった下咽頭血管奇形症例を報告する。症例は 80 代、女性。X − 12 年に下咽頭に腫瘤を認め、下咽頭血管奇形の診断で顕微鏡下喉頭微細手術(KTP レーザーでの焼灼術)を施行したが、X − 4 年時に下咽頭から隠見する腫瘤を認め、X − 1 年 9 月から血痰を繰り返すため再手術を希望した。X 年 2 月、FK-WO リトラクターと先端彎曲型内視鏡を併用した TOVS を施行し、腫瘤の全摘を行い得た。病理診断は静脈奇形であった。術後 1 年経過時点では咽頭異常感もわずかで嚥下困難もなく、腫瘤の再発を認めていない。咽頭の血管奇形に対しては、これまで各種レーザーによる焼灼術や硬化療法などが報告されているが、全摘を目指す治療ではなかった。新規デバイスの出現により、咽頭血管奇形の治療は大きく進歩してきている。

抄録
臨床ノート
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