耳鼻と臨床
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64 巻, 4 号
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原著
  • 山口 優実, 荒川 友美, 川口 美奈子, 東野 好恵, 松本 希, 中川 尚志
    2018 年 64 巻 4 号 p. 121-129
    発行日: 2018/07/20
    公開日: 2019/07/01
    ジャーナル フリー

    UD トークは、音声認識機能を用いて難聴者と健聴者とのコミュニケーションを支援するソフトである。しかし、その音声認識精度は完璧とはいえない。われわれは、その音声認識ソフトを利用して構音障害患者の発話明瞭度評価を客観的に行う方法を検討した。 標準ディサースリア検査の教材用音源を UD トークに聴き取らせたところ、UD トークは健常者以外の音声を高率に聞き取れず、構音障害の程度に応じた聞き取り成績を示した。 UD トークは 36/53 の音声で言語聴覚士による評価に沿った評価を下し、15/53 の音声で言語聴覚士による評価より厳しい評価を下し、残りの 2/53 の音声で言語聴覚士より甘い評価を下した。この評価方法を利用し、従来言語聴覚士の主観的評価に頼っていた構音障害患者の発話明瞭度が客観的に評価できる可能性が示唆された。

  • 小池 健輔, 田浦 政彦
    2018 年 64 巻 4 号 p. 130-137
    発行日: 2018/07/20
    公開日: 2019/07/01
    ジャーナル フリー

    気管切開は待機的気管切開と緊急気管切開に大別されるが、当科で施行・管理した気管切開症例に関して、臨床的に検討を行った。待機的気管切開 36例中、悪性腫瘍例が 61%(22/36 例)であり、そのうち 17 例が再建手術症例であった。再建手術症例でのカニューレ留置期間は47%(8/17 例)が 6 日以内であり、術後 5 日目に抜去を検討できると考えられた。緊急気管切開 8 例中、悪性腫瘍例が 63%(5/8 例)であった。また頸部伸展困難で半坐位にて気管切開を行った症例、気管カニューレ挿入後に緊張性気胸を合併した症例、輪状甲状間膜切開を行った後に術場で気管切開を行った症例を経験した。

  • 片岡 舞, 山野 貴史, 藤原 信一郎, 押川 達郎, 坂田 俊文, 柴田 陽三
    2018 年 64 巻 4 号 p. 138-144
    発行日: 2018/07/20
    公開日: 2019/07/01
    ジャーナル フリー

    福岡大学筑紫病院において、摂食嚥下リハビリテーション(以下、嚥下リハ)を実施した中から脳疾患 96例と呼吸器疾患 58例の計 154例を対象に、嚥下障害に対する取り組みの現状について分析した。初回の嚥下評価では呼吸器疾患群は脳疾患群に比べ知覚低下や喉頭侵入・誤嚥の所見が有意に多く、咽頭残留、口腔内汚染が多い傾向にあった。脳疾患群では呼吸器疾患群に比べ、入院3 日以内の嚥下リハ開始例は有意に多く、介入日数も有意に長かった。退院時の摂食状況には両群間に有意差は認められなかった。経口摂取に至らなかった主な要因は、脳疾患群では意識障害、呼吸器疾患群では肺炎の遷延化による全身状態の悪化であった。嚥下リハ内容と効果との関連性には言及できなかったが、診療部署により嚥下障害に対する意識や方向性に違いがあることも推測されたことから、今後は統一したシステムを構築していく必要があると思われた。

症例報告
  • 喜瀬 乗基, 梅﨑 俊郎, 井口 貴史, 松原 尚子, 安達 一雄
    2018 年 64 巻 4 号 p. 145-150
    発行日: 2018/07/20
    公開日: 2019/07/01
    ジャーナル フリー

    自己免疫疾患に関連して生じる喉頭病変の一つとして竹節状声帯が知られている。患者は 28 歳、女性。全身性エリテマトーデス(Systemic Lupus Erythematosus:SLE)でステロイドを内服加療中。感冒後より嗄声が出現し、近医耳鼻咽喉科を受診した。声帯結節の診断で内服や吸入療法を行うも症状が改善せず当院を受診した。音声は二重声で、高音発声時に気息性嗄声を認めた。喉頭内視鏡検査で右声帯膜様部ほぼ中央に横断性の白色線状隆起病変を認めた。喉頭ストロボスコピーでは、病変部の粘膜波動減少と病変部後方の声門閉鎖不全を認めた。病歴や初診時の喉頭所見より竹節状声帯と診断し、経皮的声帯内ステロイド注入術を施行した。注入後 1 カ月で、音声は正常化し、竹節状隆起病変もほぼ消失した。また、音声機能検査と音響分析のいずれにおいても大幅に改善した。経皮的声帯内ステロイド注入は、原疾患の治療のみでは改善しない声帯病変に対する第一選択の治療法になりうる可能性が示唆される。

  • 真栄田 裕行, 杉田 早知子, 新垣 香太, 鈴木 幹男
    2018 年 64 巻 4 号 p. 151-157
    発行日: 2018/07/20
    公開日: 2019/07/01
    ジャーナル フリー

    今回われわれは、両側頸部リンパ節腫脹を初発症状とした骨髄肉腫の 1 例を経験した。 患者は 51 歳の女性である。経過中急性骨髄性白血病を併発し、免疫学的検査、染色体検査によりフィラデルフィア染色体陽性の混合表現型急性骨髄性白血病と判明した。本症例に対し化学療法および末梢血幹細胞移植が施行されたが、移植後の急性 graft versus host disease(GVHD)を契機とした肝膿瘍および敗血症性ショックのため、治療開始から 1 年半後に死亡した。骨髄肉腫と急性骨髄性白血病の併発はしばしばみられるものであるが、発症初期の症状は頸部リンパ節腫脹のみであることも多く、通常の細胞診や病理組織学的検査のみでは診断がつかないことも多い。そのため診断の遅延や誤診に伴う不適切な治療例も散見される。予後も非常に悪いため、可及的早期の発見、診断確定が一層重要となる。

臨床ノート
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