われわれは, 肺アスペルギルス症を伴つた真菌性鼻結石症を経験した. 患者は, 74歳女性. 主訴は左鼻閉. 前鼻鏡所見では, 総鼻道の後部に白い塊を認め, ピンセットによる触診では固く, 石様であつた. 鼻結石症を疑い, 局所麻酔下, 外来にて摘出した. 大きさは全体として2.5×3cm程度で, 摘出時, 出血もほとんどなく, 鼻閉は完全に消失した. 組織学的には, アスペルギルスが証明され, 真菌を核とした鼻結石症と診断された.
肺アスペルギルス症を伴つた鼻結石症, あるいは鼻真菌症の報告はなく, 稀な症例と考え報告した. 喀痰検査より, アスペルギルスが証明されたことにより, 両者が別々に発症したと考えるより, 一方が他方の原因であると考えた.
本症例のような場合も考慮し, 時に経験しうる鼻真菌症の症例には鼻のみに捉われず, 症例によつては, 肺の精査も念頭に入れる必要があるものと考えた.
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