耳鼻と臨床
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40 巻, 2 号
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  • 田坂 康之
    1994 年40 巻2 号 p. 109-113
    発行日: 1994/03/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    ファイバースコープの発達普及に伴つて, 上咽頭に無症状の嚢胞が偶然発見される機会が増えている. この部の嚢胞は漠然とTornwaldt氏病と呼ばれることが多いが, Tornwaldt氏病は「咽頭嚢 (pharyngeal bursa) の炎症, 嚢胞, 膿瘍などで後頭痛, 後鼻漏, 肩凝りなどの多彩な臨床症状を呈するもの」と明瞭である. 混乱の原因はTornwaldtが報告したpharyngeal bursaの発生に未だ疑義があり, また由来が何であれ炎症により組織像が修飾されることが多いからである. 自験例の上咽頭嚢胞に症状と組織学的観点から検討を加え, 嚢胞の由来を文献学的に考察し, Tornwaldt氏病という言葉の乱用は慎むべきであることを強調した.
  • 川崎 英子, 木下 卓也, 鶴原 敬三, 稲村 達哉, 柳田 亜由子, 井野 千代徳
    1994 年40 巻2 号 p. 114-117
    発行日: 1994/03/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    われわれは, 肺アスペルギルス症を伴つた真菌性鼻結石症を経験した. 患者は, 74歳女性. 主訴は左鼻閉. 前鼻鏡所見では, 総鼻道の後部に白い塊を認め, ピンセットによる触診では固く, 石様であつた. 鼻結石症を疑い, 局所麻酔下, 外来にて摘出した. 大きさは全体として2.5×3cm程度で, 摘出時, 出血もほとんどなく, 鼻閉は完全に消失した. 組織学的には, アスペルギルスが証明され, 真菌を核とした鼻結石症と診断された.
    肺アスペルギルス症を伴つた鼻結石症, あるいは鼻真菌症の報告はなく, 稀な症例と考え報告した. 喀痰検査より, アスペルギルスが証明されたことにより, 両者が別々に発症したと考えるより, 一方が他方の原因であると考えた.
    本症例のような場合も考慮し, 時に経験しうる鼻真菌症の症例には鼻のみに捉われず, 症例によつては, 肺の精査も念頭に入れる必要があるものと考えた.
  • 外損傷の統計的観察
    岩田 重信, 高須 昭彦, 桜井 一生, 岩田 義弘, 竹内 健二
    1994 年40 巻2 号 p. 118-122
    発行日: 1994/03/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    過去6年間の喉頭の外損傷36例につき, 統計的観察を行つた. 開放性損傷は7例, 閉塞性損傷は29例で, うち保存的治療のみで治療したもの15例, 外科的手術を要したもの21例であつた. 陳旧性損傷はいずれも狭窄型で, 治療に長期間を要し, 気道を含め再建は困難であった. 損傷部位の診断と喉頭再建術式の選定に, ヘリカルスキャン3次元 CT構築像が治療計画を立てる上で有効であつた.
    本症の適切な早期治療を行う上で, 救急救命センターへの耳鼻咽喉科医の積極的参加の必要性を認めた.
  • 森 昌斗
    1994 年40 巻2 号 p. 123-133
    発行日: 1994/03/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    薬物相互作用のメカニズムは薬物動態学的相互作用と薬力学的相互作用に大別される. 薬物動態学的相互作用とは併用薬によつて薬物の吸収. 分布. 代謝・排泄が変化する場合である. 例えばテトラサイクリンやニューキノロンは制酸剤との併用で吸収が低下する. ワルファリンの抗凝血作用はフェニルブタゾンの併用で, 重大な出血を生じることがある. フェノバルビタールは肝薬物代謝酵素を誘導し併用薬の代謝を促進する. セファロスポリンの排泄は尿細管から分泌されるが, プロベネシドによつて排泄が阻害される.
    薬力学的相互作用の例としては, ニューキノロン抗菌薬と非ステロイド抗炎症薬の併用で痙攣を誘発することが知られている.
  • CTによる研究
    檜垣 雄一郎
    1994 年40 巻2 号 p. 134-147
    発行日: 1994/03/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    右利きの正常者61名を, CTを用いて喉頭の回転ならびに傾斜について測定し, 男女間の差, 年齢間, すなわち20~30歳代と50~70歳代の低・高年齢群における差を検討して以下の結論が得られた.
    1. 喉頭枠組み全体, すなわち甲状軟骨は頸椎の前後に対して右に回転し, 男性において高年齢者ほど有意に回転角が大きい傾向にあつた. 一方輪状軟骨レベルでは, 性別, 年齢にかかわらず軽微な回転であつた.
    2. 喉頭の傾斜は全体としては, 一定方向への傾きや, 男女ともに加齢による変化は認められなかつた.
    3. 喉頭内の回転は, 男, 高齢者において甲状軟骨が輪状軟骨に対して有意に右方向に回転する傾向があつた. 要因として男性および加齢の二つが大きく関与しているものと思われた.
  • 大山 勝, 宮崎 康博, 内薗 明裕, 島 哲也, 渡辺 荘郁, 松永 信也, 鮫島 篤史, 江川 雅彦, 河村 正三, 市川 銀一郎, 江 ...
    1994 年40 巻2 号 p. 148-165
    発行日: 1994/03/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    Temafloxacin (TMFX) の鼻組織への移行性 (49症例) の検討および副鼻腔炎患者 (72 症例) を対象とした臨床的検討を行い, 以下の成績を得た.
    1 鼻組織への移行性の検討
    TMFXは上顎洞粘膜, 鼻茸, 筋骨洞粘膜, 鼻汁への良好な移行を示した.
    2 臨床的検討
    1) 主治医判定による臨床効果は80%, 統一判定基準に基づく委員会判定による臨床効果は79%であつた.
    2) 起炎菌の消失率は, グラム陽性菌94%, グラム陰性菌93%, 嫌気性菌100%, 全株では94%であつた.
    3) X線所見の改善率はやや改善以上で63%であった.
    4) 副作用は3例, 臨床検査値異常は2例に認められたが, 特に重篤なものはなかつた.
    5) 有用性は77%であつた.
    以上の結果から, TMFXは副鼻腔炎に対して有用性の高い薬剤であると考えられた.
  • 三宅 浩郷, 木村 栄成, 新川 敦, 高橋 秀明, 河村 正三, 市川 銀一郎, 江渡 篤子, 板橋 隆嗣, 和田 昌士, 渡辺 洋, 野 ...
    1994 年40 巻2 号 p. 166-181
    発行日: 1994/03/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    扁桃炎, 咽喉頭炎, 化膿性唾液腺炎に対するtemafloxacin (TMFX) の基礎的ならびに臨床的検討を多施設共同で行い, 以下の結果を得た.
    1 組織移行
    TMFXを1回経口投与後の扁桃組織内濃度は, 150, 300および600mg投与群でそれぞれ平均2.61μg/g, 4.87μg/g, および4.38μg/gであつた. 唾液腺組織内濃度は150mgおよび300mg投与群でそれぞれ平均2.42μg/g, 1.00μg/gであつた.
    2 臨床検討
    主治医判定による有効率は扁桃炎で90% (46/51例), 咽喉頭炎96% (24/25例), 化膿性唾液腺炎75% (9/12例) で, 統一判定による扁桃炎の有効率は80% (41/51 例) であつた. 細菌学的効果 (消失+菌交代) は97%であつた. 副作用は皮下硬結が1例, 臨床検査値異常は好酸球増加1例および白血球減少1例が認められたが, 特に問題となるものではなかった.
    以上の結果から, TMFXは扁桃炎, 咽喉頭炎, 化膿性唾液腺炎に対して有用性の高い薬剤であると考えられた.
  • とくに中耳炎, 外耳炎について
    馬場 駿吉, 宮本 直哉, 山本 真一郎, 小林 武弘, 伊藤 弘美, 横田 明, 伊藤 晴夫, 伊佐治 広子, 島田 純一郎, 永田 総一 ...
    1994 年40 巻2 号 p. 182-197
    発行日: 1994/03/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    Temafloxacin (TMFX) の臨床的検討として, 中耳炎118例, 外耳炎24例, 耳瘻孔化膿症1例を対象に1日300~600mgを経口投与し, 以下の結果を得た. 臨床効果 (有効率) は主治医判定では中耳炎73%, 外耳炎88%, 耳瘻孔化膿症100%, また委員会判定では中耳炎66%であつた. 起炎菌の消失率はグラム陽性菌85%, グラム陰性菌67%, 全株では81%であつた. 副作用としては159例中各1例に発疹および舌のあれが, また臨床検査値異常は66例中2例にGOT, GPTの上昇が認められた. しかし, いずれも臨床上特に問題となるものではなかつた. 有用性は中耳炎72%, 外耳炎88%, 耳瘻孔化膿症100%の有用率であつた. また, TMFX 300mg 1回投与後の耳漏中移行性を1例において検討した. 耳漏中薬剤濃度は1.29μg/mlで良好な移行性を示した. 以上の結果から, TMFXは中耳炎, 外耳炎などの耳鼻咽喉科領域感染症に対し有用性の高い薬剤と考えられた.
  • 藤野 睦子, 久 和孝, 井上 裕章, 小宗 静男, 中川 尚志, 君付 隆, 小宮山 荘太郎
    1994 年40 巻2 号 p. 198-203
    発行日: 1994/03/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    塩酸メキシレチン (メキシチール®) 投与によつて耳鳴が抑制された3症例を報告した. これらの症例は, 臨床経過およびSISI testで陽性であつたことから内耳障害に伴う耳鳴症例と考えられ, 塩酸メキシレチン (メキシチール®) は, 内耳障害に伴う耳鳴に対して有効であることが示唆された. 投与量は300mg/日としたが, 副作用を考慮すると, 効果がない場合でもそれ以上増量しないことが妥当であると考えた. 投与期間は最大限6ヵ月としたが, この期間内に副作用の発現は認められなかつた. いずれの症例でも, 約1週間以内に効果が出現しており, 2週間の投与期間で効果判定が可能であると考えた.
  • 大西 信治郎, 宗 永浩, 手塚 克彦
    1994 年40 巻2 号 p. 204-209
    発行日: 1994/03/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    上顎洞根本手術および鼻茸摘出手術が施行される慢性副鼻腔炎患者を対象に, TFLXの食後単回および連続投与時における副鼻腔粘膜や組織への移行性を検討し, 以下の結果を得た.
    1. 測定件数は23検体で, その内訳は150mg単回投与群4件, 300mg単回投与群13 件, 1日600mg分2, 3~7日間連続投与群6件であった.
    2. 上顎洞粘膜・鼻茸組織内濃度は, 150mg単回投与例0.40~0.72μg/g (平均0.54), 300mg単回投与例0.01未満~2.51μg/g (平均0.73), 1日600mg分2連続投与例 0.18~3.24μg/g (平均1.47) であり, 血中濃度に対する比は, それぞれ平均1.04, 1.00, 1.27と高い組織移行であつた.
    以上より, TFLXは食後投与, 連続投与により耳鼻咽喉科領域感染症に優れた臨床効果が期待できる薬剤であると考えられた.
  • 山崎 勤, 原田 千洋
    1994 年40 巻2 号 p. 210-219
    発行日: 1994/03/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    メニエール病はストレスが誘因となつてめまい発作を反復する疾患で心身症の側面をもつた代表的疾患とされている. 今回, われわれは, 厚生省のメニエール病の診断基準によつて診断されたメニエール病患者26名を中心に, その他のめまい患者31名を対象に, 薬理学的には, diazepamより抗痙攣作用や抗conflict作用が強く, 筋弛緩作用や協調運動阻害作用が弱いので, 臨床的に抗不安が強く, ふらつき, 脱力感などの副作用が弱いことが予測され, 現在心身症に適応が認められているbenzodiazepine系抗不安薬Ethyl loflazepate (Meilax) を投与し検討した. その結果, 最終全般改善度で, 改善以上が58%で, やや改善以上では100%となつた. 疾患別では, メニエール病が65%, その他が52%とメニエール病が好成績をえた. 有用度は, 有用以上は58%, やや有用以上では98% となつた. 安全度については, 症例によつて眠気を訴えたが, 減量でコントロール出来た.
  • 冨山 道夫
    1994 年40 巻2 号 p. 220-224
    発行日: 1994/03/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    耳鼻咽喉科領域におけるいわゆる自律神経失調症である頸性めまい症14名, 咽喉頭異常感症16名, 老人性難聴に伴う耳鳴症19名計49名にalprazolamを基礎とした併用療法を行いその有効性を検討した. いずれも不定愁訴が多く心理的要因の関与が強いと考えられた症例であり, 頸性めまい症ではtizanidine, tofisopam, 咽喉頭異常感症では半夏厚朴湯, 耳鳴症ではmethycobalaminを併用した. 各疾患における有効率は頸性めまい症93%, 咽喉頭異常感症56%, 耳鳴症32%で, これらを総合した有効率は57%であった. 副作用は眠気を6名 (12%) に認めたが, alprazolamを1日0.4mg (就寝前服用) に減量し日中の眠気は消失した. alprazolamの使用にあたつては眠気の副作用に注意する必要があるが, 末梢前庭障害や小脳脳幹障害が否定された頸部交感神経が関係する頸性めまい症と老人性難聴に伴う耳鳴症にalprazolamを基礎とした併用療法は有効であると考えられた.
  • 藤井 正人, 神崎 仁, 大築 淳一, 小川 浩司, 磯貝 豊, 大塚 護, 猪狩 武詔, 鈴木 理文, 吉田 昭男, 坂本 裕, 川浦 光 ...
    1994 年40 巻2 号 p. 225-231
    発行日: 1994/03/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    セフポドキシムプロキセチル (CPDX-PRバナン錠®) は三共株式会社が開発した経口用セフェム系抗生物質で広範囲な抗菌スペクトルムを有するのが特色である. 今回, われわれは耳鼻咽喉科領域の感染症に対する有効性と安全性を検討した. 166症例に対して CPDX-PRを症状に応じて一日200mgないし400mg分2投与を4日以上最大14日間投与した。著効が51例, 30.7%にみられ, 有効例は68例, 41.0%にみられた. 疾患別では急性扁桃炎と急性副鼻腔炎が高い著効率を示した. 慢性中耳炎の急性増悪, 急性咽頭炎では高投与量で良好な効果を示した. 自覚的症状の改善度では, 咽頭痛の改善が良好な結果であつた. 投与前後の細菌検査を行つた20例30株では菌消失率では77%と良好な結果であつた. 副作用は1例に発疹が見られたのみであつた. 以上よりCPDX-PR は耳鼻咽喉科感染症に対して高い有効率と安全性を示すと考えられた.
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