耳鼻と臨床
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37 巻, 5Supplement6 号
選択された号の論文の13件中1~13を表示しています
  • 朴沢 孝治, 高坂 知節
    1991 年 37 巻 5Supplement6 号 p. 1207-1211
    発行日: 1991/11/01
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    チロシン水酸化酵素, ドパミンβ水酸化酵素を指標とした免疫組織化学的手法により, モルモット内耳に分布する交感神経および, 蝸牛神経核, 前庭神経核に分布するカテコールアミン作働性神経を観察した. 蝸牛および前庭には, 同側の上頚神経節由来の交感神経が分布し, 血管, 求心性あるいは遠心性神経と接触するのが観察され, これらに影響をおよぼすことが示唆された. 内リンパ嚢にも交感神経が分布し, 分泌能あるいは内リンパ嚢内電位に影響を与えることが推察された. 蝸牛神経核, 前庭神経核には, 青斑核由来のノルアドレナリン作働性神経が分布し, 他の神経線維との間にシナプス, あるいはephaptic contactを形成していた.
  • 古屋 信彦, 小泉 達郎, 鈴木 雅一, 橋本 循一, 鈴木 淳一
    1991 年 37 巻 5Supplement6 号 p. 1212-1218
    発行日: 1991/11/01
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    迷路から前庭神経核細胞への神経伝達物質に関してその有力な候補として現在グルタミン酸が考えられている. 今回グルタミン酸のチャンネル遮断剤であるNG1200 (日本ケミファ製) の投与による前庭動眼反射の変化をネコで観察したので報告する. 実験は無麻酔慢性ネコをもちいた. 眼球運動の記録にはサーチコイル法を用いた. 前庭刺激は暗黒下に1~6度/秒2の等加速度刺激を用いた. 薬剤の投与は経静脈的に投与した. 薬剤投与効果は眼振数の低下, 緩徐相速度の低下は容量依存性に見られ, 3mg/kg投与から観察された. 一方急速相速度にたいしては多量投与時 (9mg/kg) に観察された. 振幅の変化は投与量による影響は少なかった. NC-1200により前庭神経核への迷路からの入力が減少し, 緩徐相速度, 眼振数が低下したと考えられた. 今回の結果はNC1200が前庭神経核細胞に作用してその前庭性入力が遮断されて生じたものと考えられた.
  • 星野 功, 徳増 厚二, 藤野 明人, 米田 敏
    1991 年 37 巻 5Supplement6 号 p. 1219-1223
    発行日: 1991/11/01
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    動揺病や急性内耳障害でみられる前庭自律神経反射の代表的な現象の一つである嘔吐の中枢機序を検討する目的で成猫7匹を使い, 半規管神経と延髄網様体外側部を電気刺激し, 呼吸, 胃内圧変化を観察した. 延髄網様体外側部の電気刺激では, 麻酔, 刺激の条件により反応に差がみられたが, 刺激中胃内圧低下は全例, 胃運動抑制は7例中4例, 刺激中の高度呼吸抑制は4例に観察された. 半規管神経刺激の反応の結論は得られなかつた.
  • 足立 健彦, 佐藤 昭夫, Ahmad PAUZI, Mohamad YUSOF
    1991 年 37 巻 5Supplement6 号 p. 1224-1229
    発行日: 1991/11/01
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    前庭刺激が脳血流におよぼす影響を, ウレタン・クロラロース麻酔, 人工呼吸下のラットを用いて検討した. 脳血流はレーザードップラー血流計によつて連続的に測定した. 左外耳道に0℃の冷水を注入する前庭温度刺激を行うと, 全身血圧が低下し, 同時に脳血流は減少した. 前庭窓を陰極, 蝸牛窓を陽極とする前庭電気刺激によつても, 刺激強度依存性に血圧が低下し, 同時に脳血流も減少した. T1レベルで脊髄を切断した後は, 前庭電気刺激による血圧の低下はほとんど起こらなくなり, 脳血流減少反応も消失した. また前庭神経核の化学的刺激によつても同様に血圧が低下し, 脳血流が減少する反応が得られた. 以上の事実は前庭刺激によつて血圧依存性に脳血流が減少することを示唆している.
  • 心電図分析を中心に
    和田 佳郎, 藤田 信哉, 望月 則昭, 松永 喬
    1991 年 37 巻 5Supplement6 号 p. 1230-1234
    発行日: 1991/11/01
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    動揺病の発症と自律神経反応の関係を検討する目的で, 家兎およびヒトを対象として, 直線加速度刺激に対する心電図分析を中心とした前庭一自律神経反応を観察した. その結果, 家兎, ヒトとも左右方向や垂直方向に比べ前後方向の直線加速度刺激に対する自律神経系の反応性が高かつた. 家兎においては前後方向の直線加速度刺激中, 前庭一副交感神経反応が高まる傾向がみられ, ヒトにおいては動揺病症状が出現した被験者は, あらかじめ交感神経機能がやや低下しており, 刺激中には自律神経反応の変動が大きい傾向にあつた. これらの結果は自律神経失調状態, 特に相対的に副交感神経系が優位な状態が動揺病の誘因そして結果として重要であることを意味している.
  • 朴沢 二郎, 新川 秀一, 福士 栄二, 富永 健, 藤田 猛志
    1991 年 37 巻 5Supplement6 号 p. 1235-1238
    発行日: 1991/11/01
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    頸前庭性めまいの特徴は, 首を回した際に誘発される発作的めまいである. このような症状を呈する患者のほぼ92%は著者らの患側椎骨動脈起始部周囲交感神経剥離術によつて治癒する. 本症の成因として, 椎骨動脈の走行または形態異常, あるいは動脈硬化性変化等血管系の異常が関与すると思われるが, 上述の手術効果は頸部交感神経に対する頸椎または前斜角筋の機械的圧迫が内耳への血流障害を起こし, めまい発作を誘発する可能性を示唆している. 頸部交感神経は上頸神経節より発し, 同側の椎骨動脈に沿つて上行しながら, さらに脳底動脈から同側の内耳動脈沿いに内耳へ到達することが報告されている. そこでモルモットを用いて上頸神経節を電気刺激し, 眼振誘発の有無を観察した. 今回はまだ頸前庭性めまいのモデル動物を作り得るまでに至らなかつたが, 今後さらに作成法について追究するつもりである.
  • めまい発生機序への関与の可能性
    中村 彰治, 坂口 卓也, 青木 扶実
    1991 年 37 巻 5Supplement6 号 p. 1239-1243
    発行日: 1991/11/01
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    ストレスはめまい発生の重要な要因である. 本実験では, 中枢の交感神経系としてよく知られる青斑核ニューロンがストレスに反応して神経線維の発芽や変性を生じることを示した. ラットの大脳皮質における青斑核線維の密度を逆行性刺激法で定量化するため, P-index (projection index) を用いた. P-indexは, 1匹の動物で記録した青斑核ニューロンの総数に対して, その中で皮質刺激で逆行性放電を示すものをパーセントで表したものである, 皮質に対するP-indexは, 慢性の軽いストレスを受けた動物で有意に高く, 逆に強いストレスを受けた動物で低かつた. このことは, 青斑核ニューロンは軽いストレスで神経線維の発芽を, 強いストレスで変性を生じることを示唆する. 交感神経ニューロンはほとんどの性質で青斑核に類似しているので, めまいの発生機序に青斑核や交感神経ニューロンの軸索発芽や変性が関与している可能性がある.
  • 岡本 文里, 長谷川 誠, 小松崎 篤
    1991 年 37 巻 5Supplement6 号 p. 1244-1248
    発行日: 1991/11/01
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    全身の血行動態のホメオスタシスは, 自律神経系の働きにより保たれていると言つても過言ではない. また, 内耳の血流障害は内耳機能障害の病態生理に大きく関与しているとされている. そこでわれわれはドブタミン, アンギオテンシンII, 塩酸ジラゼプを静脈内投与して, 血圧や皮膚血流に変化を及ぼしたときの内耳血流, とくに今回は蝸牛血流の変化を観察した. いずれの場合も内耳血流は上昇したが, ドブタミン投与時には血圧も, 皮膚血流も上昇した. アンギオテンシンII投与では血圧は上昇したが皮膚血流は低下した. 塩酸ジラゼプ投与では, 血圧も皮膚血流も低下した. またネンブタール致死量投与時には血圧と皮膚血流の急速な低下に対して蝸牛血流は比較的保たれる傾向にあつた. これら蝸牛を中心とした内耳血流の動態は, 当然前庭系の血流動態とも密接な関連があり1), 今後この方面の検討も期待される.
  • 安村 佐都紀, 大橋 直樹, 中川 肇, 渡辺 行雄, 水越 鉄理
    1991 年 37 巻 5Supplement6 号 p. 1249-1253
    発行日: 1991/11/01
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    起立性調節不全症候群の脳血流のautoregulationについて, single photon emission computer tomography (SPECT) を用いて検討した.
    対象は, Schellong検査陽性症例13例で, 対照例として陰性症例4例を検討した. 心電図RR間隔測定を行い, 立位・臥位の2回, SPECTを撮影し, 脳血流の変化率を求めた.
    自律神経障害はSPECT計測による脳血流には影響を及ぼしていなかつた. 自律神経障害と起立性めまい発現とには相関があつた.
    自律神経失調による血圧低下に対しても脳血流のautoregulationは保たれていた. めまい発症については, SPECTでは指摘できない内耳のautoregulation障害の可能性も考えられた.
  • 臨床および基礎的検討
    島津 邦男, 田村 直俊, 丸木 雄一, 山元 敏正, 杉本 秀芳, 浅野 賀雄, 濱口 勝彦
    1991 年 37 巻 5Supplement6 号 p. 1254-1260
    発行日: 1991/11/01
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    めまい発現に対する自律神経系の関与を脳循環の立場から検討した. 一側性の脳幹・小脳血管障害患者33例と同年齢層の健常者48例を対象とし, 血行力学的自律神経機能検査を実施した. 定型的および非定型的めまいを有した群はAschner試験で病巣側, 非病巣側ともに低反応を示した. 一方, 両めまい群は頸動脈洞マッサージ試験, 寒冷昇圧試験では反応性低下を認めなかつたが, 病巣側と非病巣側間で反応性に差がみられた. つぎに, サルを用いて椎骨脳底動脈系と内頸動脈系の循環動態を検討した. 前者は後者に比較し, 血圧変動に対する血管反応性 (脳循環自動調節能) は劣つていたが, PaCO2変動に対する血管反応性 (脳循環化学調節能) はより良好であつた.
    以上の成績から, 脳幹・小脳循環障害に起因するめまいには, 自律神経機能低下と左右の不均衡, および椎骨脳底動脈系の特殊な血管反応性が深く関与すると考える.
  • 平野 哲雄, 井上 裕章, 上村 卓也
    1991 年 37 巻 5Supplement6 号 p. 1261-1265
    発行日: 1991/11/01
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    音刺激による瞳孔散大反応を測定した. 測定した15名の正常者全員に, 瞳孔散大反応が認められた. 4人は1相性, 11人は2相性の反応を示した. 第1波潜時は400~570 msec, 第1波peak潜時は700~1060msec, 第2波peak潜時は1200~1710msecであつた. 左右眼の反応は同じ型を示した.
    交感神経末梢遮断薬点眼によつて, 第2波は明らかに抑制されたが, 第1波はほとんど影響を受けなかつた. このことより, 第2波は主に末梢交感神経の興奮による成分, 第1波は主に副交感神経の抑制成分によるものと考えられた.
    以上のことより音響性瞳孔反応には, 2相性の交感神経反応の強い例と1相性の交感神経反応の弱い例があるといえる.
    今後音響性瞳孔反応をメニエール病患者の自律神経検査に応用することを計画している.
  • 圧受容器反射による検討
    川嵜 良明, 武田 憲昭, 肥塚 泉, 萩野 仁, 松永 亨
    1991 年 37 巻 5Supplement6 号 p. 1266-1273
    発行日: 1991/11/01
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    めまい患者における自律神経機能を検討するために, ノルエピネフリン, トリニトログリセリンを用いて薬剤による血圧の変化を惹起し, それに対する脈拍の変化をみることにより圧受容器反射の感度を測定した, めまい患者では, その障害部位によらず副交感神経機能低下状態にあり, メニエール病で発作から近い時期, 発病から近い時期, 発作の頻発する活動期に交感神経機能亢進の状態にあつた. また, めまい患者においてシェロングテストの陽性化には圧受容器反射の機能亢進が関与している可能性が考えられた.
    一方, R-R間隔のスペクトル分析でもメニエール病で正常人に比較して副交感神経機能が低下している傾向がみられた.
  • 起立時および深呼吸時の心拍数変動を用いて
    荻野 仁, 松永 亨
    1991 年 37 巻 5Supplement6 号 p. 1274-1281
    発行日: 1991/11/01
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    オートコーダHR200を用い, めまい患者207名309例 (メニエール病61名130例, 前庭型メニエール病21名28例, 眩量症51名64例他) を対象とし, 深呼吸時の心拍数の最大変動幅 (副交感神経機能に相当), 立位時の最大心拍増加数 (交感神経機能に相当) を測定した.
    メニエール病をはじめとするめまい疾患の多くで副交感神経機能の低下が認められた. 交感神経機能もメニエール病では低下しているものの, 活動期, 準発作期には交感神経機能は亢進し, 相対的に交感神経優位の状態を示した. これらの自律神経機能異常について, 副交感神経機能低下が本質的なものであり, 交感神経機能の変化は2次的なものと考えた.
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