耳鼻と臨床
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52 巻, 5 号
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  • -ステロイド剤使用の是非について-
    鳥谷 龍三, 江浦 正郎, 大礒 正剛, 五十川 修司, 田中 文顕, 犬童 直哉, 中野 幸治
    2006 年 52 巻 5 号 p. 271-277
    発行日: 2006/09/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    急性低音障害型感音難聴の初期治療におけるステロイド剤使用の是非を問うために、熊本県下7診療所において急性低音障害型感音難聴の初発例と診断された患者を、無作為選択によりATP製剤単独投与群 (A群) とATP製剤およびステロイド剤併用群 (B 群) とに分け、短期観察の治療効果を比較検討した。その結果、両群 (A群58例、B群 62例) 間において、患者背景因子 (初診時平均年齢、男女比、発症から受診までの平均日数、初診時低音3周波数の合計値) に有意差は認められなかった。治療開始1週間後の評価では、A群: 治癒59%、改善22%、不変・悪化19%。B群: 治癒45%、改善40%、不変・悪化15%。さらに4週間後の評価では、A群: 治癒76%、改善15%、不変・悪化 9%。B群: 治癒74%、改善21%、不変・悪化5%となり、いずれにおいても、両群間に統計学的有意差は認められなかった。従って、本疾患の初期治療にステロイド剤使用の必要性は低いと考えられる。
  • -高位の定義とその程度による手術様式についての考察-
    賀数 康弘, 君付 隆, 松本 希, 高岩 一貴, 石津 和幸, 小宗 静男, 呉屋 朝和
    2006 年 52 巻 5 号 p. 278-283
    発行日: 2006/09/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    高位頸静脈球 (HJB) は、耳鼻科医が日常診療でよく遭遇する側頭骨内静脈形態異常であるが、それにより難聴や耳鳴りなどの症状を伴うことが報告されている。しかし手術を含めた治療対象となることはほとんどない。今回、経迷路的聴神経腫瘍摘出術に際しHJBのため手術を断念せざるを得なかった症例を経験した。症例は後日、後頭下開頭による腫瘍摘出術を受けて腫瘍を摘出した。そこで、頸静脈球の高さと経迷路法による聴神経腫瘍摘出術適応との関係について検討した。その結果、頸静脈窩頂上と内耳道下縁との間に1mmの間隔があれば経迷路法による摘出術が可能であると考えられた。HJBを持つ聴神経腫瘍患者に対して頭蓋底外科手術を行う場合、術前にその存在と形態的特徴を十分に評価し、それに適した術式を選択すべきであると考えた。
  • 岸本 麻子, 南 豊彦, 井野 千代徳
    2006 年 52 巻 5 号 p. 284-288
    発行日: 2006/09/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    最近ではまれとなった結核性咽後膿瘍を経験したので報告した。症例は61歳、女性で主訴は咽頭違和感と鼻声で発熱などの全身症状は認めなかった。膿瘍切開は局所麻酔下で懸垂頭位をすることなく切開排膿した。吸引を2本とし創部外へ膿が流出することなく無事に排膿することができた。排膿に当たっては内頸動脈の内側偏位に注意した。膿瘍切開は全身麻酔下での操作が勧められているが、症例によっては細心の注意のもと局所麻酔下でも可能であると考えた。成人の結核性咽後膿瘍は続発性とされるが、本症例は頸椎、胸椎に異常は認められず原発性として厳重な経過観察中である。
  • 安達 一雄, 梅崎 俊郎, 松原 尚子, 小宗 静男
    2006 年 52 巻 5 号 p. 291-295
    発行日: 2006/09/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    喉頭肉芽腫症例における発声様式について検討した。方法は喉頭ストロボスコピーにおける開放期 (opening quotient: OQ) の割合を計測することで行った。喉頭肉芽腫症例では特に音声酷使症例において、OQが短縮する傾向を認めた。また、治療によりOQが延長する傾向を認めた。これは、発声様式が肉芽腫の発生と何らかのかかわりがあるとともに、従来いわれているように、音声訓練が重要であることが示唆された。
  • 佐藤 公則, 中島 格
    2006 年 52 巻 5 号 p. 296-301
    発行日: 2006/09/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    器質的病変を来した咽喉頭逆流症9例に対するPPI療法と手術時期を検討した。咽喉頭への酸逆流が器質的病変の直接原因と考えられる喉頭肉芽腫、声帯上皮過形成症に対しては、まず2-3カ月間PPIによる保存的治療を行い器質的病変の縮小傾向を経過観察し、器質的病変が縮小傾向を示せば、さらに2-3カ月間PPIによる保存的治療を続行すべきであると考えられた。上記の保存的治療に抵抗する例が手術の適応になるが、肉芽腫に関しては有茎性になってから手術を行うと再発が少ないと考えられた。器質的病変が治癒した後はどの位PPIの内服を続け、器質的病変の再発を防ぐのかという問題があった。
  • 児嶋 剛, 庄司 和彦, 池上 聰, 岸本 曜, 高橋 淳人, 伊木 健浩
    2006 年 52 巻 5 号 p. 302-305
    発行日: 2006/09/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    Wallenberg症候群に対して音声外科手術と輪状咽頭筋切断を行い嗄声、嚥下障害が改善した症例を報告する。これらの障害は自然寛解する可能性もあるが、重度である場合や長期にわたる場合には外科的治療の適応となる。声帯麻痺と嚥下障害は密接に関係しており、嗄声をよくするだけでなく嚥下障害の改善のためにも輪状咽頭筋切断術と同一視野でできる音声外科手術は有効である。声帯が外側位で固定している場合には披裂軟骨内転術の適応となるが、さらに声帯が萎縮している際には甲状軟骨形成1型を組み合わせた方がよい。甲状軟骨形成1型を行うと甲状軟骨に開窓するため内転術と干渉しやすいので、開窓せずにゴアテックスを外側より挿入する方法を行った。
  • 熊井 良彦, 湯本 英二
    2006 年 52 巻 5 号 p. 306-308
    発行日: 2006/09/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    リウマチ性関節炎では、慢性的な炎症がさまざまな関節腔の滑膜に波及し、関節の可動性を障害する。喉頭では、輪状披裂関節に炎症が波及することが少なくない。片側の場合、咽喉頭異常感や嗄声の原因となり、両側に及んだ場合、両側声帯固定による呼吸困難を来し、気管切開が必要になる場合もまれにある。今回われわれは、リウマチ性関節炎が原因と考えられる片側の声帯可動域制限症例に対し、披裂軟骨内転術を行い、著明な音声改善の得られた例を経験した。耳鼻咽喉科医としては、嗄声、失声の原因としてリウマチ性関節炎の輪状披裂関節への波及も念頭におく必要があると同時に、片側の場合音声改善手術も考慮におく必要があると考えられた。
  • 梅野 博仁, 千年 俊一, 津田 祥夫, 中島 格
    2006 年 52 巻 5 号 p. 309-313
    発行日: 2006/09/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    挿管による声門癒着のために失声状態となり、喉頭截開術による声門形成術を施行し、発声が可能となった症例を報告する。症例は4歳男児、未熟児での出生直後に呼吸困難を来し、挿管後に人工呼吸器管理を2カ月間受けた。その後は抜管困難となり、出生後4カ月で気管開窓術を受けた。気管開窓後は失声状態が続いたため、音声機能獲得を目的に4歳時に当科を紹介された。初診時に両側声帯の可動性はなく、声帯の癒着を疑い、直達喉頭鏡下に精査を行った。その結果、声帯膜様部から声帯軟骨部にかけて強固な瘢痕癒着を認め、声門間隙は声門後部にわずかに認めたのみであった。後日、喉頭截開による声門形成術を施行した。手術は前交連部のweb形成を防止する工夫を行った。術後4カ月から有声音らしき音の発声が可能となり、10カ月経過した頃から急に発声が可能となった。
  • 2006 年 52 巻 5 号 p. 314-319
    発行日: 2006/09/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
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