耳鼻と臨床
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42 巻, 2 号
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  • 服部 康夫, 上野 則之, 町野 満, 大橋 晋吾, 鈴木 重剛, 柏戸 泉, 山本 薫, 松生 愛彦, 渡辺 芳江, 鈴木 栄一, 中村 ...
    1996 年 42 巻 2 号 p. 97-104
    発行日: 1996/03/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    近年, 外来的鼓膜形成術が盛んとなり, 形成材料に自家組織として筋膜, 真皮が, 同種組織として筋膜, 硬膜などが多用され, 人工膜材料も試みられている. いわゆる単純性慢性中耳炎 (23症例, 24耳) の中心性鼓膜穿孔に薄い分層植皮による鼓膜形成術を外来的に行い, 24耳中21耳に穿孔の閉鎖を見た. 17耳は1回の植皮で閉鎖した. 5耳は植皮片のずれにより再穿孔, この内4耳に2回目の植皮を行い, 4耳ともに閉鎖した. 2耳は急性鼻咽頭炎により慢性中耳炎が再燃し, 再穿孔した.
    今回の経験から, 外傷や鼓膜切開あるいはベンチレーションチューブによる鼓膜穿孔にも本法を適用できると考えた.
  • 酒井 昇, 栗原 秀雄, 相澤 寛志, 西澤 典子, 目須田 康, 犬山 征夫
    1996 年 42 巻 2 号 p. 105-108
    発行日: 1996/03/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    下咽頭血管腫は希な病変でこれまで31例の報告がみられるのみである. 最近われわれは下咽頭に限局した血管腫の2例を経験し, その治療として喉頭直達鏡下にKTPレーザーを応用した. KTPレーザーの波長は極めてヘモグロビンによく吸収されるため血管腫の治療に最適であるとされているが, 今回のわれわれの経験からもそれを再確認することができた. 今後耳鼻咽喉科領域で血管腫などの血管性病変を中心として, KTPレーザーを利用した治療法が頻繁になるものと思われる.
  • 梅野 博仁, 森川 都, 吉田 義一
    1996 年 42 巻 2 号 p. 109-112
    発行日: 1996/03/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    鼻背部に発生した本邦2例目の稀な神経鞘腫を経験し, 鼻腔内からのアプローチで摘出した. 神経鞘腫はSchwann氏鞘を持っ脳神経, 脊髄神経に発生する良性腫瘍であり鼻背部に発生した神経鞘腫の報告は稀で, 本邦では2例を認めるのみであつた. 本症例において原発神経の同定はできなかつたが, 篩骨神経の内鼻枝, 眼窩下神経の外鼻枝か内鼻枝が原発神経であつた可能性が高いと考えられた. 組織像は, Antoni-A型とB型との2つの形態から成つていた.
  • 栗原 秀雄, 酒井 昇, 福田 諭, 佐藤 公輝, 金澤 勲, 犬山 征夫
    1996 年 42 巻 2 号 p. 113-116
    発行日: 1996/03/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    鼻中隔にはさまざまな腫瘍が生じる. 当科では最近15年間に23例の鼻中隔腫瘍を経験した. 病理診断は血管腫12例, 尋常性疣贅2例, 乳頭腫1例, 多形腺腫3例, 悪性黒色腫3例, 腺癌1例, 悪性リンパ腫1例であつた.
    治療は良性腫瘍では外科的切除を行い血管腫の2例に再発を認め再切除した.
    悪性腫瘍は手術, 放射線照射, 化学療法を適宜組み合わせた. 悪性黒色腫のうち1例は主に手術的治療で15年間再発を繰り返し現在担癌生存中である. 1例は手術, 放射線照射を行うも全身転移にて3年弱で死亡した. 1例は手術, 放射線照射を行い2年間腫瘍を制御したがその後追跡不能となつた. 腺癌の1例は手術後再発を認め再切除, 術後照射を行い現在腫瘍は制御されている. 悪性リンパ腫の1例は化学療法, 放射線照射にてCRとなり4年間寛解状態である.
    以上のように組織型に応じた治療法の選択が重要であり, 病理組織学的診断は必須と思われる.
  • 名和 照晃, 稲村 達哉, 岸本 麻子, 松本 あゆみ, 井野 素子, 井野 千代徳, 山下 敏夫
    1996 年 42 巻 2 号 p. 117-120
    発行日: 1996/03/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    鼻前庭に20年間滞留したグラインダーの破片の異物症例を経験した. 患者は当初鼻痴として治療を受けていたが, 自潰後黒く硬い物を指摘され当科を受診した. 局麻下に摘出したところ, 20年前に事故が原因で異物となつたグラインダーの破片と判明した. 成人鼻内異物についてその種類, 存在部位, 滞留期間などについて文献的考察を加えた.
  • 伊藤 恵子, 中川 千尋, 佃 守, 持松 いづみ, 小勝 敏幸, 河合 敏, 松井 道夫
    1996 年 42 巻 2 号 p. 121-124
    発行日: 1996/03/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    今回, われわれは, 顔面神経麻痺をきたしたWegener肉芽腫症の1症例を報告した. 症例は58歳男性で, 主訴は左耳痛, 左難聴, 左顔面神経麻痺であつた. 外耳道より突出した肉芽組織の充満を認め, この病理結果は, 肉芽腫性の血管炎であつた. 初診時, 真珠腫性中耳炎, 外耳道癌を疑い生検を繰り返し施行したが, 確定診断が得られず, 病態が急速にすすみ, 死亡した. Wegener肉芽腫症は, 頭頸部病変で発症する事が多く, 早期診断と早期治療が重要である. そこで, 抗好中球細胞質抗体anti-neutrophil cytoplasmic antibody (ANCA)の有用性について言及した.
  • 山本 英一, 兵 行孝, 東川 康彦, 堀 香苗, 折田 洋造
    1996 年 42 巻 2 号 p. 125-128
    発行日: 1996/03/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    86歳男性で耳後部の皮膚に発症し, 耳下腺浸潤およびリンパ節への転移を伴つた症例を経験した. 顔面神経温存の上, 切除と左頸部リンパ節郭清を行い, 局所の横転皮弁にて再建した. 術後約1年10カ月を経過し, 末梢性顔面神経麻痺と頸部再発を来したため, 再手術と放射線照射にて小康状態を得ている.
    汗腺癌の中でアポクリン系は報告が少なく, 疫学的事項は明らかでない. 症状としては初め緩徐に増大するものが多い. 組織学的には腺癌構造を示すが, 細胞質はエオジンに好染する. 予後についてもさまざまな報告があるが, 再発しやすく, 転移も少なくない. とくに, 皮膚のアポクリン癌は潜在的には極めて悪性で, 急速な発育と転移をおこすと言われている. 外科的切除が最も確実な治療で, 必要ならばリンパ節郭清も行う. 放射線治療や抗癌剤投与の報告は少ないが, 多くの治療の組合せが予後を向上させると考える.
  • 楠 威志, 村田 清高, 細井 裕司
    1996 年 42 巻 2 号 p. 129-135
    発行日: 1996/03/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    1975年から1990年までの16年間, 当科で手術対象となつた唾液腺腫瘍63例の臨床所見について検討を行つた. 悪性腫瘍は腫瘍が硬い, 疼痛がある, 可動性がないものが有意に良性腫瘍より多く認められた. 臨床所見の組合せにおいて, 「硬く, 疼痛あり, 可動性のない」という悪性所見のうち少なくとも2つ以上あれば悪性腫瘍を強く疑える. 逆に「硬くない, 疼痛なし, 可動性あり」という良性所見のうち少なくとも「疼痛なし, 可動性あり」という組合せがあれば良性腫瘍であることが示唆された.
  • 酒井 昇, 中丸 裕爾, 栗原 秀雄, 高木 摂夫, 依田 明治, 金澤 勲, 大渡 仁美, 松島 純一, 犬山 征夫
    1996 年 42 巻 2 号 p. 136-139
    発行日: 1996/03/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    22歳男性の側頸嚢胞症例にエタノール硬化療法を施行した. 18ゲージのべニューラ針を刺入し泥状の内溶液を生食で洗浄除去後, 99.5%の純エタノール20m1を注入した. 16分後にエタノールを吸引除去し, 生食で十分洗浄してからフィブリン糊6m1を注入した. 術後1年2カ月後のCTで嚢胞は完全に消失しているのが確認できた. エタノール硬化療法は耳鼻咽喉科での報告としては初めてのものであるが, 今後頸部の種々の嚢胞に対する応用が頻繁になされるものと思われる.
  • 多田 直樹, 熊澤 博文, 牛呂 公一, 南 豊彦, 佐藤 一雄, 名和 輝晃, 金子 明弘, 太田 豊明, 熊澤 忠躬, 山下 敏夫
    1996 年 42 巻 2 号 p. 140-144
    発行日: 1996/03/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    鼻副鼻腔粘膜の抗生剤局所吸収動態を検討するため, 慢性副鼻腔炎患者から手術時に採取した鼻粘膜の組織培養をコラーゲンゲル法を用いて試み, さらに抗生剤を投与した際の組織吸収量をバイオアッセイ法を用いて各種条件で測定した. その結果, 経時的変化についての検討では培養2時間後までは抗生剤の組織移行量の増加を示すが2時間以降はほぼ一定となつた. 濃度依存の検討では投与した抗生剤の濃度上昇に正比例して抗生剤の組織移行量が増加した. また鼻粘膜と副鼻腔粘膜との比較では副鼻腔粘膜の抗生剤移行量が鼻粘膜と比較して有意に高値を示した. 今回の検討によりコラーゲンゲル法による鼻副鼻腔粘膜の組織培養を応用することで, 各種条件下での鼻副鼻腔粘膜局所の吸収動態の解明の可能性が示唆された.
  • 大阪における鼻アレルギー患者との比較
    荻野 敏, 榎本 雅夫, 丹生 真理子, 原田 保, 板谷 英貴, 和田 光雄
    1996 年 42 巻 2 号 p. 145-151
    発行日: 1996/03/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    MAST法を用いて, 大阪での20歳代の鼻アレルギー患者(患者群)99例(男性47例, 女性52例)と健康成人(対照群)100例(男性50例, 女性50例)のアレルゲン陽性率などを比較検討した. 患者群のアレルゲン陽性率は男性ではダニが51%と最も高く, 次いでスギが47%, オオアワガエリ, ハルガヤ, HDと続いた. 女性ではスギが46%, ダニ40%, オオアワガエリ, ハルガヤ, HDと続いた. HD, ダニでは男性患者が女性に比べ高い陽性率を示したが, スギ, オオアワガエリ, ハルガヤの花粉では男女差は見られなかつた. 対照群と比較すると, 男女ともHD, ダニ, スギ, オオアワガエリ, ハルガヤで患者群で高率であり, 特にスギ, オオアワガエリ, ハルガヤの花粉では有意に患者群での陽性率が高値であつた. 患者症例での検討においても男性の方がアレルゲンの感作を受け易く, 対照群と比べ陽性率も高く, 重複感作率も高いことが確認された.
  • 大西 正樹, 奥田 稔, 大西 明弘
    1996 年 42 巻 2 号 p. 152-160
    発行日: 1996/03/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    健康成人男子に対しE 0659点鼻ゲル6μg/噴霧, 30μg/噴霧を左右両鼻腔に単回および30μg/噴霧を1日3回7日間左右両鼻腔に反復投与を行つた.
    単回投与の30μg/噴霧群に白血球数の増加が5例中1例, 尿沈渣中の白血球の増加が5例中1例, 反復投与ではGOT, GPTの上昇が5例中1例にみられたが, 薬剤との関連性はないと判断された. 自覚症状では苦味が薬剤起因と考えられたが-過性であり, 薬剤投与を妨げるものではなかつた. また, 鼻粘膜および鼻繊毛運動に対する影響は認められなかつた.
    以上より, E 0659点鼻ゲルは単回および1日3回7日間反復投与においてその忍容性が確認された.
  • 至適投与量の検討
    奥田 稔, 形浦 昭克, 朝倉 光司, 小崎 秀夫, 戸川 清, 岡本 美孝, 白鳥 浩二, 寺田 修久, 馬場 廣太郎, 島田 均, 井上 ...
    1996 年 42 巻 2 号 p. 161-183
    発行日: 1996/03/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    通年性アレルギー性鼻炎を対象に, EO659点鼻ゲルの至適用量を検討するために1日2回噴霧による3用量 (L群: 6μg/噴霧, M群: 15μg/噴霧, H群: 30μg/噴霧) 群間の二重盲検比較試験を実施した.
    総症例209例のうち有効性解析対象例は159例であり,「中等度改善」以上の最終全般改善度はL群44%, M群53%, H群35%であつた. 本試験においてみられた副作用はM群の「鼻出血」の1例のみであり, 概括安全度の「安全である」はL群98%, M群99%, H群96%であつた. 有効性と安全性を加味した有用度においては「有用」以上でL群46%, M群55%, H群33%であり, L群とM群はH群に対して有意に優れていた (U検定).
    以上より, E0659点鼻ゲルの至適用量は15μg/噴霧であることが示唆された.
  • 用法検討試験
    奥田 稔, 高坂 知節, 稲村 直樹, 佐藤 三吉, 橋本 省, 粟田口 敏一, 大山 健二, 鈴木 雅明, 櫻田 隆司, 遠藤 里見, 石 ...
    1996 年 42 巻 2 号 p. 184-202
    発行日: 1996/03/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    通年性アレルギー性鼻炎に対するE0659点鼻ゲルの用法を検討するために, 1日2回投与と1日3回投与の比較を単盲検群間比較試験を実施した.
    総症例136例のうち有効性解析対象例は103例であつた.「中等度改善」以上の最終全般改善度は, 2回群52%, 3回群43%であり, 2回群と3回群の同等性が検証された. 日記の集計では「鼻汁」「鼻閉」「日常生活支障度」の項目で有意な差はなかつたものの, 4週目において2回群より3回群の方が症状の改善を示しており, 2回群と3回群の効果は本質的に差はないものと考えられた.
    以上より, E0659点鼻ゲルの用法は1日2回の噴霧で十分であり, アレルギー性鼻炎の治療上有用な薬剤であると結論された.
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