耳鼻と臨床
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66 巻, 3 号
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症例報告
  • 木下 慎吾, 平野 良, 大崎 政海
    原稿種別: 症例報告
    2020 年 66 巻 3 号 p. 55-61
    発行日: 2020/05/20
    公開日: 2021/05/20
    ジャーナル フリー

    広範囲な真珠腫性中耳炎に対し、局所麻酔下の手術で病変の摘出と外側半規管瘻孔の閉鎖を行った。症例は 76 歳、男性。めまい、難聴を主訴とし真珠腫性中耳炎による外側半規管瘻孔と診断され、同時に病変が広範囲なため放置すると髄膜炎や脳膿瘍といった耳性頭蓋内合併症を生じる可能性があった。手術が適切な治療方法であると考えられたが、循環器疾患、呼吸器疾患の合併症のため全身麻酔はリスクを伴うため、局所麻酔で手術を行った。耳科手術は全身麻酔で行われることが多いが、局所麻酔での耳科手術の技術の習得を心がけることは、治療の選択肢が広がり有用であることを報告する。

  • 渡邊 毅
    原稿種別: 症例報告
    2020 年 66 巻 3 号 p. 62-67
    発行日: 2020/05/20
    公開日: 2021/05/20
    ジャーナル フリー

    眼窩骨腫は一般的に発育が緩慢で自覚症状に乏しいが、隣接する眼窩を圧迫すると複視や眼球突出などの眼症状が起こり得る。今回、眼窩内に進展し眼球運動障害を来した左篩骨洞原発の眼窩骨腫を鼻内内視鏡手術により摘出し得たので報告する。症例は 80 歳、男性。受診 1 年前から複視を認めた。副鼻腔 CT で左前篩骨洞から眼窩にかけて 2 cm 程度の均一な高吸収域を伴う表面平滑な腫瘤を認め、MRI で内直筋との連続性がないことが確認できた。内視鏡的に鼻内からナビゲーションシステムを併用し、腫瘤を一塊にして摘出した。内直筋は温存でき、眼窩紙様板骨欠損部は下鼻甲介骨を用いて鼻内より再建可能であった。術後は組織学的に骨腫の診断で、複視は改善した。眼窩骨腫に対する手術では顔面切開アプローチなどの侵襲の大きな方法も挙げられるが、CT・MRI での眼窩内の腫瘤と内直筋の関係を確認し、ナビゲーションシステムで切除範囲を最小限にすることで、侵襲が小さい内視鏡下アプローチの手術適応の拡大が図れると考えている。

  • 豊田 貴一, 佐藤 慎太郎, 江崎 伸一, 鈴木 元彦, 岩﨑 真一, 村上 信五
    原稿種別: 症例報告
    2020 年 66 巻 3 号 p. 68-73
    発行日: 2020/05/20
    公開日: 2021/05/20
    ジャーナル フリー

    誤嚥防止手術は重度の嚥下障害に対する外科的治療として神経変性疾患や脳血管疾患の患者に広く行われてきたが、根治を望めない担癌患者における報告は少ない。今回われわれは食道癌による通過障害に対して誤嚥防止術として鹿野式声門閉鎖術を行った。症例は 62 歳、男性である。根治不能な食道癌 Stage Ⅳ 症例による通過障害に対して食道バイパス術を施行したが、術後に両側反回神経麻痺による誤嚥性肺炎が出現して経口摂取が再開できない状態であった。本人の強い希望により誤嚥防止手術として声門閉鎖術を施行し、食道癌担癌状態であるため食形態には制限はあるものの経口摂取が可能となった。術後半年にて原病死されたため経口摂取可能期間は短期間ではあったが、末期患者における quality of life(QOL)の改善に誤嚥防止術が寄与した症例であると考えられた。

  • 松吉 秀武, 後藤 英功, 山田 卓生
    原稿種別: 症例報告
    2020 年 66 巻 3 号 p. 74-78
    発行日: 2020/05/20
    公開日: 2021/05/20
    ジャーナル フリー

    CPAP を使用することにより無呼吸、低呼吸を制御できていたにもかかわらず、脈圧と低呼吸指数の上昇を来し、大動脈弁閉鎖不全と診断された比較的まれな睡眠呼吸障害の 1 例を経験したので報告する。症例は 63 歳、男性。昼間の眠気を主訴として受診。簡易無呼吸検査にて無呼吸低呼吸指数が 41.1 であり CPAP を開始した。約4年後より徐々に脈圧と低呼吸指数の上昇を来した。原因は大動脈弁閉鎖不全と、それに伴う左心不全と考えられた。さらに睡眠中に臥床状態となるため、下肢から心臓に戻る静脈還流が増加し、肺がうっ血状態となり、肺における迷走神経を刺激し、過換気反射を誘発した。このため PCO2 が減少し、呼吸を刺激するレベル以下になり呼吸中枢が抑制され、低呼吸が増悪したと考えられた。CPAP 使用中の症例に対して、無呼吸の経過を診るのみではなく、脈圧、低呼吸に変動がないかを慎重に診ていく必要があると考えられた。

視点
  • 森満 保
    原稿種別: 視点
    2020 年 66 巻 3 号 p. 79-98
    発行日: 2020/05/20
    公開日: 2021/05/20
    ジャーナル フリー

    外有毛細胞共振説は、Dallos の総説 「Cochlear amplification, outer hair cells and prestin」 での悲観的結論を読んだ直後、外有毛細胞体のプレスチン性短縮で、感覚毛が蓋膜下面を引き下げると、雑草を引き抜く時の根土のような畝ができ、有毛細胞感覚毛と接触するイメージが沸いた。このバックグラウンドは、芋畑での雑草の根土の畝、聴覚電気生理研究班での EM、CM の記録、そして聴覚関連著書や論文である。要するに、外有毛細胞体短縮で生じた蓋膜の共振畝で、ヘンゼン条が斜め外下方に押し下げられ、内有毛細胞感覚毛と興奮位で接触するという新説である。それで、+ 80 mV に帯電したヘンゼン条と、− 60 mV に帯電した内有毛細胞感覚毛との接触で蝸牛マイクロホン電位の発生、人の平均周波数分析能 3 mHz の機序説明等々、哺乳類蝸牛の優れた聴覚機構の説明が簡単に可能となった。

臨床ノート
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