耳鼻と臨床
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60 巻, 6 号
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原著
  • 山野 貴史, 菅村 真由美, 樋口 仁美, 中川 尚志, 森園 哲夫
    2014 年 60 巻 6 号 p. 213-219
    発行日: 2014/11/20
    公開日: 2015/11/01
    ジャーナル フリー
    ブロー液は 13% 酢酸アルミニウム溶液であり、外耳道炎や中耳炎などに対し使用されている。以前、われわれは内耳毒性について蝸牛複合電位を用いた動物実験で報告した。 蝸牛の組織学的な変化については、Suzuki らの蝸牛窓膜上に 1 時間または 2 時間投与し、 7 日後に側頭骨を採取した報告があるのみである。今回は、モルモットの中耳腔内にブロー液を投与し、30 分、24 時間、4 週間後に側頭骨を採取した。標本はヘマトキシリン・エオジン染色し、20 μm の厚さで連続切片を作製し、画像ファイリングソフトウェアで検討した。その結果、ラセン神経節細胞数の減少、タンパク質の析出は基底回転優位であり、蝸牛窓から内耳に浸透したブロー液は直接内耳に影響を及ぼし、時間とともに進行することが確認された。蝸牛窓膜は 4 週間後で菲薄化しており、酸の長期曝露により蝸牛窓の膜構造が侵蝕されたものと思われた。骨新生の原因は炎症により中耳粘膜の細胞が刺激されたためと推測された。
  • 川畑 隆之, 長井 慎成, 外山 勝浩, 東野 哲也
    2014 年 60 巻 6 号 p. 220-226
    発行日: 2014/11/20
    公開日: 2015/11/01
    ジャーナル フリー
    症例は 68 歳、男性。1987 年嗄声が出現し、1990年2月当院初診。声門下輪状軟骨右側に腫瘍を認め、1992 年 12 月喉頭載開による喉頭腫瘍摘出術、気管切開術を施行。術後病理では軟骨腫の診断であった。その後同側甲状軟骨に再発を認め、2006 年 11 月喉頭腫瘍摘出術を施行し、術後病理では喉頭軟骨肉腫 Grade Ⅰとの診断であった。再度再発を輪状軟骨左側に認め、2013 年 7 月喉頭腫瘍摘出術を施行し、現在無担癌生存中である。度重なる再発に対し喉頭全摘せず、局所切除による喉頭温存に努め、quality of life を維持することが可能であった。低悪性度喉頭軟骨肉腫に関しては音声機能温存を念頭に手術を行うことが大事と思われた。
  • 山野 貴史, 宮崎 健, 杉山 喜一, 坂田 俊文, 中川 尚志
    2014 年 60 巻 6 号 p. 227-230
    発行日: 2014/11/20
    公開日: 2015/11/01
    ジャーナル フリー
    咳嗽失神を疑った 1 例を経験した。喉頭ファイバーの所見より嚥下機能の低下を疑い、嚥下造影検査を施行したところ、イソビストで少量の挙上期型の誤嚥を認めるも、粘性のついたバリウムでは誤嚥は認めなかった。このことより水分摂取時に喉頭侵入・誤嚥が起こり、それによる咳嗽が失神の原因になっているものと考え、咳嗽の予防のため嚥下指導を行ったところ失神回数は減少した。
  • 冨山 道夫
    2014 年 60 巻 6 号 p. 231-237
    発行日: 2014/11/20
    公開日: 2015/11/01
    ジャーナル フリー
    伝染性単核球症に対するぺニシリン系抗菌薬(PCs)投与は、高率に皮疹を生じるため禁忌である。一方細菌性急性咽頭・扁桃炎の主な起炎菌は、A 群 β 溶血性連鎖球菌(A 群溶連菌)で、PCs が第一選択薬とされている。今回 A 群溶連菌感染症を合併した伝染性単核球症の 1 例を経験した。症例は 20 歳、女性で咽頭痛、発熱を主訴に受診した。上咽頭、口蓋扁桃に膿を認め A 群溶連菌迅速診断陽性であった。自動血球測定装置でリンパ球優位の白血球上昇がみられたため、肝機能検査、Epstein-Barr(EB)ウイルス抗体検査を行うとともに ceftriaxone を投与した。細菌検査では上咽頭、口蓋扁桃より A 群溶連菌が 3 +検出された。血液検査では肝機能低下、異型リンパ球、EB ウイルス感染を認め伝染性単核球症と診断された。A 群溶連菌迅速診断陽性の急性咽頭・扁桃炎に対する抗菌薬選択にあたり、伝染性単核球症の合併を念頭に置き白血球分画を測定する必要があると思われた。
  • 内薗 明裕, 森山 一郎, 山本 誠
    2014 年 60 巻 6 号 p. 238-243
    発行日: 2014/11/20
    公開日: 2015/11/01
    ジャーナル フリー
    デキサメタゾンシペシル酸エステルは、デキサメタゾンに脂溶性官能基を導入することにより、ステロイド骨格が有する抗炎症作用を保持しつつ脂溶性を高めた薬剤であり、 2009 年に本剤を有効成分とした本邦唯一の 1 日 1 回投与が可能な鼻噴霧用粉末ステロイド製剤(エリザス®カプセル外用 400 μg)が発売された。発売時のカプセル製剤では、患者が投与ごとに専用噴霧器へのカプセルのセット、穴開け、カプセルの取り出しといったやや煩雑な操作を行う必要があり、カプセルと専用噴霧器をともに管理する手間も考えられた。これらの点を改善すべく 2012 年には定量噴霧式製剤が発売された。そこで今回は新たな定量噴霧式製剤とそれ以前のカプセル製剤との操作性を中心とした使用印象に関する比較アンケート調査を行った。また、処方する医師の立場においても噴霧器の操作性ならびに患者への噴霧指導のしやすさという点について比較アンケート調査を実施した。 噴霧器の使用感については、患者、医師ともに 73.7%が操作が簡単になったと回答した。 さらに、患者においては、効果が強く、刺激感が少ないという印象が多数を占め、63.1%の患者が継続使用を希望した。噴霧指導については、85.7%の医師がしやすいと回答した。以上の結果から、定量噴霧式製剤はカプセル製剤と同様の特性(効果の強さ、刺激感の少なさ)を保ちつつ、噴霧器としての操作性が向上しており、良好な服薬コンプライアンスの達成・維持に有用な剤型であると考えられた。
臨床ノート
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