耳鼻と臨床
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43 巻, 1Supplement1 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
  • 榎本 浩幸, 佃 守, 小勝 敏幸, 古川 滋
    1997 年43 巻1Supplement1 号 p. 101-107
    発行日: 1997/03/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    頭頸部扁平上皮癌進行例に対するneo-adjuvant chemotherapyにより, 予後の向上を期待するにはCR率を上げることが重要である. 当科ではCDDPと5-FU併用のCF 療法を中心にin vitroでの検討結果を臨床に応用してCR率の向上を図ってきた.
    まず通常のCF療法はCDDP投与後に5-FUが投与されていたが, 制癌剤感受性試験での検討から5-FUを先行して5日間連続静注し, そのday4にCDDPを投与する modified CF療法を考案した. その結果, 奏効率は69%, CR率は20%であつた. 次に modified CF療法にMTXをday 1に, LVをday 1からday 5まで加える4剤併用化学療法を臨床に用いたところCR率は30%に向上した. さらにCF療法とIFN-αの併用をin vitroで検討したところ, 併用による抗腫瘍性の増強がみられたことから臨床応用の可能性が示唆された.
  • 真崎 規江
    1997 年43 巻1Supplement1 号 p. 108-115
    発行日: 1997/03/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    口腔癌552例の放射線治療に週2回BLM 15mg (またはPEP 10mg) を併用した. 第一次治療として, BLM総量75-90mg (またはPEP 50-60mg) と, 24-30Gyの照射を行い, CR率は44%である. CR例には照射のみを54-60Gyまで追加し, その2年非再発率は65%である. 再発例には救済手術が可能で, 最終的な局所制御率は83%である. 第一次治療でのPR例には追加照射よりも手術が適応である. 一方, 咽頭・喉頭癌79例には, 第一次治療としてCDDP 6mg/body/日を併用し, 総量150mg, 45-50Gy/25回を照射した. この時点で明らかな腫瘍残存4例以外は60-74Gyまで根治照射した. その2年非再発率は68%で, 再発例には救済手術を行い, 最終的な局所制御率は94%である. また, 2年生存例での形態と機能温存率は71%である. 薬用併用による副作用は軽度である.
  • 藤井 正人, 大野 芳裕, 徳丸 裕, 今西 順久, 神崎 仁, 犬山 征夫
    1997 年43 巻1Supplement1 号 p. 116-123
    発行日: 1997/03/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    頭頸部扁平上皮癌に対する代表的な併用化学療法であるCDDP+PEP (CP) とCDDP+5-FU (CF) の効果と副作用につき比較検討した. CP症例は, 1981年から1984年までに当院で治療した93例で評価可能症例は85例, CFは1991年から1994年までの51 例に施行しそのうち50例が評価可能であった. CPはCR22例, PR 36例で奏功率68%, CFはCR 11例, PR 24例で奏功率70%であつた. CR率では各々26%, 22%であり全体の奏功率やCR率では大きな差は認められなかつた. 部位別奏功率では, 鼻副鼻腔癌に対してはCP 73%, CF 57%とCPの奏功率が高い傾向が見られ, 下咽頭に対しては, CFは症例は少ないが71%と良好な結果であった. 副作用では, CFで悪心嘔吐, 血液毒性が強いと考えられた. 頭頸部癌全体ではCPとCFの有用性は同等と考えられるが, 化学療法の目的とする生存期間の延長や遠隔転移の防止に関してCPとCFの有用性を明らかにするためには, 部位別の比較試験を施行する必要があると考えられる.
  • 中島 格, 後藤 弘毅, 竹下 宗徳
    1997 年43 巻1Supplement1 号 p. 124-131
    発行日: 1997/03/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    最近われわれが当科で経験した超進行癌ともいうべき若年者舌癌症例を提示し, その診断・治療の推移についての検討を行つた. 患者は40歳と36歳の男性で, ともに扁平上皮癌のstage IV症例であつた. 術前治療として放射線化学療法を行ったが, この間も原発巣・転移巣の進行が続き, 術前の検討でも根治手術の適応の判断に苦慮した. 術中所見では両患者ともに転移リンパ節の進行が著しく, 節外浸潤や頸動脈浸潤を来たしており, 手術の根治性はないと判断した. 術中の判断として再建を伴う姑息手術と, 頸動脈結紮を伴う頸部郭清術のみの姑息手術を行ったが, 両患者ともに術後早期に死亡した. 本症例のような超進行癌の治療について反省点と考察を述べた.
  • 西尾 正道
    1997 年43 巻1Supplement1 号 p. 132-141
    発行日: 1997/03/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    進行口腔癌の治療は手術を中心として行われており, 放射線治療や化学療法は補助的治療として寄与できる可能性を模索している段階である.
    放射線治療ではIr-192 micro-sourceの使用により術中の残存病巣に対する周術期小線源療法が可能となり, 化学療法ではCDDPを中心とした有効な薬剤の合理的な使用方法が検討されている. 本稿では話題提供として, T4舌癌の治療成績と, 小線源治療を中心とした進行頭頸部癌に対する幾つかの工夫と, 進行頭頸癌の治療について私見を述べた.
  • 吉野 邦俊, 佐藤 武男, 藤井 隆, 稲上 憲一, 橋本 典子, 長原 昌萬, 西谷 茂樹, 馬谷 克則, 上村 裕和
    1997 年43 巻1Supplement1 号 p. 142-151
    発行日: 1997/03/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    根治を目指した治療を施行したにもかかわらず, その効果がほとんどみられないか, または治療を完遂できないままに短期間で死亡された頭頸部進行癌3例について呈示した.
    症例1は下咽頭癌T4N2cMOで, 上咽頭にまで進展し, 両側のルビエールリンパ節転移が認められた. 術前化学療法, 手術, 術後照射にもかかわらず, わずか3ヵ月後に照射野内の頭蓋底に再発がみられ, 全経過11ヵ月で死亡された. 症例2と症例3は, いずれも内向発育型の舌癌T4N2cMOであり, 原発巣および頸部リンパ節転移の進行度も類似した進行癌であった. 症例2には舌全摘, 両側根本的頸部郭清の拡大手術を行ったにもかかわらず, すぐに広範な再発がみられ2ヵ月で死亡された. 症例3にはまず術前化学療法を行ったが全く無効で, 逆に増大傾向を来たし途中で当初予定していた手術が不能となつて, 3ヵ月で死亡された.
    同じ進行癌といっても多種多様な癌があり, 呈示した症例のように極めて悪性度の高い癌の評価法の確立と, これに対する最適の治療法の検討が必要であると思われた.
  • 西嶌 渡, 竹生田 勝次
    1997 年43 巻1Supplement1 号 p. 152-158
    発行日: 1997/03/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    埼玉県立がんセンター耳鼻咽喉科における頸部郭清術を紹介する. 本郭清術は, 内深頸リンパ節と外深頸リンパ節の郭清に対して工夫がなされている.(1) 皮弁の作成は最小とし, 胸鎖乳突筋の筋皮弁を作成する,(2) 胸鎖乳突筋, 副神経, 内頸静脈, 頸神経は原則として保存する.(3) 郭清に際し副神経三角の概念を導入する. すなわち, 胸鎖乳突筋の筋皮弁の作成に際し, 副神経を胸鎖乳突筋を横切るところで同定し, 副神経・胸鎖乳突筋の後縁・顎二腹筋後腹の3者で囲まれた部位 (副神経三角: 著者命名) を同定する.(4) 郭清の対象は主として胸鎖乳突筋の下層の脂肪塊である.(5) 内頸静脈周囲の剥離は, 内頸静脈より僧帽筋に向かう方向に剥離を行う. その結果, 深頸筋膜が確実に保存され, その筋膜下の頸神経も保存されることとなる.
  • 鎌田 信悦
    1997 年43 巻1Supplement1 号 p. 159-169
    発行日: 1997/03/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    胸鎖乳突筋 (以下SCM) と内頸静脈は保存するmodified neck dissectionは時に郭清範囲が甘くなつたり, en bloc手術が難しいという欠点が残されている. これらの欠点を解決した術式を紹介する. 乳様突起から下方の胸骨鎖骨までSCMを被う結合織と筋膜にメスで縦切開を入れる. つぎにこの筋膜をSCMから剥離する. SCMの内側面は副神経を保存しつつ筋膜を剥離する. 筋膜を剥離されたSCMは, 乳様突起と胸鎖部に架けられた橋のごとく二ヵ所だけに付着している. 最終的にSCMに対する血液供給は, 胸骨裏面から内胸動脈の分枝と, 乳様突起の後内側から後頭動脈の分枝により行われる. SCMを上方に挙上すれば頸部郭清の術野が広がる. 型のごとく鎖骨上窩から広背筋前縁に郭清を進め, 副神経を保存しつつ前方に移り, SCMを意識することなく内頸静脈を保存すれば, en blocのmodified neck dissectionができる.
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