耳鼻と臨床
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69 巻, 1 号
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原著
  • 守谷 聡一朗, 野田 哲平, 小宗 徳孝, 宮本 雄介, 村上 大輔, 土橋 奈々, 松本 希, 中川 尚志
    原稿種別: 原著
    2023 年 69 巻 1 号 p. 1-8
    発行日: 2023/01/20
    公開日: 2024/01/20
    ジャーナル フリー

    2013 年 1 月から 2021 年 7 月の期間に手術治療を行った錐体尖病変 15 例を検討した。コレステリン肉芽腫 4 例では、1 例が経乳突的に、3 例は経鼻的にドレナージルートを作成した。錐体尖真珠腫 11 例では初発例 5 例、再手術例が 6 例であり、進展経路は迷路上型が 7 例、広範迷路型 2 例、迷路下型 2 例であった。迷路上型では進展範囲の小さな症例は経上半規管法により低侵襲に摘出し得たが、進展例や再手術例では中頭蓋窩法や、中頭蓋窩法と経迷路法の combined approach が必要であった。広範迷路型では経蝸牛 + 中頭蓋窩法の combined approach を行い、迷路下型では進展範囲に応じて蝸牛下法や迷路下法を用いた。コレステリン肉芽腫全例と錐体尖真珠腫の 3 例で聴力温存できた。錐体尖は側頭骨最深部に位置し、手術アプローチの選択が重要である。聴力や病変と解剖学的構造の位置関係を考慮して術式を選択する必要がある。

  • 甲斐 有城, 伊藤 恵子
    原稿種別: 原著
    2023 年 69 巻 1 号 p. 9-15
    発行日: 2023/01/20
    公開日: 2024/01/20
    ジャーナル フリー

    一側性前庭機能障害の患者に対して急性期より前庭リハビリテーション(以下、前庭リハ)を施行し、運動機能を評価した。対象は、2019 年 6 月から 2022 年 2 月までに一側性前庭障害で入院した 22 例である。入院後可及的早期に理学療法士による個別前庭リハを開始し、運動機能を Timed Up and Go Test(以下、TUG)と Five-Times-Sit-to-Stand Test(以下、FTSST)を用いて評価した。発症から前庭リハ開始までの中央値は 5 日であった。有害事象は認めなかった。前庭リハ前後で TUG、FTSST は共に有意に短縮していた。40 − 60 歳台、70 − 80 歳台と 2 群に分けたが、年齢別で有意な差は認められなかった。22 例中 5 例で、前庭リハ前後での Dizziness Handicap Inventory(以下、DHI)、重心動揺計での閉眼時総軌跡長を測定したところ、共に改善を認めたが有意差はなかった。めまい発症後、早期に開始した理学療法士による個別前庭リハは、全症例において実施可能で、めまい患者の運動機能を改善させた。

  • 松吉 秀武, 山田 卓生, 後藤 英功, 伊藤 恵子
    原稿種別: 原著
    2023 年 69 巻 1 号 p. 16-25
    発行日: 2023/01/20
    公開日: 2024/01/20
    ジャーナル フリー

    われわれは既に PPPD に対する少量 SSRI 療法の有効率は 75.9%であることを報告している。これまでに PPPD のサブタイプごとの SSRI による治療成績の報告はまだされておらず、今回の報告が初めてである。少量 SSRI 療法は PPPD のすべてのサブタイプ(視覚刺激優位型、能動運動優位型、混合型)に対して有効であった。特に DHI スコアが高値であった視覚刺激優位型は難治性と考えられたが、同療法による NPQ 値の改善の程度が、能動運動優位型と比較し、有意に高かった。このことから視覚刺激優位型は治療開始前の重症度が高いが、少量 SSRI 療法が有効であると考えられた。また先行疾患するめまい疾患が OD である症例では有効性が期待されると考えられた。

  • 山野 貴史, 西 憲祐, 西平 弥子, 田中 隆行, 宮﨑 健, 城戸 寛史
    原稿種別: 原著
    2023 年 69 巻 1 号 p. 26-31
    発行日: 2023/01/20
    公開日: 2024/01/20
    ジャーナル フリー

    上顎洞へ迷入したインプラントの摘出方法は、以前は犬歯窩アプローチでの摘出が多くを占めていたが、近年は耳鼻咽喉科医による内視鏡下鼻内副鼻腔手術(endoscopic endonasalsinus surgery、以下 ESS と略す)の報告も散見するようになってきた。今回、当科で上顎洞迷入インプラントに対し ESS を施行した症例について検討した。全症例とも中鼻道の上顎洞自然口を開大することでインプラントを摘出することができた。また、ほかの副鼻腔への操作と鼻腔形態改善手術を併用することで、良好な経過をたどった。予後もよく ESS は上顎洞迷入インプラントと、それに伴う副鼻腔炎の治療には有効な治療法であった。ただし、今後も迷入異物のサイズや位置を十分に検討し、最適なアプローチを選択する必要があるものと思われた。

  • 北村 匠, 菊池 良和, 仲野 里香, 森田 紘生, 立野 綾菜, 蔦本 伊緖里, 宮地 英彰
    原稿種別: 原著
    2023 年 69 巻 1 号 p. 32-35
    発行日: 2023/01/20
    公開日: 2024/01/20
    ジャーナル フリー

    吃音症は発話の流暢性の障害であり、主に幼児期に発症するが、小学生以上も続く可能性があり、会話を必要とする学業・仕事において負の影響をもたらす。われわれは、2017 年 9 月より全年齢層を対象とした吃音診療を開始し、2021 年 8 月までに 239 例の新規来院者があった。受診経路および居住地について、経年的な変化を調べた。その結果、吃音外来の開始当初はインターネット経由が半数以上だったが、他機関からの紹介、家族・知人の紹介が増えていることが分かった。また、当院は久留米市内に位置しているが、久留米市外、福岡県外からの来院も増えていることが分かった。結論として、吃音症で困っている患者が多く、受け入れ先が少ないことが分かり、医師・言語聴覚士は協力して切れ目のない吃音支援体制を続ける必要があるだろう。

症例報告
  • 小野 晋太郎, 藤山 大祐, 松本 浩平, 熊井 良彦
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 69 巻 1 号 p. 36-41
    発行日: 2023/01/20
    公開日: 2024/01/20
    ジャーナル フリー

    近年罹患数が減少傾向にある結核性中耳炎は結核菌が空気感染するため早期診断が望ましいが、診断に時間を要することが多い。今回われわれは診断困難であった結核性中耳炎の症例を経験したので報告する。症例は 76 歳、男性で慢性中耳炎として保存的に加療を開始したものの改善が乏しく、難治性中耳炎の精査を行ったが、確定診断に至らなかった。さらに上咽頭に出現した白苔様病変から結核菌が検出されたため、結核性中耳炎の診断に至った。本症例で診断を困難にした要因を検討することでより早期の診断が可能になると考えられた。

  • 北川 有希子, 荒井 康裕, 谷垣 裕二, 折舘 伸彦
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 69 巻 1 号 p. 42-47
    発行日: 2023/01/20
    公開日: 2024/01/20
    ジャーナル フリー

    咽頭の早期癌は消化器内科での上部消化管内視鏡検査で発見されることが多いが、上部消化管内視鏡の解像度に比較し、喉頭ファイバースコープは解像度が劣り病変の観察で苦労することも多い。少しでも消化器内科のレベルに達するような観察ができないかを経鼻内視鏡を用いて検討し、喉頭ファイバースコープでは診断が困難であった病変を経鼻内視鏡を用いることでより分かりやすく診断することができた。早期癌の診断や病変の範囲の決定には内視鏡、特に NBI での観察が重要であり、経鼻内視鏡は喉頭ファイバースコープより解像度が高く、経鼻のため耳鼻咽喉科医でも扱いやすいという利点や、麻酔や合併症に対する対応にも慣れており、早期癌の診断や病変の観察に有用であることが確認でき、早期癌の診断および観察に必要不可欠となる可能性があることが示唆された。

  • 友田 篤志, 八木 正夫, 阪上 智史, 村田 英之, 岩井 大
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 69 巻 1 号 p. 48-52
    発行日: 2023/01/20
    公開日: 2024/01/20
    ジャーナル フリー

    HIV 感染症は数年から 10 年程度の無症候期があるが、細胞性免疫低下に伴って発症するものとして口腔カンジダ症がある。今回、非偽膜性カンジダ症から HIV 感染症が判明した 2 例を経験した。症例 1 は 69 歳、男性。口腔所見で舌の発赤と舌乳頭の委縮を認め培養結果からも口腔真菌症と診断された。問診でタイへの頻回の渡航歴があり、HIV 抗体検査陽性であった。症例 2 は 44 歳、男性。舌に萎縮所見、舌正中に小潰瘍性病変を認め、生検の結果、口腔カンジダ症でありカンジダによる正中菱形舌炎と診断した。問診により同性愛者と判明し、HIV 抗体検査は陽性であった。口腔カンジダ症は AIDS 発症に先行して出現することが多い。HIV の早期診断/早期治療介入は予後や感染拡大予防のために重要であり、口腔内観察を多く行う耳鼻咽喉科医として、易感染性疾患を伴わない患者の紅斑性および肥厚性カンジダ症を見逃すことなく早期の治療につなげる必要がある。

  • 田中 成幸, 宮崎 純二, 山内 盛泰, 倉富 勇一郎
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 69 巻 1 号 p. 53-61
    発行日: 2023/01/20
    公開日: 2024/01/20
    ジャーナル フリー

    まれな頸部に発生した異所性胸腺腫の 1 例を経験したので報告する。症例は 53 歳、女性。人間ドックで前頸部腫瘤を指摘され当科紹介受診となった。頸部エコー、頸部 CT、MRI で甲状腺左葉の尾側に位置する 40 × 30 × 50 mm 大の腫瘤を認めた。穿刺吸引細胞診ではリンパ球を認め、悪性リンパ腫もしくは Castleman 病を疑った。反回神経麻痺リスクを回避したいという希望が強く、まず全身麻酔下に腫瘤開放生検術(楔状切除)を施行した。術後の病理検査結果で胸腺腫との診断を得たため、改めて腫瘤摘出術を施行した。胸腺腫は周囲臓器への浸潤性発育や播種、遠隔転移を示すことがあるため、頸部異所性胸腺腫も潜在的には悪性腫瘍ととらえておくべきである。治療としては縦隔胸腺腫同様、完全切除が望ましい。頸部異所性胸腺腫の術前診断は困難なため、頸部に胸腺腫が発生し得ることを念頭に置くべきである。

視点
  • 三好 彰, 三邉 武幸, 中川 雅文, 岸野 明洋, 東川 俊彦
    原稿種別: 視点
    2023 年 69 巻 1 号 p. 62-67
    発行日: 2023/01/20
    公開日: 2024/01/20
    ジャーナル フリー

    1 .新型コロナウイルス対策としてのマスク装用が、全国の難聴児・者に対して与える影響を調べるために、アンケート調査を行い 135 名から回答を得た。 2 .言うまでもなく、難聴児・者は聴覚のみならず対話相手の表情、ことに口元の動きに情報の多くを頼っている。マスクはその対話相手の口元をカバーするため、難聴児・者の会話理解に大きな妨げとなっている。その事実がアンケートから改めて判明した。 3 .聴覚補助機器の進歩により聴覚情報取得に関しては改善が期待できる。 4 .しかし、真の問題は難聴児・者本人がその難聴を、外観からはことに健聴者には気付いてもらえないという点にある。 5 .そのためには、難聴児・者や耳鼻咽喉科医が一般社会に対して耳マークの普及に力を尽くす必要性も考えねばならない。

臨床ノート
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