耳鼻と臨床
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43 巻, 1 号
選択された号の論文の14件中1~14を表示しています
  • 加藤 真子, 稲村 達哉, 松本 あゆみ, 岸本 麻子, 山脇 利朗, 井野 千代徳, 山下 敏夫
    1997 年43 巻1 号 p. 1-4
    発行日: 1997/01/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    耳下腺の導管, すなわちステノン氏管が拡張する疾患は導管炎, 唾石症においてみられるが, この度, ステノン氏管が限局的に著しく拡張した疾患を経験したので報告した. 症例は45歳の女性で,食事の際に右側の頬部が腫れることを主訴とした. その腫脹は, 安静時には認められない. 導管開口部が極めて小さく, 耳下線造影に多大の困難を伴つたが, 得られた造影像より, 導管の著しい拡張を認めた. 唾石などは認められず, 導管の開口部の狭窄が原因の一つと考え, 口腔内より導管の拡張術を施行した. 術後, 食事に際しての頬部の腫れは消失した. 本疾患は, 総胆管嚢腫に類似することより, ステノン氏管嚢腫と命名した.
  • 岸本 麻子
    1997 年43 巻1 号 p. 5-8
    発行日: 1997/01/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    Freeman-Sheldon syndromeは, 特異な顔貌, 手指の屈曲拘縮や尺側偏位, 強度の内反足を特徴とする極めて稀な先天奇形の1っであり, 1938年にFreemanとSheldonがcranio-carpo-tarsal dystrophyとして初めて報告した.
    今回, 本疾患と考えられる症例を経験し, 2歳時に両眼隔離と内眼角贅皮に対してはMustardé法, 小口症に対してはBarsky法により手術を施行したので, 文献的考察を加えて報告した.
  • 正常被検者80名における検討
    土屋 睦子
    1997 年43 巻1 号 p. 9-18
    発行日: 1997/01/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    めまいを主訴とする患者の中には, 振り返った時や起立直後などの体位変換時にめまいを訴える者が多数含まれている. このような例に直立した姿勢で動揺検査を行つても常に異常は検出されない. しかし頭振や体位変換といった運動負荷を加えて施行することにより, 異常が検出され易くなることは, 当教室の臨床的応用によつて確認されている.
    他方, 正常例において上記のような負荷の重心動揺に及ぼす影響についての報告はない. 今回80名の正常被検者に頭振や体位変換を負荷した検査を行い, 負荷をかけない検査の結果と比較した. 最大左右径, 最大前後径, 動揺距離, 包絡面積において, 上記運動負荷を行った際に動揺が増すことはなかった. また加齢とともに最大左右径, 動揺距離, 包絡面積は大きくなる傾向にあり, 特に70歳以上では動揺距離, 包絡面積において大きくなった. 70歳以上では動揺距離, 包絡面積において個人差が大きくなる傾向も認められた.
  • 安田 宏一
    1997 年43 巻1 号 p. 19-24
    発行日: 1997/01/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    メニエール病の発作が軽快していく過程で, 良性発作性頭位めまい症に見るような, ある頭位で一過性の回旋眼振を示すことがある. このような状態を, メニエール病の良性発作性頭位眼振状態と呼んではどうかと考えている. このような症例を3年間に8例観察した. 8例中7例は, 回旋眼振の出現が26~58日続いた. これらの症例はうつの傾向が見られたため, 抗うっ剤を投与した. 抗うつ剤を弱いものから次第に強いものに換えて行くと, その症例に適当な抗うつ剤になった時, この頭位性の眼振は出現しなくなった.
    このことから, メニエール病の良性発作性頭位眼振状態の遷延には, 患者のうつ状態が大きく係っていると考えた.
  • 黒田 努, 柏村 正明, 古田 康, 犬山 征夫
    1997 年43 巻1 号 p. 25-29
    発行日: 1997/01/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    最近われわれは原発不明頸部転移癌として治療を開始した後, 肺に原発と思われる部位の判明した2例を経験した. いずれも初診時, 上頸部に転移巣を持つ他に異常所見を認めなかった. 2例とも頸部郭清術を施行し, 術後の経過観察中に肺門部に腫瘍の存在を確認された. 手術材料より, 高分化型扁平上皮癌, 小細胞癌の病理診断を得た. 原発部位は転移巣の位置, 病理組織からもある程度予想することができるが, 鎖骨上窩以外の部位への鎖骨下領域からの転移は希である. 通常頭頸部領域を中心に検索されるが, 原発部位が発見されず死亡する例は多く, この中にも多少の肺原発例が含まれている可能性がある. 検索の際には少しでも示唆する所見があれば, 肺原発の可能性を常に念頭に置く必要があると思われた.
  • 喜多 淳, 岩井 大, 豊國 伸哉, 柳田 昌宏, 川崎 英子, 南野 雅之, 中嶋 安彬, 山下 敏夫
    1997 年43 巻1 号 p. 30-33
    発行日: 1997/01/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    硬口蓋に原発した極めて稀な小唾液腺由来の悪性筋上皮腫の症例を経験した. 病理組織学的に筋上皮細胞由来であり, 悪性である細胞分裂像に乏しい点で低悪性型筋上皮腫と診断した. 手術的摘出と術後の放射線照射を行った.
    性筋上皮腫はこれまでの報告例がなく, 治療方針は定まつていないのが現状であるが, 一般の扁平上皮癌に比し放射線療法や化学療法の効果が低いことは, 他の腺系悪性腫瘍と同様の性状であると思われる. したがつて, 放射線療法や化学療法はあくまで補助的な治療であり, 手術的摘出が優先されると思われる.
  • 真栄田 裕行, 古謝 静男, 糸数 哲郎, 中村 由紀夫, 大輪 達仁, 野田 寛
    1997 年43 巻1 号 p. 34-37
    発行日: 1997/01/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    ユーイング肉腫は骨原性の腫瘍であり, 大腿骨のような長管骨や骨盤に好発するとされている. しかし骨外性に発生するユーイング肉腫もまれではあるが存在し, 主に四肢の軟部組織や傍椎骨組織への発生例が比較的多く報告されている. 頭頸部における骨外性の発生は非常にまれで, われわれの渉猟した範囲では, 上顎, 鼻腔内, 鼻腔側壁の3例の報告があるのみであった. 今回われわれは58歳の女性で, 右鼻腔に充満し, 翼口蓋窩, 中咽頭, および頭蓋底に進展した, 骨外性発生と考えられたユーイング肉腫の1例を経験したので, その治療経過とともに症例を供覧し, 文献的考察を加えて報告する.
  • 竹田 節子, 竹田 泰三, 齋藤 春雄
    1997 年43 巻1 号 p. 38-47
    発行日: 1997/01/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    われわれが作成した岩様部枝遮断による虚血性顔面神経麻痺動物は, ヒト顔面神経麻痺とよく似た経過を辿る. 今回さらに経時的に組織学的検討を加え, 以下の結果を得た.
    1) パラフィン-セロイジン包埋およびエポキシ樹脂包埋による2種の組織標本でFn/Fc比 (顔面神経管に占める顔面神経の面積比) の差を測定すると, 組織収縮のため前者は側頭骨内全域で後者の約1/2になるが, 神経膨化の状態を知るためのよい指標となることが分かった. 2) 神経膨化は遮断後初期では膝部から末梢側に広がり, 3日目から7日目に全域にわたつて最高になる. 以後, 膨化は軽快して, 28日目には中枢側では元に復した. 3) 軽度・中等度麻痺例では, 神経膨化の減弱時期が麻痺の回復時期とほぼ一致した事から, 神経浮腫による伝導ブロックと考えられた. 4) 高度麻痺例では, 髄鞘の変性が著明で, 28日目でも組織変性の回復は認められなかった. このため神経の膨化が消失した後も麻痺は継続した.
  • 平田 佳代子, 佃 守, 古川 滋, 河野 英浩, 河合 敏, 榎本 浩幸, 小勝 敏幸, 三上 康和, 陰里 ゆうみ, 稲葉 鋭
    1997 年43 巻1 号 p. 48-56
    発行日: 1997/01/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    慢性副鼻腔炎患者44例に対してレボフロキサシン少量長期投与 (100mg/日, 8週間) を行い, 臨床効果を検討した. 投与8週目の著明改善と改善を合わせた改善率は, 自覚症状では鼻漏29%, 後鼻漏41%, 鼻閉42%, 頭重・頭痛52%, 嗅覚障害53%, 他覚所見では鼻粘膜の発赤30%, 鼻粘膜の浮腫42%, 鼻汁の量55%, 鼻汁の性状61%, 後鼻漏70%であった. 自覚症状, 他覚所見, 臨床症状の総合評価でのt検定では有意な改善を見 (P<0,001), 副鼻腔X線所見でも明らかな改善を認め(P<0.001), 副作用は全くみられず, この治療法の有用性が示された. 臨床症状の改善率は投与4週目より8週目が高かつた. また鼻汁の細菌検査では細菌学的効果と臨床症状が相関せず, レボフロキサシン少量長期投与の効果には抗菌作用以外の作用機序の関与が示唆された.
  • 第三報; カモガヤ・ブタクサの有病率
    三好 彰, 程 雷, 殷 敏, 陳 智斌, 時 海波, 徐 其昌, 殷 明徳, 三邉 武幸, 鈴木 恵美子, 徳丸 敬, 小島 幸枝, 松井 ...
    1997 年43 巻1 号 p. 57-61
    発行日: 1997/01/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    われわれは今回, 南京医科大学の医学生1・4年生を対象に鼻アレルギーについての疫学調査を実施した. 本稿では前報告1), 2) までのHD・ダニ・スギに関する調査の他に, カモガヤとブタクサについても検討した. するとカモガヤ・ブタクサの鼻アレルギーは1例も見られず, これら5種類のアレルゲンについてもダニに陽性の1例のみが, 鼻アレルギーと診断された.
    日本では, 1970年代以前は鼻アレルギーが少なくその後激増したとされ, その背景には外的要因の関与の大きいことが推察されている. 中国の社会は, 面積が広大で地域格差も大きいため一概には断言できないが, 社会的発展が1970年以前の日本の状態とかなり類似している. もしも中国の社会が1970年代以降の日本と同様の経済的発展を遂げるならば, 鼻アレルギーも日本と同じように増加して行くのではなかろうか.
  • 1989・1992・1995年度白老町の比較
    三邉 武幸, 鈴木 恵美子, 徳丸 敬, 三好 彰, 馮 霓, 程 雷, 殷 敏, 徐 其昌, 殷 明徳, 松井 猛彦, 尾登 誠, 小島 ...
    1997 年43 巻1 号 p. 62-65
    発行日: 1997/01/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    本稿では, 3年ごとに小1・小4・中1について施行される白老町の学校健診に伴うスクラッチテストに関して, 89・92・95年度の3回の健診を受けた同一児童生徒群の成績を, 検討した, その結果同一児童生徒群で, 成長するに伴いスクラッチテスト陽性率の増加することがわかった.
    こうした成長に付随する陽性率の増加は, アレルゲンの暴露時間の長さに相関しているものと推測された.
  • 今中 政支, 山本 祐三, 坂倉 淳, 垣鍔 典也, 東川 雅彦, 塙 力哉, 中井 健, 藤原 裕樹, 牧本 一男, 高橋 宏明
    1997 年43 巻1 号 p. 66-70
    発行日: 1997/01/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    スパルフロキサシンの鼻茸組織内移行と副鼻腔炎に対する臨床検討を行い, 以下の結果を得た.
    1. スパルフロキサシン1日1回200mg朝食後3日間経口投与し, 4時間後に鼻茸切除術施行し, 同時に血液を採取した. スパルフロキサシンの鼻茸組織内濃度は0.76±0.43μg/g (平均±S. D.), 血清濃度は1.01±0.50μg/ml, 組織/血清濃度比すなわち組織移行比は0.80±0, 32であった. スパルフロキサシンは鼻茸にも良好な移行性を示すことが確認された.
    2. スパルフロキサシン1日1回200mg朝食後7日間経口投与による副鼻腔炎症例に対する臨床有効性の検討の結果, 有効率は急性副鼻腔炎75%, 慢性副鼻腔炎急性増悪症25%であり, 副作用は認めなかった. 特殊な難治症例を除けばスパルフロキサシンは1日1回のみの経口投与でも優れた臨床有用性を有することが確認された.
  • 道下 秀雄, 飯田 稔, 岩佐 英之, 杉山 順子
    1997 年43 巻1 号 p. 71-81
    発行日: 1997/01/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    1995年のスギ花粉症患者58例にペミロラストカリウム (アレギサール®) を投与し, その季節前投与による症状抑制効果について検討した. 有効性の解析は季節前投与群35例 (花粉飛散前平均投与期間: 3.6週), 治療投与群11例の計46例を対象とした.
    1) 飛散初期において季節前投与群の方が治療投与群に比べ, 鼻汁, 鼻閉, 日常生活支障度, 下甲介粘膜の腫脹, 水性分泌量の程度ならびに重症度が「+(軽症) 以下」であつた症例を有意に多く認めた.
    2) スコアの推移では飛散初期において, くしゃみ, 鼻汁, 鼻閉, 日常生活の支障度, 重症度, 下甲介粘膜の腫脹, 水性分泌量のスコアが季節前投与群の方が有意に低く, 飛散中期においては, 鼻閉のスコアが季節前投与群の方が有意に低かった.
    3) 副作用は季節前投与群に2例 (5%), 治療投与群に1例 (7%) 認め, いずれも投与中止または休薬により回復した.
    以上より, アレギサール® はスギ花粉飛散前から投与することにより飛散初期における症状の悪化を抑制しうると考えられた.
  • 松田 孝一, 野上 兼一郎, 西平 修, 工藤 庄治, 江浦 重治, 井上 朝登, 福興 和正, 寺澤 るり子, 中島 元雄, 平島 直子, ...
    1997 年43 巻1 号 p. 82-94
    発行日: 1997/01/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    塩酸エピナスチンのスギ花粉症患者に対する臨床効果を, スギ花粉の本格的な飛散前から投与した群 (飛散前投与群) と飛散後投与群について, ヒノキ花粉飛散時期を含め検討し, 以下の成績を得た.
    1. くしゃみ・鼻汁・鼻閉・重症度・眼のかゆみなどの症状の程度は, 飛散前投与群が飛散後投与群に比べ, スギ花粉飛散終了までは低く推移した.
    2. しかしながら, ヒノキ花粉飛散の開始とともに, 飛散前投与群で鼻・眼症状の程度が若干高く推移した.
    3. 全観察期間中, 流涙の程度は飛散前投与群が飛散後投与群に比し, 低く推移した.
    4. 副作用は, 50例中1例 (2%) に総ビリルビンの一過性上昇が認められたが, これも継続投与中に消失した.
    5. 有用度は, 有用以上で, 飛散前投与群67% (12/18例), 飛散後投与群75% (6/8例) であつた.
    以上の結果より, 塩酸エピナスチンはスギ花粉症に本格的な飛散前より投与することにより症状を軽く抑え, 初期治療に有用な薬剤であると考えられた.
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