耳鼻と臨床
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51 巻, 6 号
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  • 高瀬 武一郎
    2005 年 51 巻 6 号 p. 391-402
    発行日: 2005/11/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    初回治療として口腔・中咽頭癌切除術を行った140名を対象に、術後の嚥下機能・構音機能を検討した。対象患者の内訳は口腔癌112名 (男性80名、女性32名)、中咽頭癌28例 (男性25名、女性3名) で、原発部位、亜部位、T分類による検討を行った。舌、口腔底癌手術での舌可動部1/2未満程度の切除では、再建を行わない“切除のみ”の群で構音機能、嚥下機能は保たれていた。舌可動部1/2以上切除を行った群では、大胸筋皮弁使用による再建の方が、腹直筋皮弁使用例に比べて構音機能が良好であった。舌、口腔底癌の広範切除が必要な患者では、舌根部、口腔底の切除範囲が増大するほど構音機能が低下する傾向が認められた。中咽頭癌切除では、前壁と上壁の切除範囲が増大するほど構音機能、嚥下機能とも低下する傾向が認められた。また術後の構音機能障害が大きいものほど、摂食内容も固形物を摂取できなくなるなどの摂食機能障害が残り、両者の機能障害の相関が認められた。以上の結果から、舌可動部1/2切除未満、舌根部1/2切除未満および口腔底1/4切除未満、中咽頭上壁1/2未満の切除範囲で構音、嚥下能ともに保たれることが分かった。
  • 富田 和英
    2005 年 51 巻 6 号 p. 403-410
    発行日: 2005/11/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    1989年から1997年までの9年間に、久留米大学病院耳鼻咽喉科で下咽頭拡大切除、両側の頸部郭清術を施行した下咽頭扁平上皮癌患者81例 (男性74例、女性8例) を対象に、p53遺伝子産物の発現と臨床経過および病理学的因子との関連を検討した。p53蛋白の発現と予後との有意な相関は認めなかったが、遠隔転移の5年制御率はp53陽性群が33%、陰性群が89%で、両群間に有意差を認めた。すなわち、p53陽性群は遠隔転移を起こしやすいことが示唆された。癌細胞の転移リンパ節内浸潤度の強さを示す、被膜外浸潤、壊死および二次濾胞消失を来した例のp53陽性率が高くなる傾向を認めた。
  • 君付 隆, 小宗 静男
    2005 年 51 巻 6 号 p. 411-416
    発行日: 2005/11/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    実際に中耳換気が行われたか否かを高圧環境下での耳症状発現の有無で推測できると考え、耳管機能検査の結果と高圧酸素治療による耳症状発現の関連について検討した。高圧酸素治療を受けた71耳について、治療開始前の耳管機能検査 (sonotubometry検査) の結果と、初回治療中の耳症状、治療直後の鼓膜所見について比較検討した。sonotubometry検査が異常を示した割合は、高圧酸素初回治療中に耳症状を認めなかった46耳中19耳 (41%)、軽度の耳症状を認めた17耳中8耳 (47%)、重度の耳症状を認めた8耳中6耳 (75%) であった。症状なしの群と軽度の耳症状を示した群、あるいは重度の耳症状を示した群との間で、統計学的に耳管機能検査異常の割合に有意差を認めなかった。初回治療直後の鼓膜所見が正常を示した39耳では、耳管機能検査異常の割合は14耳(36%) であり、一方、鼓膜が異常を示した28耳では、耳管機能検査異常の割合は18耳 (65%) であった。鼓膜異常を示した群で耳管機能異常の割合は高い結果となった。以上の結果より、中耳換気能が正常と考えられる耳でも、sonotubometry検査での正常率は59%にとどまり、中耳換気能が異常と考えられる耳でも、sonotubometry検査での正常率が25%発生すると考えられた。
  • 中川 尚志, 牧嶋 知子, 賀数 康弘, 柴田 修明, 小宗 静男
    2005 年 51 巻 6 号 p. 417-422
    発行日: 2005/11/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    小児期に自覚した難聴が機能性であったミトコンドリアDNA3243点変異症例を経験した。症例は20歳女性で、小児期に難聴を自覚した。当科初診時の純音聴力検査の結果は、気導3分法で右107dB、左77dBの感音難聴であった。祖母、母親、叔父、弟に難聴の家族歴が認められた。母系の遺伝形式に矛盾しない家族歴と遺伝子解析の結果、ミトコンドリアDNA3243点変異であると診断した。しかしながら、診察時に担当医とやりとりがスムーズで聴力検査より想像される難聴のレベルに一致しないこと、再来時に観察された聴力レベルの変動が本人の難聴の自覚症状の増悪と一致しないため、機能性難聴を疑った。トーンピップ音を用いたABR検査で反応閾値を求めたところ、30dB以下の値で反応を得られたため、機能性難聴と診断した。またうつ症状の改善とともに聴力閾値が低下し、精神症状と同期した動きを示した。ミトコンドリアDNA3243点変異の一症状としてうつ症状などの精神症状が挙げられている。小児期より遷延する機能性難聴にこのミトコンドリアDNA3243点変異の精神症状が本症例において寄与しているのではないかと推測した。
  • 浜野 巨志, 南 豊彦, 中川 のぶ子, 多田 直樹, 井野 千代徳, 山下 敏夫
    2005 年 51 巻 6 号 p. 423-427
    発行日: 2005/11/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    耳下腺結核症例を報告した。患者は63歳の男性で増大する耳下腺部の腫れを主訴として当科を紹介された。耳下腺に複数個の腫瘤を触知したが、頸部リンパ節の腫れはなく、顔面神経麻痺も認めなかった。細胞診の結果は、ワルチン腫瘍を疑う所見とのことで多発性ワルチン腫瘍の診断のもと特異な症例でないとの判断で術中病理診断を依頼することなく全身麻酔下に摘出術を行った。手術後の病理診断の結果は摘出した6個の腫瘤すべてが結核との診断を得た。耳下腺結核は顔面神経麻痺を伴うこともあるほか、多彩な臨床像を呈することがある。本症例の特徴は6個の腫瘤を耳下腺内に認めたことである。耳下腺結核は最近増加傾向にあるとの報告もあり術中病理診断の重要性ついて言及した。
  • 香取 秀明, 佃 守, 石戸谷 淳一, 河野 敏朗, 高橋 優宏, 遠藤 亮, 小松 正規, 山本 馨, 渡辺 牧子
    2005 年 51 巻 6 号 p. 428-431
    発行日: 2005/11/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    小唾液腺腫瘍と診断された症例について文献的考察を加え検討した。小唾液腺腫瘍20例中、良性腫瘍は10例で多形性腺腫9例、Warthin腫瘍1例で全例手術を施行し再発は認めなかった。悪性腫瘍10例中最初に手術を施行した5例中2例は再発せず3例は再発した。再発例に対し放射線化学療法 (CAP療法: cyclophosphamide〔CPA〕、doxorubicin〔DXR〕、cisplatin〔CDDP〕) を施行し、その後手術を施行し、2例は生存しているが1例は腫瘍死した。また、放射線化学療法施行後、手術を施行した2例は再発なく生存している。手術適応のない症例や手術拒否例の3例は放射線化学療法を施行し、1例は腫瘍死し2例は担癌状態である。術前に放射線化学療法を施行した症例では術後再発がなく、放射線化学療法は再発軽減の一助となっているのではないかと予想された。
  • 渡邉 昭仁, 谷口 雅信, 辻榮 仁志
    2005 年 51 巻 6 号 p. 432-436
    発行日: 2005/11/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    再発症例を含む小児副鼻腔炎に対するクラリスロマイシン少量長期投与の有効性について評価した。小児副鼻腔炎症例435例に対してCAMを用いた少量長期投与療法を施行した。治療開始後3カ月で約7割に改善を認め、6カ月で約9割の症例に改善を認めた。約3割の症例に再燃を認め、再燃後に同様な治療を施行しても初回と同等からそれ以上の治療効果が認められた。副作用として重篤なものを認めなかった。
  • 秋山 貢佐, 唐木 將行, 松原 あい, 森 望
    2005 年 51 巻 6 号 p. 437-441
    発行日: 2005/11/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    上顎洞異物とそれに続発した上顎洞嚢胞の一例を経験したので報告する。症例は77歳女性。左鼻閉と粘性鼻漏が主訴であった。CTにて異物を含んだ左上顎洞嚢胞を認め、内視鏡下鼻内副鼻腔手術 (ESS) を行った。摘出した異物は歯牙の一部であった。術後に症状は消失している。
  • 成山 謙一, 梅崎 俊郎, 伊藤 彩, 賀数 康弘, 中条 恭子, 小宗 静男
    2005 年 51 巻 6 号 p. 442-448
    発行日: 2005/11/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    奇形腫は胚細胞由来の腫瘍であり、一般的に三胚葉成分 (内、中、外胚葉) から構成される。仙尾骨部、卵巣や睾丸などの生殖器に好発し、頭頸部の発生症例は少ない。今回われわれは、比較的まれな左翼口蓋窩に発生した奇形腫の小児症例を経験した。患者は、1歳5カ月の男児。主訴は鼻漏、反復性左中耳炎、左頬部腫脹。CT、MRI上、内部不均一な6cm×4cmの巨大な腫瘤を左翼口蓋窩に認めた。infratemporal fossa approach (transorbitozygomatic approach) に準じて手術施行し、腫瘤を全摘出した。病理所見上、三胚葉成分の混在が見られ、奇形腫と診断された。術後、開口障害が生じたが、徐々に改善している。術後2年5カ月経過後、腫瘍の再発、増大は見られていない。
  • 若崎 高裕, 新里 祐一, 小宗 静男
    2005 年 51 巻 6 号 p. 449-455
    発行日: 2005/11/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    急性増悪した呼吸困難と深頸部膿瘍を合併した急性喉頭蓋炎の一症例を経験した。当院での過去3年間に経験した急性喉頭蓋炎症例の検討を含め、報告する。症例は47歳、男性。来院時、喉頭ファイバースコピー施行し急性喉頭蓋炎と診断した。来院時は呼吸困難症状なく、ステロイド剤投与などで保存的加療を行った。来院から3時間経過したところで、呼吸困難が急激に生じ、気道閉塞状態となった。応急処置として輪状甲状間膜を穿刺し、気道を確保した。その後速やかに気管切開を行った。抗生剤により感染のコントロールを図ったが、入院3日目に頸部膿瘍が増悪し、頸部外切開による排膿を要した。急性喉頭蓋炎の病状悪化の危険因子として急激な病状の進行、喫煙歴、糖尿病、頻脈、白血球増多あるいは喉頭粘膜の高度腫脹などが報告されている。これら危険因子がある症例では呼吸状態を常に観察し、呼吸困難の徴候がみられた場合には、気道確保を積極的に検討するべきであると考えた。
  • 森満 保
    2005 年 51 巻 6 号 p. 456-462
    発行日: 2005/11/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    陰イオン血管造影剤であるウログラフィン療法の成績から、突発性難聴の病巣は、血管条血管の内腔面と推定された。電顕的に、ウログラフィン分子 (以下、ウ分子と略す) がヨウ化銀として辺縁細胞の内リンパ腔面に密に観察された。また、シアル酸糖鎖を持つ陰性荷電部位が血管内腔面に観察された。これら陰性荷電部位はvoltage-sensitive Na+ channelと推定された。なお辺縁細胞の内リンパ腔面には陰性荷電部位は認められなかった2)。電気生理学的に、大山によって血管条細胞の陽性荷電が報告された。そこで、血管条の血管と構成細胞の間にionic charge barrierの存在が推定された。血管条内陽性電位はEPが呼吸停止や利尿剤で陰性に逆転しても、常に陽性電位を保つことも報告された。さらにNa+の血管条内注入で電位は有意に低下するが、K+の注入では不変であるとも報告されている。これら実験的根拠によって、ウ分子は正常耳では血管内腔に付着しえないが、突難耳では、内腔面の、受動的に陽性荷電した陰性荷電部に、イオン性に付着し治療効果を発揮するものと結論される。
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