耳鼻と臨床
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65 巻, 6 号
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原著
  • 松吉 秀武, 後藤 英功, 山田 卓生
    原稿種別: 原著
    2019 年 65 巻 6 号 p. 167-174
    発行日: 2019/11/20
    公開日: 2020/11/20
    ジャーナル フリー

    無床診療所である当院にて導入した auto CPAP 症例の長期継続に影響を与える因子について臨床的検討を行った。全体の継続率は 1 年後で 83.7%、5 年後で 70.6%、10 年後で 60.0%であり、過去の報告と比較してやや良好であった。離脱は 137 例でありマスクが原因であった症例が 81 例(59.1%)であった。このうち、鼻閉が 19 例と最も多くを占めていた。そのため鼻閉改善手術の有効性について検討した。鼻閉の自覚がなく鼻閉改善手術を未施行の症例(A 群 442 例)と、鼻閉があり手術を施行した症例(B 群 47 例)と、鼻閉があるが同手術未施行症例(C 群 29 例)を比較検討した。8 年後の継続率は A 群で 62.8%、B 群 83.9%、C 群で 25.6%であった。鼻閉改善手術を施行した B 群において有意差をもって CPAP 継続率が高値であった。CPAP 継続率を高めるには鼻閉改善手術を含めた鼻閉の管理が重要であると考えられた。

  • 中島 紘一郎, 安松 隆治, 高良 佳江, 古後 龍之介, 若崎 高裕, 中川 尚志
    原稿種別: 原著
    2019 年 65 巻 6 号 p. 175-180
    発行日: 2019/11/20
    公開日: 2020/11/20
    ジャーナル フリー

    免疫チェックポイント阻害剤の一つである Nivolumab を投与した再発・転移頭頸部扁平上皮癌症例 38 例について治療効果を解析するとともに、有害事象を来した症例について呈示した。最良治療効果は PR 9例、SD 10 例、PD 12 例であった。奏効率は 27.3%、臨床的有用率は 57.6%であった。1 年粗生存率は 32.3%、1 年無増悪生存率は 18.2%であった。免疫関連有害事象として間質性肺炎 1 例、甲状腺機能亢進 1 例、肝機能障害 2 例、甲状腺機能低下 2 例、関節炎 1 例を認めた。重篤な有害事象として grade 3 の間質性肺炎、grade 4 の肝機能障害を認めた。Nivolumab は優れた治療効果が望める一方、投与に際しては注意深い経過観察も必要である。

症例報告
  • 新里 祐一
    原稿種別: 症例報告
    2019 年 65 巻 6 号 p. 181-185
    発行日: 2019/11/20
    公開日: 2020/11/20
    ジャーナル フリー

    鼻中隔膿瘍は近年ではまれな疾患となった。しかしながら診断が遅れると鞍鼻等の後遺症や鼻性頭蓋内合併症を惹起する可能性がある。今回初診時に鼻中隔膿瘍を想起できず、切開・排膿が遅れた症例を経験したので報告する。症例は 49 歳、女性。夫の手が顔面に当たり、鼻出血を認めた。徐々に鼻痛・咽頭痛が増悪し頭痛も発症したため紹介医を受診した。強い頭痛のため頭蓋内合併症の可能性も否定できず当科を紹介受診となった。 鼻中隔の腫脹のため両鼻腔が狭小化していた。頭痛が強いことより鼻腔内蜂窩織炎から髄膜炎等を発症した可能性を想定して入院の上、髄液検査を施行したが頭蓋内合併症は否定的であった。副鼻腔 CT を見直した結果、鼻中隔膿瘍の可能性がありドレナージが必要と判断したが、髄液検査後であったため安静が必要であり、結果的に穿刺・切開排膿が翌日になった。切開・排膿後は比較的順調に局所所見および検査所見ともに経時的に改善した。

  • 佐藤 雄二, 三好 晋平, 川北 大介, 村上 信五
    原稿種別: 症例報告
    2019 年 65 巻 6 号 p. 186-189
    発行日: 2019/11/20
    公開日: 2020/11/20
    ジャーナル フリー

    胞巣性軟部肉腫は 1952 年に Christopherson らによって命名され、軟部悪性腫瘍の 0.5 − 1 %を占めるとされている。若年者の四肢に好発し、頭頸部領域での発症はまれである。今回われわれは右鼻腔原発の胞巣性軟部肉腫症例を経験したので報告する。症例は 40 代男性で易出血性の右鼻腔腫瘍で当科紹介となった。右鼻腔腫瘍摘出術を施行したところ、胞巣性軟部肉腫の診断となり、早期に追加切除として endoscopic medial maxillectomy を行い断端陰性を得た。術後 5 年が経過するが現在まで再発・転移所見を認めていない。

総説
  • 澤津橋 基広
    原稿種別: 総説
    2019 年 65 巻 6 号 p. 190-195
    発行日: 2019/11/20
    公開日: 2020/11/20
    ジャーナル フリー

    近年、北部九州において、スギ・ヒノキ花粉の飛散時期に、PM2.5 および黄砂の飛来が重なる日が観測されている。PM2.5 および黄砂は、気道の症状を悪化させることが報告されており、黄砂飛来により、喘息患者の入院リスクが上昇することや、PM2.5 の上昇により、小児の喘息、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎の症状が悪化することが報告されている。このスギ・ヒノキ花粉と PM2.5 と黄砂によるトリプルパンチをどう乗り切るのか? まず、確実に言えることは、スギ・ヒノキ花粉および PM2.5 と黄砂の接触を防ぐことである。そのためには、患者自身が花粉飛散や PM2.5 の濃度の情報を収集し、原因物質からの接触回避することが重要である。その上で、医療機関における薬物治療等を行うことが、このトリプルパンチを乗り切る要点になる。この論文では、PM2.5 および黄砂飛来時の花粉症に対する治療について薬物療法を中心に述べる。

臨床ノート
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