-
唐澤 千明, 磯野 道夫, 木村 忠司, 齊藤 和也, 村田 清高
2006 年52 巻3Supplement2 号 p.
S102-S106
発行日: 2006/05/20
公開日: 2013/05/10
ジャーナル
フリー
当科での鼓室形成術III型、IV型施行症例176例についての術後成績について検討した。成功例はIII-cでは77.3%、III-iでは79.5%、IV-cでは53.1%、IV-iでは62.5%であった。これらの術後成績の結果を踏まえて、術後大きな聴力改善を得るためには、なるべくアブミ骨が健常なうちに手術をし、言い換えれば、できる限りIII型ができるうちに、それが無理ならば、IV型でもなるべくinterposition (IV-i) を施行した方がよい聴力成績を期待できるという印象を得た。
抄録全体を表示
-
玉木 克彦, 楠 威志, 村田 清高
2006 年52 巻3Supplement2 号 p.
S107-S111
発行日: 2006/05/20
公開日: 2013/05/10
ジャーナル
フリー
急性低音障害型感音難聴 (ALHL) は女性に多い。更年期障害や生理不順、月経困難などに汎用される当帰芍薬散をALHLの再発例に対して使用した。当帰芍薬散投与開始から6ヵ月以上経過を観察できたのは16例であった。13例の女性のうち6例で再発を認めなくなった。13例中7例は再発したが、そのうち4例は難聴の程度が軽く短期間で自然治癒したり、再発しても再発するまでの期間が延長した例も認められた。当帰芍薬散で効果が弱かった1症例には桂枝茯苓丸を処方したところ再発を認めなくなった。当帰芍薬散が無効の2症例で桂枝茯苓丸に変更したがこれも無効であった。残りの1例は服用コンプライアンスが不良で、内服をしていない期間に再発した。3例の男性にも当帰芍薬散を投与してみた。そのうち1例は無効であった。ほかの2例は再発を認めたが服用コンプライアンスが悪かった。対象となった症例数が少ないこともあるが男性には有効性を確認できなかった。
抄録全体を表示
-
原田 昌彦, 楠 威志, 村田 清高
2006 年52 巻3Supplement2 号 p.
S112-S117
発行日: 2006/05/20
公開日: 2013/05/10
ジャーナル
フリー
薬物無効症例の耳鳴の治療に他の薬剤や処置を使わず、カウンセリングのみで可能かどうか心療内科的手法で試みた。有効であった代表の1症例を報告する。現在インフォームド・コンセントでも重要であるとされる傾聴、共感と保証の原則にのっとり約30分のカウンセリングを行った。評価は、標準耳鳴検査法1993の自覚的評価法でしか行い得なかった。また、耳鳴症に対し補聴器を用いたTRT (tinnitus retraining therapy) の変法が著功した例とカウンセリングに至らなかった例を報告する。
抄録全体を表示
-
吉川 構, 磯野 道夫, 川本 亮, 宮下 仁良, 斉藤 啓, 村田 清高
2006 年52 巻3Supplement2 号 p.
S118-S126
発行日: 2006/05/20
公開日: 2013/05/10
ジャーナル
フリー
われわれは顔面にマーカーを貼り付け、その動きを解析する方法を用いて他覚的に評価する方法を考案し、顔面表情運動を定量的に評価している。その方法を用いて顔面神経麻痺改善過程における (a) 積分筋電図とマーカー法、さらに40点法とを比較検討し、さらに (b) マーカー法を用いた表情運動を3次元的に検討する、の2点について評価してみた。結果、マーカー法の移動距離の変化はスコア法と同様、まさに検者が目で見たとおりの改善過程を示し、また積分筋電図がマーカー法における移動速度と同様、表情筋の機能的回復を直接反映するものと考える。3次元的に検討した結果、眼輪部に関しては2次元的評価で十分だが、口輪部の評価には3次元的検討が必要であることが分かった。
抄録全体を表示
-
寺尾 恭一, 杉原 功一, 森 一功, 村田 清高
2006 年52 巻3Supplement2 号 p.
S127-S132
発行日: 2006/05/20
公開日: 2013/05/10
ジャーナル
フリー
T1、T2舌癌に対して、確個たる治療のストラテジーを持ち合わせていなかった2000年までの方針と、2001年以降の手術主体での方針との治療成績を比較した。治療成績には、有意な差を認めなかったが、術後合併症の減少、平均在院日数の短縮などメリットも多くみられた。今後も手術主体の方針を考えているが、さらなる治療成績向上や QOL向上のためには、以下のことが今後の問題点として挙げられた。(1) advanced T2症例は、切除、再建も考慮に入れる、 (2) T1症例の予防的頸部郭清はwatch and seeでもいいのではないか、 (3) clinical N+症例や手術時N+が判明した症例は、患側の全頸部郭清を施行、 (4) 深部浸潤が強く正中部近くまで腫瘍が進展している症例は、clinical N0といえども健側郭清を考慮、 (5) 術後放射線治療の適応をもう少し絞れないか、 (6) 小線源治療の適応症例の選択。
抄録全体を表示
-
寺尾 恭一, 山口 浩志, 楠 威志, 森 一功, 村田 清高
2006 年52 巻3Supplement2 号 p.
S133-S139
発行日: 2006/05/20
公開日: 2013/05/10
ジャーナル
フリー
1992年から2001年の10年間に、当科で一次治療を施行した進行喉頭扁平上皮癌T3、 T4M0、35例 (男性33例、女性2例、平均年齢64.5歳) の検討を行った。対象の内訳は、 T3、19例、T4、16例、N0症例が約80%、声門上型16例、声門型17例、声門下型2例であった。ちなみにこの間の喉頭癌の総数は134例であり、進行喉頭癌の割合は約26%という結果であった。T3症例の喉頭保存治療の可能性、頸部郭清指針、遠隔転移のハイリスク群やその対策について考察した。また治療成績向上のためには、気管孔再発を減らすことが最重要課題であり、その対策についても論じた。
抄録全体を表示
-
-近声会会員のアンケ-ト調査から-
楠 威志, 寺尾 恭一, 村田 清高
2006 年52 巻3Supplement2 号 p.
S140-S145
発行日: 2006/05/20
公開日: 2013/05/10
ジャーナル
フリー
喉頭全摘出術を受けた退院患者のQOLを検討するため、近声会33人を対象にアンケート調査を行った。喉頭全摘出術を受けたことに対しての思いは、回答者29人中27人が満足していた。現在の健康状態については回答者31人中3人が重複癌であった。喉摘後に胃癌 (2人)、肺癌 (1人) を認めた。無喉頭・気管呼吸者の主な愁訴は鼻機能障害によるものであった。代用発声として食道発声が最も多く利用されていた。しかし、喉頭全摘時年齢70歳以上の者は食道発声を習得できなかった。食道発声の上達者のほとんどは訓練し始めて1-6カ月の間に発声が可能となっていた。食道発声の利点については、大多数が食道発声により自分自身に自信がもて外向的、積極的になったと答えている。さらに食道発声の上達により鼻機能回復を認めた。
抄録全体を表示
-
渡邉 寛康, 白石 浩, 老木 浩之, 石川 雅洋, 楠 威志, 森 一功, 村田 清高
2006 年52 巻3Supplement2 号 p.
S146-S153
発行日: 2006/05/20
公開日: 2013/05/10
ジャーナル
フリー
1990年4月から2002年3月までの12年間に近畿大学医学部耳鼻咽喉科学教室にて治療を行った耳下腺腫瘍157例に対して統計的観察を行った。耳下腺腫瘍を1991年のWHO分類に従って病理組織学的に分類し、発症年齢、性別、年次推移などに対して検討を行った。当施設における過去の統計との比較を行った結果、Warthin tumorの症例数が増加していることが確認された。これは、主に高齢者に対する手術適応の拡大が原因と考えられた。耳下腺腫瘍の性状について検討した結果、腫瘍の硬いもの、可動性の悪いものは、悪性腫瘍を強く疑う所見であると考えられた。
抄録全体を表示
-
徳野 潔, 寺尾 恭一, 肘井 禎卓, 森 一功, 村田 清高
2006 年52 巻3Supplement2 号 p.
S154-S158
発行日: 2006/05/20
公開日: 2013/05/10
ジャーナル
フリー
1999年から2004年の間に、15例の原発不明頸部転移癌を加療した。平均年齢55.6歳、男女比2: 1で、病理組織型は扁平上皮癌が12例、転移部位はレベルIIが12例と多数を占めていた。領域内リンパ節転移と考えられる症例は、原則として、患側の頸部郭清と術後全頸部照射を施行した。Kaplan-Meier法による3年粗生存率は、73.9%と比較的良好であった。予後因子の検討では、頸部リンパ節転移3個以上、領域外リンパ節転移例、レベルIV転移例は有意に予後不良であり、今後の検討課題であると考えた。
抄録全体を表示
-
齋藤 和也, 寺尾 恭一, 村本 大輔, 森 一功, 村田 清高
2006 年52 巻3Supplement2 号 p.
S159-S163
発行日: 2006/05/20
公開日: 2013/05/10
ジャーナル
フリー
気管再建に大胸筋皮弁が奏功した1症例を経験した。気管の再建には、欠損部の大きさによりそれぞれの方法を選択する必要があると考えた。しかし、施設により方針はさまざまであり絶対的な方法はないが、当科における現時点での方針につき述べた。
抄録全体を表示
-
楠本 季佐子, 久保田 功, 楠 威志, 森 一功, 村田 清高
2006 年52 巻3Supplement2 号 p.
S164-S171
発行日: 2006/05/20
公開日: 2013/05/10
ジャーナル
フリー
近畿大学医学部附属病院耳鼻咽喉科では、以前より耳鼻咽喉科医と言語聴覚士が連携し、音声治療を行っている。今回、音声障害に対する言語聴覚士のかかわりについてみるために、言語治療室における音声障害患者の1992年4月から2001年3月までの10年間に言語治療室において音声治療を行った108例の (1) 男女別人数・平均年齢、(2) 疾患別の人数・男女別人数・平均年齢、(3) 各年度ごとの言語治療室に占める音声障害患者数の割合、(4) 言語治療室へ依頼されるまでの経過について調べ、その結果について考察を行った。
抄録全体を表示
-
久保田 功, 楠本 季佐子, 楠 威志, 村田 清高
2006 年52 巻3Supplement2 号 p.
S172-S177
発行日: 2006/05/20
公開日: 2013/05/10
ジャーナル
フリー
当科言語治療室を訪れた言語聴覚障害児に対して実施した言語学習能力診断検査 (ITPA) の結果を集計し、分析した。対象は4歳1カ月-9歳9カ月の102名 (男児72名、女児30名)。そのうち88名は言語発達遅滞であり、その他の14名は構音障害や吃音といった何らかの言語聴覚障害を持っていた。分析は各対象児の評価点に対して行った。その結果、視覚-運動回路に比べて聴覚-音声回路の平均値が低く、その中でも特に「文の構成」と「ことばの類推」が低かった。各項目の評価点の相関を見ると同じ回路同士で高く、「数の記憶」はほかの項目との相関が低かった。
抄録全体を表示
-
生理的な鼓膜形態の温存の意義
木村 忠司, 磯野 道夫, 唐澤 千明, 齋藤 和也, 村田 清高
2006 年52 巻3Supplement2 号 p.
S97-S101
発行日: 2006/05/20
公開日: 2013/05/10
ジャーナル
フリー
われわれは、外耳道には切開を加えず、鼓膜穿孔縁より上皮のみを剥離し、上皮と固有層との間に移植片を挿入し、いわゆるサンドイッチ法 (inlay法) に近い形とするMyringoplastyを開発し、従来のサンドイッチ法との術後聴力を比較し、検討を行った。その結果、従来のサンドイッチ法と比べ、われわれの開発したMyringoplastyにおいて有意に術後聴力の改善が得られた。この方法では、外耳道の剥離や、鼓膜の剥離もほとんど行わないため、外耳道の形態やanterior tympano meatal angleを温存でき、鼓膜の形態をほぼ生理的状態に維持できる利点がある。この差が術後聴力に影響を及ぼしたものと思われた。今後、従来のサンドイッチ法を行う際にも、鼓膜の剥離範囲を可能な限り少ない範囲で行う工夫が必要である。術後聴力のさらなる改善には、生理的な鼓膜形態の温存が重要な意味をもつものと考えられた。
抄録全体を表示