日本化学会誌(化学と工業化学)
Online ISSN : 2185-0925
Print ISSN : 0369-4577
1973 巻, 11 号
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  • 三角 省三, 磯部 敏幸, 比嘉 敏勝
    1973 年 1973 巻 11 号 p. 2039-2043
    発行日: 1973/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ガドリニウム(III)をドープした硝酸複塩Ln2Mg3(NO3)12・24H2O(ただし,Ln(III)≡Ce(III), Pr(III),Nd(III),Sm(III)およびEu(III))につき同形の単結晶を作成し,室温においてESR(電子スピン共鳴)スペクトルをXバンドで測定した。その結果,Gd(III)[4f7,8S7/2]のΔM=±1の遷移に対応する7本の微細構造が観測された。ESRスペクトルの角度変化を測定した結果,それらのスペクトルは各ホスト格子に対して類似した角度依存性を示した。スペクトルの解析にはC3kの有効スピソバミルトニアンを用いそのパラメーターを算定した。ゼロ磁場分裂パラメーターの中で寄与のもっとも大きいb の大きさとランタノイド収縮の因子である,(1)ホストランタノイド(III)のイオン半径,および,(2)ホストランタノイド(III)の<r2>との間には近似的に直線関係がなり立つことを見いだした。さらにまた,ゼロ磁場分裂エネルギー準位もb と同質の情報を与えるものと考えられた。スペクトル線位置の実測値と算定したパラメーターによる計算値はよい一致を示した。
  • 野沢 靖夫, 鈴木 正三, 東出 福司
    1973 年 1973 巻 11 号 p. 2043-2047
    発行日: 1973/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    γ線照射したデンプン,ギ酸デンプン,グルコース,アルギン酸ナトリウム,D-グルクロン酸,酸化デンプン,酸化セルロースについて,室温におけるESRスペクトルを測定した。デンプンにおいては典型的な二重線が,アルギン酸ナトリウムでは-重線が観測された。酸化デンプンおよび酸化セルロースではたがいに類似しているが複雑なスペクトルを示した。酸化デンプンのスペクトルは100,60分間熱処理することによりg値がわずかに異なる2種類の-重線シグナルの重なった幅広いシグナルに変化した。熱処理により減衰したESRシグナルの成分は照射デンプンに見られる二重線シグナルに類似していた。酸化デンプン-尿素および酸化デンプン-ポリピニルアルコールの反応生成物における結果をあわせ,照射した酸化デンプンに生ずるラジカルの化学的構造にういて検討した。
  • 渡辺 昭, 杉山 幸男
    1973 年 1973 巻 11 号 p. 2047-2051
    発行日: 1973/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    数種類の有機液体のノルマル化合物同族列の表面張力を0℃と60℃の間で測定し,つぎの実験式を得た。Σ=a-bt, a=c/Tb+d,そしてb=e/Tb,+f ここにΣ(dyn/cm)は表面張力,t(℃)は温度,Tb(K)は各化合物の標準沸点,aとbは各化合物固有の定数,そして。d,d,eおよびfは各同族列によって決まる定数である。これらの式で計算したΣの値は実測値とよく一致した。
  • 今村 哲也, 常盤 文克
    1973 年 1973 巻 11 号 p. 2051-2056
    発行日: 1973/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    アニオンとカチオンの価数が異なるいろいろの電解質水溶液中で,酸化鉄粒子とポリエステル,ナイロン,木綿繊維のζポテンシャル(ζ電位)を流動電位法により測定した。多価アニオンのリソ酸塩水溶液中でのζ電位は大きな負の値であり,一方,カチオソの電解質水溶液中では小さな負ないし正の値である。酸化鉄粒子と繊維間の全ポテンシャルエネルギーをそれぞれ球状,平板状と仮定してヘテロ凝集の理論から計算した。リソ酸塩水溶液中でのポテンシャルエネルギー極大値は他の電解質中よりも大きく,塩化カルシウム水溶液中でのポテンシャルエネルギーはつねに負で極大値を示さない。ポリエステル/酸化鉄粒子問の極大値はどの電解質水溶液中でも,ナイロンや木綿/酸化鉄粒子の場合より大きい。繊維への酸化鉄付着量は木綿>ナイロン>ポリエステルの順であるが,電解質の効果は繊維の種類によらずほぼ同じような傾向を示した。すなわちアニオンの価数が大きいほど酸化鉄付着量は小さく,一方,多価カチオンからなる電解質では付着量が大きい。一般にポテンシャルエネルギー極大値が増加するにつれ酸化鉄付着量は減少する傾向があり,半径0.1μの球状酸化鉄粒子と平板状繊維ではこの極大値が80~100kTになると酸化鉄は繊維へほとんど付着しなくなる。
  • 中垣 正幸, 嶋林 三郎
    1973 年 1973 巻 11 号 p. 2056-2062
    発行日: 1973/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    N-ドデシル-2-ピロリドン(以下D.P.と略記する)は純水にはほとんど溶解しないが,塩酸水溶液中では澄明な溶液が得られる。澄明な溶液の得られる塩酸濃度は温度に依存しており,高温側で2相分離する非イオン性界面活性剤の曇点に相当する温度と,低温側で2相分離するイオン性界面活性剤のクラフト点に相当する温度の2種の相分離温度をもっていることがわかった.
    D.P.が塩酸化されて,N-ドデシル-2-ピロリドン塩酸塩(以下D.P.HClと略記する)が形成されると親水性が増して澄明な溶液が得られるが,曇点以上の温度ではD.P.が遊離するために2相分離すると結論した.これらの関係を図2に示した。なおD.P.の塩酸化にともなう発熱量は0.88kcal/molであった。
    いろいろの塩酸水溶液を溶媒にして表面張力を測定した結果は図3に示すようになり,これに基づいてD.P.の水面への吸着量に関してLangmuir式のなり立つことを確かめた.この関係を図6に示す.またいろいろの塩酸濃度における臨界ミセル濃度(CMC),CMCにおける表面張力γcmc,吸着分子の占有面積Aなどは図7のように曇点を境として変化し,塩酸低濃度ではD.P.の形で存在するが.塩酸高濃度では塩酸化されてD.P.HClの形になること,および曇点近傍ではD.P.とD.P.HClとが共存していることを結論した。
  • 菖蒲 明己, 渋谷 吉昭, 吉田 忠, 加納 久雄
    1973 年 1973 巻 11 号 p. 2063-2071
    発行日: 1973/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    エチレン酸化反応後の銀触媒上には触媒活性を低下させる数種の表面種が残留している。特報ではエチレン酸化反応条件と表面残留物量の関係および表面残留物の形態について検討した。表面残留物量は酸化脱離法(280℃)で測定し,エチレン酸化反応は流通系で170~270℃の温度範囲で行なった。脱離成分は二酸化炭素と水であり,不可逆的吸着二酸化炭素の寄与は全脱離二酸化炭素量(表面残留物量)の16%以下であった。残留物量は反応温度216℃付近で最大となり,高温側では急激に減少した。この傾向は銀の吸着酸素量と温度の関係と対応し,とくに不可逆吸着酸素量と残留物量はほぼ直線関係にあった。また残留物量は酸化エチレン分圧(あるいはエチレン分圧)とも比例関係を示した。
    これらの結果から二酸化炭素以外の表面残留物は含酸素炭化水素化合物と推定した。
    18O濃縮酸素を用いた酸化脱離実験(脱離二酸化炭素中の酸素同位体比測定)の結果はこの含酸素炭化水素化合物はグリコール型(Ag-O-CH2-CH2-O-Ag)であり,酸素吸着活性座を被覆していることを示唆した。残留物量は反応時間とともに増加し,反応活性および選択率とよい相関性を示した。また酸化脱離後の水素還元(280℃)によって,触媒活性の再現性にすぐれた同一表面状態の作成が可能となった。
  • 菖蒲 明己, 沼辺 明博, 渡辺 雄三, 加納 久雄
    1973 年 1973 巻 11 号 p. 2071-2079
    発行日: 1973/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    エチレン酸化反応に用いられるAg-K2SO4触媒のC2H40による被毒の大きさ(η)のPC2H4O,PO2,PCO2およびPH2O依存性を流通系で調べた。表面残留物量は高温酸化脱離法で測定した。両者のデータはよく対応し,ηの大小は表面残留物の蓄積量に依存することを実証した。さらに流通系のデータを用いて銀触媒被毒に関する経験式を検討した結果,次式が得られた。
    i)C2H4Oによる被毒 η=
    ii)02,H2Oによる被毒抑制 η=
    iii)CO2による被毒抑制 η=
    ただし,kj(jはC2H4O,O2,H2OまたはCO2),mおよびnは定数,Kiは吸着平衡定数,η9はPC2H4O=0.05atm,PO2=0.20atmのときのηである。
    これらの結果の考察からO2,H2Oによる被毒抑制作用は酸素吸着活性座への解離吸着であり,触媒被毒の最初の過程は酸素吸着活性座へのC2H4O吸着にあることが示唆された。 CO2による被毒抑制作用についてはCO32-あるいはCO3-の生成が考えられ,これによる抑制効果は02,H2Oにくらぺて小さかった。
  • 井上 英一, 小門 宏, 大庭 有二
    1973 年 1973 巻 11 号 p. 2079-2083
    発行日: 1973/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    酸化亜鉛微粉体のアルミニウムとの接触系の2,3,5-トリフェニルテトラゾリウムクロリド(TTC)水溶液中での陰極としての性質が,光誘起電位変化により調べられた。この陰極反応は,1,3,5-トリフェニルポルマザンレッド(TF)を酸化亜鉛層上に生成した。 Al-ZnO対(センサー)とカロメル電極との電位差により測定された光誘起電位変化の時間積分値は,TFの生成量と比例するが,この比例関係はTF生成に用いられた電気量が,電位変化量の時間積分値とほぼ比例するために生ずることがわかった。TFの生成の律速は,光照射前とその直後においては,酸化亜鉛層を流れる電流によっているが,徐々にその界面でのTTCの拡散律速に変わった。
  • 金沢 孝文, 川副 博司, 野上 義人, 川島 糺
    1973 年 1973 巻 11 号 p. 2084-2089
    発行日: 1973/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    メタ(ハイポリ)リン酸ナトリウム水溶液を陽イオン交換し,これに塩化マグネシウム水溶液を加えてハイポリリン酸マグネシウムコアセルベートを合成した。
    得られたコアセルベートのMgO/P2O5モル比は0.8程度で,ハイポリ(メタ)塩の理論値1.0とのずれは,おもにNaの混入による。またペーパークロマトグラフィーにより,リン酸イオンのうち少なくとも85%以上がハイポリで,残りはオルトであることが判明した。ハイポリイオンの数平均重合度は,pH i滴定により20~50と与えられた。コアセルベートの加熱脱水にともなう縮合反応は, Naの有無により異なった経過を示す。Naが含まれないと,脱水縮合過程はMg(H2PO4)2 2H2Oのそれと正確に一致する。すなわちコアセルベート→Mg(H2PO4)→Mg(H2PO4)2→MgH2P2O7→Mg2P4O12である。少量のNaが共存すると,高温域でMg2P4O12のほかに別種の結晶物質Xが生成する。XはIRおよびラマンスペクトルから中間茎長のポリリン酸のナトリウムマグネシウム塩と推定され,Mg2P4O12-Na2O系のX線回折パターンから,3MgO Na3O 3P2O5(鎖長6)であると判断された。
  • 谷原 紘一, 中川 雅直
    1973 年 1973 巻 11 号 p. 2089-2095
    発行日: 1973/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    消石灰溶液中で分散させたベントナイト粒子の凝集におよぼす数種の陰イオンの影響を高分子凝集剤添加ならびに無添加の各場合について検討したe対象とした陰イオンはOH-, Cl-, CO3 2- およびSO4 2-である。
    NaOHまたはNaClの添加によってベントナイト懸濁液の沈降速度と演過速度はともに増大した。とくにNaOHの添加によって濾過速度がいちじるしく増大した。他方,Na2CO3,Na2SiO3またはNa2SO4の添加によってこの順序に両速度とも低下した。同様な影響がポリアクリル酸ナトリウム以外の供試高分子凝集剤添加の場合でも認められた。
    OH-存在下でのすぐれた凝集効果は,電解質によって懸濁粒子の電気二重層が収縮するために起こる通常の凝集のほかに,つぎのようなモソモリロナイト粒子の端面対板状面の凝集を仮定することによって説明することができる。すなわち,モソモリロナイトの破砕端面がまずOH-と反応し,引きつづいてCa2+を吸着して正に荷電することにより,負電荷をもつ板状面との間に端面対板状面の凝集が起こるものと考えた。
  • 門間 英毅, 金沢 孝文
    1973 年 1973 巻 11 号 p. 2096-2100
    発行日: 1973/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    フッ素アパタイト(FAp)に対する塩化アルミニウム水溶液の煮沸反応(湿式過程),塩化アルミニウム無水塩あるいは六水和物の加圧水熱反応,および湿式過程で得られた生成物の加熱変化(乾式過程)を検討した。
    湿式過程では,いったん溶解したP,FはpH4以上で別種固体物質として再沈殿し,これらが乾式過程においてFApの分解, Fの揮発の原因となった。乾式過程ではFApと中間生成AIPO4との間の反応が970℃付近から生じた。主反応は一次式で表わされ,その見かけ活性化エネルギー61.5kcal/molを得た。 Fの揮発は, FApの分解によるものと,湿式過程で生じたフッ化物からによるもの,の2種に基づくものであった。Pの揮発は1200℃まで認められなかった。
    加圧水熱反応で生成するAIPO4の結晶種は,無水塩を用いた場合はトリジマイト型,六水和物では大部分ベルリナイトであり,条件によってクリストバライト型,トリジマイト型も生成した。その他に358,416,485℃にDTA吸熱ピークを示す3種の未確認結晶種の生成を認めた。 以上から本締の反応方式は,FApの分解法およびAIPO4の合成法としても有意義であることがわかった.
  • 伊藤 幸夫, 増田 悦郎, 川上 敏雄
    1973 年 1973 巻 11 号 p. 2100-2104
    発行日: 1973/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    アミド硫酸アンモニウムの加圧合成における(NH4SO3)2NH+NH3 ←→ 2NH4SO3NH2の平衡を,温度180~250℃,アンモニアの圧10~60 kg/cm2において研究した。
    平衡組成はアミド硫酸アンモニウム側からの反応によって実測し,平衡混合物を直接分析して180,200,230,250℃におけるそれぞれアンモニアの圧10,30,60 kg/cm2の平衡組成を測定した。
    アミド硫酸アンモニウムの最適合成条件230,30 kg/cm2における平衡組成(wt%)は
    NH4SO3NH2 87.9, (NH4SO3)2NH 4.3, (NH4)2SO4 6.2
    また,平衡定数およびこれから求められた反応熱,自由エネルギーおよびエントロピー変化は,つぎのとおりである。
    K:453.2 K, 698;473.29 K, 365;493,2 K
    ΔH=-12.58kcal mol-1, ΔG=-5.31kcal mol-1(493 K), ΔS=-14.74cal deg-1 mol-1
  • 伊藤 幸夫, 安本 義郎
    1973 年 1973 巻 11 号 p. 2105-2110
    発行日: 1973/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    イミドピス硫酸アンモニウムを原料とするアミド硫酸アンモニウムの加圧合成における硫酸アンモニウムの生成を,反応温度210~310 ,アンモニアの圧2~30kg/cm2において研究した。硫酸アンモニウムの生成は,反応生成物のX線回折,ペーパークロマトグラフィーおよび化学分析によって確認した。硫酸アンモニウムの生成量は,温度およびアンモニアの圧の上昇によって増大し,とくにアンモニアの圧が30kg/cm2の場合は,250 付近からいちじるしく増大し,300 付近になると,大部分が硫酸アンモニウムからなる反応生成物が生じた。また,この反応では少量の硫黄が生じ,この硫黄は硫酸アンモニウムの生成量の増加とともに増大した。硫酸アンモニウムの生成機構は,アンモニアの存在は,アミド硫酸アンモニウムおよびイミドビス硫酸アンモニウムの脱水反応を促進し,生じた水は,残部の両物質と反応して硫酸アンモニウムになるものと考えた。全反応は次式で示される。
    なお,アミド硫酸アンモニウムの低加圧合成(温度230~280 ,アンモニアの圧2~5kg/cm2)についても検討した。
  • 今村 成一郎, 馬場 利明, 寺西 博, 武上 善信
    1973 年 1973 巻 11 号 p. 2110-2116
    発行日: 1973/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    塩化銅触媒によるべンジルヒドロペルオキシドの分解をピリジン溶媒中で行なった。銅(I)塩の分解活性は大きく,反応はラジカル的に進行した。銅(II)塩を用いた場合にも窒素雰囲気下ではラジカル分解が起こるが,活性な銅(I)塩の生成が防げられる酸素の存在下ではラジカル分解は抑制ざれ,かわってα-位の水素の脱離による脱水反応が優先する。脱水反応に対する銅(II)塩の触媒作用はヒドロペルナキシドの酸素を攻撃することによりヒドロペルオキシド-銅(II)塩の錯体を形成し,α-位の水素と炭素の結合を弱めるものと思われるが,この錯体の生成定数はきわめて小さいものと推定された。また,ラジカル分解の中間体であるベンジルオキシラジカルの生成物への移行の段階におよぼす銅塩-ピリジン系の特異な作用についても若干考察を行なった。
  • 野崎 亨, 春日 邦宣
    1973 年 1973 巻 11 号 p. 2117-2122
    発行日: 1973/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    pH1.4~2.5,μ=O.1,25℃での水溶液中で,260nmでの吸光度の経時変化を測定して,EDTA類似のEDTA OH,DTPAの鉄(III)錯体とガリウム(III)との置換反応速度を調べ,正,逆両反応速度式を求めた,各反応径路の全反応速度に対する寄与率を計算した結果,EDTA OH系正反応は錯体の解離段階が律速である解離径路を経て,DTPA系正反応は複核中間体生成過程を経て,EDTA OH,DTPA系逆反応はそれぞれ両径路を経て進行することが推定された。また,ガリウム(III)-EDTA OH,DTPA錯体の濃度安定度定数の対数は,平衡状態での吸光度測定により,それぞれ19.4,28.1の値が得られた(20℃)
  • 重松 恒信, 松井 正和, 藤野 治, 木下 喜代三
    1973 年 1973 巻 11 号 p. 2123-2126
    発行日: 1973/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    炭素チューブ原子化装置を使用し,鉛の原子吸光分析を行なった。外径6.35mm,長さ70mmの炭素棒を加工し,内径2.5~5.0mmの炭素チューブを作製した。感度は内径が小さいほど,変動係数は内径が大きいほどよい結果を得た。本研究では再現性や試料挿入の容易さなどから,内径4.0~4.5mmの炭素チューブを使用した。原子化装置に流し込むガスの種類について検討した結果,アルゴン,窒素,ヘリウムと空気のピーク吸光度比は1:1:0.9:0。7であった。またこれらのガスの流速によってもピーク吸光度に影響を与え,流速増加によって吸光度は減少した。
    鉛を同量にたもち,試料容量を5μlから40μlに増加させると,10μlまでは吸光度に変化はないが20μl以上になると感度は減少した。試料容量5μlおよびアルゴン0.4l/minの流速で鉛の(5~50)x10-10gの範囲でわずかに直線からずれる検量線を得た。検出限界は6.5x10-11g,変動係数は2.8%であった。
    鉛の100倍量の元素による干渉はほとんど認められないが,1000倍では若干の元素が大きく干渉する。
    つぎに本法を用いて海水中の鉛の定量を試みた。鉛はDDTC-DIBK系に抽出し,有機相の10μlを測定試料とした。静岡県駿河湾海水で1.7~8.0ppbの値を得た。
  • 金子 浩子, 金子 啓二
    1973 年 1973 巻 11 号 p. 2127-2134
    発行日: 1973/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    本報告では,シクロヘキサンジアミン四酢酸と酢酸およびN-ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸と酢酸の各混合溶液中で生ずるチタン(IV)錯体の良好なポーラログラフ波について検討し,各錯体の解離定数を決定した。
    半波電位のpHおよびキレート剤濃度に対する依存性,光度法などで錯体の組成を求め,電極反応機構を推定した。キレート剤としてシクロヘキサンジアミン四酢酸(CyDTA,Xと略記する)を用いた場合には,pH約1.3以下では,その半波電位はpHに無関係に一定値を示し,
    TiX + e ←→ TiX-
    の還元反応が起こるものと思われる。pHがそれ以上になると電極反応に1~2個の水素イオンが関与しはじめ半波電位はpHとともに変化し,1.3<pH<3ではTi(OH)X-が,3<pH<5.5ではTi・(OH)2X2-が還元されて, TiX-になると推定される。さらにpHが増加(pH>7)すると波は非可逆となり拡散電流は減少し,溶液はコロイド状を呈する。
    キレート剤としてN-ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸(EDTA・OH,Yと略記する)を用いた場合には,pH<4でTi(OH)Yが還元されてTiYになるものと思われる。
    実験結果から,チタン(IV)-CyDTA,チタン(IV)-EDTA・OH,チタン(III)-CyDTAおよびチタン(III)-EDTA・OH各キレートの溶液中での組成,解離定数などを求めた。
  • 山崎 満, 宇佐美 隆生, 武内 次夫
    1973 年 1973 巻 11 号 p. 2135-2141
    発行日: 1973/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    21種類の o-,m-,p-二置換ベンゼンと12種類の多置換ベンゼンの13C NMRスペクトルをCDCl3中あるいはd6-DMSO中で測定した。共鳴線は1)相対シグナル強度,2)オフレゾナンスデカップリングの実験,3)類似化合物の化学シフト値を根拠にして帰属した。置換ベンゼンの精度の高い13C化学シフト値を決定した.
    置換ベンゼンの環炭素の13C化学シフトの加成性を検討した。その結果,単純加成則から計算したo-,m-,p-二置換ベンゼンの環炭素の化学シフト値はオルト置換体の置換基結合部分の環炭素を除き,実測値と約1ppn以内で一致することが見いだされた。多置換ベソゼソに対しては修正加成則を提案した。修正加成則の使用により,o-,m-,p-クレソチン酸,多置換メチルベンゼン,多置換クロロベンゼンの化学シフトの計算値は実測値と1ppm以内で一致することが見いだされた。
  • 新井 五郎, 浜野 裕司
    1973 年 1973 巻 11 号 p. 2142-2146
    発行日: 1973/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    P-ベンゾキノンスルホン酸カリウムは,中性およびアルカリ性緩衝液中で水酸化物イオンと反応することが,ポーラログラフ法および吸光光度法で確かめられた。その反応において,水酸化物イオンはp-ベンゾキノンスルホン酸カリウムのカルボニル基の炭素原子に付加するものと考えられた。また,この水酸化物イオン付加体と未付加体のp-ペソゾキノソスルホソ酸カリウムとの間で酸化還元反応が起こり,ヒドロベンゾキノンスルホン酸カリウムと水酸化物イオン付加体の酸化体を生じた。
  • 大久保 捷敏, 北川 太
    1973 年 1973 巻 11 号 p. 2147-2151
    発行日: 1973/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    CNDO/2分子軌道法によりアルコキシルおよびアルキルペルオキシル遊離基ならびにアルキルヒドロペルオキシドの構造および電子状態について検討を加えた。アルコキシル遊離基の炭素一酸素結合距離は1.35~1.37Aであり,アルキル基が大きくなるほど伸長し,アルキルペルオキシル遊離基およびアルキルヒドロペルオキシドのα酸素-β酸素結合距離はそれぞれ1.19Aおよび1.23A,炭素-α酸素-β酸素結合角はそれぞれ111 および109 と評価された。 CNDO/2法で算出したイオン化エネルギーは実測値より大きく見積られる傾向にあったが,ヒドロペルオキシルおよびメチルペルオキシル遊離基のg値(それぞれ2.011および2.003)は実験値(2.015)とよい一致を示した。最後に上記遊離基の炭素一酸素あるいはα酸素-β酸素結合の特徴について考察を加えた。
  • 徳光 隆雄, 林 隆之
    1973 年 1973 巻 11 号 p. 2152-2156
    発行日: 1973/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    B-アミノ=a, B-不飽和ケトン,すなわち,4-輝撫ミノ=3-ペソテソ-2-オソ[1],3- eszaアミノ4-フェニル-2-ブテソ-1-オソ[2]および3-置換アミノ=1, 3-ジブェニル-2-プロペソ-1-オン[3](置換基;a:H,b:Me, c:Ph)のハゲソ化反応およびチオシアン化反応を試みた。[l a~c],[2a~c]および[3a~c]をN,-クロローまたはN-プロモースクシソイミドでハロゲン化し,4- ,eSi換アミノ=3-ハ -3-ペンチソ-2- (C1[4 a~c], Br[7 a~c]),3- 置換アミノ=2-クロ-1,-フェニル-2-ブテソ-1-オソ[5 a ]および3-置換アミノ=1, 3-ジフェニル-2-ハロ-2-プロペン-1-オソ(C1[6a~c];Br[8a~c])を合成した.[la~c]および[2a]に-15~0 Cでジチオ シアンを作用させ,4-置換アミノニチオシアナト-3,-ぺ テン-2-オン[9a~c]および3-アミノ-1-フェニル-2-チオシアナト-2-ブテソ-1-オン[10a]を得た。生成物の構造はいずれも分子内水素結合したエナミノケトソ形キレー構造であることを確かめ,キレート壕におよぼすa-置換基の効果について考察した。
  • 山口 八郎, 藤井 正
    1973 年 1973 巻 11 号 p. 2157-2160
    発行日: 1973/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    温和なスルホン化剤として利用できるイミドピス硫酸塩はスルホン化にさいしてSO3とLewis塩基との錯体となり,スルホン化の反応はこのスルホン化剤の構成塩基と第二の塩基すなわち被スルホン化体との塩基交換であると考えた。
    B:SO3 + B : → B' :SO3 + B:
    したがってスルホン化の反応条件下イミドピス硫酸の二(第三アンモニウム)塩から第三アミン-SO3錯体の生成が予想され,実験の結果第三アミンにトリアルキルアミンおよびピリジン塩基を用いた場合
    HN-SO3HR3N → R3N SO3 + H3NSO3H R3N
    には,それぞれ対応する第三アミンのSO3錯体が単離できた。ところがN,N-ジアルキルアニリンの場合にはSO3錯体は得られず芳香環にスルホン酸基の導入されたものばかりができた。しかしこれらも予想した生成物が一度生成したのち,さらに二次的に変化したものであることがわかった。
  • 有田 静児, 平井 伸子, 西村 幸雄, 竹下 健次郎
    1973 年 1973 巻 11 号 p. 2160-2165
    発行日: 1973/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    安息香酸によるN,N-二置換ホルムアミド,N-メチルラクタムおよN-メチル環状イミドの電解ベンゾイルオキシ化を試みた。N,N-二置換ホルムアミドでは,置換基がかさ高くなるにつれて酸の反応に対する電流効率は低下し,ベンゾイルオキシ化反応に対するアミドのN-アルキル基の立体効果は非常に大きいことがわかった。また,N-メチルホルムアニリドの場合,すなわちフェニル基に窒素が直接結合している場合には,酸はまったく減少せず前報のN,N-ジメチルベンズアミドの場合とは異なってベソゾイルオキシ化は起こらないことが認められた。つぎに環状アミンのホルムアミド,N-メチルラクタムについては電流密度を小さくして電解すると酸の反応に対する電流効率は増加した。また,N-メチルコハク酸イミドでは,ごくわずかしか反応が起こらず,N-メチルフタルイミドではまったく起こらなかった。なお,これらの電解生成物はいずれも窒素のα-位にベンゾイルオキシ基が置換されたものであった。しかし,N-メチルラクタムおよびN-メチル環状イミドでは, N-メチル基にベソゾイルオキシ基が置換したものであり,環内のメチレン基に置換したものは得られなかった。
  • 軽部 昭夫, 小野田 亮一
    1973 年 1973 巻 11 号 p. 2166-2170
    発行日: 1973/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    P-,m-およびo-ヒドロキシベンズアルデヒド([2],[7]および[12])とフェニル酢酸[1]のトリエチルアミン-無水酢酸による反応について検討した。
    反応溶液のアルカリ抽出を水酸化ナトリウム溶液のかわりに炭酸水素ナトリウム溶液で行ない,pHの差によって分離する方法で,[2]および[7]の場合はα-フェニルアセトキシケイ皮酸のトランス体([3A],[8A]),およびシス体([3B],[8B])の両体を得ることができ,[12]の場合は,トランス体[13A]と3-フェニルクマリン[15]を得た。
    それぞれのトランス体を合成条件で加熱還流すると,[3A]と[8A]はそれぞれトランス-シス体の平衡混合物になり,[13A]は[15]に変化する。また,得られたα-フェニルアセトキシケイ皮酸をアルカリで加水分解すると,[3B]を除いてはそれぞれ相当するオキシ酸になるが,シス酸である[3B]のみはトランスのオキシ酸[4A]になることを見いだした。
  • 小山 徹, 石川 倶通, 山崎 康男
    1973 年 1973 巻 11 号 p. 2170-2176
    発行日: 1973/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    トリス(2-アセトキシエチル)イソシアヌラート(TAEIC),トリス(メトキシカルボニルメチル)イソシアヌラート(TMCMIC),およびトリス(2-メトキシカルボニルエチル)イソシアヌラート(TMCEIC)のアルカリ加水分解ならびにトリス(2,3-エポキシプロピル)イソシアヌラート(TEPIC)と置換安息香酸またはチオ硫酸ナトリウムの反応を速度論的にいろいろな条件で検討した。
    これらの反応が
    A+B → C+F,A+C → D+F,A+D → E+F
    で表わされる三段階逐次競争二次反応で進行するとして,その一般的な解法により三つの速度定数を決定した。
    TAEICの加水分解およびTEPICと置換安息香酸の反応ではk1/k3とk2/k3の比がそれぞれ3および2であるのに対して,TMCMICおよびTMCEICの加水分解およびTEPICとチオ硫酸ナトリウムの反応ではk1/k3>3,k2/k3>2であることが認められた。これらの結果は,各段階でイソシアヌラートイオンが生成したり中性分子が生成したりすることと関係があるものと考えられる。
  • 和田 冨美夫, 松田 勗
    1973 年 1973 巻 11 号 p. 2177-2182
    発行日: 1973/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    一酸化炭素加圧下において鉄カルボニル-第三アミン混合物と水あるいは水素の反応によって生成したテトラカルボニル(ヒドロ)鉄アニオン(単核アニオン)の接触的な還元能力を調べるため,メチルビニルケトン,アクリル酸メチル,メタクリル酸エチル,クロトン酸メチルおよびアクリロニトリルの一酸化炭素加圧下による還元を行なった。
    単核アニオンの量,および還元生成物の時間的変化をそれぞれ赤外吸収(HFe(CO)4- の1880cm-1の吸収),およびガスクロマトグラフにより定量して求めた。
    水を水素源とする場合,活性化された二重結合の還元は100 Cで容易に進み,過剃の水の存在下では単核アニオンが再生されて接触的な還元が進むことがわかった。水の量の増加および第三アミン(pKa 10)の立体的大きさの減少により還元速度と単核アニオンの再生速度がともに増大した。
    水素-一酸化炭素混合ガスによってつくった単核アニオンを,100 Cにおいて還元に用いた結果から,水が存在しない場合には溶媒の関与などにより,単核アニオンが還元不活性な鉄カルボニル種に変わるものと推定された。
  • 藤田 力, 須賀 恭一, 渡辺 昭次
    1973 年 1973 巻 11 号 p. 2182-2187
    発行日: 1973/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    テトラヒドロフランーベンゼン混合溶媒中におけるナトリウムナフタレンとイソプレンの反応によりイソプレンの二量体である2,3,6-トリメチル-1,5-ヘプタジエソ[1](79%), 2,6-ジメチル-2,6-オクタジェン[2](1%), 2,7-ジメチル-2,6-オクタジエソ[3](20%)の混合物を50%の収率で得た。ところがテトラヒドロフランートルエン混合溶媒中,ナトリウムナフタレンとイソプレンの反応ではイソプレン二量体はわずか8%しか得られずトルエン側鎖がイソプレンによリアルキル化された2-メチル-5-フェニル-2-ペンテン[4](53%), 3-メチル-5-フェニル-2-ヘプンテン[5](12%), 2,8-ジメチル-5-フェニルーノナ-2,7-ジェン[6](16%), 5-イソプロペニル-2-メチル-7-フェニル-2-ヘプテン[7](13%)を主成分とする混合物を80%の収率で得た。その他の側鎖をもつ芳香族化合物,エチルベンゼン,キシレンなどとテトラヒドロブランとの混合溶媒中におけるナトリウムナフタレンとイソプレンの反応についても同様にして試みそれぞれ相当するアルキル化物を得た。トルエンの側鎖のアルキル化を金属アルカリを用い高温高圧下に行なう反応例はあるが,この反応のように常温常圧下でのアルキル化を行なった例はない。
  • 千葉 耕司, 戸村 真也
    1973 年 1973 巻 11 号 p. 2188-2190
    発行日: 1973/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ヘキサメチルベンゼンをアルカリ性過マンガン酸カリウム溶液とともに加温しても反応は非常に遅いが,あちかじめ50%硝酸で1~2分間加温して得られる黄色物質をアルカリニマンガン酸カリウム溶液で処理すると,反応は容易に進行し,ジメチルピロメリト酸を生ずることを認めた。硝酸で前処理して得られる黄色物質はカルボソ酸類をほとんど含有しないが,熱時に水酸化カリウム溶液に可溶であり,少量のビス-(ニトロメチル)プレニテシおよび,いくつかの未知物質を含有していることを認めた。また,ジメチルピメリト酸テトラメチルと4, 4 -ジアミノジフェニルメタンとからポリイミドを製造した。このものは,ピロメリト酸テトラメチルから,ほぼ同様にして製造したポリイミドと同等以上の耐熱怪を示した。
  • 林 卓, 斎藤 肇
    1973 年 1973 巻 11 号 p. 2191-2196
    発行日: 1973/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ホスホニトリル三量体 (PNR2)3の側鎖墓Rを変化させ,電導性を調べた結果。比鍾抗pはいずれも(PNCl2)3よりも小さく,つぎのように表わされた。これは感応効果の順にほぼしたがっており,電子供与性の強い側鎖墓ほど比抵抗示小さくなる傾向を示した。またこれらの比抵抗値はll 11 - 10 13 Ω,であった。

    チオアミド誘導体においては.50~70 C付近でlog p~l/Tプロット上に属新点ぶ認めれ, E0値は低温側と高温側で異なり,いずれも低温側の E G値が小さくなった。
    一方,(PNS) 重合体は,ホスホニトリル三量体にくらべ比抵抗値および E ,値が小さくなった。これはP=N共役二重結合の増加にしたがい,π電子による電子伝導が容易になったためと考えられた。この重合体は500℃まで加熱減量を示さず,比抵抗殖は6.9x10 2Ω,であった。
    またこれらのホスホニトリル化合物の電気伝導性は,約500~1000V/cm までオームの法則にしたがった。
  • 高光 永明, 岡村 武, 西村 正昭
    1973 年 1973 巻 11 号 p. 2196-2201
    発行日: 1973/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ノボラックとヘキサミンの硬化に対するノボラック中に含有する遊離フェノールおよびヘキサミン添加量の影響を調べる目的で,フェノールとヘキサミン,ノボラックとヘキサミン,およびジヒドロキシジフェニルメタンとヘキサミンの間に起こる諸反応をTG-DSC(TG付差動熱量分析),赤外および核磁気共鳴スペクトルによって研究し,さらに,この硬化反応の速度論的データをとった。遊離フェノールが多量に存在するとノボラックの融点を降下させ,ゲル化を促進する。熱硬化にさいして遊離フェノールにヘキサミンと複合体を形成し,その複合体の一部は120 Cまでに分解蒸発するが,残部は130 C以上の反応に関与する。また,ノボラックとヘキサミンの反応はフェノールとヘキサミンの反応と同じように進行し,130 C付近の吸熱につついてジベンジルァミン型化合物を導く反応およびメチレン交差結合構造を生成する両反応が130~170 Cの領域で強い発熱をともなって起こる。この反応の速度定数が一次則にしたがって計算され,その見かけの活性化エネルギーは Kissinger および Fava のいずれの方法でも約20kcal/molの値であった。
  • 平田 光男, 岩井 信次
    1973 年 1973 巻 11 号 p. 2202-2206
    発行日: 1973/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    水に浸潰したときの3種の組成(メタグリル酸エチル(EMA)/メタクリル酸グリシジル(GMA)=9/1,8/2,713モル比)の共重合体の収着過程をζポテンシャルの経時的減少過程から追究した。共重合体のガラス転移点Tgを含む温度範囲(室温から約80℃)で測定した。ζポテンシャル(流動電位法から求まる)から得られる速度定数Kを収着から直接得られる拡散定数Dと比較した。その結果は以下のとおりである。
    (1)Kは収着過程の組成依存を明確に示した。すなわち, GMAの増加にしたがってT > Tgにおける活性化エネルギー E 1 2(負)は増加し, T > T,における活性化エネルギー E l zは減少した。
    (2)Dから得られる活性化エネルギー(E 1 S と E 2 s)は組成依存を明確には示さなかった。しかし,室温に近い温度においては収着量への水和の寄与がみられた(組成8/2と7/3共重合体)。
  • 甘利 武司, 中村 亦夫
    1973 年 1973 巻 11 号 p. 2207-2214
    発行日: 1973/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    超音波領域におけるアルギン酸ナトリウム希薄水溶液の動的粘弾性を新たに水溶液用として開発された巨大水晶振動子,接合水晶振動子などによる水晶ねじれ振動子法によって測定した。とくに高分子電解質の希薄水溶液の測定では水分子の会合の影響に留意しなければならなかった。分子鎖の電解質的な性質は溶液濃度がうすいほど顕著にあらわれ,したがって食塩添加の効果も大きかった。
    水溶液中のアルギン酸ナトリウムの形態を検討するために零濃度に外挿して求める複素固有剛性率を無限希釈における分子論と量的に比較する必要があるが,高分子電解質溶液の特性として,G /c(G -wn2)/cは(n0-na)/cと同様,濃度の減少とともにいちじるしく増大するという非線形性を示したので,固有値を求めるのにFuoss-Straussの等式を用いた。アルギン酸ナトリウム水溶液の極限濃度における固有弾性率[G ],[G ]の値は同じ高分子電解質であるカルボキシメチルセルロース水溶液と同様,溶液中の分子鎖の独特な形態を反映し,いかなる分子論の理論曲線とも合致しなかったが,食塩を加えて分子鎖間の電気的な反発力を抑制することにより,実験値はランダムコイル型分子のRouse理論に近づいた。
  • 瀬尾 邦昭, 猪川 三郎
    1973 年 1973 巻 11 号 p. 2215
    発行日: 1973/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    酢酸ビニル(VAc)系ポプコン重合について研究した。以下の実験で,ポプコン重合は窒素気流中55Cで行なわれた。
    VAcは橋かけ剤(エチレングリコールジアクリラート(EGDA),エチレングリコールジメタクリラート(EGDMA))の量が5%以上でポプコン重合した。いろいろのポプコン重合物からつくった種を用いて,VAcのポプコン重合性を検討した。溶媒中で加熱処理したVAc-EGDA系の種を用いて,n一ブチルメタクリラート(n-BMA)のポプコン重合速度を測定した。 VAc-,プロピオン酸ビニルー,酪酸ビニルー,バレリアン酸ビニルーEGDA系,VAc-EGDMA系, VAc(n-BMA-EGDMA系の種)系,n-BMA(VAc-EGDA系の種)系ポプコン重合物を10%NaOH,水溶液-アセトン中で加水分解し,水-アセトンに不溶な部分を分離した。
    以上の実験結果から,つぎのことを考察した。すなわち,(1)ポプコン重合の開始は,種中に埋蔵されている微量のラジカルで起こる。(2)種中および重合中にできる橋かけがポプコン重合に重要な役割を演じている。(3)VAc系ポプコン重合では,主鎖および側鎖ヘラジカルが連鎖移動し,そこから橋かけができる。
  • 長田 義仁, 阿部 康次, 土田 英俊
    1973 年 1973 巻 11 号 p. 2219-2222
    発行日: 1973/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    主鎖た荷電を有するポリカチオンとポリカルボン酸(ポリメタクリル酸,ポリアクリル酸ポリイタコソ酸)とのポリイオンコンプレックス生成反応機構を電位差滴定によって検討した。この系の反応では,ポリカチオンの方が低分子のカチオン化合物と比較してはるかに多量のプロトンを放出し,鎖長すなわち電荷数がコンプレックス形成の重要な役割を果たすことが明らかとなった。さらにCoulomb力だけでなく,疎水結含もコソプレックス形成に影響することを,構造の異なるポリカルボン酸の比較を行なうことによって明らかにした。分子内相互作用の強さを示すHenderson-Hasselbach式のn'値を検討すると,ポリメタクリル酸では2.3であるが,ポリカチオンが共存すると1.4に低下し,隣接した解離カルボキシル基間の静電反発力がコンプレックス形成によりきわめて有効に除去されていることが示された。以上の結果から,高分子電解質の解離度や疎水性基がコソプレックス形成能を大きく支配することが結論された。
  • 長田 義仁, 阿部 康次, 土田 英俊
    1973 年 1973 巻 11 号 p. 2222-2226
    発行日: 1973/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    主鎖荷電型ポリカチオンとポリカルボン酸(ポリメタクリル酸,ポリアクリル酸ポリイタコン酸)の間のポリイオンコンプレックス生成反応機構を,系の電位差滴定,電導度滴定,粘度測定から検討した。コンプレックスの組成はポリカルボン酸の解離度で決まる.ポリカルボン酸の解離度は10 -4~10-2mol/lの濃度範囲で通常数パーセントであるが,ポリカチオンが共存すると20%近くまで解離する。このため両者を混合して得られるポリイオンコソプレックスは,イオン席の単位モル比で[カルボン酸]/[カチオン]=5の組成となる。この系にアルカリを添加して解離度を大きくすると,コンプレックス組成は連続的に変化し等モル組成物が得られる。
    これらの結果から生成するポリイオンコンプレックスの構造は環状から梯子状まで任意に連続変化させ得ることが結論され,これがメカノケミカルシステムの一例であると推定した。
  • 藤永 太一郎, 桜 幸子
    1973 年 1973 巻 11 号 p. 2227-2228
    発行日: 1973/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    The equivalent conductances of alkali, alkaline earth, and tetraalkylammonium perchlorates were measured in dimethylacetamide (DMA); the values obtained for Li+, Rb+, Cs+, Ca2+, Sr2+, Ba2+, Me4N+, Et4N+, Hex4N+ and tetradecyl-dimethyl-benzyl-ammonium (TDDMB) ion were 21.3 4, 25.1 4, 26.4 1, 42.0 2, 41.6 8, 41.6 0, 34.8 5, 33.1 6, 18.81, and 18.6 0, respectively.
    Therefore, the Stokes law radius of a monovalent cation is the smallest for Me4N+ and the largest for TDDMB ion. The solvation number obtained from the effective ionic radius of Robinson and Stokes is 2-3 for alkali ions except Li+ and approximately 4 for alkaline earth ions and Li+.
  • 助野 敏雄, 白崎 高保
    1973 年 1973 巻 11 号 p. 2229-2230
    発行日: 1973/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Generally, the acidity and the basicity of the solid catalysts have been measured by Benesis'method. But by this method, the acidity and basicity of the colored catalyst, such as chromia, or the basicity of the white catalyst having strong acid, such as silica-alumina could hardly be measured. However, the acidity and the basicity of the above mentioned catalysts, chromia and silica-alumina, could be measured by the new titration method using a small amount of the white acidic (basic) solid oxides colored with the indicators on their surfaces.
  • 谷 忠昭
    1973 年 1973 巻 11 号 p. 2231-2233
    発行日: 1973/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Effects of cadmium ion (Cd2 ) upon spectral sensitizations by 3, 3 -diethyl-thiatricarbocyanine (1) and phenosafranine (2) were studied. After Cd2 was added to tabular AgBr emulsions, they were digested at 50 C for 30 minutes. The spectrally sensitizing ability of (2) expressed by the ratio of minus-blue to blue speed of the dyed emulsion was improved by the addition of Cd2, whereas that of (1) was not. This result is considered to support the modified electron transfer mechanism for spectral sensitization proposed by the present author.
  • 谷 忠昭
    1973 年 1973 巻 11 号 p. 2233-2236
    発行日: 1973/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    In emulsions composed of octahedral AgBr grains(about O.7 μ in size), the decrease of photographic speed inherent in the AgBr grains (i. e., desensitization) caused by 3, 3-diethyl-9-methylthiacarbocyanine bromide was accelerated by sulfur sensitization, and depressed by reduction sensitization. These results are consistent with the widely accepted mechanism of sulfur sensitization, and also with the mechanism of reduction sensitization of the octahedral AgBr grains proposed by the present author.
  • 酒井 義郎, 定岡 芳彦, 高橋 道久
    1973 年 1973 巻 11 号 p. 2236-2237
    発行日: 1973/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    The electric conductivity of aqueous solutions of formic acid, acetic acid, propionic acid, hydrochloric acid, sodium chloride, sodium formate, sodium acetate, and sodium propionate was measured under the irradiation of ultrasonic wave. The conductivity increased and reached a limiting value within ten minutes. This change was found to be reversible. It was confirmed that the increase of conductivity was larger than that due to the rise in temperature caused by ultrasonic irradiation. In the case of hydrochloric acid, a pronounced increase of conductivity was observed. It seems that the protonic transition is affected more effectively by ultrasonic wave than the Stokes type migration.
  • 田中 昌也, 水谷 健一, 松野 邦生
    1973 年 1973 巻 11 号 p. 2238-2240
    発行日: 1973/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    The distribution coefficient (Kd) of aminobenzenesulfonic acidisomers on several anionexchange resins was determined and possibility of the chromatographic separation was investigated. As expected from Kd value, o-isomer was easily separated from other isomers with Dowex 21K using O.2mol/l sodium chloride as eluant, whereas mutual separation of m- and pisomer was achieved only at lower pH such as 2 with dilute hydrochloric acid as eluant, m-isormer being eluted faster than p-isomer. Thus separation of the isomers with an anionexchange resin is considered to be possible under an appropriate condition, as shown in Fig.2.
  • 湯本 高在
    1973 年 1973 巻 11 号 p. 2240-2242
    発行日: 1973/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Formation of β -isopropylnaphthalene by the transisopropylation from isopropyl-substituted benzenes to naphthalene in the presence of AlCl3 was studied.
    A mixture of diisopropylbenzene, naphthalene and AlCl3 (molar ratio 2: 1: 0.2) was allowed to react at 60-90 C for 6 hrs, and isopropylnaphthalene (β -isomer 78.8%)was obtained in 36% yield. The yield decreased in the order: diisopropylbenzene, ρ -cymene > cumene.
  • 吉村 寿次, 藤森 邦彦, 杉山 雄一
    1973 年 1973 巻 11 号 p. 2242-2244
    発行日: 1973/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Synthesis of unsymmetric N, N> -disubstituted amidinoformic acid (7) by the reaction of N-substituted derivative (2) with amines at an elevated temperature was unsuceessful due to easy decarboxylation of (2), however, (7) was smoothly obtained by condensation of N-substitutedthiooxamidic acid (6) with amines in methanol at a room temperature in the presence of mercuric oxide. Compound (6) was obtained by condensation of potassium thiooxamidate (1)and amines in a large amount of water, and successive extraction of the acidified reaction mixture with ether.
  • 井本 稔, 中村 栄顯, 大内 辰郎
    1973 年 1973 巻 11 号 p. 2244-2246
    発行日: 1973/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    The vinyl Po1ymerizations initiated by the system of dibuty1tin dilaurate (DBTDL) and carbon tetrach1oride(CCI4), or DBTDL and cupric ion(Cu(II))were carried out in the presence of water. It was found that the fomer system accelerated the polymerization of methyl methacrylate (MMA), acry1onltrile and styrene, but the latter system promoted selectively the polymerization of MMA. The polymerization conversion was not related to the oxidation-reduction Potential of metalic ion. There was the optimal amount of CCI4 or Cu(II) in the presence of Water and consequently, the maximal po1ymerization conversion was recognized. In the system of DBTDL, CCl 4 and water, the addition of water did not practically influence the polymerization.
    Moreover, the polymerizations with both system were confirmed to proceed through the radical mechanisms and the overall activation energies (E) were found to be as follows:
    DBTDL-CCl4-H20 system E=11. Okca1/mo1.
    DBTDL-Cu(II)-H2O system E=14.6kcal/mo1.
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