日本化学会誌(化学と工業化学)
Online ISSN : 2185-0925
Print ISSN : 0369-4577
1983 巻, 4 号
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  • 新井 五郎, 鈴木 明世
    1983 年 1983 巻 4 号 p. 465-469
    発行日: 1983/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    著者らがこれまで行なってきた“p-ベンゾキノン類と亜硫酸ナトリウムとの反応と両者の酸化還元電位との関係”に関する一連の研究で扱った各種キノン類と亜硫酸ナトリウムとの反応系に加えて,新た3種の反応系(フェニル-P-ベンゾキノン(5-HyNQ),t-ブチル-P-ベンゾキノン(t-BuBQ)および5-ヒドロキシ-1,4-ナフトキノン(5-HyNQ)と亜硫酸ナトリウムとの反応系)を追加し,付加反応におけるプロトトロピー速度とΔE値(=Eq類-Ess)との関係を明らかにし,付加反応を動力学的に考察した。
  • 山添 舜, 野口 真理, 清山 哲郎
    1983 年 1983 巻 4 号 p. 470-474
    発行日: 1983/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    エチルメチルヶトン(EMK)からのビアセチルの接触合成におけるCoを含む9種類のスピネルの触媒能を調べた。触媒は,その反応生成物分布により,(1)ビアセチル生成が優先するもり,(2)酸化的切断反応が優先するもの,に分類された。(1)の触媒のうち,ビアセチル選択率ではCo2NiO4,ビアセチル比活性ではCuCo2O4がもっともすぐれていた。(2)の触媒では,Co2MnO4の場合,酢酸とアセトアルデヒドが等量生成するが,MgCo2O4およびCoAl2O4の場合は,アセトアルデヒドの生成量が多かった。触媒活性は, スピネルがM2+Co2O4,Co2+M23+O4,Co22+M4+O4のいずれの型に属するかによって異なり,各グループ内ではロバルトと複合されるもう一方の酸化物MOnの生成熱や金属イオンMnn+の電気陰性度を用いて,触媒活性を整理できる。このような整理において,逆スピネル構造をもつCo2NiO4とFe2CoO4がこの相関からはずれることから,コバルトは八面体サイトよりも四面体サイトを占める方が活性であると推論した。一方,このような整理とは別に,TPDにより触媒への酸素吸着量を測定した結果,吸着酸素量が多いものほど触媒活性が高いことが認められた。これは本酸化反応が吸着酸素の関与によって進むことを示唆している。
  • 白井 靖男, 吉田 真人, 宮川 俊夫
    1983 年 1983 巻 4 号 p. 475-480
    発行日: 1983/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    塩化銅(II)を含むポリ(ビニルアルコール)(PVA)皮膜に紫外線を照射し,その後約130℃で数分間加熱すると,紫外線照射部分は黒褐色に着色し画像が形成される。またこの画像形成部分のPVAは不溶化するので,レリーフ像を残すこともでもる。塩化銅(II)を含むPVA皮膜は感光性と感熱性を有し,加熱のみでも皮膜の着色と不溶化は起こる。紫外線照射や加熱によって,皮膜中の塩化銅(II)は還元され,同時にPVAは酸化される。皮膜中に塩化銅(I)が存在すると,加熱反応の速度が増加することから,画像形成機構はつぎのように考えられる。
    1)紫外線照射により塩化銅(II)は塩化銅(I)に還元され,さらに不均化反応で銅を生成する。
    2)生成された塩化銅(I)や銅は加熱反応における触媒となり,これらの生成物が存在する部分では,加熱による塩化銅(II)の還元とPVAの酸化反応が優先的に起こり画像が形成される。
    これらの反応を通して生成された銅やその酸化物は着色画像となり,また酸化されたPVAは不溶化の原因となる。
  • 田中 勝彦, 小門 宏
    1983 年 1983 巻 4 号 p. 481-487
    発行日: 1983/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    光化学反応により還元剤を生成しながら現像を行なう光活性化型物理現像液の良好な還元剤前駆体として,種々のキノン類,ジアゾニウム塩類の中から2-methyl-1,4-benzoquinone,2-isopropyl-5-me-thyl-1,4-benzoquinone(thymoquinone),およびP-diethylaminobenzenediazonium tetrafluorobo-rateと4-morpholine-2,5-dibutoxybenzenediazonium tetrafluoroborateを見いだし,その現像特性を検討した。とくに,P-diethylaminobenzenediazonium tetrafluoroborateを還元剤前駆体として用いた現像液は,前報のp-ベンゾキノン系現像液よりも現像速度が3倍以上大きかった。安定性も良好で,2日以上放置しても現縁液の活性の低下は見られなかった。また,現像速度は光強度の調節により,制御可能であることが確認できた。さらに,光活性化型物理現像液に用いる還元剤前駆体の必要条件についても検討を加えた。
  • 小澤 芳弘, 三浦 則雄, 山添 〓, 清山 哲郎
    1983 年 1983 巻 4 号 p. 488-493
    発行日: 1983/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    アンチモン酸は室温で比較的高いプロトン導電性を示すと報告されているが,これを513,593,773,および893Kで空気中1時間熱処理した試料でも室温,高湿度下においては未処理試料と同程度の高い導電率(~1×10-1S・m-1)を示すことを見いだした。これらの試料のプロトン輸率はいずれもほぼ1.0であった。アンチモン酸を熱処理した場合には,513K付近までほとんど構造変化はないが,それ以上の温度では脱水やさらには脱酸素反応が起こり構造水量の減少や格子定数の変化がみられることをTGA,X線回折,IR分析により確かめた。ただし,高温処理によってもアンチモン酸の基本的な骨格構造には変化はなかった。イオン交換性のプロトン濃度は構造水量の変化と対応して熱処理により大幅に減少したが,それにもかかわらず高湿度下でこのように高い導電性を示すのは物理吸着水の影響が大きいことを示している。水の吸着等温線を測定した結果,いずれの試料においても表面被覆率(θ)が1以上で導電率が急増し,この領域ではじめてGrotthus型のプロトン伝導が可能になると考えられる。
  • 安江 任, 鈴木 聡子, 荒井 康夫
    1983 年 1983 巻 4 号 p. 494-500
    発行日: 1983/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    リン酸-水素カルシウムニ水和物(CaHPO4・2H2O)は硫酸カルシウムニ水和物(二水セッコウ,CaSO4・2H2O)と類似の結晶構造を有するが,2.0molの結晶水のほかに0.5molの縮合水を有しているためにその脱水過程は二水セッコウのように単純ではなく複雑である。
    二水和物のTG-DTA曲線(加熱速度,5~10℃min)においては140,160,185℃ 付近に3段階の吸熱と減量が認められ,2.0molの結晶水はCa2+イオンに対して平等な結合をしていないことが推察された。上記加熱生成物のX線回折結果からは二水和物と無水和物の2相しか認められないが,ペーパークロマトグラフ分析の結果からは180℃付近からニリン酸基が,300℃付近から三リン酸基が出現し,二水和物の脱水と,無水和物の縮合,ニリン酸塩の縮合とが同時に進行していることが明らかとなった。オルトリン酸基および三リン酸基はかなり安定で,γ-Ca2P2O7は600℃付近までで完全に結晶化する。100℃ の等温加熱曲線では減量は0.5mol近の結晶水で平衡に達し,なんらかの中間相の生成が示唆されたが,X線回折図形からは新しい結晶相の存在は認められなかった。
  • 橋場 稔, 三浦 英二, 塗師 幸夫, 日比野 泰三
    1983 年 1983 巻 4 号 p. 501-506
    発行日: 1983/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ZnOとAl2O3からZnAl2O4を生成する粉末固体反応に,LiFを添加した場合について,化学分析,SEMおよびEDXにより,その作用機構を調べた。反応の速度曲線を求めると,ZnAl2O4の生成率は反応初期に急激に増大し,その後見かけ上停止する曲線を描く。微細構造の観察から,反応は四つの段階を経て進行することを示した。すなわち,Al2O3表面へのLiFの作用の開始(段階I),Al2O3粒子の周りでZnAl2O4が生成し,ZnAl2O4相とAl2O3相の間でLiF,ZnおよびAlを含む中間相が生成する(段階II),中間相はZnAl2O4層のAl2O3側にLiAl5O8を生成しつっ,Al2O3粒子内部へと移動する(段階III),中間相はAl2O3粒子の中心で動きを止める(段階IV)。各段階が現われる範囲を加熱温度,時間の関数として,またLiFを種々の濃度で添加した場合の速度曲線中に示した。速度曲線において,ZnAl2O4の生成率が急激に増加するのは中間相を介して,Al2O3のZnO側への移動が加速されることによっており(段階I,II),その後生成したZnAl2O4相中のZn,Alの拡散が遅いこと,LiAl5O8相が生成することのいずれかにより,反応が見かけ上停止するものと思われる。加熱温度の上昇およびLiFの添加量の増加とともに,中間相の生成量は増大し,これにより反応初期の生成率が急激に増大することが認められた。
  • 根岸 博, 大須賀 美種, 関谷 道雄
    1983 年 1983 巻 4 号 p. 507-512
    発行日: 1983/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    さきの研究で得られた20~55%硫酸溶液中での硫酸カルシウムニ水和物(二水セッコウ)の脱水 反応CaSO4・2H2O→ α-CaSO4・1/2H2Oにおける反応温度と誘導時間の測定データを用いて硫 酸濃度Z(%), 反応温度y(℃)および誘導時間x(min)の3因子間の関係を表わす実験式を得るための手法ならびに準安定相の状態図として等時法の可能性を検討した. データ解析にはつぎの三つの近 似関数の式を用いた.
    y=Yx-m (1)
    Y=-a1eb1z+C1 (2)
    m=a2Zbz+c2 (3)
    反応温度と誘導時間の関係(式(1))および式(1)から得られたパラメーターY, mと硫酸濃度の 関係(式(2), (3))がそれぞれの近似式によく適応することを統計学的処理によって確認し, 式(1) を基本式としてつぎの実験式を誘導した。
    y=(-4. 886e0.04897Z+111.33)x-(1. 362x10-10Z5. 093+0. 01410)
    その結果, 硫酸溶液中における二水セッコウの準安定状態図を誘導時間による等時線で示すことが可 能となった。そして鉱酸中における硫酸カルシウムの平衡関係の中で準安定相として存在する領域での 二水セッコウとα 型硫酸カルシウム半水和物(半水セッコウ)の挙動が工業的に重要であることから, 本研究で得られた準安定相の状態図は実用上により有効である。
  • 内海 昭
    1983 年 1983 巻 4 号 p. 513-517
    発行日: 1983/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    2-[1-(2-メトキシ-5-スルホフェニル)-3-フェニル-5-ホルマザノ]安息香酸(CMF)と錯形成反応を示す,コバルト(II),ニッケル(II),銅(II),パラジウム(II)の生成定数を分光光度法を用いて灘定し,その大きさを比較した。さらに銅(II)-CMFキレート生成反応を利用する銅の吸光光度定量法を確立し,これを食品,生体試料などに応用した。各金属キレートの生成定数は,Cu(II)>Pd(II)>Ni(II)>Co(II)の順序で小さくなり,その値は,logKcuA=18.1,logKpdA=14.9,logKNiA=11.5,logKcoA=11.3(26±1℃),I=O.1mol・dm-3であった。銅濃度0~2.6μg・cm-3溶液の範囲でBeerの法則が成立し,吸光指数0.001に対する感度は0.003μg・cm-2であった。銅(II)1.2μg・cm-3の場合,10回のくり返し実験により求めた吸光指数の相対標準偏差は,3.37×10-3μg・cm-3で再現性は良好であった。共存イオンとして,銅(II)31μgに対して,Co2+1mg,Ni2+7mg,Pd2+100μg,Fe3+1mgまで妨害しなかった。本法を亜鉛合金,母乳,鶏卵,ラットの肝・腎臓・血液,Bovine Liver(NBS-SRM1577)中の銅(II)の定量に応用し,満足な結果が得られた。とくに操作が簡単,迅速で,感度,精度ともに他の方法と遜色なく,実用的な銅の定量法であることがわかった。CMF-銅(II)キレートの構造について考察し,その幾何学的構造が4座配位の平面正方形を有していると推定した。
  • 中西 務, 小友 允
    1983 年 1983 巻 4 号 p. 518-522
    発行日: 1983/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ジ-2-ピリジルケトン=[2-フリル(チオカルボニル)]ヒドラゾン(DPFTH)を合成してプロトン解離定数を求め,この試薬と数種の金属イオンとの反応性を調べるとともに,銅(II)の溶媒抽出-吸光光度定量法について検討した。25℃,イオン強度0.1(KCl),エタノール-水中で吸光光度定量法によって求めたDPFTHのプロトン解離定数は,エタノールのモル分率をnとした場合,pKa1=2.88-3.41n,pKa2=6.70+9.28nであった。DPFTHは銅(II)と反応して,水に難溶な錯体を生成する。この錯体は種々の有機溶媒に抽出される。ベンゼン抽出種は波長364nmおよび457nmに吸収極大を与えるが,457nmにおいては38μg/10mlまでの銅(II)に対してBeerの法則が成立する。また,この波長におけるモル吸光係数は1.42×104l・mol-1・cm-1である。銅(II)25.4μgを用いて12回のくり返し実験により求めた吸光度の変動係数は0.53%で,再現性は良好であった。錯体の組成についても検討した結果,定量条件のもとでは,銅(II):DPFTH=1:2の錯体が抽出されると推定される。
  • 鈴木 章悟, 平井 昭司
    1983 年 1983 巻 4 号 p. 523-530
    発行日: 1983/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ガソリン,軽油中の重金属など12元素を中性子放射化分析法により定量した。ガソリン,軽油中には重金属はごく微量しか含有されないため,濃縮などの前処理操作による汚染の影響をさけるために,ポリエチレン製瓶に入れた液体状の試料を直接原子炉で照射し,新しい容器に移し変えてγ線の測定を行なった。照射は生成核種の半減期と量により,10分照射,2時間照射,10時間照射の3条件により行なった。半減期10時間以下の核種の測定は照射後O2ガスを試料液中に通して,溶存した空気中のArが放射化された41Arを除去してから行なった。
    約300試料について分析を行なった結果,ClとBrを除く微量元素についてはほぼ対数正規分布となった。軽漉中のMnでは最小0.0038ppbまで検出することができた。軽油にくらべてガソリンの方が精製工程を経ているため微量元素の含有量は少なくなっていたが,ClとBrについては逆にガソリンの方が含有量が多くなった。Na,Cl,Brの相関関係は軽油ではNaとClがほぼNaClの形で存在しているが,Cl含有量はレギュラーガソリン,ハイオクタンガソリンと順に増えており,それにつれて軽油では微量であったBrが増えてClとほぼ同量になっていた。
  • 代島 茂樹, 飯田 芳男
    1983 年 1983 巻 4 号 p. 531-536
    発行日: 1983/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    一連の多環芳香族炭化水素およびその関連化合物についてメタン,イソブタンおよびメタン/溶媒を試薬ガスに用いて化学イオン化質量スペクトルを測定し,その特徴を明らかにした。これらのスペクトルは電子衝撃イオン化法によるものより化合物間で差を生じた。メタンでは試料分子のもつイオン化エネルギー(IE)がC2H4,C2H5・,C3H5・のIEより低いため,M+が試料分子と反応イオンC2H4+,C2H5+,C3H5との電荷交換反応により生成し,その量はIEに依存することが判明した。そしてM+の生成量の差異から異性体の区別,同定なども可能であった。またMH+の生成量と分子量の間には相関があり,分子量の増大とともにMH+ の生成量は減少した。イソブタンではM+ や(M+t-C4H9)+の生成量が化合物によって大きく変化し,同定に有用であった。メタン/溶媒(メタノール,アセトニトリル,メチルアミン)では主反応イオンがプロトン化した溶媒分子イオンであるため,イオン化はおもにプロトン移動反応によって行なわれ,同一の溶媒では化合物間で差異はほとんど生じなかったが,M+/MH+ の強度比は溶媒のプロトン親和力が大きくなるにつれて増加する傾向を示した。
  • 志摩 健介, 倉重 梅幸
    1983 年 1983 巻 4 号 p. 537-541
    発行日: 1983/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    13C-NMRを用いて,trans-キノリジジン骨格を有する(-)-ルピニン〔1〕と(+)-エピルピニン〔6〕の化学シフトを決定した。さらに,両異性体のメチオジドと強酸塩(塩酸塩,硫酸塩,ピクラート)の挙動について検討した。その結果,(+)-エピルピニン系では,すべての化合物はtrans-キノリジジン骨格をもっていたが,(-)-ルピニン系では,メチオジドはcis-キノリジジン骨格を有する化合物〔2〕であり,強酸塩はtrans-キノリジジン骨格を有する化合物とcis-キノリジジン骨格を有する化合物の混合物(〔3a〕と〔3b〕,〔4a〕と〔4b〕,〔5a〕と〔5b〕)であることが明らかになった。
  • 福永 公寿, 岡本 昭彦, 木村 允
    1983 年 1983 巻 4 号 p. 542-550
    発行日: 1983/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    vic-ジハロゲン化物〔1a~f〕からの脱ハロゲン化試薬として硫化ナトリウムがすぐれていることを見いだし,硫化ナトリウムはvic-ジニトロ化合物の脱ニトロ化試薬としても知られていることから,ニトロ基とハロゲン原子をvicinal位に有するβ-ハロニトロアルカソ〔2a~f〕を合成してその硫化ナトリウムとの反応を行なった。また〔2〕とその他の種々の還元試薬との反応も行なった。その結果,β-ハロ-β-(置換フェニル)ニトロアルカン〔2c,d,g〕は硫化ナトリウムと反応してE2型アンチ脱離機構によりハロゲン原子を含む不飽和化合物〔4c,d〕またはニトロ基を含む不飽和化合物〔5g〕を生成するが,塩化スズ(II),カルシウムアマルガム,ナトリウムアマルガム,および亜ジチオン酸ナトリウムのような還元試薬ではERC機構によりニトロ基とハロゲン原子とを同時に脱離して不飽和化合物〔3c,d〕を生成することと,〔1〕と硫化ナトリウムとの反応はE2型のアンチ脱離機構を経由することが明らかにされた。〔2〕から〔3〕,〔2〕から〔4〕を生成する還元試薬はMathaiらの分類による一電子還元試薬,二電子還元試薬にそれぞれ属していることがわかった。
  • 新井 五郎
    1983 年 1983 巻 4 号 p. 551-555
    発行日: 1983/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    数種Na2S2O3の1,4-ナフトキノン類(NQ類)とチオ硫酸ナトリウム(Na2S2O3)との付加反応について,前者の酸化還元電位(ENQ類)と後者の酸化還元電位(EST)を比較することにより,反応の律速段階および反応機構について検討した。
    p-ベンゾキノンとNa2S2O3との付加反応では,Na2S2O3がキノン環に付加する過程が律速段階であることが知られていたが,NQ類とNa2S2O3との付加反応では,反応の初期段階において,むしろプロトトロピー過程が律速段階である傾向を示した。前者の反応系では,p-ベンゾキノンの酸化還元電位(EPQ)は,ESTより貴にあるが,後者の反応系では,ENQ類は,ESTより卑にあり,この差異が,律速段階に関与するものと判断された。さらに,硫黄原子の攻撃位置についても,キノン類と亜硫酸ナトリウムとの反応系と同じようにΔE値(=(ENQ類またはEPQ)-EST)の正負に依存する現象が認められ,"キノン環を攻撃する硫黄原子の求核性および求電子性とΔE値との関わり"を,より明確にした。
  • 関口 辰夫, 田中 基雄, 鈴木 茂
    1983 年 1983 巻 4 号 p. 556-559
    発行日: 1983/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Nafion-H触媒によるN,N-ジメチルアニリンと芳香族アルデヒドの縮合について検討し,各アルデヒドに対し35wt%の触媒の存在下で能率よくロイコマラカイトグリーンおよび同系のトリアリールメタン誘導体を合成した。置換ベンズアルデヒドの反応性については,電子求引性基を有する場合に概して順調に反応が進み高収率で目的物を与えたのに対し,電子供与性基をもつものは低収率となった。また使用した触媒は反応終了後目的物を精製するさいに容易に分離でき,再生後くり返して合成に使用することが可能であった。つぎに高速液体クロマトグラフィーによリロイコマラカイトグリーン生成の反応経過を調べた結果,p-(ジメチルアミノ)ベンズヒドロールを中間生成物として段階的に進行することが明確となったが,前段階の反応がすみやかに進行するのに対して後段階はより緩やかであった。
  • 鈴木 充, 伊藤 征司郎, 桑原 利秀
    1983 年 1983 巻 4 号 p. 560-565
    発行日: 1983/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    メカノケミカル反応を利用して,γ-アルミナを核とする赤色および黄色の有機顔料を製造した。すなわち,γ-アルミナとアミノ安息香酸との混合物を乾式摩砕することによってγ-アルミナの破砕面に生成した活性点にアミノ安息香酸をアルミニウム塩の形で導入し,ついで,ジアゾ化,カップリング[2-ナフトールあるいは5-オキソ-1-(4-スルホフェニル)-2-ピラゾリン-3-カルボン酸で]して,スダンI[アゾ染料,1-フェニルアゾ-2-ナフトール]やタルトラジン[食用黄色4号,5-ヒドロキシ-1-(4-スルホフェニル)-4-(4-スルホフェニルアゾ)-1H-ピラゾール-3-カルボン酸のトリナトリウム塩]に類似の構造の表面基をγ-アルミナ表面上で合成するものである。
    γ-アルミナとアミノ安息香酸とのメカノケミカル反応は,γ-アルミナの活性点とアミノ安息香酸のカルボキシル基との間でのみ反応し,アミノ基とは反応しないことを認めた。また,摩砕してもアミノ安息香酸の分解は起こらないことを確認した。得られた顔料はスダンI(赤色)やタルトラジン水溶液(黄色)に対応した色彩を呈した。この方法により,表面基を任意に既存の有機色素に類似の構造に誘導することによって,容易に多数の色彩の新しい型の顔料が製造できるものと思われる。
  • 岡本 正雄, 小倉 徹, 芦川 亮, 石塚 修
    1983 年 1983 巻 4 号 p. 566-570
    発行日: 1983/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ポリアクリロニトリルの熱分解への塩化水素の影響を明らかにするために,二つの異なる実験を行なった。一つは,ポリアクリロニトリルの塩化水素中での熱処理である。その結果,熱処理雰囲気中に塩化水素が存在しても,200℃以下ではほとんど何の影響も現われないが,220℃では,その存在がシアノ基間重合の進行を促進していることが明らかとなった。この効果は,熱分解で生成したポリマーラジカルによる塩化水素からの水素原子の引き抜きで,移動性のよい塩素原子が生成するためであると解釈した。いま一つの実験は,アクリロニトリルとα-クロロアクリロニトリルとの共重合体の示差熱分析(雰囲気:窒素,昇温速度:5℃/min)である。α-クロロアクリロニトリルのモル分率が約0.1までの試料では,モル分率が高いほど,急激なシアノ基間重合による鋭い発熱ピークの現われる温度が高温側へ移動し(ポリアクリロニトリル自身では約260℃ に現われる),示差温度は低くなった。共重合体の脱塩化水素によって雰囲気中に塩化水素が存在することになり,260℃までに,すでにシアノ基間重合を受けた構造部分が形成されるために,このような効果が現われるものと解釈した。なお,モル分率が0.1以上の試料では,約220℃付近からの示差温度の低い幅広い発熱が見られるだけであった。
  • 新保 正樹, 原井 紳一
    1983 年 1983 巻 4 号 p. 571-577
    発行日: 1983/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ビスフェノール型エポキシ樹脂の1,6-ヘキサンジアミン硬化にさいして,促進剤としてサリチル酸を添加した系と,添加しない系の分子鎖生長の初期過程を追跡した。その結果,前者ではゲル化時間の短縮と,第二級アミンの反応率の増加が認められた。この系の分子量1600までの中間体4種を分取,精製し,GPC,VPO,NMRおよび滴定によって分子量と官能基数を求め,これらの値から中間体の構造を推定した。その結果,上記条件下では分子鎖はビスフェノールAジグリシジルエーテルと硬化剤とが交互に結合して鎖状に生長し,分子量1200程度以下の領域で側鎖形成が始まると推定される結果が得られた。
  • 前田 弘憲, 江川 博明
    1983 年 1983 巻 4 号 p. 578-582
    発行日: 1983/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    スチレン-ジビニルベンゼンMR型球状共重合体をクロロメチル化したのち,エタノール性硫化水素カリウムとの反応によりメルカプト基を有するキレート樹脂を製造し,その金属イオン吸着性およびヒ素吸着性について検討した。
    クロロメチル化反応は通常の方法により,またメルカプト基の導入反応は50℃で1時間加熱することにより容易に行なわれた。得られた樹脂は良好な耐酸化性を有し,重金属イオン(とくにAg+およびHg2+)に対し低pH域で選択吸着性を示すことが認められた。また耐熱水性にすぐれた本樹脂は90℃の熱水中からも良好なAs(III)吸着性を示した。カラム法において,20mg/l(As(III)として)の亜ヒ酸ナトリウム溶液(pH6.8)を空間速度(SV)15h-1で通液した場合,35l/l-Resinの点までAs(III)の漏出濃度はo.1mg/l 以下であり,良好なAs(III)吸着性を示した。吸着されたAs(III)は1mol/dm-3水酸化ナトリウム溶液5l/l-ResinをSV7.5h-1で通液することによりほぼ100%溶離できた。
  • 笠岡 成光, 阪田 祐作, 栢野 茂
    1983 年 1983 巻 4 号 p. 583-591
    発行日: 1983/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    石炭のガス化速度(活性)を支配する因子の究明を目的として,燃料比1.4~7.9の6種の石炭を,N2流中,熱分解処理して得たチャー(C)とスチーム流中,直接賦活処理して得た多孔質チャー(PC)に対して,H2O(0.24%)-O2(0,0.5,1%)-CH4(0,0.5,3,6%)-N2の種々の組成の混合ガスでガス化を行なった。すなわち,各試料に対し同一条件下(粒径0.5~2.Omm,おもに1.0mm径,100mg;600~950℃,おもに850℃),ガスクロマトグラフを組み合わせた流通式熱テンビンを用い,ガス化速度と生成ガス組成を追測し,つぎのような結果・知見を得た。
    1)N2とCO2の吸着により測定した同一石炭からのCとPCの比表面積は,N2で約50~260倍,CO2で約7~130倍と,いずれもPCの方が大きいが,CとPCのスチームによるガス化生成ガス組成はほとんど変わらず,また速度(活性〉は,精々数倍程度の差しかない。
    2)チャー(C)のスチームガス化の活性化エネルギーも,灰分など含まない多孔質純炭素の場合とほとんど近似している。
    3)スチームガス化で,少量のCH4やH2の共存によって,ガス化速度がいちじるしく抑制されることを見いだし,H2Oの解離吸着による中間生成物,(OH)Cに着目してガス化機構を説明できる。
    4)H2O(24%)-O2(1%)-N2によるガス化でCH4(3~6%)が共存すると,ガス化速度はO2(1%)-N2 によるガス化の場合とほとんど等しいにもかかわらず,生成ガスのCOやH2のO2による酸化が抑剃され,しかも見かけ上CH4は消失しないという現象を見いだし,これはCOとH2が気相でラジカル反応をうけた結果であるとして説明できる。
    5)チャー(C)のスチームガス化反応は,1000℃付近以下では多くの場合,表面化学反応支配に近く,細孔径分布や表面積で代表される細孔構造の影響は,きわめて小さく,むしろ,ガス化剤分子と接触する炭素表面の化学的構造や,相互作用がガス化活性を強く支配しているように考えられる。
  • 円満字 公衛, 高橋 健造, 草川 英昭
    1983 年 1983 巻 4 号 p. 592-594
    発行日: 1983/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    The photodecoloration reaction of nickel dithiobenzil complex having an absorption band in near infrared has been studied. The decoloration does not occur upon excitation with the near infrared light, but proceeds in two steps by irradiation with the UV light. In the first stage the photodecoloration rate increases with the increasing concentration of dissolved oxygen, but no such effect is observed in the second stage.
  • 山崎 仲道, 叶原 悟司, 柳沢 和道, 松岡 清
    1983 年 1983 巻 4 号 p. 595-598
    発行日: 1983/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    A new wet metallurgy of CaWO, from middle to low quality scheelite ores was proposed. The alkaline hydrothermal extraction of WO42- ion from the scheelite was investigated by using a microautoclave. Using an alkaline solution containing NaOH, Na2CO3 and Ca (OH)2 high extraction ratios of WO42- ions, above 90%, and low extraction ratios of SiO32- ions, below 10%, were attained at 250°C for 5 min. The Si32- ions mostly reacted with Ca (OH)2to form insoluble orthosilicate (tobermorite).
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