石炭のガス化速度(活性)を支配する因子の究明を目的として,燃料比1.4~7.9の6種の石炭を,N
2流中,熱分解処理して得たチャー(C)とスチーム流中,直接賦活処理して得た多孔質チャー(PC)に対して,H
2O(0.24%)-O
2(0,0.5,1%)-CH
4(0,0.5,3,6%)-N
2の種々の組成の混合ガスでガス化を行なった。すなわち,各試料に対し同一条件下(粒径0.5~2.Omm,おもに1.0mm径,100mg;600~950℃,おもに850℃),ガスクロマトグラフを組み合わせた流通式熱テンビンを用い,ガス化速度と生成ガス組成を追測し,つぎのような結果・知見を得た。
1)N
2とCO
2の吸着により測定した同一石炭からのCとPCの比表面積は,N
2で約50~260倍,CO
2で約7~130倍と,いずれもPCの方が大きいが,CとPCのスチームによるガス化生成ガス組成はほとんど変わらず,また速度(活性〉は,精々数倍程度の差しかない。
2)チャー(C)のスチームガス化の活性化エネルギーも,灰分など含まない多孔質純炭素の場合とほとんど近似している。
3)スチームガス化で,少量のCH
4やH
2の共存によって,ガス化速度がいちじるしく抑制されることを見いだし,H
2Oの解離吸着による中間生成物,(OH)Cに着目してガス化機構を説明できる。
4)H
2O(24%)-O
2(1%)-N
2によるガス化でCH
4(3~6%)が共存すると,ガス化速度はO
2(1%)-N
2 によるガス化の場合とほとんど等しいにもかかわらず,生成ガスのCOやH
2のO
2による酸化が抑剃され,しかも見かけ上CH
4は消失しないという現象を見いだし,これはCOとH
2が気相でラジカル反応をうけた結果であるとして説明できる。
5)チャー(C)のスチームガス化反応は,1000℃付近以下では多くの場合,表面化学反応支配に近く,細孔径分布や表面積で代表される細孔構造の影響は,きわめて小さく,むしろ,ガス化剤分子と接触する炭素表面の化学的構造や,相互作用がガス化活性を強く支配しているように考えられる。
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