日本化学会誌(化学と工業化学)
Online ISSN : 2185-0925
Print ISSN : 0369-4577
1984 巻, 4 号
選択された号の論文の22件中1~22を表示しています
  • 宮嶋 孝一郎, 澤田 雅裕, 上田 朋子, 中垣 正幸
    1984 年 1984 巻 4 号 p. 527-533
    発行日: 1984/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    水溶液中におけるα-,β-およびγ-シクロデキストリン(CD)とテトラアルキルアンモニウム=プロミド(TAAB,R4NBr)の相互作用を導電率を測定することによって調べた。その結果,β-およびγ-CDと炭素鎖がペンチルまでのTAABとは相互作用が認められなかった。しかしα-CDの場合には,炭素鎖がプロピルまでのTAABとは相互作用がないが,ブチルおよびペンチルのTAABとは包接による導電率の低下がみられ,結合定数として8.4,10.3mol・dm-3の値を得た。また,CDと疎水性のプローブとしてよく用いられる8-アニリノ-1-ナフタレン-1-スルホン酸イオン(ANS)の相互作用を蛍光を測定することによって調べた。CD水溶液中ではANSの蛍光が増大し包接現象が認められた。蛍光の増大からCDとANSの結合定数を求めるとα-<β-<γ-CDの順となった。さらにγ-CDとANSの結合定数におよぼす塩の効果を調べた。テトラアルキルアソモニウムィオンは疎水基の増加にともないγ-CDとANSの結合定数を減少させ,K+,Na+,Li+はこの順に結合定数を増大させた。この結果は陽イオシのANSに対する塩溶および塩析効果によって説明できた。
  • 大井 健太, 北村 孝雄, 加藤 俊作, 菅坡 和彦
    1984 年 1984 巻 4 号 p. 534-539
    発行日: 1984/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    塩化チタン(IV)溶液にアンモニア水を所定のpH(3-8.7)まで加えて調製した7種の含水酸化チタン(IV)の表面特性を-196℃ における窒素吸着法およびフッ化物イオン吸着法で調べた。pH6以下で調製した試料はBDDT IV型の窒素吸着等温線を示し,pH7以上で調製した試料はBDDT I型に分類された。細孔構造は調製pHが高くなるにつれてメソポーラスからミクロポーラスに変化した。最頻度細孔半径は,調製pH5以下の試料では2nm付近にあり,調製pH6の試料で0.8nm,調製pH7以上の試料で0.44nmとなった。試料の表面積は,調製pHが高くなると増大する傾向を示したが,細孔容積および表面ヒドロキシル基密度は逆に減少する傾向を示した。試料の表面積を従来の結果と比較した結果,含水酸化チタン(IV)の表面積は,調製pH以外に出発原料やイオン性不純物によっても大きく影響されるものと推測された。
  • 田坂 明政, 安藝 亮司, 川辺 勝治, 伊東 秀記, 阪口 博昭
    1984 年 1984 巻 4 号 p. 540-547
    発行日: 1984/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    120℃の溶融KH2F3に(NH2)2CS,H2NSO3H,H2NSO3NH4,CH3CSNH2 あるいはNH4SCNを溶解させ,炭素陽極を用いて電解フッ素化を行なった。陰極には鋼鉄製電解槽本体を,照合電極には白金棒を用いた。陽極生成物は,主としてガスクロマトグラフィーおよび赤外吸収スペクトル法で分析した。
    (NH2)2CSを定電流電解した場合,陽極生成物はN2(+O2),CF4,NF3,CO2(+COF2),SF6,N2O,SO2F2,硫黄および若干の未知の化合物であった。一方,H2NSO3H と H2NSO3NH4の場合には,陽極生成物はN2(+O2),CF4,CO2,N2OおよびSO2F2のみで,NF3もSF5も陽極ガス中に検出されなかった。 また,(NH2)2CS,H2NSO3HおよびH2NSO3NH4の場合,いずれも陽極効果は起こりにくかったが,電気分解中陽極が崩壊した。他方,CH3CSNH2あるいは NH4SCN を電解フッ素化すると,N2(+O2),CF4,CO2,N2O,SO2F2のほかに,NF3あるいはSF6の生成が確認された。この場合,重合物が生成して電極表面をおおうため電極は崩壊しなかったが,固体の黒色物質あるいは黄色物質がガス出口を閉塞するので,長時間電気分解を継続することは困難であった。
    以上のことから,含硫黄化合物の電解フッ素化では,電解浴中のH2Oと生成物のSO2F2とが反応して生じたH2SO,と炭素電極の間で層間化合物が形成され,電極表面がもろくなるものと思われる。また,(NH2)2CSの電解フッ素化反応機構についても考察した。
  • 野崎 亨, 島本 秀樹
    1984 年 1984 巻 4 号 p. 548-551
    発行日: 1984/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    2,2′-(エチレンジイミノ)ビス[(2-ヒドロキシフェニル)酢酸](H4ehpg ,H4L)と銅(II)およびニッケル(II)との錯形成反応をストジプドフロ-分光光度法により調べた。CuH2LおよびNiH2Lの生成速度定数の実測値が,Eigen-Tamm機構による計算値と一致しない。ehpgとCu2+およびNi2+との錯形成反応は,主としてH3L-との反応経路により進行し,その律速段階は中間錯体CuH3L+ およびNiH3L+からのプロトン脱離過程であることが確認された。また,ニッケル錯体と銅(II)との置換反応から幸めたNiH2Lの生成速度定数は計算値より大きい。これはH3L2-とNi2+との反応が内部共役塩基機構で進行しているためと考えられる。
  • 斎藤 武夫
    1984 年 1984 巻 4 号 p. 552-556
    発行日: 1984/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    北関東地方のテフラ層を構成する主要な給源火山は浅間山,榛名山,赤城山および男体山であり,これらの火山を給源とする第四紀テフラの化学成分を調べることにより,北関東ローム層の成因解明の一助に,あるいはこの地方の表層土壌中の重金属濃度との対比に役立つことになる。著者らは既報で赤城山南麓の皆沢で,柱状に採取したローム層の水銀濃度を調べて報告した。そこで,今回はCd,Pb,Cu,NiおよびZnの5成分について,北関東で著明な降下軽石堆積物および軽石流堆積物の35試料のテフラのみについて給源別あるいは軽石別濃度などの検討を試みた。
    分析法は粉末にした試料をフッ化水素酸,過塩素酸および硝酸で加熱分解し,0.1mol・dm-3塩酸に溶解し,ジエチルジチオカルバミド酸-イソブチルメチルケトンで抽出し,原子吸光法で分析した. 結果はCd:0.28-O.77ppm,Pb:9.3-51.1ppm,Cu:2.0-60.8ppmおよびZn:17.4-124ppmの濃度幅となった。35試料の平均値はCd:O.46ppm,Pb:22.8ppm,Cu:22.2ppm,Ni:41.2ppmおよびZn:67.4ppmとなり,各成分間の相関はCuとZnが最高で相関係数が0.73となった。
    給源火山別の各成分濃度で,Cuが4火山のうち2火山ずつ特色のある変動を示し,また軽石別の各成分では同じ赤城山を給源とするKP(鹿沼軽石)とUP(湯の口軽石)がCu,NiおよびZn濃度に著差を生じ,またKPは他給源火山の軽石に対してもこれらの成分で特異な傾向を示した。
  • 長谷部 清, 蠣崎 悌司, 田中 俊逸, 吉田 仁志
    1984 年 1984 巻 4 号 p. 557-562
    発行日: 1984/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    モリブデン(VI)は,0.1mmol・dm-3 α-ヒドロキシフェニル酢酸(HPEA),2mmol・dm-3臭素酸カリウムを含む0.5mol・dm-3酢酸中で6価から5価への還元による接触極大波(ピーク電位,Ep=-O.29Vvs.Ag/AgCl)を示す。微分パルスポーラログラフィーにより,この接触極大波を利用する微量のモリブデンの定量について検討した。電流一時間曲線の解析,電流の水銀だめの高さゐ依存性および波高の温度依存性などの結果から,この接触極大波は反応電流である。このピーク波高は,HPEA,臭素酸カリウムおよび酢酸の濃度に依存する。また,電極反応にモリブデン(VI)-HPEA錯体が大きく関与していることを電気毛管曲線から確かめた。この接触極大波のピーク波高は・モリブデン(VI)濃度が0.50-5.0×10-8mol・dm-3の範囲において原点を通る良好な直線関係を示し,その日間のくり返し相対標準偏差は1.31% (n=7),検出限界は8.49×10-10mol・dm-3であった(k=2,信頼水準97.2%)。確立した定量操作に基づき,貯蔵植物飼料中の微量のモリブデンを定量した。妨害イオンは,キレート樹脂による分離濃縮操作を併用することで十分除去することができた。
  • 山谷 和久, 吉田 稔
    1984 年 1984 巻 4 号 p. 563-568
    発行日: 1984/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    0.1cm3以下の微量溶液試料中のフッ素の実用分析法を確立するために,フッ化物イオンをトリメチルクロロシランを用いてシリル化し,生成したトリメチルフルオロシランを水素炎イオン化検出器付ガスクロマトグラフ(GC-FID)によって定量する方法について,抽出溶媒の比較,抽出時間,酸濃度とトリメチルクロロシラン量,および溶媒量と試料溶液量の検討などを行なった。ガラス棒を入れて容量を約0.40cm3にした共栓付試験管中で,フッ化物イオンを塩酸酸性でトリメチルグロ戸シランと反応させたのち,トルエンで抽出した。内部標準としてイソペソタンを用いた。抽出液をGC-FIDに1-0.7mm3注入し,2%シリコーンOV-3・ユニポートHP充填カラムを用い,トリメチルフルオロシランとイソペンタンを分離し,それぞれのピークの高さを測定した。本法の定量範囲は10~200ng/0.1cm3で,共存イオンの影響も少なく,アルミニウムが1000倍共存しても妨害はほとんど認められなかった。
  • 石野 二三枝, 宗森 信
    1984 年 1984 巻 4 号 p. 569-573
    発行日: 1984/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    水圏中のクロム(VI)を定量するための前濃縮法としで鉄(III)とビスマス(III)との混合水酸化物による吸着について検討した。ビスマス(III)の水酸化物を塩化ビスマス(III)を用いて調製した場合には調製時のpHによって,クロム(VI)の吸着率の異なる塩化酸化ビスマス(III)BiClO,水酸化ビスマス(III)Bi(OH)3および酸化水酸化ビスマス(VI)BiO(OH)を生成する。吸着率が最大の酸化水酸化ビスマス(III)のみを吸着剤として用いた場合,共存塩の少ない水溶液中のクロム(VI)はほぼ100%吸着されたが,人工海水では塩化酸化ビスマス(III)に変化し,吸着率は10%にまで減少した。しかしながら,鉄(III)とビスマス(III)との混合水酸化物を用いた場合,水溶液では調製時のpHによるクロム(VI)の吸着率の変動は認められなかった。人工海水においてはクロム(VI)の吸着率はわずかに減少したが,吸着剤を増量することにより吸着率を増大することができた。水溶液中のクロム(VI)を吸着させるにほ初期濃度として鉄(III)とビスマス(III)の各0.5mmo1/l,人工海水では各5mmol/lの混合水酸化物を用いて,pH6.5においてほぼ100%吸着可能であった。
  • 西田 晶子, 塩飽 操吾, 藤崎 静男, 梶返 昭二
    1984 年 1984 巻 4 号 p. 574-579
    発行日: 1984/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    9-(2-メトキシフェニル)-9-フルオレノール[1]を出発原料として,種々の9-置換9-(2-メトキシフェニル)フルオレン誘導体(9-置換基としてプロモ[2],メトキシ[3a],エトキシ[3b],ヒドロ[4],メチル[6a],エチル[6b],カルボキシ[7],メトキシカルボニル[8a],エトキシカルボニル[8b],アセチル[9a],ベンゾイル[9b],4-プロモベンゾイル[9c]および4-メトキシベンゾイル[9d]を導入)を合成し,CDCl3中室温における1H-NMRスペクトルから,これらの化合物の配座平衡(ap⇔sp)を検討した。その結果,2-メトキシフェニルのメトキシシグナルのδ値から,[2],[3]および[6]ではap形が,[1],[4],[7],[8]および[9]ではsp 形が優勢配座であることが判明した。このさい[7],[8],[9]では,2-メトキシフェニルのメトキシル基と9-置換基との間に分子内相互作用(引力)が働いてsp形を安定化していると推定した。なお[4]のみ,低温での1H-NMRスペクトルでsp 形とap形とがともに観察された。また[1]はCDCl3中ではsp 形が,DMSO中ではap形が優勢配座であることから,[1]の配座は溶媒に影響されることが判明した。
  • 内山 正治, 鈴木 剛彦, 山崎 康男
    1984 年 1984 巻 4 号 p. 580-584
    発行日: 1984/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    パラジウム触媒および亜鉛末の存在下にジアリールヨードニウム塩の還元二量化反応が進行することを見いだした。この反応において,触媒,還元剤,溶媒などの効果について検討した結果,触媒として[Pd(acac)2],還元剤に亜鉛末,溶媒にテトラヒドロフランを用いることにより,非常に温和な条件下にすみやかに反応が進行することがわかった。種々の置換基を有するジアリールヨードニウム塩を用いた還元二量化反応を行ない,高収率で基質に対応するビアリールとヨウ化アリールが生成することが認められた。さらに非対称型のジアリールヨードニウム塩の反応結果から反応機構は[Ar-Pd-X]錯体2分子によるものと推論した。
  • 内山 正治, 鈴木 剛彦, 山崎 康男
    1984 年 1984 巻 4 号 p. 585-591
    発行日: 1984/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    パラジウム触媒と亜鉛末の存在下,ジアリールヨードニウム塩のカルボニル化反応によりジアリールケトン類が得られることを見いだした。この新規なカルボニル化反応は非常に温和な条件下に進行し,モノおよびダブルカルボニル化生成物であるジアリールケトンとジアリールコα-ジケトンをよい収率で生成する。おもな副生成物としてビアリールが認められた。反応因子について検討した結果,触媒として用いた遷移金属の活性の順位はPd>Rh>Niであり,パラジウム化合物の活性の順位はPd(OAc)2>[Pd(acac)2]>[Pd(dba)2]>PdCl2>[PdCl2(PPh3)2]>Pd-blackであった。還元剤としては亜鉛がもっとも有効であり,スズ,銅についても活性が認められた。反応温度の高い場合にはビアリールの副生が増大し,高圧の一酸化炭素下ではダブルカルボニル化生成物の選択性が向上した。種々のジアリールヨードニウム塩([Ar2I]X:Ar=Ph-,4-CH3C6H4-,4-t-C4H9C6H4-,4-ClC6H4-,4-BrC6H4-,X=Cl,Br,1,BF4)について検討した結果,対応するジアリールケトン(38-68%)とジアリール=α-ジケトン(4-20%)が得られ・それら置換基の効果として軍子供与性潭換基によってカルボニル化生成物の収率が向上することがわかった。このカルボニル化反応の反応機構は,ジアリールヨードニウム塩のパラジウム(0)への酸化的付加によるアリールパラジウム種の形成につづき,その不均化反応によってジアリールパラジウム種が生成する。ジアリールパラジウム種への一酸化炭素の挿入によるアシルアリールパラジウムさらにはジアシルパラジウム種が形成され,ついで還元脱離によりジアリールケトンおよびジアリール=α-ジケトンが生成すると推論した。
  • 小沼 健治, 長谷川 博俊, 板橋 国夫
    1984 年 1984 巻 4 号 p. 592-597
    発行日: 1984/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ベンゾチァゾールやその関連化合物を硫化モリブデン(VI)触媒とともに200-320℃の反応温度域で加圧水素化し,反応の生成物や経路などについて検討した。
    ベンゾチアゾールの水素化分解ではチアゾール環の水素化開裂が起こりやすく,アニリンとその核メチル置換体が主生成物となった。しかし,ベンゼン環炭素-窒素結合の開裂は起こりがたく,チオアニソール,チオフェノール,ベンゼンなどは得られなかった。ベンゾチアゾールの関連化合物におけるベンゼン環炭素-硫黄結合の水素化開裂はそれぞれo-(メチルチオ)アニリン>m-(メチルチオ)アニリン=チオアニソール;o-アミノチオフェノール>>m-アミノチオフェノール=チオフェノールの順に減少することから,これらのo-置換体におけるアミノ基は炭素-硫黄結合の水素化開裂を促進するように思われた。一方,核メチル置換アニリンの生成は,チアゾール環の開裂を通じて触媒上で効果的に生成したメチルカチオンの,アニリンのべソゼン環に対する求電子置換反応の結果であると推察された。
  • 山中 寛城, 桑原 正樹, 小森 正博, 大谷 益央, 福西 興至, 野村 元昭
    1984 年 1984 巻 4 号 p. 598-604
    発行日: 1984/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    種々のポリフルオロアルキル基を有するo-ニトロベンゼンスルホン酸エステル[1a~d]による各種の>NH結合をもつ化合物のN-ポリフルオロアルキル化反応について検討した。ポリフルオロアルキル基が短い[1a,b]は脂肪族第一級第二級および環状第二級アミンと容易に反応し,高収率の相当する熱ポリフルオロアルキルアミンを与えたが,長いポリフルオロアルキル基をもつ[1c,d]とこれらとの反応では目的物の収率は低く,ベンゼン環置換反応生成物([11]や[12])が副生した。他のポリフルオロアルキル化剤であるポリフルオロアルキル=p-トルエンスルポナート[2]や=ヨウ化物[3]どアミンとの反応結果との比較から,[1]は[2]や[3]よりずっとすぐれたN-ポリフルオロアルキル化剤であることが判明した。[1]はフタルイミドやベンゼンスルホンアミドとは反応しなかったが,それぞれのカリウム塩とは反応して対応するN-ポリフルオロアルキル化物([14]と[16])を与えた。ベンゼンスルホンアミドカリウムとの反応ではN,N-ビス(ポリフルオロアルキル)ベンゼソスルホンアミド[17]も得られた。フタルイミドカリウムと[3c]との反応では[14]よりもフッ化水素が脱離したオレフィン[15]の方が多く生成した。
  • 小郷 良明, 倉貫 健司
    1984 年 1984 巻 4 号 p. 605-610
    発行日: 1984/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    10種類の石炭液化用ドナー溶剤(テトラリン,1,4-ジヒドロナフタレン,1,2,3,4-テトラヒドロキノリン,1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン,1,2,3,4,5,6,7,8-オクタヒド戸アントラセン,9,10-ジヒドロアントラセン,1,4-シクロヘキサジエン,1,2-ジヒドロナフタレン,アセナフテンおよび1,3-シクロヘキサジエン)から2,2-ジフェニル-1-ピクリルヒドラジル(DPPH)への水素移動反応を,主として60℃,100MPaまでの加圧下で測定した。前七者の溶剤については三次反応として速度定数を求め,速度定数の求まらない後三者の溶剤も含めて,これらの溶剤からの水素移動反応はすべて加圧によって促進されることを見いだし,石炭液化プロセスは水素移動という観点からは加圧した方が望ましいことを示唆した。
  • 野村 正人, 藤原 義人
    1984 年 1984 巻 4 号 p. 611-615
    発行日: 1984/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    6種のピナン骨格を有するモノテルペニルアセタートについて2種の無機混合溶融塩[NaNO2/NaNO3/KNO3(以下,硝酸塩系)およびZnCl2/KCl/NaCl(以下,塩素塩系)],中での熱分解反応を行ない,溶融塩の種類による反応生成物の相違について検討した。その結果,硝酸塩系溶融塩を用いた場合,ミルテニルアセタート〔1〕からは,ミルセン〔9〕と(4E,6Z)-アロオシメン〔Z3〕の2成分が適当な反応温度においてはいずれも80%以上の生成比で得られた。ベルバニルアセタート〔4〕からはピペリテノン〔20〕が82%の生成比を占め,ピノカルベニルアセタート〔5〕からはピノカルボン〔25〕が78%の生成比で得られた。また,塩素塩系溶融塩を用いた場合,ミルタニルアセタート〔2〕からは〔9〕を最高92%の生成比で得られた。ベルベニルアセタート〔3〕および〔4〕からはジヒドロミルセン〔14〕が80%以上の生成比を占めた。さらに,ピノカンフェニルアセタート〔6〕からは硝酸壇系溶融塩においてピノカンホン〔24〕が主成分として,塩素塩系溶融塩において5-エチル-1,5-ジメチル-1,3-シクロヘキサジエン〔17〕が主成分として,それぞれ好選択率で得られることが判朗した,
  • 白石 誠, 赤沢 敏幸, 梶谷 浩一
    1984 年 1984 巻 4 号 p. 616-623
    発行日: 1984/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ポリ(ビニルアルコール)(PVA)の界面活性をあげる方法として,アセトオキシル基よりもさらに疎水性の強い基を導入すれぽよいが,わずかな変成量によってPVAは水に不溶となり,このポリマーの本来有している諸特性がそこなわれる。そこで疎水基として“Versaticacid”のビニルエステル(シエル社商標Veova)を用い,親水基として無水マレイン酸またはイタコン酸を使用し,酢酸ビニルとの三元共重合によりPVAの機能化を試みた。Veovaは酢酸ビニルとの共重合反応性比が1:1で容易に導入され,酸モノマーはディレー方式により添加することによって水溶性のポリマーが得られ,水可溶性に対するVeovaと酸モノマーの割合を明らかにした。このポリマーは予想したように界面活性が高く,また粘度的にも特異な挙動を示し,皮膜は発水性表面を有する。応用例として酢酸ビニルエマルションの乳化剤として用いると,高粘度,低チキソトロピー性,安定性のよいエマルションが得られる。また紙の表面に塗布すると透気度,吸油度,インキのにじみなどが大きく改善される。これらの原因について,このポリマーの基本物性との関連において推論した。
  • 岡田 幸雄, 大野 泰彦
    1984 年 1984 巻 4 号 p. 624-630
    発行日: 1984/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    生理活性物質の生体外反応の一例として,ビタミンB12(シアノコバラミン:BCN)を用いるメタクリル酸メチル(MMA)の重合ζ ついて研究した。BCNは水溶液中ではMMAの重合を開始せず,また,メタノール中ではわずかにポリマーを与えるにすぎないが,BCNに対して還元剤として働くギ酸,シュウ酸,あるいは2-メルカプトェタノール(MEE:高濃度では禁止作用を示すが,低濃度で有効)などを添加すると相当量のポリマーが生成されることを見いだした。BCNとギ酸またはMEE二元系による重合を動力学的に研究した結果,重合速度(Rp)は近似的にっぎの式で表わされることがわかった。
    Rp=k[MMA][BCN]4.5[HCO2H or MEE]0.5
    重合の全活性化エネルギーはギ酸系の場合12.2kcal/mol,シュウ酸系の場合12.6kcal/mol,MEE系については18.7kcal/molであった。開始種生成機構を推定するため,BCNと還元剤の水あるいはメタノール混合溶液の電子スペクトルおよび得られたポリマーの赤外吸収スペクトルを測定し,動力学的パラメーターと合わせて検討した結果,還元剤からBCNへの電子移動をともなう外圏レドックス反応により,還元剤に由来するラジカルが生成されると推察した。BCNとギ酸あるいはシュウ酸との反応でラジカルが生成することは,BCNが生体に取り込まれたさい生体中のこれらの酸と反応して,それをラジカル化する可能性を秘めており生化学的にも大変興味がある。
  • 磯 文夫, 大澤 善次郎
    1984 年 1984 巻 4 号 p. 631-636
    発行日: 1984/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    天然ゼオライト(モルデナイト系,クリノプチロライト系各2種)のスチレン重合開始能およびその熱処理温度の影響を100~900℃の範囲で検討した。その結果,用いた天然ゼオライトはいずれもスチレンの重合を開始するが,重合収率はモルデナイト系の方がクリノプチロライト系より高く,また,いずれも熱処理温度600℃で最高値を示すことが明らかになった。得られた重合体の分子量は低く,重量平均分子量(Mw)は約2400~11000また分子量分布は比較的狭く,Q値(Mw/Mn) は約2であった。得られた結果を天然ゼオライトの酸強度などの特性値と比較検討した。
  • 田中 茂, 金子 正秀, 橋本 芳一
    1984 年 1984 巻 4 号 p. 637-642
    発行日: 1984/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    液体窒素コールドトラップを使用した高感度なヒ素の還元気化原子吸光法を大気試料に適用して大気中のヒ素化合物の測定を行ない,大気中でのヒ素化合物の存在状態を検討した。その結果,大気中においてヒ素は,90%以上が粒子状無機ヒ素化合物(0.38~9.7ngAs/m3)であり,残りのわずかが粒子状有機ヒ素化合物のジメチルアルシン酸(DMAA)(0.03~0.27ngAs/m3)およびガス状無機ヒ素化合物(0.006~0.09ngAs/m3)であった。また,メチルアルソン酸(MAA)およびガス状有機ヒ素化合物はすべての試料において検出されなかった。
    各ヒ素化合物の季節的な濃度変動についてみると,粒子状有機ヒ素化合物のDMAAが明らかに夏季に高濃度となり冬季は低濃度となって,顕著な季節的な濃度変動が認められた。しかしながら,他のヒ素化合物についてはほとんど季節的な濃度変動は見られなかった。また,大気中の粒子状無機ヒ素化合物および粒子状有機と素化合物の(DMAA)粒径分布を調査した結果,無機ヒ素化合物は0.5μmと2μm付近に濃度ピークをもつ二山型の分布となり,重量平均径は約1μmであり,大部分が粒径2μm以下の微小粒子側に存在していた。有機ヒ素化合物(DMAA)では0.5μm付近に濃度ピークをもち,4μm以上では検出されず,粒径2μm以下の微小粒子側のみに存在していた。これらの粒径分布の結果は,各ヒ素化合物の発生源の状況を強く反映している。すなわち,無機ヒ素化合物の場合は,化石燃料の燃焼などの人為的な発生源が主体であり,また,有機ヒ素化合物(DMAA)の場含は,無機ヒ素化合物のメチル化によるものであると推灘される。いずれの場合も,大気中にガスとして放出されたのち,凝縮し微小な粒子に変換すると考えられるので,これらのヒ素化合物の粒径分布は微小モードとなるものと推測される。
  • 田 中茂, 小田切 幸成, 橋本 芳一
    1984 年 1984 巻 4 号 p. 643-649
    発行日: 1984/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    海洋大気中のエーロゾルの粒度分布とバックグラウンド濃度を把握するため,横浜,八丈島および父島において1981年1月13日から20日および12月14日から20日の2回,約1週間にわたり試料採取を行ない,イオンクロマトグラフ分析により,エーロゾル中のNa+,Cl-,NO3-,SO42- およびSO2を定量した。海洋エーロゾル中のNa+とCl-の粒度分布は粗大粒子モードであり,粗大粒子(>2μm)に存在するNa+とCl-の85%以上は海塩起源であった。海洋大気中において硝酸塩は,粒径2μm以上の粗大粒子側にピークが存在し,都市大気において通常観測される1μm以下の粒度分布とは異なっていた。これは,海塩粒子と硝酸との反応が海洋大気上で起こることを示唆している。また,硫酸塩の粒度分布は二山型の分布を示し,粗大粒子側の硫酸塩(>2μm)は海塩起源であり,微小粒子側(<2μm)は汚染地域から輸送移動されたものと考えられる。日本本土から約1000km離れた父島における測定結果から,NO3-,SO42-(微小粒子側),SO2のような汚染物の海洋上におけるバックグラウンド濃度は,NO3-が0.14μg/m3,SO42-(微小粒子側)がo.36μg/m3,SO2は0.20μg/m3であり,これらの値は汚染地域である横浜での値の1/10~1/100と非常に低い結果であった。しかし,北西の季節風の卓越する場合には,父島におけるこれらの濃度は上記のバックグラウンド濃度の2~4倍も高い値が観測され,汚染物質が日本本土から輸送移動されていることが認められた。
  • 末高 透, 宗森 信
    1984 年 1984 巻 4 号 p. 650-655
    発行日: 1984/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    市販の球状白金触媒を用いてトリメチルアミン,トリエチルアミン,エタンチオール,硫化ジメチル,硫化ジエチルの触媒燃焼の研究を行なった。まず,悪臭物質の初濃度および酸素の初濃度(悪臭物質:500~2000ppm,O2:0.21~1.0モル分率),反応温度(480~680K)を変えて悪臭物質の燃焼分解率を測定した。管形反応器の内径は触媒粒の直径の5倍にすぎなかったので,この反応器の数学モデルをガスの吹き抜けがあるかきまぜ混合槽モデルで近似した。そして実験結果をかきまぜ混合槽モデルに基づいて非線形最小二乗法により解析し,総括反応速度パラメーターを求め,悪臭物質の総括反応速度式を得た。すなわち,トリメチルアミン:r(mol/s)=KCCC12CA0.95,活性化エネルギー57.9kJ/mol,トリエチルアミン:r=KC0Co2cA6,活性化エネルギー 205kJ/mol,エタソチオール:r=K0CClCA0.46,活性化エネルギー106kJ/mol,硫化ジメチル:r=K0cC0.76cA3,活性化エネルギー57.4kJ/mol,硫化ジエチル:r=KoCCb42CA6,活性化エネルギー173kJ/molであった。
  • 小林 悦郎, 須貝 稔, 今城 敏
    1984 年 1984 巻 4 号 p. 656-660
    発行日: 1984/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    酸化ジルコニウム(IV)水和物-活性炭(ZrO2・H2O-A.C)複合体を合成し,ヒ酸イオンに対する複合体の吸着能を研究した。複合体はつぎの方法で調製した。ZrOCI2・8H2Oの所定量(2.2~11g)を水(50ml)に溶解し,粒状活性炭(50ml;22.5g)とをまぜ合わせ,混合物を160℃で加熱し水と塩化水素を蒸発した。加熱生成物は活性炭上の添着物をZrO2・xH2Oに加水分解するため水洗し.110℃ で乾燥した。用いた石炭系粒状活性炭はFe1。8%,CaO.47%,NaO.13%を含有し,さらに活性炭にFe2O3.xH2Oを添着した生成物はヒ酸イオンの吸着量を活性炭より増大したが,吸着剤としての再生は不可能とみられる。一方,ZrO2・H2O-A.C複合体は水酸化ナトリウム溶液と塩酸によって再生できた。ZrO2・HaO-A.C複合体によるヒ酸イオンの吸着は,ヒ素(III)イオンが吸着剤の固体表面における触媒作用でヒ素(V)イオンに酸化されてから,酸性~ 中性溶液で行なわれた。Na+,K+,Cr-,NO3-,SO42-などはヒ素(V)イオンの吸着に影響を与えないが,Mg2+とCa2+はヒ素(V)イオンと不溶性塩を生成してヒ素(V)イオンの吸着量を若干増大し,PO43-はその吸着によってヒ素(V)イオンの吸着容量を減少した。カラム試験において,ヒ酸イオンの破過点は入口のAs2O3濃度50mg/l のとき330l/l(12.4gAs/z吸着剤)であった。第2回目のRunにおけるヒ素の吸着容量は第1回目のRunにおけるより約25%減少するが,その後の吸着容量は10回までのくり返しにおいては減少しなかった。
feedback
Top