本研究では,環境へ与える影響が少なく高い効率が期待される熱交換井による地熱を利用した融雪システムを開発し,運用によって得られたデータの解析を行った.地下30mで約13℃という低温な地熱を利用した融雪は高い効率が期待される一方,エネルギー供給量が少ないために短時間で多量の融雪は困難である.この問題を克服するため,地下に貯水槽を設置し,雪を貯留して熱交換井を使って低温で長時間かけて融雪を行うシステムを開発した.取得データの解析により得られた結果は以下のとおりである.まず,貯留槽底面から流入する地熱量は1平方mあたり13W程度であり,この熱だけでは融雪は困難であることを定量的に明らかにした.次に,熱交換井運転では,交換井から2.3m離れた温度計測井では深さ10m以上の地温はほぼ一定であり,熱交換井による地熱移動はごく近傍のみで行われること,さらに,深さ30m太さ100mmの熱交換井の出力は定常状態で2.5kWと得られた.最後に,今回開発した,熱交換井による貯留型低温融雪システムは,予想以上に高い効率で融雪できることが定量的に明らかになった.
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