雪氷
Online ISSN : 1883-6267
Print ISSN : 0373-1006
68 巻, 2 号
選択された号の論文の4件中1~4を表示しています
  • 井上 聡, 川島 茂人, 横山 宏太郎
    2006 年 68 巻 2 号 p. 115-122
    発行日: 2006/03/15
    公開日: 2010/02/05
    ジャーナル フリー
    温暖化時の月平均気温と月降水量の全国のメッシュデータを基に予測した,最大積雪深の予測値を評価するために,メッシュ気候値2000の最大積雪深を用いて検証を行なった.検証では,現在から2090年代までの10年毎のメッシュ予測値と,メッシュ気候値2000との類似性を評価した.類似性の指標には,差の二乗和の平方根(Root Mean Square Error),差の平均値(Mean Error),累積相対度数分布を用いた.その結果,メッシュ気候値2000は統計期間の中間年が1985年であるにも関わらず,2000年代や2010年代の予測値との類似性が最も高かった.つまり,最大積雪深の予測値は,全体に20年早める修正が必要である.これは,1970年を中間年とする旧メッシュ気候値を1990年の気候であるとして温暖化時の予測値を計算した結果,その間の気候変化が反映されなかったためと考えられる.
  • 塑性型変形と破壊型変形
    上田 雅敏, 荒川 政彦, 前野 紀一
    2006 年 68 巻 2 号 p. 123-130
    発行日: 2006/03/15
    公開日: 2010/02/05
    ジャーナル フリー
    機械的最密充填密度以上の雪を高密度雪と定義し,貫入圧縮実験を行ったところ,低密度雪の圧縮変形と同じように塑性型変形及び破壊型変形が確認された.塑性型変形の場合,応力と歪速度の関係は,自然積雪の圧密のように線型,すなわちニュートン粘性流体的ではなく,べき乗則に従った.したがって,高密度雪圧縮時の塑性型変形では,低密度雪の時のような,単なる粒子の再配列だけでなく,氷粒子自身の塑性変形や破壊の寄与が大きいと考えられる.塑性型変形から破壊型変形へ移行する限界速度は密度550,640,730kg/m3でそれぞれ,0.33~0.83mm/s,0.83~1.67mm/s,1.67~3.33mm/sの範囲に存在する.塑性型変形では歪速度は応力のべき乗に比例し,べき指数は密度の増加とともに大きくなり,氷の値3に近づく.破壊型変形の鋸歯の傾きから求めた弾性率は100MPa~1GPaで,速度及び密度の増加とともに大きくなる.破壊強度の値は0.2~8MPaで,密度の増加とともに大きくなる.
  • 荷重測定および鳴き雪との予備比較
    マハジャン プニット, 荒川 政彦, 前野 紀一
    2006 年 68 巻 2 号 p. 131-139
    発行日: 2006/03/15
    公開日: 2009/08/07
    ジャーナル フリー
    三種類の粒径が異なる高密度雪を用いて圧縮実験を行った.圧縮速度は1.5~300mm/sの間で5段階に変化させ,高密度雪の圧縮特性に対する速度依存性を調べた.その結果,低速度領域おいてはスティック・スリップに似た荷重変動が観測された.このスティック・スリップに似た変動の周期は,雪の種類,圧縮速度,圧縮距離により変化した.雪の圧縮に伴って発生する音も荷重と同時に計測した.荷重データとの比較により,荷重が急激に減少する瞬間に大きな音が発生していることが明らかになった.高速度の圧縮では,スティック・スリップのような極端な荷重変動は観察されず,微小変動成分を含むスムーズな荷重履歴が観察され,発生する音は低速度時よりも高音であった.高密度雪の圧縮および音発生に対する速度,雪質,温度の影響も調べられた.
  • 秋田県鹿角市花輪と青森県黒石市にみる
    奈良 洋
    2006 年 68 巻 2 号 p. 141-147
    発行日: 2006/03/15
    公開日: 2010/02/05
    ジャーナル フリー
    雪国の知恵は数多くあるがこみせもその一つである.こみせ(小店)はこもへとも呼ばれ,主に東北地方での呼称である.新潟など北陸地方ではがんぎ(雁木)と呼ばれている.ともに江戸時代から日本海側の豪雪地帯の都市部で発達した.冬季に風雪から歩行者を守る屋根付きの歩道である.いわばアーケードのルーツといわれている.主に商店街で発展し,商家の主屋から道路に向かって一間(1.8m)ほど庇を延ばした構造である.
    こみせ部分の敷地は商家の私有地であり,その建設費も個人の負担である.「私」が「公」のために費用負担するという雪国ならではの生活の知恵が生み出したものである.最盛期(明治末期から戦前まで)には全国74都市にみられたといわれている.戦後,防災上や道路の拡幅工事に伴って,こみせは次第に姿を消していった.
    わずかに残る秋田県鹿角市花輪地区と青森県黒石地区での事例を取り上げ,こみせが中心市街地のまちづくりの上で果たしている新たな機能を掘り下げ,雪国の知恵の復活ぶりを明らかにする.
feedback
Top