耳鼻と臨床
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48 巻, 4 号
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  • 浜野 巨志, 多田 直樹, 中川 のぶ子, 南 豊彦, 井野 千代徳, 山下 敏夫
    2002 年 48 巻 4 号 p. 235-242
    発行日: 2002/07/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    典型例とも思われる悪性外耳道炎の2症例を経験した。両者に共通することは、高齢者であり、コントロールされていない糖尿病を有し、主訴は激しい耳痛で、起因菌は緑膿菌であった。さらに、経過中に両者ともに迷走神経麻痺を併発し、1例は改善し、1例は改善しなかった。治療は当初、外来で行われたが十分な改善が見られず2例とも入院治療とした。治療は血糖のコントロールと抗生剤の投与、中耳根本術と外耳道の洗浄、2例目はそれに加え外耳道にインシュリンを塗布した。血糖の低下とともにCRPも低下して症状と所見も改善していった。CT、MRI、RI (骨シンチ、67Gaシンチ) を施行したが、ともに疾患の広がりなどの把握には有効であったが詳細な経過を追うには適していないと判断した。症状と所見そしてCRP値こそが経過を追うのに有効な指標と考えた。
  • CBDCAによる急性間質性肺炎
    山本 一宏, 神田 智子, 中井 麻佐子
    2002 年 48 巻 4 号 p. 243-246
    発行日: 2002/07/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    下咽頭癌症例に発症したカルボプラチン (carboplatin: CBDCA) によると思われる急性間質性肺炎の1例を報告した。CBDCAは頭頸部悪性腫瘍の治療に有用な薬剤であるが、少量でも重篤な副作用を発症する可能性があることに留意すべきである。
  • 楠 威志, 西田 升三, 佐藤 隆夫, 齋籐 啓, 村田 清高, 戸村 隆訓
    2002 年 48 巻 4 号 p. 247-250
    発行日: 2002/07/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    症例は61歳、男性。1997年5月嗄声を認め当科紹介となった。初診時、左反回神経麻痺のほか両鎖骨上窩リンパ節腫大を認めた。エコーにて甲状腺腫瘍、胸部レントゲンおよびCTにて肺野に多発性結節性陰影を認めた。タリウムシンチにて右鎖骨部に集積を認めた。以上より術前診断は、甲状腺癌による肺転移を考えた。しかし、癌組織の術後病理組織像では、甲状腺癌のような腺腔内のコロイドを認めなかった。また、甲状腺内間質、被膜内および被膜外の血管周囲に癌病巣を認めた。免疫染色においては、腺癌に特異的に反応するサイトケラチン-8抗体では陽性を示したが、サイログロブリン抗体では陰性を示した。このことより、甲状腺癌からの肺転移よりむしろ原発性肺腺癌からの甲状腺転移を考える方が妥当と思われた。
  • 糸数 哲郎, 宇良 政治, 大輪 達仁, 野田 寛
    2002 年 48 巻 4 号 p. 251-254
    発行日: 2002/07/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    内頸静脈拡張症の2小児例を報告した。2例ともに5歳の男児であった。2例とも発育も良好で健康であり、手術や外傷の既往はなかった。2例とも怒責時や息こらえ時にのみ右頸部に柔らかい腫脹が出現した。安静時には頸部腫瘤は自他覚的にみられなかった。頸部のCT検査では怒責時に右の内頸静脈が拡張するのが認められた。機能的に障害がなく、家族も手術を望まなかったので無治療で経過観察中である。
  • 岸本 麻子, 牧野 孝一郎, 井野 素子, 井野 千代徳, 山下 敏夫
    2002 年 48 巻 4 号 p. 255-258
    発行日: 2002/07/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    一般に、白血球増多を伴った悪性腫瘍の報告は少ないが、予後は非常に不良とされている。その中で、著者らは白血球増多および高カルシウム血症を伴った甲状腺未分化癌を経験した。症例は77歳女性で、前頸部腫瘤および呼吸困難を主訴に来院した。甲状腺腫瘍を疑い穿刺吸引細胞診を施行した結果、甲状腺未分化癌であった。血液検査では自血球数40,700/mm3、血清カルシウム値7.0mEq/Lで高値を示していた。そこでG-CSF値を測定したところ、174μg/mlであり、上昇していたためG-CSF産生腫瘍と診断した。また、腫瘍に伴う高カルシウム血症の原因として液性因子の一つであるc-PTHrPが高値を示しており、関与が示唆された。全身状態および年齢を考慮し、甲状腺腫瘍に対し放射線治療を行ったところ一時的に全身状態が改善し、白血球数および血清カルシウム値の低下が認められた。しかし、再び白血球数増加とともに悪化傾向となり、腫瘍が急激に増大してから約5カ月後に死亡した。死亡時には白血球数は再び増加していたが、血清カルシウム値は再び上昇することはなかった。
  • 穐山 直太郎, 菊地 俊彦, 高野 潤, 小林 俊光, 安倍 邦子, 林 徳真吉
    2002 年 48 巻 4 号 p. 259-264
    発行日: 2002/07/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    内視鏡的副鼻腔手術 (endoscopic sinus surgery: ESS) により特徴的な鼻内所見を観察することのできたWegener肉芽腫症の1症例を経験した。症例は23歳女性。2001年3月下旬より左眼痛、左眼球結膜の発赤が出現。某病院にて治療を受けるも確定診断に至らず、難治のため、2001年7月17日、当科紹介となった。左眼球突出、左眼球結膜の高度発赤および疼痛を認め、即日入院となった。翌日、全身麻酔下にESS施行。鼻中隔穿孔を伴った高度の肉芽腫性病変を両側鼻・鼻副鼻腔に認めた。臨床像、病理学的所見およびC-ANCA陽性所見よりWegener肉芽腫症と診断し、ステロイド、シクロフォスファミドによる治療を開始、良好な臨床経過をたどっている。今回の症例を経験して、内視鏡による詳細な局所の観察および手術時における十分な病理学的検体の採取の重要性を痛感した。また、鼻・副鼻腔疾患により眼窩内合併症を来したと思われる疾患においては、Wegener肉芽腫症の可能性も十分考慮におき、ESSの際にも手術操作のみに終始することなく、十分な病理学的検索を行うことが重要と考えられた。
  • 高野 潤, 菊地 俊彦, 崎浜 教之, 奥 竜太, 宗 英吾, 加瀬 敬一, 宮本 育江, 穐山 直太郎, 小林 俊光
    2002 年 48 巻 4 号 p. 265-268
    発行日: 2002/07/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    原発性蝶形骨洞悪性腫瘍は、副鼻腔悪性腫瘍の中でもまれで全副鼻腔悪性腫瘍の1%に満たないと言われている。今回、われわれは蝶形骨洞が原発と推定される頭蓋底に浸潤した低分化型扁平上皮癌の1例を経験した。症例は68歳、男性。左頬部痛を主訴に、近医より当科紹介となった。CT、MRIにて左側頭下窩を中心とし、左蝶形骨洞、左上顎洞、頭蓋底に広がる腫瘤陰影を認めた。左視力低下、左眼瞼下垂、複視、左眼内転障害、左頬部から左側頭部、下顎左側にかけて知覚低下、左軟口蓋の挙上困難、舌左縁の知覚および味覚低下、左声帯の運動障害の症状を伴っており、腫瘍の圧迫あるいは浸潤に起因するものと考えられた。肝細胞癌を伴っており、その転移巣である可能性も想定されたが、病理学的検索により、分化度の低い扁平上皮癌と診断された。腫瘍は広範に進展しており、外科的切除は困難と判断し、根治線量に及ぶ放射線療法を行った。左眼の上下運動および眼瞼下垂と疼痛に改善傾向を認めた。現在、外来にて経過観察中である。蝶形骨洞を中心とした悪性腫瘍は早期発見が困難であり、診断時には腫瘍は広範に進展し、多彩な脳神経症状を伴っていることが多い。蝶形骨洞悪性腫瘍の診断および治療における詳細な脳神経症状の評価、画像診断および病理学的検索の重要性を強調した。
  • 高畑 淳子, 松原 篤, 池野 敬一, 新川 秀一
    2002 年 48 巻 4 号 p. 269-275
    発行日: 2002/07/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    近年、好酸球浸潤の程度が鼻内ポリープの再発に深く関与すると考えられてきている。今回、われわれはポリープと篩骨洞粘膜における好酸球と肥満細胞の浸潤が慢性副鼻腔炎の予後にどのような影響を及ぼすかについて、形態学的に詳細な検討を行った。慢性副鼻腔炎の鼻内視鏡手術初回手術例21例を対象として、手術時に、ポリープと篩骨洞粘膜を採取した。活性化好酸球、肥満細胞を免疫組織化学的に染色し、各々の部位における陽性細胞数を算出した。予後判定には術前術後の副鼻腔CT陰影をスコア化したものから改善度を求め、活性化好酸球、肥満細胞の浸潤程度と比較検討した。その結果、篩骨洞粘膜への活性化好酸球浸潤の程度と術後の改善度との間において有意な負の相関 (回帰分析:p≥0.05) が認められた。このことから、篩骨洞粘膜における活性化好酸球浸潤の程度が最も予後を反映することが示唆された。
  • 平田 佳代子, 小勝 敏幸, 伊藤 恵子, 栗原 美樹, 平尾 充成, 小松 正規, 山本 馨, 佃 守, 木村 博和
    2002 年 48 巻 4 号 p. 276-282
    発行日: 2002/07/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    慢性副鼻腔炎に対するマクロライド少量長期投与療法の効果を無作為化比較試験により検討した。慢性副鼻腔炎患者を封筒法によりクラリスロマイシン100mg/日とセラペプターゼ30mg/日を8週間投与する群 (投与群) およびセラペプターゼ30mg/日のみを8週間投与する群 (非投与群) に無作為に割り付けた。解析対象症例は投与群14例、非投与群15例であった。自覚症状 (鼻漏、後鼻漏、鼻閉、嗅覚障害、頭重・頭痛)、他覚所見 (鼻汁の量、鼻汁の性状、後鼻漏、鼻粘膜の浮腫)、副鼻腔X線所見をスコア化して治療開始前との差を改善度とし、2群の改善度の違いをMann-WhitneyのU検定により検定した。その結果、6週目の自覚症状 (ρ<0.05)、2週目(ρ<0.05)、4週目(ρ<0.01)、6週目(p<0.01)、8週目(ρ<0.05) の他覚所見、8週目のX線所見 (ρ<0.05)において投与群で非投与群より有意に高い改善度を認め、慢性副鼻腔炎に対するクラリスロマイシン少量長期投与の有効性が確認された。
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