一般に、白血球増多を伴った悪性腫瘍の報告は少ないが、予後は非常に不良とされている。その中で、著者らは白血球増多および高カルシウム血症を伴った甲状腺未分化癌を経験した。症例は77歳女性で、前頸部腫瘤および呼吸困難を主訴に来院した。甲状腺腫瘍を疑い穿刺吸引細胞診を施行した結果、甲状腺未分化癌であった。血液検査では自血球数40,700/mm
3、血清カルシウム値7.0mEq/Lで高値を示していた。そこでG-CSF値を測定したところ、174μg/mlであり、上昇していたためG-CSF産生腫瘍と診断した。また、腫瘍に伴う高カルシウム血症の原因として液性因子の一つであるc-PTHrPが高値を示しており、関与が示唆された。全身状態および年齢を考慮し、甲状腺腫瘍に対し放射線治療を行ったところ一時的に全身状態が改善し、白血球数および血清カルシウム値の低下が認められた。しかし、再び白血球数増加とともに悪化傾向となり、腫瘍が急激に増大してから約5カ月後に死亡した。死亡時には白血球数は再び増加していたが、血清カルシウム値は再び上昇することはなかった。
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