2017年度 心理学研究掲載 優秀論文賞受賞論文
授賞理由
マインドワンダリング(mind wandering)とは,近年注目されている心のデフォルト状態を示し,心理学研究の重要なトピックになってきている。心のデフォルト状態とは,科学研究におけるベースラインの状態を意味するが,我々人間の実生活においては,起きている時間の約半分の時間にも該当するような何気なくあることを考えたり,感じたりしている状態である。本研究は,マインドワンダリングの測定を目的とした自己記入式尺度2点の日本語版作成と,その信頼性と妥当性の検証を目的として行われた。作成された尺度の妥当性については,well-being,精神疾患関連特性とも相関関係が示されている。また,研究2として,作成された尺度と認知課題(外的注意課題)との相関を検討し,関連が認められたことによって尺度の信頼性をより高いものにしている。本尺度については,今後,神経科学分野,認知科学分野等を中心として多くの分野で活用されることが予想される。特に,心と関連する医学分野で注目されているデフォルト・モード・ネットワーク(default mode network:DMN)は,マインドワンダリングとの親和性が極めて高い。それ故,本尺度は医学分野での活用も大いに見込まれるものである。研究の計画が堅強であること,尺度の信頼性と妥当性を検証する手続きについても十分配慮
が行き届いていること,読み手にも理解しやすい論調であったこと,研究の限界点についても丁寧に言及していたこと等が評価された。以上のような理由から,本論文は優秀論文賞にふさわしいと判断された。