授精後20~22日目の乳汁中progesterone (P
4) 測定により乳牛の早期妊娠診断を実施しようとする際に起り易い誤診の原因を明かにする目的で, 授精後4~9週間の妊娠牛17頭と非妊娠牛39頭から, 2, 3日間隔で採取した乳汁についてP
4を測定し, これらの値の変動を比較した. 妊娠牛17頭では, P
4値は授精後2~3日目から1.0ng/ml以上に増加し, その後も1.0~7.4ng/mlの高値を維持した. 非妊娠牛39頭の内8頭では授精後19日目に, 14頭では21日目に, 1頭では22日目に, 3頭では23日目に, 3頭では26日目に, そして10頭では30~60日目にそれぞれ発情が再帰した. 非妊娠牛において, P
4値の低下(1.0ng/ml未満)は発情の当日のみに認められ, 発情の2日前および2日後のP
4値は1.0ng/ml以上で, 妊娠牛との区別は困難であった. また, 授精後3O~60日目で発情が再帰した牛では, この間P
4値は1.0ng/ml以上を維持していたことから, 胚の死滅が推察される. このように, 授精後20~22日目の乳汁中P
4測定による妊娠診断においては, 性周期の変動, および胚の死滅によると推測される理由のために誤診が起こり易いことが確認された.
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