感染症学雑誌
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57 巻, 5 号
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  • 小林 一寛, 田口 真澄, 島田 俊雄, 坂崎 利一
    1983 年 57 巻 5 号 p. 375-382
    発行日: 1983/05/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    過去4年間にVibrio fluvialisによると思われる10例の散発下痢症を経験した. 患者は5歳から70歳までの年齢層に分布し, 性別に関係していなかった. 患者発生は夏季に集中し, 2例は東南アジア旅行からの帰国者であった. 感染源の調査は実施できなかったが10例のうち6例は発病前48時間以内に海水産魚貝類を生食しており, これらの食品との関連が強く示唆された. 臨床症状は水様性下痢, 嘔吐, 発熱および腹痛が主であった. 腹痛は上部から膀周囲痛であり, また下痢便に血液混入例は4例にみられた. 入院時の血液検査を実施した3例ではすべて白血球数の増加, 好中球の核左方移動が認められた.
    V. fluialisの下痢起病性について各種材料から分離した18株について乳飲みマウス胃内投与試験, Y1副腎培養細胞試験, 溶血試験を実施したところ乳飲みマウス胃内投与試験では8株, Y 1培養細胞試験では細胞壊死毒の産生が確認された. 乳飲みマウス試験で陽性の8株のうち6株はlog phaseに, 2株はstationary phaseの培養上清に陽性が認められた.
  • 稲本 元
    1983 年 57 巻 5 号 p. 383-387
    発行日: 1983/05/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    免疫能の低下が知られる透析患者において結核性胸膜炎につき疫学的に検討した.
    対象は全国161施設の透析患者7,274人で, そのうち胸膜に結核病巣を有したものは18人, 30歳代から50歳代が多く, 半数の患者では病巣が胸膜に限局していた. 胸膜に病巣を有する結核は全結核の13%に相当した. また罹患率は男子で女子の2倍程高く, 致命率は女子で高い傾向であった. 結核が胸膜に限局する群は予後が良く, 胸膜外結核を合併する群は悪かった. 合併病巣は肺に最も多く, 腹膜, 腎, 脾, 肝, リンパ節, 骨, 腸などであった. 発病の時期は透析療法開始前3ヵ月から後1年半の間に集中していた. 7割弱の患者に結核の既往があり, その7割では同じ臓器が今回も侵襲されていた. 即ち再発がかなり多いと推測された. 腎不全の原病も発病に影響することが示唆された. ツ反応陽性は半数以下であった.
  • 楠田 均, 日笠 譲, 早川 泰
    1983 年 57 巻 5 号 p. 388-393
    発行日: 1983/05/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    1978年~1980年の3力年にわたり, インフルエンザ (IF) 様疾患者58名を対象として, 同一人より咽頭うがい液, 血液 (急性期, 回復期) および鼻粘膜上皮細胞を採取し, 従来から用いられているインフルエンザウイルス (IFV) 分離赤血球凝集抑制試験 (HI) 法に加えて, 蛍光抗体 (FA) 法によるIFV特異抗原の検出を試み, つぎの結果を得た.
    1) 急性期HI抗体価が1: 64倍でIFV分離の困難な患者からも71.4%と高率にIFV特異抗原が証明された.
    2) FA, IFV分離HIの各試験法の陽性率はそれぞれ58.6%, 65.5%, 74.1%であったが, これらの試験法を併用することにより, 83%と診断率が向上した.
    3) IFの早期迅速診断法として, FA法の有用性が示唆された.
    4) 鼻粘膜上皮細胞の特異蛍光は核のみ, 核と原形質, 原形質のみと時期によって異なる傾向が認められた.
  • 玉井 伴範
    1983 年 57 巻 5 号 p. 394-404
    発行日: 1983/05/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    ワイル病病原レプトスピラの分類, 同定を確実でしかも容易に行う目的で, Leptospira interrogansserovar copenhageni白水株, M20株とserovar icterohaemorrhagiae RGA株に対するモノクローナル抗体を作製し, その性状の検討を行った. 抗白水抗体10系統, 抗M20抗体5系統, 抗RGA体5系統, 合計20系統のモノクローナル抗体が得られた. 抗白水抗体では, serovar copenhageniにのみ反応する抗体が1系統, serovar copenhageniとserovar icterohaemorrhagiaeとに同程度に反応する抗体が7系統, その中間の性状を示す抗体が2系統得られた. 抗M20抗体では, serovar copenhageniとicterおhaemorrhagiaeとに同程度に反応する抗体が3系統, serovar copenhageniには低い価で, icterohaemorrhagiaeには高い価で反応する抗体が1系統, serogroup Icterohaemorrhagae以外にserovarpyrogenesにも反応する抗体が1系統得られた. 抗RGA抗体では, serovar icterohaemorrhagiaeにのみ反応を示す抗体が2系統, serovar icterohaemorrhagiaeに高い価で反応し, copenhageni には低い価で反応する抗体が2系統, serogroup Icterohaemorrhagiae以外にserovar pyrogenesとcanicolaにも反応を示す抗体が1系統得られた.
    これらの結果, serovar copenhageniとserovar icterohaemorrhagiaeがserovar pyrogenesやcanicolaと近い関係にあることが証明され, また, 従来, 血清学的に完全型, 不完全型の関係にあるとされていたserovar copenhageniとicterohaemorrhagiaeは, それぞれの血清型にのみ存在する抗原と両者に共通な抗原とを持っていることが明らかになった. これらのserovarcopenhageniとicterohaemorrhagiaeのそれぞれ一方のみに反応する抗体ならびに両者に反応する抗体とを用いることによって, ワイル病病原体の同定は, 確実でしかも容易に行うことが可能となった.
    また, これらの抗体の中には, 顕微鏡的凝集反応において, レプトスピラがひも状に凝集して非常に長くなっている所見がしぼしば認められ, さらに, 反応域の幅の比較的狭いものでは, 著明な前地帯現象を認めた.
  • 堀田 昌宏
    1983 年 57 巻 5 号 p. 405-418
    発行日: 1983/05/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    出生直後のヒトの糞便は原則として無菌であり, 時間の経過に従って腸内細菌叢が形成される. 無菌であった消化管内でどの様な変化を経て種々の菌が増殖するのか, 現在でも不明な点は多い. 今回新生児, 未熟児の腸内細菌叢形成について若干の検索を行ったが, 最初からいわゆる腸内細菌のみが認められる群と一過性に腸内細菌以外の菌が認められる群, および特定の菌のみが定着し, その菌による感染症をひき起こした群とに分けられた. 又病原性がなく, 多くの健康乳児から検出されるBifidobacterium breveを出生直後の新生児に投与して定着させうることを確認し, この菌を経口投与して特定の菌が腸管内で異常増殖している症例の腸内細菌叢置換に成功した. このことは腸管が感染源となることを防止する上で, 臨床的に有用であると考えられる.
  • 加藤 政仁, 武内 俊彦, 伊藤 誠, 南条 邦夫, 加藤 錠一, 山本 俊幸, 鈴木 幹三, 北浦 三郎, 吉友 和夫, 山本 素子, 花 ...
    1983 年 57 巻 5 号 p. 419-440
    発行日: 1983/05/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    Cefoxitinを各種呼吸器感染症66例 (効果判定対象55例, 副作用判定対象63例) に使用し, 次のような結果を得た.
    1. 55例中有効以上と判定した症例は42例 (76.4%) であった.
    2. 呼吸器感染症の種類別での有効率は, 一次性肺炎では84.6%, 二次性肺炎では68.8%, 慢性気道感染症急性増悪では69.2%であった.
    3. 重症度別臨床効果は, 軽症では90.9%, 中等症では76.3%, 重症では50.0%の有効率であった.
    4. 年齢別臨床効果は, 69歳以下では82.8%, 70歳以上では69.2%の有効率であった.
    5. 原因菌が検出できた13例での細菌学的効果は, 消失10例, 減少1例, 菌交代2例であった. また, 常在菌からの菌交代が2例に認められた. 交代菌はP.aeruginosa (2例), E.agglomerans (1例), K.pneumoniae (1例) であった.
    6. 他剤無効例 (11例) に対しては, 有効が7例 (63.6%) であった.
    7. 本剤無効の3例ではminocycline, ceftizoxime, cefotaximeのそれぞれが有効であった.
    8. 副作用は8例にみられ, 発疹1例, GOT上昇2例, GOT・BUN上昇1例, BUN・creatinine上昇1例, Al-p上昇1例, 白血球減少2例であったが, 本剤中止後すみやかに正常に復した.
  • 高松 健次, 三木 文雄, 河野 雅和, 別府 敬三
    1983 年 57 巻 5 号 p. 441-447
    発行日: 1983/05/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    感染性心内膜炎の合併症の一つとして, 転移性脳膿瘍があるが, 診断の困難性もあり, 予後は不良である. 最近著者らは, 感染性心内膜炎に伴なった脳膿瘍を, CTスキャンにて早期に診断する事により, 外科的処置を加える事なく, 抗生剤投与のみにて治療に成功した例を2例経験した. 症例145歳女, AR にα-hemolytic streptococcusによる心内膜炎発症. 経過中左上肢不全麻痺出現入院後CT scanにて右前頭葉にヨードにて輪状enhancementを受ける脳膿瘍病巣を確認した. PCG 1,200万単位14日, 2,200万単位6日間投与し, アレルギー出現のためCERに変更後4g 25日間投与にて治癒した. 症例235歳 男, AR+MSにS. aureusによる心内膜炎発症, 経過中24時間持続する瞳孔左右不同症を併なう意識障害出現. 翌日のCTscanでは著変なく, 16日後のCT scanにて多発性脳膿瘍形成を認め, PCG2,000万単位49日間投与にて治癒した.
    感染性心内膜炎に合併した脳膿瘍の報告例は少ないが, 臨床的に一過性脳塞栓と考えられる場合にも積極的にCT scanを実施し, 脳膿瘍の合併を早期に診断する事が重要であり, 形成された脳膿瘍が早期のもので大きさも大きくなく, かつ多発性の場合等, ただちに外科的処置にゆだねるのが躊躇される時, 起炎菌とその薬剤感受性の正確な把握のもとに, 内科的治療を試みるのも一つの方法でありまた充分治療し得るものと考える.
  • 田中 茂, 武元 良整, 小野 仁之, 藤井 千穂
    1983 年 57 巻 5 号 p. 448-453
    発行日: 1983/05/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    Toxic shock syndrome (T. S. S.) は1978年米国Toddらにより最初に報告された新しいブドウ球菌感染症であり, 主に生理期のタンポンを使用する若年婦人に好発するものである. 諸外国ではすでに症例報告がなされているが, 本邦における報告例は未だないようである. 最近我々は本症と考えられた一例を経験したので本邦第一例と考え報告する. 生来健康である21歳のタンポンを使用する女性が生理とともに発熱, 筋肉痛, 紅斑を来たし, 短期間にショックに陥るとともに, 呼吸不全, 腎不全, DIC, 意識障害, 肝障害など多臓器不全の様相を呈した. これらに対し対症療法を行うことにより, 約1ヵ月の経過で完治せしめることができたが, 頻回に施行した血液, 咽頭, 尿, 髄液の培養はすべて陰性であった. 本症例の臨床経過, 検査成績はShandsの提唱したT. S. S. の診断基準に一致するものである.
  • 1983 年 57 巻 5 号 p. 454-456
    発行日: 1983/05/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
  • 1983 年 57 巻 5 号 p. 457
    発行日: 1983年
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
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