川崎市の診療所を受診した淋菌感染症が疑われた男性および女性の咽頭および男性尿道, 女性子宮頸管より
Neisseria gonorrhoeaeを分離し, 細菌学的性状ならびに疫学的調査を行った. 対象患者は男性127名, 女性41名の168名で, 尿道または子宮頸管からの材料について
N. gonorrhoeaeの細菌学的検査を実施した. さらに咽頭ぬぐい液を採取し, 変法サイヤーマーチン寒天培地に塗抹し, 35℃ 48時間, 炭酸ガス培養を行った.
男性尿道127例から
N. gonorrhoeaeが検出されたのは117例 (92. 1%) で, 咽頭からは127例中14例 (11.0%) であった. 咽頭から
N. gonorrhoeaeが検出された14例は全て尿道からも
N. gonorrhoeaeが認められた. 女性においては子宮頸管41例中20例 (48.8%) が
N. gonorrhoeae陽性で, 咽頭41例中
N. gonorrhoeae陽性例は14例 (34.1%) であった. 咽頭, 子宮頸管ともに陽性は41例中11例で, 咽頭のみ陽性は3例であった.
これら分離菌の各種抗菌薬感受性は咽頭および尿道または子宮頸管由来で大差はなかった. 咽頭および尿道または子宮頸管から同時に分離された
N. gonorrhoeaeのPFGEパターンを比較した結果, 25例中女性1例を除き咽頭および尿道または子宮頸管からの分離菌は同一菌株であることが判明した. また, 症例間ではバンドパターンは多様であった.
以上の結果から, 我が国における淋菌感染症は咽頭にも広く分布し, 異なった遺伝子性状を有する株によるものと考えられた.
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