感染症学雑誌
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58 巻, 8 号
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  • 橘 宣祥, 岡山 昭彦, 楠根 英司, 横田 勉, 志々目 栄一, 津田 和矩, 俣野 浩
    1984 年 58 巻 8 号 p. 717-722
    発行日: 1984/08/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    宮崎県の成人1,863名 (男性505, 女性1,358名) の血清について, HUT102細胞を抗原として, 間接蛍光抗体法によって, ヒトT細胞白血病ウイルス抗体の測定を行った.
    抗体陽性率は9.9%(男性6.3%, 女性11.3%) であった. 年齢別では15-24歳では男女とも3-4%台で以後漸増したが, 55歳以後著明な上昇を示し, とくに女性は19.3%に達した. 抗体価の幾何平均値は59.7であったが, 45歳以下は37.7, それ以上は67.7と高齢者ほど高値であった. 地理的分布では陽性率は地域によって著しく異なり, 最低は4.4%(宮崎市), 最高は32.1%(串間市) であった. 県の南部が北部に比べて高率の地域が多かったが, 年齢構成, 職業との関連は明らかでなかった.
  • Tp IgM酵素抗体法の実用化
    土橋 賢治
    1984 年 58 巻 8 号 p. 723-732
    発行日: 1984/08/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    妊婦におけるトキソプラズマ (Tp) 症は, 急性感染による胎児への障害で注目されているが, 今日の血清診断法としての間接赤血球凝集法 (IHA法), ラテックス凝集法 (LA法) は, 共に感度・特異性の面で問題がある. そこで1979年9月から1982年7月までに得られた妊婦血清3,371検体を対象に, 感度・特異性が極めて秀れている酵素抗体法 (ELISA法) に注目し, Tp急性感染を示すTp特異IgM抗体の検出法として, 新しいTp IgMELISA法の確立に努めた. 本法は現在市販されているIgG ELISA製品 (Toxo ELISA Test Kit) を抗原として用い, 血清検体はProtein A処理にてIgG成分を除去し, さらに抗人IgMアルカリフォスファターゼ標識抗体を使用する簡便なものである. 検出されたTp IgM抗体の特異性は, 庶糖密度勾配遠心法及びTp虫体による吸収試験によって確認された. 本法は特殊な技術も要せず臨床応用も容易で信頼性も高いので, 今後急性Tp感染症の診断法として広く用いられるものと期待される
  • 水野 新一, 牧 淳, 本田 武司, 三輪谷 俊夫, 有田 耕司
    1984 年 58 巻 8 号 p. 733-738
    発行日: 1984/08/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    Campylobacter腸炎患者血清と反応するCampylbacter jejuni (以下, C. jejuniと略す) 由来抗原 (以下, C. j抗原と略す) の精製を試みた.C.lejuni腸炎患者から分離した1株 (Hisaichi株) を血液寒天平板で培養して得た菌体をHomogenizer (ULTRA-TURRAX) で処理して菌体表面の可溶性抗原を抽出し, 粗材料とした. この粗材料をSepharose4Bカラム (2×90cm) およびDEAE-SephadexA-25カラムを用いてCj抗原を分離精製した.なおC.j抗原の検出は既報のELISA法に従った.
    このようにして精製したCj抗原はSDSpolyacrylamidegel電気泳動でほぼ一本のバンドを示した.この精製抗原を用いてCampylobacter腸炎患者血清 (36検体) を調べると約79%の血清が陽性であった. 非腸炎対照児血清 (9検体) はすべてC. j抗原に対する抗体は陰性であった.
    患者血清中に存在する抗体をELISA法で検出する場合に用いる抗原は, 非特異反応を除去するためにも, 精製したものを用いるべきである. 今回我々がC. jejuniから抽出分離精製した抗原はC. jejuni腸炎の診断に益するのみならずC. jejuni感染の動態の解析にも役立つものと考える.
  • 近藤 治美, 柏木 義勝, 大久保 暢夫, 寺山 武, 天野 祐次, 小野川 尊
    1984 年 58 巻 8 号 p. 739-749
    発行日: 1984/08/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    1980-82年に全国で分離されたA群溶血レンサ球菌2,457株を薬剤感受性試験に供試し, そのうち1,727株については菌型との関係も調査した. また1982年に分離されたB群溶血レンサ球菌86株についても最小発育阻止濃度を測定した.
    A群溶血レンサ球菌では, PCs, CEPsに耐性を示す菌株は, これまでと同様分離されなかった. TCに対する耐性株の分離率は1976年以来大きな変動はみられなかった. CP. MLsに対する耐性株は, 1978年から再び増加がみられたが, 1980-81年をピークに, 特にEMは減少傾向を示している.
    耐性株の分離率は, 狸紅熱由来株の方が, 狸紅熱以外の各種感染症由来株より多かった.
    菌型では, 狸紅熱を含む各種感染症由来株に12型が多くみられたが, 健康学童からは, 1型, 6型, 12型, 13型, 28型が同程度に分離された.
    12型の中で多剤耐性を示す菌株の割合が, 1982年に至って減少した. また1型は感受性株が多く, 4型はTC単独耐性, 6型はTC, CP2剤耐性を示す菌が多かったが, 18型はすべて感受性株であった.
    B群溶血レンサ球菌では, PCs, CEPsに対してはすべての菌株が感受性を示したが, TC耐性株は43%であった. またCPに対してはMICが全般的に高かったが, 耐性値を示したものは2株であった・MLsに対して耐性を示す菌株が1株みられた.
  • 特に溶連菌感染症について
    森田 盛大, 石田 名香雄
    1984 年 58 巻 8 号 p. 750-757
    発行日: 1984/08/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    秋田県における感染症サ-ベイランス情報を観察した結果, 感染症の発生変動に気象因子が関与する可能性が考えられたことから, 秋田県で多発している代表的な細菌性感染症の溶連菌感染症, 並びに, 対照として乳児嘔吐下痢症, ヘルパンギ-ナ, 流行性角結膜炎および水痘のウイルス性感染症をとりあげ, これらの患者発生数と気象値との関係を重回帰分析し, 旬気象値から旬患者発生数を推定する推定式の作成を試みた. すなわち, 昭和53年9月-58年3月の秋田県感染症サーベイランス情報に基づく旬別平均患者数と各気象因子 (最高気温, 平均気温, 相対湿度, 降水量, 平均蒸気圧, 日射量) 毎の旬別平均旬値とを重回帰分析した. その結果, 溶連菌感染症については平均気温, 平均蒸気圧, 降水量および日射量を説明変数とするY (SID-2) = 0.02462 TMEAN-0.02965 MVP+0.01235 PRECIP-0.00084TRH+4.25848の有意の重回帰式 (重相関係数0.83570, 寄与率0.69839) が得られたので, これを旬患者発生数推定式とした. また, 対照とした4種のウイルス性感染症についても同様の重回帰分析をした結果, 水痘を除き, 溶連菌感染症の場合より高値の重相関係数と寄与率を有する有意の重回帰式が得られた. 特に, 乳児嘔吐下痢症の場合の重相関係数 (0.93299) と寄与率 (0.87048) は最も高値であった. これらの結果から, 旬気象値から旬患者発生数を推定する可能性が得られた.
  • 森田 盛大, 庄司 キク, 山脇 徳美, 斉藤 志保子, 茂木 武雄, 山根 誠久, 石田 名香雄
    1984 年 58 巻 8 号 p. 758-763
    発行日: 1984/08/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    我が国における溶連菌感染症の患者数は北に多く南に少ない傾向がみられたことから, S.pyogenesの伝播活性に及ぼす影響因子の1つとして, 気象因子の関与が考えられたので, 赤道直下のエクアドルにおける本菌の侵襲状況を血清疫学的手法によって調査を試みてみた. すなわち, 0-78歳のエクアドル住民から採取した血清について21種類の型特異的T抗原に対する抗体保有率を年齢別および型別に測定し, 秋田の場合と比較した結果, いずれか1種類以上のT抗体を保有する率は秋田より有意に高率な74.2%であった. 年齢別抗体陽性率パターンは若齢低率高齢高率の傾向を示した. また, 型別抗体陽性率では, 28型が最も高率で, 次いで, 4, 12, 3, 2, 25, 49, B 3264型などであったが, 秋田より有意に高率のタイプは2, 3, 8, 22, 25, 28, Imp. 19型であり, 逆に, 有意低率であったのは5, 12, 14, 44型であった. 1, 4, 6型など10種類のタイプについては有意差がなかった. これらの結果から, エクアドルにおけるS. pyogenesの侵襲は秋田より高率であると推定された. しかし, このような高侵襲の成因を気象条件から十分解析するまでに至らなかった.
  • 高橋 修和, 三木 康, 小澤 茂, 佐藤 譲, 渡辺 由香里
    1984 年 58 巻 8 号 p. 764-773
    発行日: 1984/08/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    近年, 高齢者の著しい増加に伴い, これらをインフルエンザワクチン接種対象として取り上げていく基礎資科を得るためインフルエンザ流行時の死亡について検討した。
    届出によるインフルエンザ罹患率の年次推移は流行ウイルス株の抗原変異がみられた時に著しい増加がみられる. 年齢別罹患率は若年者層には増加がみられるが, 65歳以上の高齢者層には減少がみられる.
    インフルエンザ・肺炎の年齢別死亡率および年齢別死亡割合の年次推移は, 0-64歳の年齢層で死亡率および死亡割合とも1950年以降年々減少がみられ, 65歳以上の年齢層は死亡率が1965年以降横ばい傾向がみられ, 死亡割合は1950年以降著しい増加がみられる. 特に80歳以上の高齢者に死亡率および死亡割合とも著しい増加がみられた.
    1953年, '57年, '62年, '65年, '68年, '73年, '78年のインフルエンザ流行時に, インフルエンザ・肺炎, 心疾患, 呼吸器結核, 脳血管疾患, 高血圧性疾患, 腎炎, ネフローゼ, 糖尿病および総死亡の増加率は流行前年の死亡率を100として求めた. 流行時にはインフルエンザ・肺炎, 心疾患, 呼吸器結核, 総死亡の死亡率に増加が認められたが, 脳血管疾患, 高血圧性疾患, 腎・ネフローゼ, 糖尿病の死亡率には増加が認められなかった.
    年々高齢者の有病率, 受療率の高率となっている状況では, 高齢者並び基礎疾患を有する高齢者に対するワクチン接種の体制を早期に確立しなければならない。
  • 山西 重機
    1984 年 58 巻 8 号 p. 774-783
    発行日: 1984/08/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    香川県下で発生した下痢症患者の糞便を, 1979年-1983年の期間, 電子顕微鏡によってウイルスを検索した結果, ロタウイルス, アデノウイルス, 小型球状粒子が認められた. 小型球状粒子は, さらにカリシウイルス, 直径25-30nmで周縁なめらかな粒子, Norwalk様粒子, 直径30-35nmで周縁粗造な粒子の4種に分類可能であった. ロタウイルスは毎年ほぼ同様の明瞭なパターンで冬を中心に検出された. 一方アデノウイルスは夏を中心として, 小型球状粒子は冬を中心として検出されたが, 検出パターンは年によって差が認められた.
  • 山本 泰秀, 佐藤 和夫, 宮崎 亮之助, 中井 秀郎
    1984 年 58 巻 8 号 p. 784-789
    発行日: 1984/08/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    要旨新合成抗菌剤DL-8280を男子淋菌性尿道炎24例に使用し, 臨床的効果を検討した.
    症例は21-55歳で, 投与量は1日400mg分2, 期間は5-6日間連続投与とした. 臨床効果は著効20例, 有効4例で, 100%の満足すべき有効率を示した. 副作用は皮疹の一例であったが, 継続投与可能でった。一方, 生化学検査で6例に軽度の異常を認めたが, 本剤との関係は明らかではなかった.
  • 1984 年 58 巻 8 号 p. 790-792
    発行日: 1984/08/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
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