近年, 高齢者の著しい増加に伴い, これらをインフルエンザワクチン接種対象として取り上げていく基礎資科を得るためインフルエンザ流行時の死亡について検討した。
届出によるインフルエンザ罹患率の年次推移は流行ウイルス株の抗原変異がみられた時に著しい増加がみられる. 年齢別罹患率は若年者層には増加がみられるが, 65歳以上の高齢者層には減少がみられる.
インフルエンザ・肺炎の年齢別死亡率および年齢別死亡割合の年次推移は, 0-64歳の年齢層で死亡率および死亡割合とも1950年以降年々減少がみられ, 65歳以上の年齢層は死亡率が1965年以降横ばい傾向がみられ, 死亡割合は1950年以降著しい増加がみられる. 特に80歳以上の高齢者に死亡率および死亡割合とも著しい増加がみられた.
1953年, '57年, '62年, '65年, '68年, '73年, '78年のインフルエンザ流行時に, インフルエンザ・肺炎, 心疾患, 呼吸器結核, 脳血管疾患, 高血圧性疾患, 腎炎, ネフローゼ, 糖尿病および総死亡の増加率は流行前年の死亡率を100として求めた. 流行時にはインフルエンザ・肺炎, 心疾患, 呼吸器結核, 総死亡の死亡率に増加が認められたが, 脳血管疾患, 高血圧性疾患, 腎・ネフローゼ, 糖尿病の死亡率には増加が認められなかった.
年々高齢者の有病率, 受療率の高率となっている状況では, 高齢者並び基礎疾患を有する高齢者に対するワクチン接種の体制を早期に確立しなければならない。
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