感染症学雑誌
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61 巻, 9 号
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  • 辻 明良, 麻原 教憲, 青木 泰子, 北矢 進, 大野 章, 五島 瑳智子, 金子 晴生
    1987 年 61 巻 9 号 p. 1015-1022
    発行日: 1987/09/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    ヒト免疫グロブリン製剤 (GGS, GGPEG) および緑膿菌に対するモノクローナル抗体 (Mab-1) のマウス全血液chemiluminescence (CL) に対するresponseをE. coli, K. pneumoniae, P. aeruginosaについて調べ, マウス好中球の食殺菌能におよぼす影響, マウス全身感染に対する治療効果を検討し, 以下の成績を得た.
    1) マウス全血液CLで高いresponseを示したのは, E. coli No.94ではGGPEG, P. aeruginosa A-14, E-7ではMab-1, GGPEGであり, 各免疫グロブリン剤, Mab-1の使用菌株に対する抗体価の成績と一致していた.
    2) 全血液CLで高いresponseを示したMab-1, GGPEGはそれぞれの菌に対する好中球による食殺菌率も高く, マウス全身感染に対する治療効果もすぐれていた.
  • 植野 一郎, 栄鶴 義人, 南嶋 洋一
    1987 年 61 巻 9 号 p. 1023-1029
    発行日: 1987/09/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    静注用人免疫グロブリン製剤 (IVIG) 19サンプルおよびPaul Ehrlich Instituteより提供された抗サイトメガロウイルス (CMV) 抗体の標準品 (PE標準品) を対象に, 6種類め血清学的方法で抗CMV抗体の測定を行ない, 各方法の感度を比較するとともに力価の標準化を試みた.
    1) 抗CMV抗体の力価は, Enzyme-linked immunosorbent assay (ELISA), 間接血球凝集反応 (IHA), 補体結合反応 (CF), 間接免疫ペルオキシダーゼ法 (IIP) および間接免疫蛍光法 (IIF) の順に高い値を示した. 2) 抗体の力価は, ELISA, IIPおよびIIFの間で相関関係が認められた. 3) IIPおよびIIFによる抗体価は, 核内抗原のみを標的にするか, あるいは細胞質内抗原に対する反応をも標的にするかによって, 著しい差異を示した. 4) 酵素処理製剤は一般にELISA力価が低く, CF力価は測定限界以下であり, 特にプラスミン処理製剤はIHA力価測定限界以下であった. 5) 標準抗CMV抗体 (30PE単位) の抗体力価は測定方法により著しく異なり, 最高のELISA力価と最低のIIF力価の間で, 173倍の差異を示した. 6) 各IVIG製剤の抗CMV抗体の力価を, 各測定方法による抗体力価の差異を標準抗体 (PE標準品) を用いて補正し, PE単位に換算することによって標準化した.
  • 川名 尚, 倉田 毅, 佐多 徹太郎, 川名 林治, 佐藤 成大, 玉置 邦彦, 久木田 淳, 新村 真人, 大木 和, 手塚 正, 吉田 ...
    1987 年 61 巻 9 号 p. 1030-1037
    発行日: 1987/09/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    最近, 米国で開発された単純ヘルペスウイルス1型 (HSV-1) 並びに2型 (HSV-2) に対するマウスモノクローナル抗体にFITCを標識したキット (MicroTrak, HSV-1 and HSV-2 Culture Confirmation/Typing test及び, Direct specimen test) の有用性につき検討した.
    本邦で分離されたHSV-1の137株中136株 (99.4%) が, HSV-2117株全株が, それぞれHSV-1, HSV-2と同定され, 本キットが本邦の単純ヘルペスウイルス感染症にも十分用いられることが判明した. ヘルペス性病変部より採取した細胞を塗抹したスライド標本に本キットを反応させたところ, 単純ヘルペスウイルス1型または2型が分離できた122例中99例 (81.8%) に型特異的な陽性所見が得られた. また, ウイルス分離が陰性であったヘルペス性病変16例が本法により診断できた.
    本法は, 分離培養法に比べ検出率はやや劣るものの, 迅速かつ簡便であるため, 日常臨床検査として極めて有用な検査法である. 検体の採取時期を選び, 採取法に習熟すれば, 更に診断率を上昇させることができると考えられる.
  • 石原 佑弌, 栄 賢司, 山下 照夫, 西尾 治, 森下 高行, 三宅 恭司, 磯村 思无, 井上 裕正, 福井 康朗, 松本 泰和, 佐伯 ...
    1987 年 61 巻 9 号 p. 1038-1044
    発行日: 1987/09/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    海外旅行者が日本国内に持ち込むエンテロウイルスの実態を知るために, 東南アジア各国を出発し名古屋空港に到着する航空機のトイレ汚水と下痢を申告した乗客の糞便からウイルスの分離を試みた.
    また, 分離されたウイルスの県内への伝播状況をみる目的から, 県下住民の抗体保有状況を調べた. 1. 1983年から3年間に42機の航空機の汚水を検査し, echo1型と29型ウイルスを各1株分離したが, ウイルスの由来国は東南アジア5か国の内フイリッピンのみであった.
    2. 同じ3年間に181名の糞便からはCox. B4型及びB5型各1株, 同定不能1株, echo1型2株, 計5株を分離した. 分離した人の旅行国は東南アジア8力国のうち, フイリッピン (4株) と台湾 (1株) であった.
    3. 分離されたウイルスは日本に常在しているウイルスもあったがecho1型はわが国では稀に分離されるものであり, echo29型は全く分離報告のないウイルスであった.
    4. ウイルスを分離した人は日本人旅行者で, 旅行先の季節は雨期に集中していた.
    5. echo1型及びecho29型は抗体保有状況から, 県内に伝播した形跡は認めなかった. しかし, 感受性者が高率であったので, 海外旅行者はこの種のウイルスに選択的に感染して輸入される可能性が高い.
  • 本田 宏, 高橋 公太, 寺岡 慧, 八木沢 隆, 淵之上 昌平, 東間 紘, 佐中 孜, 阿岸 鉄三, 太田 和夫
    1987 年 61 巻 9 号 p. 1045-1050
    発行日: 1987/09/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    昭和46年6月から61年8月まで東京女子医大腎臓病総合医療センターで行われた腎臓移植患者465名の中で237名のATLA抗体を検索した. このなかでATLA抗体陽性者は17名 (7.2%) で, 抗体陽性者の出生地は九州の一部に多い傾向が認められた.
    輸血を40単位以上受けている群のATLA抗体陽性率は高い傾向を認めたが (13.7%), 慢性腎不全で血液透析を受けている患者と移植患者との比較では, ATLA抗体陽性率はほぼ同等であり, 移植患者に腎臓移植手術, 免疫抑制剤の投与によるATLA抗体陽性率の上昇は認められなかった.
    ATLA抗体陽性者でATLの発症を認めたものはなかったが, 移植患者のATLA抗体陽性群では陰性群に比較して移植後に入院治療を要した感染症の罹患率が有意に高かった.
  • 山岡 一清, 渡辺 邦友, 上野 一恵, 那須 勝
    1987 年 61 巻 9 号 p. 1051-1058
    発行日: 1987/09/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    1984年3月28日から7月12日の間に某病院のICU及び関連病棟の入院患者14名より同一の多剤耐性型を示すEnterobacter cloacaeが連続して分離された. 14症例中12症例は, ドレナージあるいはカテーテルが留置されていた. これら14症例由来のE. cloacae14株について当施設保存の臨床分離株30株を対照とし, これまで疫学的マーカーとして用いられている生物型, Bacteriocin型, Antibiogram, plasmidprofile, 菌体可溶性蛋白のPAGE profileなどを詳細に検討した.
    その結果, 14菌株は, IDテストEB-20 (日水) とAPI50CHE (API) を用いる生物型及びTraubらの方法によるBacteriocin型では全く同一であった. しかし15薬剤 [ampicillin (ABPC), sulbenicillin (SBPC), ticarcillin (TIPC), cefazolin (CEZ), cefmetazole (CMZ), cefmenoxime (CMX), cefotiam (CTM), ceftizoxime (CZX), latamoxef (LMOX), tetracycline (TC), minocycline (MINO), rifampicin (RFP), nalidixicacid (NA), sulfamethoxazole-trimethoprim (ST), gentamicin (GM)] を用いて寒天平板希釈法によるMIC値から求めたAntibiogram, TritonX-100を用いたminilysis法により調整し, 0.8%agarose上で分析したplasmid prome, W. E. C., Mooreらの方法により分析したPAGE profileでは, 菌株間に若干の相違点が認められた.
    用いられた全てのマーカーを組み合わせて分類したところ4型に分類でき, 院内感染が示唆された.
    さらに簡易同定キットを用いた生物型, Bacteriocin型, Antibiogram, plasmid profileの検査により, 院内感染を解析できることが示唆された.
  • 尾花 芳樹, 西野 武志, 谷野 輝雄
    1987 年 61 巻 9 号 p. 1059-1063
    発行日: 1987/09/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    Acinetobacter calcoacetieus TMS266株の産生するslimeを分離し, 食細胞機能に及ぼす影響について検討を行った.
    Slimeはマウス, モルモットおよび家兎の好中球やマクロファージに対して強い細胞毒性を示すことが分った. またマウス好中球の培養液に少量のslimeを添加することにより, nitroblue tetrazolium還元能やchemotaxis能を低下させ, Esckerickia coliに対する貧食殺菌能も抑制されることが分った. これらの食細胞に対する細胞障害の結果, 他菌種の感染増強を引き起こすものと推察できた.
  • 田辺 清勝, 大友 弘士, 尾辻 義人, 中林 敏夫, 田中 寛
    1987 年 61 巻 9 号 p. 1064-1069
    発行日: 1987/09/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    1980年に発足した原生省「輸入熱帯病の薬物治療法に関する研究」班では抗マラリア薬を含む15種の未承認薬の臨床試験を実施してきた. これまでに, 研究班から供与された燐酸クロロキン (resochin, Bayer社ならびにaralen, Winthlop社) を用いて104例の治験がなされた. このうち42例を今回の対象として臨床成績を検討した. その結果, 投与後暫時に原虫消失を認め, 全例で治癒がみられた. また, 投与後の副作用については肝機能検査値異常, 差明, 発疹が各1例報告された. しかし, これらはいずれも軽度かつ一過性で, しかも本剤投与に関連するものとは断定できなかった.
  • 本田 俊一, 後藤 郁夫, 峰松 一郎, 池田 長繁, 浅野 信夫, 石橋 正憲, 木下 喜雄, 西渕 光昭, 本田 武司, 三輪谷 俊夫
    1987 年 61 巻 9 号 p. 1070-1078
    発行日: 1987/09/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    1985年の1年間で, 海外旅行者下痢患者1, 393名について検便した結果, 94名よりV. parakaemolyticusを検出した. 検出率は毒素原性大腸菌を除き, Salmonella属菌に次いで高く, 6.7%であった. 推定感染国別検出率では, 韓国, モルジブ, フィリピン, 台湾, タイの順に高かった. モルジブ由来下痢患者は51名で, そのうち12名よりV. parakaemolyticusを検出し, 下痢原因菌としては最も検出率が高かった. そのうち11例は神奈川現象陰性で, 常法に従ったELISAで耐熱性溶血毒の産生は認められず, 遺伝子解析によっても耐熱性溶血毒遺伝子が認められないことが確認された. これらの血清型は全てO3: K6であった. 生化学性状, 薬剤感受性共, 通常の神奈川現象陽性株との間に顕著な差は認められなかった. 家兎結紮腸管ループ試験では, 5×104/ml以上の生菌投与で陽性であり下痢原性が認められた. 以上より本事例は, 神奈川現象陰性V. parakaemolyticus O3: K6による感染症と推定された. 下痢患者は年間を通じてみられたが, 本菌分離例は5, 6, 7月の初夏に集中し, 臨床症状は, モルジブ滞在中に激しい水様便で発症し, 半数に腹痛がみられたが, 発熱を訴えた患者はいなかった. 原因食は現地での生鮮魚介類と推定され, 本菌がモルジブ固有で環境との関連性が示唆された.
  • 押谷 浩
    1987 年 61 巻 9 号 p. 1079-1090
    発行日: 1987/09/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    肺炎におけるFNの動態と炎症局所における意義にかんする検討を行なった.
    PFN値は, 肺炎群を中等度進展肺炎と高度進展肺炎に分けると, 後者においてより有意なPFN値の低下が観察された. さらに, その予後を回復群と死亡群に分けた場合, 死亡群でより著明にPFN値は低下した. また, 肺炎経過との関連をみると, 死亡例では著明に低下しその後短期間に死亡した. 一方, 回復例では経過の好転とともに正常化することが示された. 家兎実験的肺炎においても, 肺炎の進展とともに低下し死亡直前では著明な低値が示された. また, ラット肺炎局所において, 肺胞腔への滲出物および炎症性に腫脹した肺胞壁にFNの集積が示された.
    さらに, これら急性炎症の主役をなす好中球は炎症局所において活性化され, その結果ラインゾーム酵素をはじめとする遊離産物を分泌し, これらはFNをいわゆるtreated FNに変性させ, さらにこの変化は活性化好中球への粘着性を充進させるものと考えられた. また, 原発性肺炎の主要起炎菌であるS. pneumoniae, K. pneumoniaeに対しては, FNの粘着性はきわめて低かった.
    以上より, PFN値は肺炎の活動性を示す有用な指標と考えられ, また炎症局所においてFNは細菌と好中球を局在化し, このことは生体防御に一つの役割を有するものと考えられた.
  • 好中球貪食能, 正常マウスおよびサイクロフォスファマイド治療白血病マウス実験感染症に対する効果
    渡辺 講一
    1987 年 61 巻 9 号 p. 1091-1101
    発行日: 1987/09/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    静注用ヒト免疫グロブリン (γ-gl) 療法について, 試験管内およびマウス腹腔内感染実験, さらにcompromisedhostの実験モデルとしてのcyclophosphamide治療白血病マウスを用いて検討を行ない, 次の成績を得た.
    (1) K.pneumoniae DTS 63を用いた好中球の貪食能は, γ-glの添加により増強され, 1/4MIC ceftazidimeの添加によりさらに増強された. また菌をγ-glで前処理しておくと好中球の貪食能は著明に増強された.
    (2) P.aeruginosa NC5を用いたマウス腹腔内感染実験において, γ-gl製剤と抗生剤の併用効果が明らかにみとめられ, γ-glの投与が感染後早いほどすぐれた併用効果が得られた. さらに, 感染12時間前にγ-glを投与しておくといっそうすぐれた効果が得られ, 予防投与の有効性が確かめられた. また, γ-glに含まれる特異抗体を前もって吸収しておくと, その併用効果は著しく低下した.
    (3) Compromised hostの実験モデルとしてのcyclophosphamide治療白血病マウス (LCマウス) は, 著しい白血球減少とIgGの低下およびBCG感作後のPPDによる足踪反応の低下がみとめられた. この系を用いた肺炎桿菌実験感染症においても, γ-glと抗生剤の併用効果がみとめられた.
  • 高柳 満喜子, 城川 美佳, 海老沢 功
    1987 年 61 巻 9 号 p. 1102-1110
    発行日: 1987/09/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    Clostridium tetaniの分離に関する報告は近年のものが少なく, 古典的な方法が現在もそのまま用いられる事が多い.
    C. tetaniと他菌との混合培養により, 実験的に分離方法の検討を行い次の成績を得た.
    1) Escherichia coli, Streptococcus sp., group G, Staphylococcus aureus, Clostridium perfringensとの混合培養の結果, 材料の増菌培地としては, GAM培地のほうが肝肝ブイヨン, クックドミート, チオグリコレート培地より優れた成績が得られ, この際C. tetaniの生菌数が最大値を示す培養日数は2日であった.
    2) Fildesの斜面分離法をE. coliとの混合液で検討した結果, GAM寒天は血液加ハートインフュジョン寒天, ハートインフュジョン寒天と同様の成績を示し, swarmingの抑制はなかった. 観察の容易さ, 培地作製の簡便さからみてもGAM寒天斜面分離法は推奨しうる.
    3) 分離用培地への1.0%以上のglucose添加はC. tetaniのswarmingを抑制し, 2.0%の添加は発育をも抑制した. 従ってZeissler培地は分離用培地として適当でない.
    4) GAM寒天を使用してもStreptococcus sp., group G, C. perfringensとの混合時, C. tetaniのswarmingが抑制され, 分離率が低下した. またこの分離率はC. tetaniの接種菌数と相関した. 適当な選択培地のない現在, C. tetaniをより確実に分離するためには前もって十分な増菌を行うと共に, 何本かの斜面培地を併用する必要がある.
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