患者材料からの
Chlamydia pneumoniae (C.pneumoniae) の分離率を高めるため, 標準株のTW183株および
Chlamydia trachomatis血清型D株 (
C.trachomatis) を用い, 感染性に及ぼす各種因子の影響を調べた.
部分精製した
C.pneumoniaeをクラミジア保存液 (SPG: sucrose-phosphate-glutamate) 及び培養液 (CT-GM: 1μg cycloheximide含有) に懸濁し,-75℃, 0℃, 4℃, 室温 (25℃), 37℃ の温度条件下に静置した.-75℃ ではSPG, CT-GMを用い, それぞれバイアルを断熱材で包んだ状態と包まない状態で保存した. これらを日毎に回収し, HeLa229細胞単層に遠心接種, 形成される封入体数の推移を調べた. また, 凍結融解や唾液による感染性への影響を調べた.
その結果, 用いた保存液にかかわらず両株とも形成される封入体数は0℃, 4℃では日数と共に徐々に, また37℃, 室温では急速に減少した. SPGに保存した場合では, 0℃, 4℃ では静置後7日目においても封入体を認めた. しかし, 室温, 37℃ では2日目にはほとんど認められなかった.-75℃での包装の有無による封入体数の差異は見られなかった. 凍結融解では最初の1回で対照の封入体数の20-30%までに減少した. 唾液とクラミジアの37℃での反応は感染性を著しく (60%≦) 低下させた.
以上のことから, 咽頭材料からの
C. pneumoniaeを効率よく分離するためには, 唾液の混入をできるだけ避けてスワブを採取, SPGに入れ4℃下で可及的速やかに輸送, 細胞に接種することの重要性が確認された.
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