感染症学雑誌
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85 巻, 2 号
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総説
  • 大西 健児
    2011 年 85 巻 2 号 p. 139-143
    発行日: 2011/03/20
    公開日: 2015/04/06
    ジャーナル フリー
    細菌感染症ではハイチで大流行し日本への侵入も危惧されるコレラ,フルオロキノロンに低い感性を示す菌が増加し治療に困難を伴うようになった腸チフスとパラチフス,ウイルス感染症では発症すればほぼ 100% が死亡する狂犬病,新型インフルエンザへの移行が危惧されている鳥インフルエンザ H5N1,報告数が増加傾向にあるチクングニヤ熱,寄生虫感染症ではアメリカ合衆国やカナダで集団食中毒を起こし,日本でも今後流行地からの帰国者で感染者数の増加が推測されるサイクロスポーラ症が最近注目されている輸入感染症であろう.日本人臨床医にとってこれらの輸入感染症にはなじみの少ないものもあり,診断にはこれらの疾患の存在を思いつくことが重要である.
原著
  • 三上 優, 有賀 晴之, 大島 信治, 永井 英明
    2011 年 85 巻 2 号 p. 144-149
    発行日: 2011/03/20
    公開日: 2015/04/06
    ジャーナル フリー
    2009 年春に発生した新型インフルエンザ A は全世界に広がり 5 月には日本で最初の症例が報告された.これまでに小児を中心に重症化した症例が報告されているが,成人でのまとまった報告は少ない.今回我々は新型インフルエンザ A 感染を契機に呼吸器合併症を生じ入院となった成人 6 症例に関して検討を行い,過去のシーズンと比較した.入院となった 6 症例のうち 4 症例で喘息発作を生じ,うち 2 例ではウイルス性肺炎様の病像を呈した.その他の 2 例は細菌性肺炎を合併した.成人においては過去のシーズンと比較して入院率は高くなかったが,ウイルス性肺炎様の症例は他のシーズンでは認められなかった.
  • 坂田 宏, 砂川 慶介, 野々山 勝人, 佐藤 吉壮, 春田 恒和, 尾内 一信, 山口 覚
    2011 年 85 巻 2 号 p. 150-154
    発行日: 2011/03/20
    公開日: 2015/04/06
    ジャーナル フリー
    2004 年 4 月から 2007 年 1 月までに 108 の調査協力施設で診療した 466 例の細菌性髄膜炎の中から,検討委員会において診断が不確実な例,評価不能な例などを除外した小児例 339 例について,初期治療薬と予後の関係を検討した.予後不良は発症後約 3 カ月の調査で四肢麻痺,難聴,てんかんなどの後遺症を有していた例とし,43 例(12.7%)が該当した.年齢や原因菌によって有意差はなかった.発症から治療までの期間が 4 日を越えるとそれ以前に治療開始した例に比べて有意に予後不良例が多かった.予後不良率は panipenem/betamipron (PAPM/BP) と ceftriaxone (CTRX) 併用が 64 例中 4 例 (6.4%),MEPM と cefotaxime (CTX) 併用が 57 例中 6 例 (10.5%),meropenem (MEPM) と CTRX 併用が 50 例中 7 例 (14.0%),CTRX 単剤は 23 例中 0 例であった.MEPM は 42 例中 11 例 (26.2%) で予後不良率が高く,PAPM/BP と CTRX 併用,MEPM と CTX 併用,CTRX 単剤の治療方法とそれぞれ有意差を認めた(p<0.05).MEPM の単独での初期治療は単独投与より併用療法を行うことが望ましいと考えられた.
  • 脇本 寛子, 脇本 幸夫, 矢野 久子, 松原 康策, 宮川 創平, 吉田 敦, 奥住 捷子, 佐藤 洋子, 澤田 恭子, 山田 恭聖, 二 ...
    2011 年 85 巻 2 号 p. 155-160
    発行日: 2011/03/20
    公開日: 2015/04/06
    ジャーナル フリー
    日齢 0~6 の新生児の血液もしくは脳脊髄液由来の B 群溶連菌 (Group B Streptococcus: GBS) と新生児・腟保菌由来の GBS において,薬剤感受性と血清型分布の動向を明らかにすることを目的とした.1999 年~ 2009 年に 6 施設で GBS と同定された,新生児血液髄液由来 14 株 (侵襲株),新生児咽頭等由来 55 株 (新生児保菌株),妊婦褥婦腟保菌 198 株を対象とした.薬剤感受性試験は,微量液体希釈法で最小発育阻止濃度 (MIC) を測定し,血清型の遺伝子は PCR 法で測定した.1999 年~2005 年 (I 期) と 2006 年~2009 年 (II 期) の 2 期間に分け,MIC50,MIC90,耐性率を比較した.Penicillin 系抗菌薬 (penicillin G,ampicillin) の MIC は全ての菌株において感受性があった.I 期と II 期において,penicillin 系抗菌薬を含む 12 薬剤に対する MIC50,MIC90,耐性率は,有意な変化を認めなかった.血清型は,侵襲株では,III 型 6 株 (42.9%),Ia 型 5 株 (35.7%) の順に多かった.新生児保菌株では Ib 型 16 株 (29.1%),VI 型 11 株 (20.0%) が多かった.I 期と II 期における血清型分布の比較では,変化はなかった.現時点で,分娩時に保菌妊婦に penicillin 系の抗菌薬を予防投与することは新生児 GBS 感染症予防に有用であると考えられた.
  • 神谷 齊, 浅野 喜造, 尾崎 隆男, 馬場 宏一, 熊谷 卓司, 永井 崇雄, 白木 公康
    2011 年 85 巻 2 号 p. 161-165
    発行日: 2011/03/20
    公開日: 2015/04/06
    ジャーナル フリー
    わが国で開発された水痘ワクチンは健常者だけでなく免疫不全者の水痘予防に安全に使用できるワクチンである.現在世界で年間約 2,000 万人に使用されている.さらに,Oxman らは,約 4 万人の高齢者の臨床試験により水痘ワクチン (Zostavax) が帯状疱疹と帯状疱疹後神経痛を予防することを示した.わが国の水痘帯状疱疹ウイルスの感染性は,他のウイルスに比べ非常に不安定であるため,エンベロープの安定性保持のため精製白糖やグルタミン酸ナトリウムなどの安定剤の使用などにより,感染性が保持されている.そこで,過去 5 年間にわたって,製造時と流通している水痘ワクチンの力価の検討を行ってきた.水痘ワクチンの生物学的製剤基準は 1,000 Plaque Forming Units(PFU)/dose 以上となっている.わが国の水痘ワクチン製造時の力価の 5 年間の年平均力価は,42,000~67,000PFU/dose であり,水痘予防ワクチンであるが,米国の帯状疱疹予防用水痘岡株ワクチン Zostavax に匹敵する高力価を有していた.また,上記のように感染性が低下しやすいため,流通段階での力価の低下が懸念される.本研究の結果,実際に医療施設等に流通しているワクチンの力価は保たれており,有意の力価の変動は認めなかった.以上のように過去 5 年間にわたって検討した結果から,現在流通している水痘ワクチンは水痘予防に使用する水痘ワクチンとしては十分な力価を有しており,Oxman らの報告した米国の帯状疱疹予防に使用された高力価ワクチン Zostavax に匹敵するワクチン力価も有していた.
  • 堀 成美, 中瀬 克己, 中谷 友樹, 谷口 清州
    2011 年 85 巻 2 号 p. 166-171
    発行日: 2011/03/20
    公開日: 2015/04/06
    ジャーナル フリー
    Human immunodeficiency virus (HIV) 感染症の拡大防止は感染症施策の重要課題であり,流行のフェーズによって有効な介入法,優先順位が異なる.性感染症症例のパートナー (性的接触者) への検査勧奨は低流行国において特に有効とされているが,本邦では制度としては確立しておらず,臨床においてどの程度実施されているのかが明確ではない.そこで,2007 年 9 月から 11 月にエイズ診療拠点病院の HIV 診療担当診療科に所属する医師を対象に郵送での自記式質問紙調査を実施し,その実態および促進因子・阻害因子の検討を行い,エイズ診療拠点病院診療担当科に所属する医師 513 名のうち 257 名から回答が得られた (有効回答率 49.9%).HIV 診療経験を有する群では「ほぼ全員の患者にパートナー健診の話をする」医師は 66.5%,その結果として新規 HIV 症例を把握した経験を有する医師は 37% であり,合計 185 例の新規症例が把握されていた.パートナー健診を実施する際の課題として,時間の不足,法的根拠等の未整備,標準化された説明資料の不足が把握されたが,性感染症のパートナー健診制度が未整備の状況下においても医師の多くは積極的にパートナー健診に関わっていることが把握された.パートナー健診の拡大のためには,根拠となる法律や学会ガイドライン等の整備,および手法や資料の標準化とそれを可能にする研修プログラムの開発,医師の負担を軽減するための他職種の診療への参加が重要と考えられた.
症例
  • 桂田 直子, 大西 尚, 山本 聡美, 木南 佐織, 西馬 照明, 西村 善博, 荒川 創一
    2011 年 85 巻 2 号 p. 172-175
    発行日: 2011/03/20
    公開日: 2015/04/06
    ジャーナル フリー
    A 41-year-old man admitted for fever and respiratory failure had visited a local clinic 8 days earlier for fever and cough. Several days earlier, his 3 children had been diagnosed with influenza A by rapid influenza diagnostic test (RIDT) by nasopharyngeal swabs. At the clinic, RIDT done by nasopharyngeal swab two times on two consecutive days had negative results. On admission, chest computed tomography (CT) showed bilateral subpleural and peribronchovascular opacity, although RIDT by nasopharyngeal swab was negative. His respiratory distress worsened rapidly over the next several hours, necessitating intubation. Real-time reverse transcriptase-polymerase chain reaction (RT-PCR) with nasopharyngeal secretion was also negative. Despite test results, 2009 influenza A (H1N1) was strongly suspected due to chest CT and history. Oseltamivir was administered and respiratory distress gradually disappeared. He was extubated on hospital day 7. Bronchoalveolar-lavage collected on admission and sent to the laboratory for RT-PCR on hospital day 8, from which the result was positive for influenza A. He was discharged on hospital day 22.
  • 赤井畑 美津子, 橋本 浩一, 川崎 幸彦, 細矢 光亮, 森 修一, 錫谷 達夫
    2011 年 85 巻 2 号 p. 176-179
    発行日: 2011/03/20
    公開日: 2015/04/06
    ジャーナル フリー
    Because the Bacillus Calmette-Guérin (BCG) prevents infants from contracting miliary tuberculosis and tuberculosis meningitis, BCG vaccination is recommended for those under 6 months old in Japan. Complications such as favorable local inflammatory reactions including redness, induration, and abscess formation may occur, but severe adverse effects such as osteomyelitis, periostitis, and disseminated BCG infection are generally rare. We report an 11-month-old boy with severe combined immunodeficiency dying of serious disseminated BCG infection despite anti-tuberculosis therapy and blood stem cell transplantation. He was vaccinated with disseminated BCG infection at 4 months before severe combined immunodeficiency diagnosis was confirmed by specific RD gene deletion based on allele-specific polymerase chain reaction. Although BCG is considered safe, we should keep in mind that subjects with immunological deficiency may suffer severe BCG complications.
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