Cyclosporine投与によりT細胞機能を障害させたマウス (T細胞機能障害群) に, 大腸菌による上行性尿路感染症を発症させ, 感染局所の免疫応答を経時的に検討し, 正常マウス (contro1群) の場合と比較して免疫応答がどのように変動しているかを検討した.
Cyclosporineは100mg/kgを感染日の7, 5, 3, 1日前の計4回投与した.この投与法により, delayed type hypersensitivityを指標としたT細胞機能は著明に抑制され, 今回の目的に適したマウスモデルであると考えられた.
大腸菌による上行性尿路感染症を発症させたところ, T細胞機能障害群はcontrol群に比して, 腎孟腎炎の発症率は上昇し, また生存率は有意に低下し, 易感染性を示した.
感染局所の免疫応答はT細胞機能障害群で好中球がcontrol群に比して, 強く浸潤した.一方, T, B細胞はT細胞機能障害群でcontro1群に比して, 浸潤の低下を認めた.
したがって, T, B細胞浸潤低下を中心とした感染防御機構障害により易感染性を示すものの, 好中球の浸潤が高まり, 生体は障害のある感染防御機構をある程度代償しようとする方向に免疫応答を変動させている可能性が示唆され, compromisedhostにおける免疫応答を考える上で興味深い所見と考えられた.
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