感染症学雑誌
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87 巻, 1 号
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原著
  • 坂田 宏
    2013 年 87 巻 1 号 p. 1-5
    発行日: 2013/01/20
    公開日: 2014/12/15
    ジャーナル フリー
    2006 年から 2011 年までに侵襲性肺炎球菌感染症の小児から検出された Streptococcus pneumoniae 76 株について最小発育阻止濃度 (MIC) と最小殺菌濃度 (MBC) を測定した.患者の年齢は生後 4 カ月から 6 歳までに分布し,1 歳が 50 名(65.8%),1 歳未満が 10 名(13.2%)と 1 歳以下で 60 名(79.1%)を占めていた.疾患では occult bacteremia 38 例(50.0%),肺炎 34 例(44.7%),髄膜炎 3 例(3.9%),敗血症 1 例(1.3%)であった.敗血症 1 例が死亡し,他は後遺症なく治癒した.莢膜の血清型は6B が最も多く 20 株(26.3%),ついで 19F が 13 株(17.1%),14 が 9 株(11.8%)であった.7 価結合型ワクチンに含まれる血清型は 55 株(72.4%)であった.ペニシリン結合蛋白遺伝子変異による耐性分類では penicillin resistant S. pneumoniae (PRSP)株 32 株(42.1%),penicillin intermediate-resistant S. pneumoniae (PISP)35 株(46.1%),penicillin susceptible S. pneumoniae (PSSP)株 11 株(11.8%)であった.MIC90/MBC90 はampicillin 4/4μg/mL,vancomycin 0.5/0.5μg/mL,cefotaxime 1/2μg/mL,ceftriaxone 1/2μg/mL,panipenem 0.125/0.125μg/mL,meropenem 0.5/0.5μg/mL,doripenem 0.25/0.25μg/mL であった.
  • 山田 友子, 濵田 洋平, 曲渕 裕樹, 永田 正喜, 福岡 麻美, 草場 耕二, 永沢 善三, 坂口 嘉郎, 青木 洋介
    2013 年 87 巻 1 号 p. 6-13
    発行日: 2013/01/20
    公開日: 2014/12/15
    ジャーナル フリー
    【目的】市中菌血症 (community-acquired bacteremia,CAB) の特徴を解析した.【方法】 2009 年 1 月~ 2011 年 9 月に佐賀大学医学部附属病院で CAB と診断された患者を対象に,後方視的に CAB の原因微生物と侵入門戸,患者背景と合併症を調査し,死亡に関連する因子を解析した.【成績】患者 185 名が CAB と診断され,192 の菌株が血液培養から検出された.グラム陽性菌は 81 菌株 (42%) で,メチシリン耐性黄色ブドウ球菌 (methicillin-resistant Staphylococcus aureus,MRSA) が 9 例 (11%) であった.グラム陰性菌は 111 菌株 (58%) で,腸内細菌群が 80 %程度を占め,ESBL(extended-spectrum β-lactamase) 産生菌は5 例 (5%) であった.侵入門戸は腹腔感染症が 54 例 (29%) と最も多かった.20 例が死亡し,基礎疾患として好中球減少症が生存例に比べ死亡例で多かった (30%対3%,p<0.001).また死亡例では,生存例と比較し,敗血症性ショックに陥った例が多く (45%対14%,p=0.002),CAB による合併症は生存例に比べ死亡例で多かった (50%対25%,p=0.017).原因微生物や侵入門戸で明らかに死亡に関連した因子はなかった.【結論】今回の調査で原因微生物の急速な耐性化はなかったが,今後 ESBL 産生菌等の耐性菌の出現に注意すると共に,治療方針の決定には患者背景や発症時の重症度,合併症を考慮する必要がある.
  • ―2 施設での調査結果―
    村松 崇, 柳澤 如樹, 近澤 悠志, 清田 育男, 四本 美保子, 大瀧 学, 尾形 享一, 萩原 剛, 鈴木 隆史, 菅沼 明彦, 今村 ...
    2013 年 87 巻 1 号 p. 14-21
    発行日: 2013/01/20
    公開日: 2014/12/15
    ジャーナル フリー
    背景:抗 HIV 療法によって Human immunodeficiency virus (HIV) 感染者の生命予後は改善したが,それに伴い慢性腎臓病 (chronic kidney disease:CKD) の有病率が増加している.欧米諸国と異なり,本邦では HIV 感染者の CKD に関する臨床研究は少なく,その有病率や関連因子については不明な点が多い. 対象・方法:2011 年に東京都立駒込病院および東京医科大学病院を定期受診した HIV 感染者 1,482 例 (男性 1,384 例,女性 98 例;平均年齢 44.2 ± 11.4 歳)を対象とした.血清クレアチニン濃度から糸球体濾過値を計算し,尿試験紙法による蛋白尿を測定し,CKD ステージ分類を行った.高血圧と糖尿病の合併率,および腎毒性を有する抗 HIV 薬である tenofovir disoproxil fumarate (TDF) の使用率を調査した.CKD 発症の関連因子を,多変量ロジスティック解析を用いて解析した. 結果:対象者の CD4 陽性リンパ球数は 487 ± 216/μL で,80.5% が HIV-RNA 検出限界以下であった.抗 HIV 薬は 90.2% で使用されており,そのうち TDF の使用率は 61.5% であった.CKD 全ステージの有病率は 12.9% で,蛋白尿陽性は 8.2%であった.全 CKD ステージ,CKD ステージ 3 以上,蛋白尿の有病率は,いずれも東京都立駒込病院で約 3 倍高値であった (p<.0001).平均年齢,高血圧,糖尿病合併率は,東京都立駒込病院で 47 歳,32.9%,5.7%,東京医科大学病院で 40 歳,10.0%,3.5% と前者が有意に高かった.多変量ロジスティック解析では,年齢,高血圧や糖尿病の有無が CKD 発症と有意に関連していた. 結論:両施設におけるHIV 感染者の CKD 有病率は 12.9% であったが,施設間で大きな差が見られた.年齢分布や糖尿病,高血圧合併率の違いが関連している可能性が推察された.
  • 小林 泰一郎, 加藤 康幸, 山内 悠子, 氏家 無限, 竹下 望, 水野 泰孝, 金川 修造, 狩野 繁之, 大曲 貴夫
    2013 年 87 巻 1 号 p. 22-26
    発行日: 2013/01/20
    公開日: 2014/12/15
    ジャーナル フリー
    リン酸プリマキンは,三日熱マラリアと卵形マラリアの再発を予防するための根治療法薬であるが,近年,世界各地でプリマキンを標準量 (15mg 塩基/日,14 日間) 投与後に再発した三日熱マラリアが報告されている.投与量を増やすことで再発率は減少するが,諸外国のガイドラインとは異なり,我が国では,東南アジアとパプアニューギニアで感染した三日熱マラリアにのみ,高用量 (30mg 塩基/日,14 日間) のプリマキンの投与が推奨されている. 2007 年から 2011 年に,国立国際医療研究センター病院において,プリマキンによる根治療法を行った日本人 18 例 (三日熱マラリア 13 例,卵形マラリア 5 例) を,診療録を用いて後方視的に検討した.ブラジルで感染した三日熱マラリア 1 例で,標準量のプリマキン投与後に再発していたが,卵形マラリアでは再発は見られなかった.また,高用量を使用した 10 例を含む全例で副作用を認めなかった. 三日熱マラリアの根治療法としてプリマキンを標準量投与した後の再発は,東南アジアとパプアニューギニア以外の地域でも報告されている.高用量で増加するとされる消化器系の副作用が,食後内服により忍容可能で,日本人の G6PD 異常症が非常に稀であることも併せて考えると,高用量を用いることで生じ得る副作用よりも,再発率減少の有益性の方が優ると考えられる.日本人の三日熱マラリアにおいても,渡航先に関わらず高用量のプリマキンが適切と考えられる.
  • 山崎 勉, 由井 郁子, 森島 直哉, 黒木 春郎
    2013 年 87 巻 1 号 p. 27-32
    発行日: 2013/01/20
    公開日: 2014/12/15
    ジャーナル フリー
    2008 年~2011 年の 3 シーズンにかけて採取された便検体について,金コロイドを使用した新規イムノクロマト法試薬イムノキャッチ―ノロ (栄研化学)(IC-A 法) におけるノロウイルス検出の有用性を検討した.RT-PCR 法および PCR 産物のダイレクトシークエンスにより,316 検体中 198 検体 (62.7%) がノロウイルス陽性であり,9 genotype(G I/2,4,8,G II/1,2,3,4,6,13) が検出された.検出数では,G II/3 が64 例,G II/2 が 59 例,G II/4 が 58 例と全体の約 90%を占めた.RT-PCR 法に対する IC-A 法の陽性一致率,陰性一致率,全体一致率はそれぞれ 87.4% (173/198),100% (118/118),92.1% (291/316) であった.25 例の偽陰性が認められたが,偽陽性と判断される検体はなかった.一方,比較に用いた市販イムノクロマト法試薬 (IC-B 法)の RT-PCR 法に対する陽性一致率,陰性一致率,全体一致率はそれぞれ 59.6%(118/198),96.6%(114/118),73.4%(232/316) で,80 例が偽陰性,4 例が偽陽性と判定された.RT-PCR 法の結果と一致した陽性の 118 例は,すべて IC-A 法でも陽性であった.比較的例数の多い genotype である G II/2,3,4 に関する検出率は,IC-A 法では各々88.1%,87.5%,89.7%,IC-B 法では各々 32.2%,67.2%, 81.0% であった. IC-A 法は,適用検体は糞便に限られるが,比較的幅広い genotype に対して感度・特異性が高く,ノロウイルス感染症の迅速診断法として有用と考える.
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