感染症学雑誌
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73 巻, 12 号
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  • 尾内 一信, 古村 速, 藤井 美香代, 松島 寛, 牧 隆司, 長谷川 恵子, 野中 由希子
    1999 年 73 巻 12 号 p. 1177-1182
    発行日: 1999/12/20
    公開日: 2011/02/07
    ジャーナル フリー
    小児の下気道感染症へのMycoplasma pneumoniaChlamydia pneumnoniaeの関与を検討するために, 3年6カ月間に急性下気道感染症罹患児1, 104人についてprospectiveに両感染症罹患の有無を血清学的に検討した. この間にC. pneumoniae感染症は149例 (1a5%), M. pneumoniae感染症は118例 (10.7%) を認めた. 両感染症の重複感染例は27人 (24%) であった.肺炎305人中ではM. pneumoniae感染症83例 (272%) のほうがC. Pneumoniae感染症47例 (154%) より多かった.気管支炎799人中ではC. pneumoniae感染症102例 (12.8%) のほうがM. pneumonniae感染症35例 (4.4%) より多かった.C. pneumonfae感染症は, M. pnenmoniae感染症に比べて低年齢から数多く認めた.また, C. pneumoniae感染例のほうが喘鳴を伴う例が多かった (p<0.005).C. pneumoniae感染症はM. pneumoniae感染症と同様に小児の下気道感染症の重要な起因菌と思われた.
  • IV抗体スクリーニング検査陽性 (reactive) 例の再検査法に関する考察
    今井 光信, 須藤 弘二, 林 孝子, 近藤 真規子
    1999 年 73 巻 12 号 p. 1183-1186
    発行日: 1999/12/20
    公開日: 2011/02/07
    ジャーナル フリー
    HIV感染初期のセロコンバージョンパネル血清11種類を用いて, HIV抗体陽転後の凝集 (Particle Agglutination: PA) 価の経時変化を検討した. PA価は抗体陽転後, 急激に上昇し, 抗体陽転後PA価が1,000倍を越えるのに要する日数は, 最長は43日, 最短は2日で, 平均1&2日であった. またこの間の平均抗体上昇速度は5倍/週であった.従って, HIV抗体弱陽性の検体について, 感染初期か偽陽性かを鑑別するための再採血は, 1~2週間と比較的短い期間でも有効であることが分かった.
  • 松本 久美, 白石 恒明, 力丸 徹, 三森 佳子, 木下 正治, 大泉 耕太郎, 梶村 克成, 近藤 重信
    1999 年 73 巻 12 号 p. 1187-1193
    発行日: 1999/12/20
    公開日: 2011/02/07
    ジャーナル フリー
    久留米大学病院及び近隣医療機関から分離された成人呼吸器感染症由来の肺炎球菌について, 経口抗菌薬に対する耐性化を検討した. ペニシリン耐性 (中等度耐性を含む) 肺炎球菌の分離頻度は41.2%であった. 耐性株は, β-ラクタム系薬のみならずマクロライド系薬にも耐性を示した. 耐性株の経口抗菌薬に対する薬剤感受性を, 日本化学療法学会の肺炎のbreakpoint MICなどより検討すると, β-ラクタム系薬ではFRPM, CDTR, CFPN>CFTM>CFDN, CPDX, ニューキノロン系薬では, DU6859a (新規ニューキノロン薬) >LVFX>SPFX>CPFXの順に高い感受性率を示した. 中でもDU6859aは, 0.5μg/mlの低い濃度で耐性株の発育を完全に阻止し, 最も強力な抗菌力を示していた. 菌型では, 耐性株は19型, 6型, 23型が多かった.
  • 山下 照夫, 森下 高行, 都築 秀明, 栄 賢司, 鈴木 康元, 角坂 照貴, 粕谷 志郎
    1999 年 73 巻 12 号 p. 1194-1198
    発行日: 1999/12/20
    公開日: 2011/02/07
    ジャーナル フリー
    愛知県で発生したつつが虫病患者9名中1名からつつが虫病リケッチア (Rt) が分離された.モノクロナール抗体との反応性を調べたところ, 岐阜県で患者から分離されたKN-2株と同じ抗原性を持つ株 (類似株) であった. 一方, 愛知県内で採集され飼育されたフトゲツツガムシ (4匹) から分離されたリケッチア4株はいずれも, 岐阜県の患者から分離されたKN-3株の類似株であった. 愛知県内の20名の患者血清について, 岐阜県の患者から分離された4種類のRt抗原を用い間接蛍光抗体法でIgM抗体を調べたところ, 15名はKN-2株やKN-1株と良く反応した.他の5名は, KN-1, GJ-1, あるいはKN-3株と比較的よく反応した.以上から, 愛知県内で最も患者数1の多い地域にはKN-2類似株が多く存在し, 他にKN-1, KN-3, あるいはGJ-1類似株も存在すると考えられた. 県内のその他の地域にはKN-3類似株が存在すると思われた.
  • 渡邉 寿美, 清水 英明, 川上 千春, 今井 光信
    1999 年 73 巻 12 号 p. 1199-1204
    発行日: 1999/12/20
    公開日: 2011/02/07
    ジャーナル フリー
    AおよびB型インフルエンザウイルスの迅速検出キットであるFLUOIA (R) の評価を行った.
    42株のインフルエンザウイルス分離株 (ヒトのA型25株, B型12株, ブタのA型2株, トリのA型3株) を用いてFLUOIA®の反応性をみたところ, すべてのインフルエンザ分離株を陽性と判定できた. また, インフルエンザ以外のウイルスとの交差反応はみられなかった. プラーク定量したウイルスを用いて行った検出限界の測定では, 3.0~6.5×104pfu/assayのウイルス量で陽性と判定可能であった. インフルエンザ様患者の鼻汁 (54検体) を用いて細胞培養によるウイルス分離との比較を行ったところ, 感度は89.7%, 特異性は76.0%であった.
    FLUOIA®は, 迅速かつ簡便にAおよびB型インフルエンザウイルスを検出できるので, 臨床現場で有用なキットであると思われる.
  • 小児血液・悪性腫瘍患者における経験から
    織田 慶子, 廣田 良夫, 阪田 保隆
    1999 年 73 巻 12 号 p. 1205-1209
    発行日: 1999/12/20
    公開日: 2011/02/07
    ジャーナル フリー
    1988年1月より1996年12月までに, 久留米大学小児科に敗血症と診断され入院した血液・悪性疾患患児89例を対象に, ステロイドパルス療法が生命予後に及ぼす影響を検討した. 敗血症自体でステロイドパルス療法の対象となった症例はなく, 問質性肺炎 (IP), 感染関連血球貧食症候群 (IAHS) もしくは移植片宿主反応 (GVHD) を合併した症例が対象となった. 検討した特性は年齢, 性, 基礎疾患, 化学療法, 再発の有無, 敗血症の既往, 回数, 起炎菌, 抗菌剤の種類, 敗血症時の顆粒球数, CRP, 菌の侵入部位, パルス療法の有無パルス療法の対象となる疾患の有無, 種類である. これらの特性と死亡リスク (敗血症発症後1カ月間) との関連をみるため相対危険 (RR) および95%信頼区間 (CI) を求めた. その結果予後に影響を及ぼすと考えられたのは, パルス療法の対象となる病態 (P=0.05) とパルス療法の施行 (p<0.0001) であった. パルス療法のRRは, 対象となる疾患の補正なしでは3.6 (2.6~5.4) であり, IP, IAHS, GVHDで補正してもそれぞれ5.0 (1.6~25.1), 3.8 (2.7~54), 3.7 (26~53) となり有意な上昇をみた. このことよりパルス療法自体が独立して死亡リスクを上げていた. ただし今回の検討では個々の症例の基礎疾患の重症度の検討がなされておらず, それらが影響して予後を悪化させていた可能性も否定できない.
  • 松下 秀, 小西 典子, 有松 真保, 甲斐 明美, 山田 澄夫, 諸角 聖, 工藤 泰雄
    1999 年 73 巻 12 号 p. 1210-1216
    発行日: 1999/12/20
    公開日: 2011/02/07
    ジャーナル フリー
    東京において1980~1998年に, 国内散発事例及び海外旅行者による輸入散発事例より分離された780株のSalmonella serovar Hadar (S. Hadar) について, その検出状況, 薬剤耐性について検討した.
    国内事例ではこの間8, 359株のサルモネラが検出された. そのうちS. Hadarは1984年に初めて検出され, その後1987年以降急増, 毎年1~7位の検出順位を占め, 合計601株でその検出頻度は7.2%であった. 輸入事例でも1984年に初めて検出, その後, 国内事例同様1987年からは毎年1~5位の高検出順位で推移, 全検出サルモネラ4,083株中179株が本血清型で, 4.4%の検出頻度であった. なお, これらの旅行先は, インドネシア, タイを中心とする東南アジアがほとんどであった.
    CP, TC, SM, KM, ABPC, ST, NA, FOM, 及びNFLXの9種薬剤に対する耐性試験にの結果, 両事例由来株ともそのほとんどが耐性株で, 国内事例由来株で586株 (97.6%), 輸入事例由来株で175株 (97.8%) が, NFLXを除くいずれかに多剤あるいは単剤耐性であった. 薬剤別では, 両事例由来株ともTC及びSMに対する耐性率が高かった.その耐性パターンは, 全体で24種認められたが, その主要なものは国内事例由来株でTC・SM・KM (231株), TC・SM (205株), TC・SM・KM・ABPC (65株), 輸入事例由来株でTC・SM (135株) 及びTC単剤 (13株) であった.
  • 中井 千晶, 清水 英明, 平位 芳江, 武内 可尚
    1999 年 73 巻 12 号 p. 1217-1221
    発行日: 1999/12/20
    公開日: 2011/02/07
    ジャーナル フリー
    アデノウイルス7型 (adenovirus type 7: Ad7) は1995年4月以降日本各地での報告が相次ぎ, 川崎市でも1996年5月に初めて分離された. その後1999年3月までに49株が分離された. 臨床的特徴として最高体温が高く, 有熱期間が長く続く傾向が認められた. 年齢別では乳幼児に多くみられ, 下気道炎を併発し中には重症肺炎を起こし死亡した例も経験した. また夏期だけでなく冬期にも分離され年間を通じて流行していたことがわかった. 分離された27株について遺伝子解析を行ったところ, 年齢, 臨床症状の重症度を問わず, すべて同一の切断パターンであり日本各地で報告されているAd7dタイプであることが確認された.
  • 日吉 基文, 田川 進一, 橋本 卯巳, 巽 典之
    1999 年 73 巻 12 号 p. 1222-1226
    発行日: 1999/12/20
    公開日: 2011/05/20
    ジャーナル フリー
    グラム陽性菌及びグラム陰性菌の共通の構成成分であるペプチドグリカンがカイコ体液 (SLP; silkwormlava eplasma) と特異的に反応するという現象に基づいて, その反応生成物を血漿SLP値として定量的に測定するSLPテストが開発された. SLPテストはグラム陽性菌グラム陰性菌両方の感染症を診断できると考えられ, 私どもは, その臨床的有用性について検討した. 対象は血液培養陽性の全身性感染症患者14例, 病巣より細菌感染を証明できた局所感染症患者22例, 細菌感染症ではないと考えられる患者7例, と健常人コントロール19名であった. 検討の結果血漿SLP値のカットオフ値は0.6ng/mlと考えられた. このSLPテストの感度, 特異度はそれぞれ57.1%, 100%だった. グラム陽性菌感染症患者群とグラム陰性菌感染症患者群の問でSLP値には統計学的有意差はなくSLPテストが特にグラム陽性菌グラム陰性菌どちらかに特異的であるとは考えられなかった. このSLPテストは細菌感染症診断の新しい臨床検査法となりうると考えられる.
  • 麻生 佳裕, 〓 英徳, 林 純, 柏木 征三郎, 竹森 紘一
    1999 年 73 巻 12 号 p. 1227-1231
    発行日: 1999/12/20
    公開日: 2011/02/07
    ジャーナル フリー
    Fungal infection is a major opportunistic infection in AIDS. Histoplasmosis is often seen in American AIDS, but only one case has been reported in Japan. We report a AIDS case of with histoplasmosis in Japan. The patient was a forty year old male living in the U. S from 1987 to 1990. He was diagnosed as candidial esophagitis in July, 1994, and human immunodeficiency virus type 1 (HIV) antibody positive led to a diagnosis of AIDS. He was admitted to our hospital with fever and lymphadenopathy (neck, abdomen) in August. The therapy for candidial esophagitis was successful and he was recovering, but he was newly diagnosed as atypical mycobacteriosis and Kaposi's sarcoma. Though the fever was slight, it persisted. He was discharged from our hospital in October. He was readmitted for a high fever and dehydration in December, but died after a week from disseminated intravascular coagulation (DIC). Histoplasma capsulatum was found by blood and ascites cultures on second admission. Many yeast like histoplasma cells in granuloma of tha liver were found at autopsy. For moderate or severe histoplasmosis, amphotericin B is genellaly used as the first induction therapy. Fluconazole (FLCZ) is used as a maintenance therapy. We did not use amphotericin B, but used FLCZ because we did not diagnose histoplasmosis before death, and his general condition became worse. The effect of FLCZ therapy was unclear in our case because he had other infections. We expect that AIDS with histoplasimosis will increase in Japan through HIV infected patients infected in the U. S. A.
  • 田中 健, 深堀 茂樹, 城島 浩人, 藤松 由起子, 白石 香, 田中 雅久, 大窪 恭光, 本田 順一, 大泉 耕太郎
    1999 年 73 巻 12 号 p. 1232-1235
    発行日: 1999/12/20
    公開日: 2011/02/07
    ジャーナル フリー
    Recently, several class-related adverse events have been recognized with antiretroviral drugs. For nucleoside analogue reverse transcriptase inhibitors (NRTI), lactic acidosis with hepatomegaly and hepatic steatosis have been reported. These appear to occur at a low ferquency, but with a high fatality rate.
    We report a case of fatal lactic acidosis in a patient with acquired immunodeficiency syndrome (AIDS) treated with stavudine (d4T), lamivudine (3TC) and indinavir (IDV). A 48-year-old male AIDS patient was admitted with complaints of general fatigue and dyspnea. His medications at presentation included d4T, 3TC and IDV. Physical examination demonstrated icteric sclerae and abdominal tenderness with hepatomegaly. Laboratory data demonstrated a severe metabolic acidosis with an anion gap due to lactate accumulation. Despite intensive treatment, caradiorespiratory arrest accurred and this could not be resuscitated.
  • 木村 京子, 大西 健児
    1999 年 73 巻 12 号 p. 1236-1240
    発行日: 1999/12/20
    公開日: 2011/02/07
    ジャーナル フリー
    Q熱はCoxiella burnefiiの感染症であり, 日本では極めて稀な疾患であると考えられていた. 今回, 23歳と30歳の日本人男性の急性Q熱を経験した. 前者はネパールあるいはチベットで, 後者は日本での感染と考えられた. いずれも発熱, 頭痛があり, 血清のASTおよびALTの軽度上昇を認めた. 両者ともにC. burnetiiに対する抗体が陽性で, 血清中にC. burnefiiのDNAを検出したことからQ熱と診断し, 症状は自然に改善し病悩期間が6カ月未満であることから急性と判断した. 発熱, 頭痛, 軽度の血清ASTおよびALTの上昇を呈した患者に遭遇した場合, 海外旅行の有無にかかわらず, 日本でも急性Q熱は考慮すべき疾患の一つである.
  • 塚原 正人, 常岡 英弘, 後藤 美江子, 岩本 愛吉
    1999 年 73 巻 12 号 p. 1241-1242
    発行日: 1999/12/20
    公開日: 2011/02/07
    ジャーナル フリー
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