感染症学雑誌
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76 巻, 9 号
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  • 1996年4月から2000年11月まで
    鈴木 敦子, 市瀬 正之, 松江 隆之, 天野 祐次, 寺山 武, 泉山 信司, 遠藤 卓郎
    2002 年 76 巻 9 号 p. 703-710
    発行日: 2002/09/20
    公開日: 2011/02/07
    ジャーナル フリー
    1996年4月より2000年11月までに, 主に関東地域の生活環境水を対象として実施しているレジオネラ属菌検査の成績をまとめた.この間にレジオネラ属菌検査を行った2, 895検体のうち, 904件 (31%) からレジオネラ属菌が検出された.浴槽水および冷却水での5年間平均陽性率はそれぞれ48%, 46%であった.浴槽水の施設別汚染状況は, 個人住宅71%, 企業の厚生施設63%, 社員寮62%および養護老人施設51%と高値を示した.一方, 公衆浴場やホテルなど特に公共性の高い施設での陽性率は低く, ≦30%にとどまった.検出されたL. pneumophilaの血清群別は, 浴槽水からはserogroup (SG) 5が34%, SG3が22%であったのに対し, 冷却水からはSG1が32%と優性であった.
  • 出口 松夫, 鍵田 正智, 山下 順香, 中野 卓, 田原 和子, 浅利 誠志, 岩谷 良則
    2002 年 76 巻 9 号 p. 711-720
    発行日: 2002/09/20
    公開日: 2011/02/07
    ジャーナル フリー
    8種類のHCV抗体スクリーニング (SC) 試薬 [Ortho Quick Chaser HCV Ab (QC), Ortho HCV Ab ELISA III (ELISA), Ortho HVC Ab PAtest III (PA), Lumipulse II Ortho HCV (LUMI), IMx HCV・DAINAPACKII (IMx), ARCHITECTHCV (ARCH), Immucheck・F-HCVC50 Ab (Immu), RANREAMHCV Ab Ex II (RAN)] の比較評価を行った.患者600人の血清を用いて8種のSC試薬を比較したところ, 陽性率は9.0%~13.2%であり, その内の45例は試薬間で判定が不一致となった.その判定不一致例における陽性結果の約半数は反応性が弱かった.また, その45例中25例は抗体確認検査法カイロンRIBAテストIII (RIBAIII) によってHCV抗体が検出されず, 44例はPCR法によってHCV-RNAが検出されなかった.2試薬間の判定一致率は95.5%-99.2%であり, 使用抗原が類似しているものが, 必ずしも判定一致率が高いわけではなかった.抗体確認検査法であるRIBAIIIを用いて, 感度と特異度を評価したところ, ともに優れた成績を示した試薬はELISA, LUMI, IMx, ARCHおよびImmuであった.HCV感染初期に経時的に採取された検体 (BBI seroconversion panel) 3セットを用いた比較評価ではELISAとARCHで最も早期に陽性化が認められ, 次いでIMx, LUMI=RAN, PA, QC, Immuの順であった.以上の結果より, HCV抗体SC試薬としてELISAとARCHが感度, 特異度およびHCV感染症の早期診断に優れていた.しかし, どのSC試薬においても陽性結果の反応性が弱い時には, 偽陽性の可能性もあるので注意を要した.
  • 加藤 玲, 尾形 和恵, 山田 澄夫
    2002 年 76 巻 9 号 p. 721-729
    発行日: 2002/09/20
    公開日: 2011/02/07
    ジャーナル フリー
    1998年から2000年の3年間に, 東京都多摩地区の9医療定点で感染性胃腸炎と診断された患者525名から分離・同定・保存した大腸菌について, 腸管病原性大腸菌 (enteropathogenic Escherichia coli, EPEC) のeaeA遺伝子と腸管凝集性大腸菌 (enteroaggRegative E. coli, EAggEC) のaggR遺伝子の保有をPCR法で検討した.eaeA遺伝子保有大腸菌はVTEC検出5例を含む23例 (4.4%) に認められ, VTEC検出例を除いた陽性例 (18例, 3.4%) はロタウイルス, カンピロバクター, アデノウイルス, サルモネラに次ぐ検出頻度であった.年齢別には1例を除き全て10歳以下で, うち過半数の9例は月齢24カ月以下の乳幼児からの検出例で占められた.一方, aggR遺伝子保有大腸菌は11例 (2.1%) 確認され, その年齢別検出状況は5カ月から33歳の範囲内であったが, 6例は24カ月未満の乳幼児であった.また, eaeA陽性者の4例, aggR陽性者の3例は混合感染であったが, 単独感染例の臨床症状は互いに差がなく, 1日あたり3~10行の水様性下痢を主徴とする比較的軽症の胃腸炎症状であった.
    遺伝子保有大腸菌の大部分は市販大腸菌O血清に型別されず, eaeA保有株では1株がO55, aggR保有株では4株だけがO86とO111 (各1株) およびO126 (2株) に型別されたのみであった.また, 薬剤感受性試験でeaeA保有株の4株が耐性を示したのに対して, aggR保有株では1株を除き全て耐性株であり, その大部分がABPC耐性であった.これらの成績は, eaeAあるいはaggR遺伝子保有大腸菌が月齢24カ月以下の乳幼児下痢症においてロタウイルスとともに極めて重要な病原体であること, およびPCR法による遺伝子診断はEPECあるいはEAggECによる下痢症の診断や実態把握により有用であり, それに基づいた両菌群の血清型の再構築の必要性が示唆された.
  • 石畝 史, 中村 雅子, 浅田 恒夫
    2002 年 76 巻 9 号 p. 730-737
    発行日: 2002/09/20
    公開日: 2011/02/07
    ジャーナル フリー
    1997年から2001年までに福井市の2医療機関で散発下痢症例から分離され, O血清型別が判明した大腸菌964株 (O157を除く) につき, 病原遺伝子の保有状況を知るため, H血清型別に加えてLT, ST, stxおよびinvE遺伝子をPCRで検索した.また, これら株から病原遺伝子保有率が低いO1: H7など9種血清型の大半を除いた409株および他医療機関由来の15株については, eaeA, astAおよびaggR遺伝子もPCRで調べた.その結果, O6: H16, O25: HNM, O111: H21およびO126: H27の4種血清型の株で病原遺伝子保有率の高いことが分かった.すなわち, O6: H16はLT, STおよびastA (11/12株), O25: HNMはSTおよびastA (10/14株), O111: H21はaggRあるいはastA (22/22株), そしてO126: H27はaggRおよびastA (8/9株) を保有していた.また, 12種類の薬剤感受性試験を行うと, O6: H16は6/12株, O25: HNMは4/14株, O111: H21では21/22株およびO126: H27は9/9株がいずれかの薬剤に耐性を示した.以上から, 0血清型別としてO111やO126に病原遺伝子保有率および薬剤耐性率が極めて高いことが明らかになり, これは医療機関で実施される0血清型別のみでも臨床対応や治療方針の判断材料になることを示している.なお, 同4種血清型についてパルスフィールドゲル電気泳動を実施した結果, それぞれの血清型で少数ながら同一パターンを示す株が確認され, 同一感染源であった可能性を示唆した.
  • 多賀 賢一郎, 井村 俊郎, 林 昭宏, 鎌倉 和政, 橋本 智, 高崎 智彦, 倉根 一郎, 内田 幸憲
    2002 年 76 巻 9 号 p. 738-746
    発行日: 2002/09/20
    公開日: 2011/02/07
    ジャーナル フリー
    健康な日本人ボランティア20名について, 黄熱ワクチン接種後の抗体獲得経過を赤血球凝集抑制試験 (HI) 法, 中和法, IgM捕捉ELISA法を用いて検討した.この20名中15名は7~40年前に日本脳炎ワクチンを接種していた.ワクチン接種前には10例が抗日本脳炎ウイルス (JEV) 中和抗体を保有していたのみで, 抗黄熱ウイルス (YFV) および抗デングウイルス (DV) 抗体は保有していなかった.ワクチン接種後10日目の血清19例からHI法で1例, 中和法で6例, IgM捕捉ELISA法で7例の抗YFV抗体陽性例が認められた.IgM抗体陽性となった7例中5例は中和法も陽性であり, 陰性の2例でも, プラーク数の減少が認められた.接種後14日目では抗YFV-HI, 中和およびIgM抗体が全例から検出された.また抗JEV中和抗体検出例が2例増えて6例中4例から認められ, 抗JEV-HI抗体価の上昇と抗DV2型 (DV-2)-HI抗体の出現が3例から認められた.29日目には7例全例で抗YFV, JEVおよびDV-HI抗体が検出されたが, 抗YFV-HI抗体価が最も高かった.黄熱ワクチンは, 全例に特異抗体を誘導するばかりでなく, 抗JEV中和抗体や抗JEVおよびDV-2交叉性抗体をも誘導することが示された.国際証明書上有効とされている接種後10日目では十分な防御効果が得られていない可能性も示唆された.
  • 山田 俊博, 内藤 博敬, 森田 全
    2002 年 76 巻 9 号 p. 747-753
    発行日: 2002/09/20
    公開日: 2011/02/07
    ジャーナル フリー
    TT virus (TTV) を重感染するC型慢性肝炎 (C-CH) 患者のインターフェロン (IFN) 療法に関しては, これまでIFNα 療法の治療成績は報告されているものの, IFNβ 療法やIFNβ α 併用療法の治療成績については未だその報告は認められていない.今回我々は, IFNβ 療法またはIFNβ α併用療法を施行されたTTV重感染のC-CH患者の保存血清を用いて, TTVの重感染がIFNの治療効果に影響を与えていたか否かについてretrospectiveに検討した.IFNβ 療法またはIFNβ α併用療法を施行されたC-CH患者60例 [治療効果の内訳は, Completeresponder (CR) が29例, incompleteresponder (ICR) が10例, no responder (NR) が21例] の保存血清を用いて, HCVRNAの定性と定量, 並びにHCVgenotypeの解析, TTVDNAの定性, 定量を行った.C-CH患者60例中23例 (38.3%) にTTVDNAが検出された.IFN治療のCRにおいては, そのTTVDNA陽性率が17.2%であったのに対し, ICRおよびNRでは58.1%であり, 両群間には有意差が認められた (p<001).さらに, HCV RNA量, HCV genotypeの2つの因子からみたC-CH患者のIFN治療効果のCR予測率が80.8% (21/26) であったのに対し, TTVDNAを加えた3つの因子からみたCR予測率は90.0% (18/20) と高率であった.CCH患者において, HCV RNA量, HCV genotypeおよび, TTV DNAの3因子をIFNβ 療法またはIFNβ α 併用療法の治療前に測定する事は, その治療効果の予測に有用であると考えられた.
  • 吉田 耕一郎, 二木 芳人, 宮下 修行, 松島 敏春
    2002 年 76 巻 9 号 p. 754-763
    発行日: 2002/09/20
    公開日: 2011/02/07
    ジャーナル フリー
    アルカリ処理-発色合成基質カイネティック法 (アルカリ処理-カイネティック法) と希釈加熱-発色合成基質エンドポイント法 (希釈加熱-エンドポイント法) による血中 (1→3)-β-D-グルカン (β-グルカン) 測定における非特異反応検出について検討した.対象は1999年1月から5月の期間に川崎医科大学附属病院で住グルカンを測定された患者142例の保存血漿142検体.プロテアーゼ阻害剤である安息香酸-4-アミジノフェニル塩酸塩 (APB) を用いてリムルス反応を抑制する系を作成し, 各々の測定法でAPBの有無別にβ-グルカン値を測定した.APB添加条件で算出された測定値はβ-グルカン以外の妨害因子による非特異反応の結果と判定できる.アルカリ処理-カイネティック法では142検体中135検体 (95.1%) に非特異反応を認めたが希釈加熱-エンドポイント法では非特異反応はまったく検出されなかった.アルカリ処理-カイネティック法は住グルカン測定法として広く臨床に普及し, 優れた感度から高い評価を受けている.しかし本法は希釈加熱-エンドポイント法に比して非特異反応を高頻度に検出することがわかった.今後はどのような検体で非特異反応が認められるのか, その原因物質についてさらに詳細な検討が必要である.一方, 希釈加熱-エンドポイント法では非特異反応は認められなかった.本法については臨床的有用性を評価していく必要がある.
  • 2002 年 76 巻 9 号 p. 832
    発行日: 2002年
    公開日: 2011/02/07
    ジャーナル フリー
    以下の論文に一部誤りがありましたので訂正致します. (誤)これらの感度は各々40.0%, 82.1%, 特異度は (正)これらの感度は各々82.1%, 40.0%, 特異度は
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