嫌気性菌感染症の成立とその治療に関する一つの資料を得ることを目的として, 本研究は行われた.大分医科大学医学部附属病院と長崎大学医学部附属病院において, 1978年1月から1982年12月までの5年間に常在菌による汚染がないと考えられた各種の臨床材料804件から分離された嫌気性菌なちびにこれと混合分離された好気性菌の種類と頻度について, 解析的検討を加えた.
嫌気性菌単独分離材料は24.5%, 好気性菌との混合分離材料は75.5%であった.嫌気性菌は940株分離され,
Bacteroides fragilisをはじめとするグラム陰性桿菌が最も多く (47.6%), ついでグラム陽性球菌 (21.5%), 無芽胞グラム陽性桿菌 (20.6%), グラム陰性球菌 (7.1%),
Clostridium sp. (3.2%) であった.混合検出された好気性菌は1,183株分離され, 腸内細菌が最も多く44.2%を占め, ついでグラム陽性球菌 (41%), 糖非発酵グラム陰性桿菌 (7.4%), 糖発酵性グラム陰性桿菌 (3.8%), グラム陰性球菌 (3.1%), グラム陽性桿菌 (0.5%) であった.分離菌種は,
Escherichia coli (38.9%), α-Streptococcus (27.0%),
Streptococcus faecalis (21.3%), コアグラーゼ陰性Staphylococcus (16.0%),
Klebsiella aerogenes (13.3%),
Pseudomonas aemginosa (13.0%) などの順に分離され, 感染部位と分離菌種の種類と頻度の間に特徴がみられた.
B.fragilisの分離菌量は, これと混合分離された
E.coli, S.faecalisの分離菌量と有意に比例する結果が得られた (x
2テスト: p<0.01, p<0.05).しかし,
P.aeruginosa, Klebsiella sp.ではこの傾向は明らかでなかった.
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