感染症学雑誌
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59 巻, 3 号
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  • 小林 譲, 長谷川 均
    1985 年 59 巻 3 号 p. 237-244
    発行日: 1985/03/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    細胞融合法により作成した日本脳炎 (JE) ウイルス中山-RFVL株に対するモノクローナル抗体 (NARMA) を用いて, 赤血球凝集抑制 (HI) 試験および中和試験により, 代表的な11株のJEウイルス (中山-RFVL, 中山-予研, 中山薬検, G-11ate, JaGAr 01, JaGAr 02, 上山, 三重44-1, 熊本80679, 691004, Muar) の免疫学的性状を解析した.
    HI反応性を示す14系統の種特異性抗体のうち, 13系統に免疫株である中山-RFVL株に対して中和活性を認めた.これらの抗体のHI価と中和抗体価との間には, 相関関係は認められなかった.さらに, これらの抗体は, 次のような性状を示した. (1) JEウイルス全体に対して, HI反応性および中和活性を認める種特異性抗体 (NARMA 3), (2) JEウイルス全体に対して, 主としてHI反応性のみを認める種特異性抗体 (NARMA 13), (3) 中山-RFVL, 中山-予研株に対して株特異的にHI反応性および中和活性を示す抗体 (NARMA 6), (4) 中山-RFVL, 中山-予研株に対して, 株特異的にHI反応性を示す抗体 (NARMA5), (5) それらの中間的性状を示す10抗体.
    11株のJEウイルスは, 4群に大別され, Muar株は他の10株と抗原性に大きな相違が認められた.さらに, それぞれの群の中でも, 抗原性のさらに細かい部分には相違がみられるものがあった.
  • 堀越 裕一, 花島 恒雄, 森田 武子, 近内 康夫, 白石 透, 佐久間 雅子, 結束 幸雄, 元吉 正己, 長田 富香
    1985 年 59 巻 3 号 p. 245-254
    発行日: 1985/03/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    呼吸器感染症の起炎菌の検索にあたっては, 一般臨床の場においても安全かつ簡単に実施できる採痰法が望まれる.呼吸器疾患171例において, 肺癌診断用のブラシを用いて気管支局所採痰を実施した.この方法によって得られた検体 (Bronchial secrets and exsudates以下BS) と同時喀出喀痰の培養結果について比較検討を行い, この方法に伴う汚染の程度, 分離病原菌の起炎性決定の条件などについて以下の成績を得た.
    1) BSと同時喀出喀痰の菌叢の構成菌種が一致したものは26.9%であった.
    2) BSより分離されたナイセリアの集落数は廾が5.3%, 少量以下が65.5%であった.喀出疾では++~+++が65.5%であった.またα-レンサ球菌の集落数の分布においても同様の結果が得られた.したがって本法によって採取されたBSの上気道常在菌叢による汚染は極く少ないと考えられた.
    3) 肺実質感染症と気道感染症において病原菌の集落数と起炎性を検討した.喀出痰よりの分離集落数が++~+++の場合, 肺実質感染症では31.3%, 気道感染症では全例が起炎菌であった. BSよりの分離集落数が++~+++の場合は両者共に100%が起炎菌であった.
    4) 膿性喀痰よりの起炎菌分離頻度は他に比較して圧倒的に高い.
    以上の成績をふまえ, 呼吸器感染症の起炎菌検索における本法の位置づけについて考察を加えた.
  • 諸星 輝明, 沼崎 啓, 山中 樹, 千葉 峻三, 中尾 亨, 小森 昭, 野田 明, 村主 千明, 青木 功喜
    1985 年 59 巻 3 号 p. 255-258
    発行日: 1985/03/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    わが国の妊婦におけるChlamydia trachomatis (以下C.trachomatis) の浸淫度と母児感染の実態を知る目的で, 札幌市の正常妊婦を対象に培養細胞を用いてC.trachomatisの分離を試み, また分離陽性であった母体から出生した児についての検討を合わせて行なった.
    S.C.病院の妊婦82例中3例 (3.6%), D.A.病院の妊婦108例中1例 (0.9%), S.T.病院へ来院しC. trachomatisに対する抗体が陽性であった妊婦 (120例中23例, 19%) 12例中1例 (1.6%) の子宮頚管スワブよりC.trachomatis分離された.
    母体よりC.trachomatisが分離された5例の児のうち2例の下眼険よりC.trachomatisが分離された.
  • 荒井 祥二朗
    1985 年 59 巻 3 号 p. 259-265
    発行日: 1985/03/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    小児悪性腫瘍の治療に強力な多剤併用療法を行うようになり, 著明な好中球減少がしぼしぼ認められる.この時期には原因不明の発熱が多く, 私はこの発熱の原因が敗血症にあると考え, 現在10%程度しかない血液培養による菌検出率の改善の可能性につき検討を行い以下の結果を得た.
    1) 抗生物質の影響についてin vitro法で検討した結果, S.aureusを起炎菌として使用した場合, GM濃度が1.0μg/mlでは菌量が3.0×100CFU/ml以下の増菌が抑制されるので, S.aurezasによる敗血症ではGM点滴静注後6時間以内の培養では, 菌数が3.0×100CFU/ml以下の場合は陽性とならない可能性がある.E.coliの場合はGM濃度が10.0μg/ml以上でないと増菌抑制がなく, 通常の使用量では培養に影響を及ぼさないと思われた.in vivo法では, 抗生物質投与2時間以降であれぽ菌の増殖に影響を及ぼさないと考えられた.
    2) 培地に接種する血液量を5~30%の間で変えて菌の検出率を検討したが, S.aureusE.coliではともに, 好中球減少白血病患者と健康成人との血液の間に全く差がなく, 接種量が少ない場合増菌まで時間を要し, また逆に30%の量でも増菌阻止は認められなかった.
    3) 遠沈操作にて血球, 血漿成分を除去し, 菌の分離を試み培養率の向上を試みたが, 無操作の方が早く増菌する傾向が認められ効果はなかった.
    4) 遠沈により血液中の菌を集めることを試みたが, 3,000rpmでも菌は血球層に残存し, 最下層へ集まらなかった.
  • 荒井 祥二朗
    1985 年 59 巻 3 号 p. 266-276
    発行日: 1985/03/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    小児悪性腫瘍の経過上, 弛張型発熱等の敗血症を思わせる症状を呈しても通常の血液培養では原因菌の検出できない場合が多い. 私は血液中に存在する抗体, 補体, 食細胞, 抗生剤などの細菌発育阻止因子を除去し, さらに白血球を溶解して貧食されている菌を放出させ, membrane filtrationにより血液中の菌だけを取り出すことにより, 菌検出率を高めることを特徴とするLysis-Filtration血液培養法を用いて, 検討を行い以下の結果を得た.
    1) Lysing SolutionのpH, 含有するProtease, Tween20の比率を決めるため種々な条件で, 代表的な細菌に対する影響および濾過能への影響を検討した.その結果Lysing SolutionはProtease0.05~1.0%, Tween200.1~2.0%, pH6~10で作製するのが最適であった.
    2) 作製後4℃にて1年間保存したL.S.の細菌および濾過能に対する影響は, 作製直後のLS.とかわりなく, 緊急的なneedに対しても充分対応できる.
    3) L-F法は細菌発育阻止因子の影響を受けず接種血液量に正比例して検出細菌数が増加するので, 1CFU/ml以下と著明に少ない菌血症の場合により有効である.
    4) S.aurezlsを使った人工菌血症における菌検出率の比較では, Broth法37.6%に比しLF法は56.5%と有意に高く (p<0.05), 1CFU/ml以下の菌血症の場合に特に著明であった ((p<0.01).E.coliを使った場合も同様にL-F法の菌検出率は高かった.また抗生剤の影響をGMを使って検討したが, 特にL-F法の優位性を見い出すことは出来なかった.
    5) 悪性腫瘍思者の発熱例延べ163症例について, LF法と通常の血液培養とを同時に施行して菌検出率を比較した. L-F法5.5%(9/163), Broth法4.9%(8/162) と両者間に全く有意差は認められなかった.
  • とくに嫌気性菌と混合して分離される好気性菌について
    那須 勝, 後藤 純, 後藤 陽一郎, 田代 隆良, 糸賀 敬, 菅原 弘一, 伊東 盛夫, 餅田 親子, 菅原 和行, 猿渡 勝彦, 山口 ...
    1985 年 59 巻 3 号 p. 277-288
    発行日: 1985/03/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    嫌気性菌感染症の成立とその治療に関する一つの資料を得ることを目的として, 本研究は行われた.大分医科大学医学部附属病院と長崎大学医学部附属病院において, 1978年1月から1982年12月までの5年間に常在菌による汚染がないと考えられた各種の臨床材料804件から分離された嫌気性菌なちびにこれと混合分離された好気性菌の種類と頻度について, 解析的検討を加えた.
    嫌気性菌単独分離材料は24.5%, 好気性菌との混合分離材料は75.5%であった.嫌気性菌は940株分離され, Bacteroides fragilisをはじめとするグラム陰性桿菌が最も多く (47.6%), ついでグラム陽性球菌 (21.5%), 無芽胞グラム陽性桿菌 (20.6%), グラム陰性球菌 (7.1%), Clostridium sp. (3.2%) であった.混合検出された好気性菌は1,183株分離され, 腸内細菌が最も多く44.2%を占め, ついでグラム陽性球菌 (41%), 糖非発酵グラム陰性桿菌 (7.4%), 糖発酵性グラム陰性桿菌 (3.8%), グラム陰性球菌 (3.1%), グラム陽性桿菌 (0.5%) であった.分離菌種は, Escherichia coli (38.9%), α-Streptococcus (27.0%), Streptococcus faecalis (21.3%), コアグラーゼ陰性Staphylococcus (16.0%), Klebsiella aerogenes (13.3%), Pseudomonas aemginosa (13.0%) などの順に分離され, 感染部位と分離菌種の種類と頻度の間に特徴がみられた.B.fragilisの分離菌量は, これと混合分離されたE.coli, S.faecalisの分離菌量と有意に比例する結果が得られた (x2テスト: p<0.01, p<0.05).しかし, P.aeruginosa, Klebsiella sp.ではこの傾向は明らかでなかった.
  • 佐々木 次郎, 森鼻 健史, 高井 宏, 椎木 一雄, 内田 安信, 成田 令博, 道 健一, 斉藤 健一, 河西 一秀, 三宮 慶邦, 久 ...
    1985 年 59 巻 3 号 p. 289-302
    発行日: 1985/03/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    全国の11施設を受診した歯性感染症患者156症例の閉塞膿より得られた検体から, 合計326株の菌を検出し, 次の結果を得た.
    1) 歯周組織炎, 智歯周囲炎, 顎骨炎および小数例のその他の疾患群からの検出菌は複数菌の検出例が多く, また嫌気性菌の検出率が高かったが, 疾患群による差は認められなかった.
    2) 菌種別では, 好気性菌ではα-Streptococcusが高頻度に検出され, 他にはβ-Streptococcus, B.catarrhalisなどが, また嫌気性菌ではBacteroides属, Peptococcus属, 嫌気性Streptococcus属などの, 検出頻度が高かった.
    3) MICの測定はマクロライド系の4剤すなわち, Josamycin (JM), Midecamycin (MDM), Erythromycin (EM) およびTMS-19-Q (TMS) ならびにAmpicillin (ABPC), およびCephalexin (CEX) についてなされた.
    CEXはMICが高かったが, その他の5薬剤はいずれも良好な抗菌力を示し, 耐性菌も少なかった.特にTMS, EM, ABPCの抗菌力は強かったが, ABPCではBacteroides属に中等度の耐性菌がみられた.
  • 鉢嶺 一男, 草場 公宏, 二宮 紀郎, 小林 譲
    1985 年 59 巻 3 号 p. 303-309
    発行日: 1985/03/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    日本脳炎ウイルス不活化ワクチンを5日間隔で3回, cyclophosphamide (CY) 処置マウスに接種し, 抗体産生に対するCYの影響について検討した.免疫初期にCY (240μg/g体重) 処置を1回行うと, HIおよび中和抗体の出現時期は遅延し, 抗体価のピークも低下した.CY2回処置では, 抗体産生はさらに著しく抑制された.次に, 不活化ワクチンを2回接種後3回目に生ウイルスを接種すると, CY処置マウスの一部は発症死亡し, CY処置の回数を増すと死亡数は著しく増加した.CY処置マウスで遅れて出現する抗体のクラス別を, 2-ME処理と黄色ブドウ球菌CowanI株による吸収処理でみると, 初期にはIgMが主で, その後引き続きIgGが出現するパターンは, 無処置群の場合と同様であった.1回のCY処置によって, CY投与後4~7日の間, 腹腔内滲出細胞 (PEC) 数が減少し, またCY投与1日後からその後約7日間にわたってPECのrandom migration機能が抑制されることが観察された.
  • 中村 靖, 小花 光夫, 小林 芳夫, 藤森 一平
    1985 年 59 巻 3 号 p. 310-314
    発行日: 1985/03/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    典型的下痢症を呈して急性腎不全, Rhabdomyolysisを合併し, さらに胆嚢保菌に基づく長期排菌のみられた国内発生コレラの一例を経験した.症例: 37歳, 男.主訴: 下痢.既往歴: 36歳時, 十二指腸潰瘍により胃亜全摘.現病歴: 58年10月9日夕食にスッポン料理を食べた.10月11日午前より頻回の米のとぎ汁様水様便, 嘔吐, 全身の筋肉痛が出現.無尿となり12日夜本院入院.脱水症状著明で, クレアチニン6.4mg/dl, BUN 80mg/dlに増加, 代謝性アシドーシスを認めた.大量の電解質輸液により漸次自他覚所見は改善した.便培養によりエルトール型コレラ菌を検出し, 後日スッポンからもコレラ菌が検出された.本例では胃切除のために胃酸による殺菌能力の低下があり, 重症化の要因として考えられた.また発病時に, GOT, LDH, CPKなどの節原性酵素および血清ミオグロビソの高値が認められ, Rhabdomyolysisの合併を示しており, 脱水とともに腎不全発症への関与が疑われた.さらに本例では症状消失後胆汁よりコレラ菌が検出され, 胆嚢保菌の状態が2ヵ月間持続した.国内発生コレラで胆嚢保菌をみた例は従来報告がなく, 今後, 本感染症を考える場合, 無症状胆嚢保菌者の存在にも留意する必要があるものと思われる.
  • 林 純, 柏木 征三郎, 野村 秀幸, 梶山 渉, 池松 秀之, 青山 俊雄, 与儀 洋和
    1985 年 59 巻 3 号 p. 315-320
    発行日: 1985/03/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    B型肝炎ウイルスは家族内感染以外, 医療行為や性行為で伝播する事は良く知られているが, その他にHBsAg carrierが使用した歯ブラシやカミソリなどを介しての伝播の可能性も考えられている.著者らはcarrierとカミソリを共用したため, 劇症B型肝炎に罹患した1例を経験したので報告する.
    症例は沖縄県石垣市の中学校女子生徒 (14歳) で, 昭和58年1月HBsAg陽性の急性肝炎を発症し, その後意識障害の出現などから劇症B型肝炎と診断されたが, 血漿交換などにより治癒した.
    患者が通っていた中学校の全生徒341名のHBsAg陽性率は4.1%, anti-HBsは13.8%, anti-HBcは18.2%で, 当地区における一般住民の陽性率よりやや低い成績であった.この患者の感染経路を検討したところ, 発症2ヵ月前の修学旅行にて, 患者はHBsAg carrier (HBeAg陽性) の女生徒が美容のため下肢の剃毛に使用したカミソリをそのまま借用し, 同様に剃毛を行ったため感染したものと考えられた.
    HBsAg carrierへの対策として, 肝機能の面からだけでなく, 感染源としての指導, 教育を行う必要があると考えられた.
  • 1985 年 59 巻 3 号 p. 321-323
    発行日: 1985/03/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
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