感染症学雑誌
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78 巻, 7 号
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  • 笹原 武志, 菊野 理津子, 奥田 舜治, 関口 朋子, 佐藤 義則, 高山 陽子, 青木 正人, 井上 松久
    2004 年 78 巻 7 号 p. 545-553
    発行日: 2004/07/20
    公開日: 2011/05/20
    ジャーナル フリー
    全国の49温泉入浴施設から採取された温泉の源泉及び浴槽水についてLegionella属菌汚染の実態調査を実施した. 検査対象とした温泉水105検体の中52検体 (49.5%) から地域性に関係なくLegionella属菌が検出された. 検出率が最も高かったのは露天風呂 (66.6%) であり, 温泉水の汚染生菌数は10~<1,000cfu/100mlの範囲のものが最も多く全体の67.3%を占めていた. 血清型別できたLegionella属菌の中で最も多い菌種は, L. pneumophila serogroup (SG) 4であった. 同一施設浴槽水から分離されたL. pneumophilaSG4のPFGEパターンは同じであったが, 源泉由来のそれとは異なっていた. 温泉水の泉質が, pH1.8~3.3, SO42-: >780mg/l, H2SiO3: >146mg/lの場合, Legionella属菌の汚染は認められなかった. 更に, Legionella属菌の汚染が確認された温泉施設の90%は循環方式を採用していた. これらの成績から, 我が国における温泉入浴施設は同じ血清群で同一のPFGEパターンを示すL. pneumophilaに広く汚染されており, その汚染状況は温泉水の泉質, 即ち, pHの他にSO42-やH2SiO3の濃度, によってかなり異なっていることが示唆される.
  • 長尾 由実子, 千葉 逸朗, 佐田 通夫
    2004 年 78 巻 7 号 p. 554-565
    発行日: 2004/07/20
    公開日: 2011/02/07
    ジャーナル フリー
    現在, わが国では, 輸血に起因するB型肝炎ウイルス (HBV) やC型肝炎ウイルス (HCV) の感染はほとんど見られなくなった. しかし, 全国調査によると散発性のB型やC型急性肝炎例の発生が毎年報告され, 医原性感染によるウイルス肝炎も報告されている. 私共は, 歯科診療時の肝炎ウイルスに対する感染予防対策についての教育や啓発が重要であると考え, 某大学歯学部と歯科衛生士学校の学生全352名を対象にB型肝炎やC型肝炎に関連した知識や感染予防についての認識度についてアンケート調査を実施した. 全体の35.5%の学生が, 交叉感染の防御よりも術者自身の感染防御を重要視していた. さらに, ディスポーザブルの手袋や局所麻酔薬のカートリッジを再使用してもよいと考える学生の割合は, 各々13.1% (46/352名), 14.8% (52/352名) であった. HBVやHCVが血液だけでなく唾液などの体液からも検出されるという認識を持つ学生は65.3%に留まっており, 肝炎ウイルスの知識や器具の消毒と滅菌に関する理解が低い実態が明らかになった.
    国内の歯科治療における院内感染防止の標準化を目指したガイドラインの早急な作成と歯科医療に従事する学生に対する感染のリスクマネージメントを重視したカリキュラムの導入と教育が必要である. さらに, 歯科医療にスタンダードプレコーションの考えを普及することが重要な課題であると思われる.
  • 堀口 祐司
    2004 年 78 巻 7 号 p. 566-573
    発行日: 2004/07/20
    公開日: 2011/02/07
    ジャーナル フリー
    血液疾患患者の抗菌薬不応性発熱時に, 侵襲性アスペルギルス症の血清診断として, β-グルカン値 (ファンギテックGテストMK, βグルカンテストワコー), アスペルギルスガラクトマンナン抗原 (プラテリアアスペルギルス) を同時に測定した. 対象は58症例, 72回の広域抗菌薬不応性の発熱時の血清診断値を測定した. 検討期間中に8例が侵襲性アスペルギルス症と診断された. 本研究により得られた診断効率の成績は, ファンギテックGテストMKおよびβグルカンテストワコーの感度がそれぞれ0.88および0.63, 特異度はそれぞれ0.85, 0.98であった. β-グルカン測定系の対数変換後の相関係数は, 0.92 (95%CI, 0.89~0.94), p<0.001と, 強い相関を認めた. また, プラテリアアスペルギルスの感度は0.50, 特異度は1.0であった. ファンギテックGテストMK, βグルカンテストワコー, プラテリアアスペルギルスにおけるROC AUC±SEおよび最適な基準値はそれぞれ, 0.92±0.07, 24.9pg/ml, 0.84±0.09, 7.3pg/ml, および0.89±0.08, 0.9 cut off indexと算出された. 以上の結果より2つのβ-グルカン測定法の測定効率はほぼ等しく, 測定値は変換可能なことが示された. また, ガラクトマンナン抗原値が0.9 COI以上であれば厳重な注意が必要であることが示唆された.
  • 飼いネコからのB. henselae分離
    常岡 英弘, 石田 千鶴, 梅田 昭子, 猪熊 壽, 塚原 正人
    2004 年 78 巻 7 号 p. 574-579
    発行日: 2004/07/20
    公開日: 2011/02/07
    ジャーナル フリー
    猫ひっかき病の主要病原体はBartonella henselaeである. 臨床材料から本菌を分離するための基礎的検討として, ヒツジ, ウマおよびウサギ血液寒天培地とチョコレート寒天培地でのB. henselaeの発育状況を比較したところ, ウサギ血液寒天培地およびチョコレート寒天培地がヒツジおよびウマ血液寒天培地より優れていた. そこでウサギ血液寒天培地と血液培養自動検出機器BACTEC9050 (BD) を併用して, 山口県の飼いネコ60例の血液からB. henselaeの分離を試みた. その結果, 飼いネコ6例からB. henselaeが検出された (保菌率10.0%). 本菌種はいずれも5%CO2, 35℃下で1週間以上の発育日数を要した. BACTEC9050を併用した10例中1例からも本菌が検出されたが, 2週間後で初めて感知した. 培養ボトルのグラム染色では, 菌体の観察は困難だった.
    以上の結果から, 臨床材料よりB. henselaeを検出するには, 培地としてウサギ血液寒天培地またはチョコレート寒天培地を使用し, これらの培地では1週間以上, BACTECでは2週間以上培養を継続することが推奨される.
  • 清祐 麻紀子, 高柳 恵, 永沢 善三, 小口 晃, 永山 在明
    2004 年 78 巻 7 号 p. 580-587
    発行日: 2004/07/20
    公開日: 2011/02/07
    ジャーナル フリー
    1999年12月から2000年6月までに, 九州医療センター細菌検査室で検出されたMRSA 109株について疫学調査を試みた. 109株中Teicoplanin (TEIC) のMIC値が4~8μg/mLを示したTEIC低感受性株が6株存在し, それらはすべてコアグラーゼII型, エンテロトキシンA型, TSST-1産生株であり, PFGE解析でも100%同一株であった. このTEIC低感受性株に着目し, 伝播経路を追跡したところ, 多くの診療科が出入りする3東病棟 (集中治療室: ICU) を経由してTEIC低感受性のMRSAが伝播していた事が判明した. MRSA疫学調査の結果, ICUを起点とした伝播経路が疑われ, 病棟を超えて院内全体にMRSAが分布していることが示唆された.
  • 藤巻 わかえ, 仁藤 興次, 上芝 秀博, 金井 孝夫, 内山 竹彦
    2004 年 78 巻 7 号 p. 588-596
    発行日: 2004/07/20
    公開日: 2011/02/07
    ジャーナル フリー
    酸化チタン (titanium dioxide: TiO2) を主成分とする光触媒膜をガラス表面にコーティングした光触媒膜付蛍光ランプは, ランプの表面の光触媒に触れた菌や臭い分子を分解する効果を有する.その光触媒膜付蛍光ランプをとりつけた室内における浮遊菌数の減少効果および消臭効果を検討した. 当大学の動物実験施設, 某食品会社の野菜下処理場という独立した2つの施設における光触媒膜付蛍光ランプの取り付け前後における細菌の浮遊菌数を, それぞれ独立の検査機関により比較検討したところ, いずれの実験においても光触媒膜付蛍光ランプ装着により有意の菌数減少を認めた. 脱臭効果をみる基礎実験としては, 密閉容器内に注入されたアセトアルデヒドの濃度の減少を, 一般ランプを装着した場合と光触媒膜付蛍光ランプを装着した場合について比較検討した. その結果, 一般ランプを装着した場合では濃度減少を全く認めなかったが, 光触媒膜付蛍光ランプの装着では1時間後に濃度は半減した. 実環境では, トイレの臭いについてのアンケートを実施した. 複数のトイレにおいて検討したところ, いずれにおいても光触媒膜付蛍光ランプ装着後において, 90%前後の利用者が, 臭いが減少したと回答した. 以上より, 光触媒膜付蛍光ランプの装着により, 実環境の空中浮遊菌を減少させること, また, 消臭効果を有することが明らかとなった.
  • 三田村 敬子, 山崎 雅彦, 市川 正孝, 木村 和弘, 川上 千春, 清水 英明, 渡邊 寿美, 今井 光信, 新庄 正宜, 武内 可尚, ...
    2004 年 78 巻 7 号 p. 597-603
    発行日: 2004/07/20
    公開日: 2011/02/07
    ジャーナル フリー
    イムノクロマトグラフィー法と酵素免疫法を組み合わせた原理により, A型およびB型インフルエンザウイルスを鑑別して検出する迅速検査試薬の改良試作品: エスプラインインフルエンザA&B-N (富士レビオ) について検討した. 基礎的検討では種々のインフルエンザウイルスに対する反応は問題なく, ウイルス液の最小検出濃度は5.8×102~5.8×103pfu/assayで, 検出感度は従来製品より2~10倍上昇していた. 臨床的検討は, 2002/2003年のインフルエンザシーズンにインフルエンザ様疾患の患者から採取した715検体 (小児79.4%, 成人18.5%, 不明2.1%, ウイルス分離陽性率68.3%) について, ウイルス分離およびnested RT-PCRを対照検査として感度と特異度を評価した. A型での感度は鼻腔吸引液で95.4%, 鼻腔ぬぐい液96.8%, 咽頭ぬぐい液85.1%であった. B型での感度は鼻腔吸引液で91.2%, 鼻腔ぬぐい液88.1%, 咽頭ぬぐい液71.6%とA型よりやや低かった. 従来製品と比べると, 特に咽頭ぬぐい液のA型に対する感度の上昇が顕著であった. 検体別の感度では, 鼻腔吸引液と鼻腔ぬぐい液の感度は咽頭ぬぐい液よりも有意に高く, 小児では鼻腔検体の信頼性が高いことが改めて確認された. 偽陽性は223検体中2検体のみで, 特異度は鼻腔吸引液で100%, 鼻腔ぬぐい液97.6%, 咽頭ぬぐい液100%と検体による差はなく, 全体で99.1%であった.
  • 須藤 扶佐代, 中村 明, 星野 直, 石和田 稔彦, 河野 陽一
    2004 年 78 巻 7 号 p. 604-608
    発行日: 2004/07/20
    公開日: 2011/02/07
    ジャーナル フリー
    Haemophilus influenzae type b (Hib) is the most frequent pathogen of bacterial meningitis in Japanese children. The prevalence of beta-lactamase-negative ampicillin-resistant (BLNAR) Hib strain has been increasing in recent years. Furthermore, antibiotic activities of cefotaxime (CTX) and ceftriaxone (CTRX) have decreased against some of those BLNAR strains. We report a case of one-year-old boy who suffered from meningitis caused by BLNAR Hib. The MICs of CTX and CTRX for the strain isolated from cerebrospinal fluid was 1.0 and 0.5μg/ml, respectively. The patient was administered high-dose CTRX (150mg/kg/day) and recovered completely without any sequela. The highdose CTRX administration may be a considerable choice of the treatment of BLNAR meningitis.
  • 小林 寛伊
    2004 年 78 巻 7 号 p. 609-614
    発行日: 2004/07/20
    公開日: 2011/02/07
    ジャーナル フリー
    病院 (院内) 感染対策に興味を持って携わってくれるドクターを増やすことを目的として, 1999年より開始したインフェクションコントロールドクター (ICD) 認定制度は, 現在, 16学会, 3研究会よりなるICD制度協議会によって認定が行われているが, 認定ICD (CICD) の数は3, 948人となり, 数字の上では約300床に1人の割合となった. 然し, 日常業務における病院感染対策への関わりがいかにあるかの実態はつかめておらず, この点を明らかにして, 今後の全国的対策に資することを目的として調査を行った.
    結果は, 多くのCICDが日常業務において活発に感染制御活動に従事しており, CICDの制度は全国的病院感染対策の前進に大きく寄与している. 今後の課題としては, CICDの日常的活動の質を更に高めるための努力が必要である.
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