感染症学雑誌
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61 巻, 11 号
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  • 丸山 直人, 佐田 通夫, 小野 勝之, 村岡 晴雄, 鈴木 宏, 矢野 洋一, 中野 均, 神代 龍吉, 日野 和彦, 有高 知樹, 安倍 ...
    1987 年 61 巻 11 号 p. 1215-1223
    発行日: 1987/11/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    Hepatitis Bvirus (HBV) 汚染事故に対するHepatitis B immune globulin (HBIG) による感染防御状況を検討すると共に, HBIGを接種したにもかかわらず (汚染後24時間以内) 急性B型肝炎 (以下AHB) を発症した3例を経験したので, HBIG非接種AHB12例との臨床像の差異も比較検討した. HBIG接種後の血中HBs抗体はRIA法で16週までは全例で検出されたが24週までにほぼ消失した. 本学でのHBIG被接種者のAHB発症率は0.8%(128例中1例) であった.
    HBIG接種にもかかわらずAHBを発症した3例の汚染状況は, 全てHBe抗原陽性血で汚染された注射針刺傷で, 臨床像は潜伏期が平均208.0日, 顕性黄疸例は1例のみでT. B. の最高値は平均2.0mg/dlであり非接種例に比べ潜伏期の有意 (p<0.001) な延長と比較的軽症な臨床経過が確認された. 以上の事より, HBIGの有用性と共にHBIG接種後6ヵ月以降も肝炎発症に対し充分な観察が必要と考えられた.
  • Mycoplasma pneumoniaeのL細胞感染系における抗生物質感受性
    三栖 朋子, 古川 真由美, 井上 博之, 冨田 憲朗, 荒井 澄夫
    1987 年 61 巻 11 号 p. 1224-1229
    発行日: 1987/11/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    Mycoplasma. pneumoniae新鮮分離株50株について, macrolide系抗生物質に対する感受性を寒天平板希釈法による最小発育阻止濃度およびM. pneumoniaeのL細胞感染系で測定した. 寒天平板上で50株中38株 (75%) に対する抗生物質の阻止濃度はerythromycinおよびrokitamycin (0.007μg/ml) josamycin (0.015μg/ml) kitasamycin (0.03μg/ml) であった. 一方, L細胞感染系では, その除去濃度は寒天平板上でのMICとは必ずしも一致せず, erythromycinでは菌株によってはMICの約10倍の薬剤濃度が必要であった. これにたいし, rokitamycin, josamycin, kitasamycinではその濃度はMICとほぼ一致した.
    また, M. pneumoniae感染L細胞をrokitamycinで処理すると, 細胞表層に付着しているM. pneumoniaeの消失がDNA染色で認められ, 薬剤が細胞感染系でもM. pneumoniaeに作用していることが確認された.
  • 甲田 雅一, 小林 準一, 熊谷 郁子, 梅原 千代美, 松崎 廣子
    1987 年 61 巻 11 号 p. 1230-1238
    発行日: 1987/11/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    近年, 臨床材料よりのMethicillin-resistant Staphylococcus aureus (MRSA) 検出率が増加している. この傾向は当院における血液培養よりの検出菌においても同様であった. 血液よりのS. aureusの検出率増加, および耐性化は, 抗グラム陽性球菌剤の使用量増加に関連していると考えられた.
    1985年度に血液培養より検出したS. aureusのうちの96%まではβ-lactamase産生菌, もしくはMRSAであった (MRSAは検出菌の78%に見られた).
    MRSAに対する各種薬剤のMIC測定およびIn vitroでの併用実験の結果からは, MRSAによる敗血症にはMinocyclineが最も抗菌力に優れ, 次いでNetilmicinが, 併用ではFosfomycinとMethicillin, またはFosfomycinとセフェム系薬剤の併用が効果を示すと思われた.
  • 藤田 信一, 松原 藤継, 松田 保
    1987 年 61 巻 11 号 p. 1239-1247
    発行日: 1987/11/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    Candida albicans mannanは, C. albicansおよびC. tropicalsのブイヨン培養液から4.8-23ng/ml, 超音波破砕後に凍結乾燥した検体から50-150ng/μg検出されたが, それ以外のカンジダ属では1/5以下の量にすぎなかった. C. albicansを静注したマウスでは抗原は12時間後より検出され, 48時間後にピークの約5.2ng/mlに達し, その後徐々に低下した.
    悪性腫瘍患者202名のうち, 剖検にて全身性カンジダ症と診断された8例より, また, 消化管カンジダ症6例中3例から1ng/ml以上の抗原が検出された. 侵襲性カンジダ症が疑われた8例では, 7例が抗原陽性であった. 血液培養にてCandidaが分離された7例中3例は培養陽性の5-19日前に抗原が検出された.C. guilliermondiiが頻回に血液から分離された1例 (9検体) では抗原は検出されなかった. Amphotericin B投与中に採血された32検体 (8例) では10検体 (6例) が抗原陽性であった. 一方, カンジダ症を合併していない180例中2例から1ng/ml以上の抗原が検出されたものの, 健常者48名ではすべて0.5ng/ml以下であった. Biotin-Streptavidin系を用いたEnzyme immunoassayのsensitivityは82%, specificityは99%であった. 本測定法によるmannan抗原の検出はカンジダ症の早期診断に有用と思われた.
  • 杉本 信子, 角 由貴江, 藤田 孝子, 河田 恭子, 加藤 敬香, 矢野 郁也, 服部 直彦, 栗村 敬
    1987 年 61 巻 11 号 p. 1248-1251
    発行日: 1987/11/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    Mycobacteriumと近縁で人に非病原性であるRhodococcus terraeの菌体から分離したミコール酸含有糖脂質の一つであるRt. GM-2のインフルエンザウイルスに対する感染防御作用の促進をマウスについて検討した. Rt. GM-2の10μg/匹をICR系マウスにwater in oil in waterミセルの状態で, あらかじめ静脈内に投与し, 2日後にホンコン型インフルエンザウイルスA/Osaka/5/70 (H3N2) を感染させた場合, またはウイルスを感染させた2日後にRt. GM-2を10μg/匹投与した場合, いずれの場合においても, Rt. GM-2のウイルス感染に対する防御作用が認められた.この作用はBCGのコードファクターを10μg/匹投与した時に認められる感染防御作用に比べて強かった.
  • RIA法との比較
    野口 晶教, 柏木 征三郎, 林 純, 野村 秀幸, 梶山 渉, 池松 秀之
    1987 年 61 巻 11 号 p. 1252-1256
    発行日: 1987/11/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    1. HBs抗原の検出法として, モノクローナル抗体を用いたEIA法が開発され市販されている. このEIA法の有用性を検討するため, 現在わが国において市販されている2種類のキット (EIA-1およびEIA-II) を用いて, 従来のRIA法との比較を行った. EIA法にはいずれも迅速法 (EIA-1は3時間, EIA-IIは2時間のインキュベーション) を用いたが, RIA法は一昼夜法を用いた. 血清756例中, RIA法でHBsAg陽性369例 (48.8%), 陰性387例 (51.2%) であったがEIA-1は, 100%これと一致した. EIA-IIでは, 陽性360例, 陰性396例でRIA法と98.8%の一致率を示し, 9例の不一致例が認められた. これらの不一致例に対しEIA-II法の一昼夜法を実施することにより, 検査しえた8例とも陽性と判定された.
    2. 2種のEIA法のうち, EIA-1では短いインキュベーション時間にもかかわらずRIA法と一致した. また, インキューベーション時間が2時間と最も短いEIA-IIでもインキュベーション時間を延ばすことにより, RIA法とほぼ同等の感度が得られた.
    以上よりモノクローナル抗体を用いたEIA法は, 感度や手軽さの面で日常検査法として極めて有用なものであることが確認された.
  • 神吉 耕三, 宮地 良和, 岡野 裕二, 松吉 秀治, 遠藤 章, 浜野 いずみ
    1987 年 61 巻 11 号 p. 1257-1263
    発行日: 1987/11/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    第3世代のセフェム系抗生剤の内, 胆汁排泄型であるセフォペラゾン (CPZ) を生後3ヵ月より17歳迄の小児の各種感染症に投与し, 腸内細菌叢へ及ぼす影響並びに下痢発症頻度について検討した.
    下痢発症頻度は58例中15例で, 25.8%であった. 何れも4歳以下に発症し, 特に2歳以下の乳幼児では27例中11例 (40.7%) と高頻度であった. 下痢発症例では糞便中の総菌数の減少が著明で, Candida, 腸球菌群以外のほとんどの菌が減少し, 他の第3世代セフェム系抗生剤とほぼ同様な傾向であった. 一方下痢を発症しなかった例では腸球菌群が増加傾向を示した. この結果に注目し, CPZ投与時の多剤耐性フェーカリス菌製剤 (BF-R) の併用効果を検討した. 2歳以下を対象としたが, BF-R併用群の下痢発症頻度は25例中2例 (8.0%) で, 非併用群に比し有意に減少した (p<0.01).
    2歳以下の小児に対するCPZの投与は, 腸内細菌叢の変動, 下痢の併発等に注意し慎重に行なうことが望ましく, CPZ投与時の下痢発症予防には, BF-Rの併用が有効であると考えられた.
  • 小林 譲, 兼光 望, 丹下 宜紀, 橘 宣祥, 多村 憲
    1987 年 61 巻 11 号 p. 1264-1269
    発行日: 1987/11/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    R. tsutsugamushiの免疫学的性状を解析する目的で, その代表的なGilliam, Karp, 加藤の3株を用いて, 細胞融合法により26系統のモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを作製した. それらのモノクローナル抗体は, それぞれの株に特異性を示す抗体, 3株ともに幅広く反応する抗体, およびそれらの中間的性状を示す抗体に大別された.
    さらに, これらの抗体を用いて, 1980年から1984年の間に宮崎県で分離された8株と, 1980年に新潟県で分離された霜越株について, 血清学的性状を解析した結果, 宮崎県の8株は, Gilliam型が2系統, Gilliam・加藤型が2系統, 加藤型が4系統であり, 霜越株は加藤株に最も近い性状を有することが明らかになった. また, 26系統のモノクローナル抗体に対するこれらの新型つつが虫病リケッチア株の血清学的性状は, 同じ血清型に属するものでもそれぞれのモノクローナル抗体に対する反応性が異なることから, 同じ分子量の蛋白上に存在する抗原決定基でも, 反応性には, 多様性があることが明らかになった.
  • 加藤 達夫, 松吉 秀治, 五島 敏郎, 中島 夏樹, 山本 仁, 加久 浩文, 有本 寛, 水原 春郎
    1987 年 61 巻 11 号 p. 1270-1275
    発行日: 1987/11/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    我が国で開発され1981年以来用いられている沈降精製百日咳ワクチンAcellular Pertussis Vaccineの臨床効果を評価することを目的として我々は1981年から1986年7月迄聖マリアンナ医科大学小児科で百日咳と診断された96名の患児を対象として, その家族内2次感染の有無についてアンケート調査を行い, Retrospectiveに検討した. 現在我が国で用いられているAcellular Pertussis Vaccineには, 百日咳菌体成分中の線維状赤血球凝集素Filamentous hemagglutinin (FHA) を主に含むFHA Predominanttype vaccineと, リンパ球増多因子又は百日咳毒素, Lymphocytosis promoting factor (LPF) Pertussis toxin (PT) とFHAをほぼ等量ずつ含むFHA-PT vaccineの2製品があり, 国際的には前者は製造社武田薬品工業を略してT type vaccine, 後者は阪大徴研製を略してB type vaccineと呼ばれている. 今回の我々の調査はT type vaccineに対する評価を目的とした. アンケートに返答した数は75例でこの内同胞のいない例が21例あったため実際にRetrospective studyに使用出来たのは54例であった. 同胞の百日咳未接種例は29例でこの内19例 (65.6%) に家族内2次感染がみられた. 一方Ttypevaccine (Takeda) を接種していた13例中には1例 (7.7%) の2次感染が認められた. この結果よりこのワクチンの効果率は88.3%であり, 同時に調査した旧ワクチンの効果率 (79.3%) と同等以上の効果があると思われた.
  • 岡崎 実, 和田 靖之, 若杉 宏明, 和田 紀之, 伊藤 文之, 久保 政勝, 前川 喜平
    1987 年 61 巻 11 号 p. 1276-1284
    発行日: 1987/11/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    最近10年間に当科で経験した小児敗血症56例を調査し, 当施設における特徴および, 様々な要因と敗血症の予後との関連を検討した. 結果は以下のとおりである.
    1.0歳以下が52%と過半数を占め, そのうち新生児が38%であった.全症例の79%になんらかの基礎疾患を認め, 36%に再生不良性貧血や悪性腫瘍を認めた.
    2.起因菌はS. aureus, Pseudomonas sp., E. coli, Kleb-siella sp. の順で多く, 4種の合計は75%に達した. グラム染色では, 陰性菌が63%と優位であった.
    3. 血液培養と同時に施行した便培養でPseudomonase sp., Klebsiella sp.に血液培養との高い一致率が認められた.
    4. 抗生剤の感受性では, 全体的にABPCに対する耐性化がみられ, アミノグリコシド系では, それほど耐性化は進んでいなかった.
    5. 予後を悪化させる可能性のあるものとしては, 起因菌では, S. aureus (p<0.1), 基礎疾患では神経芽細胞腫 (p<0.05), 症状では, 意識障害 (p<0.02), 腹部膨満 (p<0.01), 浮腫 (p<0.05), 点状出血 (p<0.05). 合併症では肺炎 (p<0.01), DIC (p<0.02), ショック (p<0.01). 検査では低蛋白血症 (<5g/dl, p<0.01), 血小板減少症 (50,000/mm3, p<0.01), 白血球減少症 (4,000/mm3, p<0.05) であった.
  • 品川 知明, 加藤 嘉寛, 松尾 啓左, 滝井 昌英, 藤野 正典
    1987 年 61 巻 11 号 p. 1285-1291
    発行日: 1987/11/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    Kingella kingae (K. kingae) による感染性心内膜炎 (IE) は, 稀であり, 文献上知り得た限りでは19例を数えるのみで, 本邦ではまだ報告がない.
    症例は, 以前SLEと診断された33歳, 主婦. 高熱と多関節痛を主訴として入院した. 体温40℃, 顔面に蝶形様紅班を認め, 心音で僧帽弁逆流性雑音を聴取した. 白血球減少, LE細胞陽性, 抗核抗体陽性のため, SLEの再燃と診断し, ステロイドを投与した. 入院3日目に採取された血液培養から培養3日後にグラム陰性桿菌 (GNR) の発育を認めた. 心臓超音波検査 (UCG) では, 僧帽弁後尖に付着する大きな, 可動性のあるVegetationを認め, IEと診断した. セフチゾキシム (CZX) 1.0g, 6時間毎点滴静注にて, SBT最高128倍, 最低32倍が得られ, 解熱した. 入院20日目より, セフォテタン (CTT) 2.0g, 12時間毎点滴静注に変更され, 同一のSBT値であった. 入院22日目に右膝窩動脈に塞栓を合併し, 入院25日目に腎梗塞を併発した. UCGにてVegetationは消失しており, 手術の適応はなかった. 抗生剤による内科的治療は, 35日間にて終了した.
    K. kingaeは, ヒトの口腔内常在菌であり, オキシダーゼ陽性, カタラーゼ陰性のGNRで, 羊血液寒天でβ 溶血を呈することが, 鑑別上有用であった. また, Rapid NH systemも, 簡易同定に有用であった.
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