1984年10月から1988年9月の間, 松山市の急性胃腸炎患児の糞便について, 電子顕微鏡法によるウイルス検索を行い, 2,479例の糞便から561例のロタウイルスを検出した. ウイルスRNAのポリアクリルアミドゲル電気泳動では, 259例は定型的A群ロタウイルスであったが, 60例は非定型ロタウイルスであった. 非定型株は, 1985年に5例, 1986年に7例検出されたが, 1987年には全くみられなかった. しかし, 1988年には48株が検出された.
これらの非定型株は形態的にはA群ロタウイルスと区別できなかったが, RNA泳動像はC群ロタウイルスと非常に類似していた. 非定型株86-542株は, ブタC群ロタウイルス免疫血清を用いた免疫電子顕微鏡法でC群ロタウイルスと同定された. さらに, 抗86-542株モルモット免疫血清は, 1988年株を含む供試したすべての非定型株と反応したが, A群とは全く反応しなかった. これらのことから, 1988年に松山市においてC群ロタウイルスの地域的な流行があったことが確認された.
また, この間に検出されたC群ロタウイルスのRNA泳動像には, 1987年以後の48株とそれ以前の12株とで明らかに区別できる差異が認められた.
C群ロタウイルスの疫学像の特徴は, C群ロタウイルス陽性者の年齢分布がA群に比べ高かったこと, A群ロタウイルスの流行が12月から3月であるのに対しC群は2月から4月であったことである.
松山市の住民の血清を用いて, 免疫粘着赤血球凝集反応により遡及的血清疫学調査を行った結果, 1971年にすでに78例中15例 (19.2%) がC群ロタウイルス抗体を保有していたことがわかった.
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