感染症学雑誌
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71 巻, 7 号
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  • 山下 政宣, 飛田 征男, 鈴木 亨, 下条 文武
    1997 年 71 巻 7 号 p. 607-613
    発行日: 1997/07/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    院内感染の経路を明らかにする目的で, 1992年6月から1995年6月までの問に福井医科大学附属病院の入院患者から分離された100株の緑膿菌を対象とし, 血清型およびDNAパターンを判定した. 血清型の判定は, 緑膿菌群別用モノクローナル抗体を使用し, 1平板5コロニーについて検査を行い, DNAパターンはパルスフィールド電気泳動法により実施した. 血清型A型, B型, C型, D型, E型, F型, G型, 1型のDNAパターンは明らかに異なり, E型およびG型では診療科や臨床材料により異なる例も認められた. 血清型E型は多剤耐性株が多く, 感性株と多剤耐性株でDNAパターンが明らかに異なっており, 多剤耐性株のDNAパターンは由来に拘わらず類似していた. 以上のことから, 血清型E型緑膿菌による院内感染やその発生源を同定するためには, 本菌のDNAパターンの解析が重要であると考えられる.
  • 沢村 治樹, 加藤 直樹, 澤 赫代, 渡辺 邦友, 上野 一恵
    1997 年 71 巻 7 号 p. 614-619
    発行日: 1997/07/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    Bilophila wadsworthiaは無芽胞の嫌気性グラム陰性桿菌で, 壊疽性・穿孔性虫垂炎, 腹膜炎, 骨髄炎, 菌血症など多彩な感染症から多くは複数菌感染の形で分離される菌である. 本菌の分離はBacteroidesbile esculin (BBE) 寒天培地を用いて5-7日の嫌気培養を行えば比較的容易であるが, 簡便な同定方法は示されていない. このことから, BBE寒天培地上, B. wadsworthiaと推定された32株と, B. wadsworthiaWAL7959および性状が比較的似ていて, 鑑別が必要なDesulfomonas pigraの参考菌株DSM749を用いて種々な性状の検討を行った. その結果, B.wadsworthinD.pigraとの大きな相違点はBBE寒天培地上での黒目玉状のコロニー形成, 強いカタラーゼ活性, 酸性フォスファターゼ活性およびバクテロイデス培地で発育しないことであった. したがって, 5-7日の嫌気培養でBBE寒天培地上特徴的な黒目玉状のコロニーを形成し, カタラーゼ強陽性で, バクテロイデス培地で発育せず (あるいは10μgコリスチンディスクに感受性を示し), 酸性フォスファターゼが陽性の運動性のない嫌気性無芽胞グラム陰性桿菌であれば, B.wadsworthinと同定しても差し支えないものと思われた.
  • 小林 昌彦, 根本 優子, 金子 克
    1997 年 71 巻 7 号 p. 620-627
    発行日: 1997/07/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    1994年から1995年に, 岩手県水沢市内の1病院における入院および外来患者から分離したメチシリン耐性黄色ブドウ球菌 (MRSA) 67株について, パルスフィールドゲル電気泳動 (PFGE) とarbitrarily primed-polymerase chain reaction (AP-PCR) を用いてゲノムタイピングを行った. この病院で2年間に分離したMRSAの70%以上がコアグラーゼII型であり, 1994年にはPFGEにより主な二つのゲノムタイプグループが確認された. 一つのグループは1994年に派生株を多く分岐し, 高度の抗菌薬耐性を示したが, 1995年には分離できなかった. もう一つのグループは1994年には中等度の抗菌薬耐性を示したが, 1995年には高度耐性化したことが明らかになった. AP-PCR法では6ゲノムタイプに分類され, PFGEタイプを補足する結果が得られた. プライマーの配列や長さを検討することにより, AP-PCR法は簡便で有効なタイピング法になるものと考えられる.
  • 大崎 敬子, 山口 博之, 田口 晴彦, 神谷 茂
    1997 年 71 巻 7 号 p. 628-633
    発行日: 1997/07/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    免疫磁気ビーズ法を用いて糞便材料からHelicobacter pyloriを検出するための諸条件の検討を行った. 使用する抗H. pylori血清の検討では抗ホルマリン死菌体家兎血清が最も良い結果を示し, ハンクス液1mlに約5×104cfuのH.pyloriを浮遊させて, 48cfuの菌の分離培養が可能であった. また免疫磁気ビーズ法とPCR法を組み合わせることでその検出感度を10倍高めることができた. 糞便からのH.pyloriの検出には糞便を磁気ビーズで処理する前にナイロンメッシュを通過させる, 培養には選択培地を使う, PCR (Polymerase chain reaction) 法に用いるサンプルDNAは蛋白除去するなどの操作が必要であった. H.pylori陽性の胃潰瘍患者より採取した糞便を用いて免疫磁気ビーズ法による分離を試みた結果PCR法は陽性であったが培養は陰性であった.
  • 山口 恵三, 舘田 一博, 石井 良和, 村上 日奈子, 松本 哲哉, 古谷 信彦, 樫谷 総子, 内田 耕, 生方 幹夫, 木村 一博, ...
    1997 年 71 巻 7 号 p. 634-643
    発行日: 1997/07/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    Legionella肺炎疑いの患者で, 当教室に送付された患者検体で確定診断のつけられた18症例の診断学的および臨床的特徴について解析した. 患者の平均年齢は62.0歳, 性差は14: 4で男性に多くみられ, 18症例中12例が何らかの基礎疾患を有していた.Legionella肺炎の診断は培養法で3例, 血清抗体価測定法で5例, 尿中抗原検出で8例, PCR法で9例が陽性を示した. 推定起炎菌はL. pnennzophilaが16例, L. bozemaniiが1例, 残りの1症例はL. pnenmophilaL. dumoffiiによる肺炎症例であり, L. pnenmophila肺炎のうち4例が死亡の転帰をとった. 胸部X線においては多発性病変 (14例), 肺胞性陰影 (10例), 胸水合併 (5例) の頻度が高く, 入院時血液ガス検査において全例でA-aDO2の異常を伴う低酸素血症がみられた. 臨床検査値ではほとんどの症例で白血球数, 好中球分画, CRPにおいて強い炎症所見が観察され, また肝機能障害, LDH上昇, CPK上昇を示す症例も多くみられた. 血清抗体価により診断された5症例では発症5週までに陽性結果が得られたが, 抗体検査では陰性と判定された症例が10例みられた. 尿中抗原は発症早期に高く経過とともに低下傾向を示したが, 発症1週目においても6例全例が陽性, 発症1カ月後においても2例が陽性を持続していた. 全ての症例において経過中にマクロライド剤が投与されていたが, 死亡の転帰をとった4症例中3例ではマクロライド剤の投与時期が遅れていた.本肺炎の診断に際しては, 培養法に加え血清抗体価測定, 尿中抗原検出, PCR法などを併用することが必要であると考えられた.
  • 成松 浩志, 緒方 喜久代, 渕 祐一, 帆足 喜久雄
    1997 年 71 巻 7 号 p. 644-651
    発行日: 1997/07/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    散発下痢症は食中毒を含む感染性集団下痢症の背景因子として重要と考えられる. そこで, 約10年間大分地方の散発下痢症の細菌学的検索を行い, その結果を解析した.
    1985年から1986年と1989年から1996年の間, 大分市及びその近郊の小児科等の医療機関で細菌性下痢症を疑われた患者の便, 総数1,707検体について細菌学的検索を実施し, 670検体 (約40%) から717株の下痢症起因菌を検出した. 分離菌は, カンピロバクター (40%), サルモネラ (24%), 病原血清型大腸菌 (EPEC) (23%) が大部分を占めた. 腸炎ビブリオ (0.5%) や黄色ブドウ球菌 (2.6%) の検出数は少なかった.
    検出率の年次変動を見ると, カンピロバクターが1989年をピークに以後減少し, 反対にサルモネラは増加傾向が続き1992年に順位逆転に至っている. これはサルモネラの中でも近年出現し増加中の血清型Enteritidis (SE) の寄与が大きい. ベロ毒素産生性大腸菌の検出率は低く, 微増傾向にあるものの特異な上昇はみられていない.
    以上の結果, 従来の頻発食中毒であるビブリオ症やブドウ球菌症は, 散発下痢症とは殆ど無関係であるが, サルモネラ特に近年食中毒で増加中のSEなど特定の感染性下痢症流行は散発下痢症の背景と密接に関連していることを示唆するものである.
  • 角野 洋一, 本田 政幸, 高倉 剛二
    1997 年 71 巻 7 号 p. 652-658
    発行日: 1997/07/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    尿路感染病原因菌としてのEscherichia coliの尿路での増殖様式を知るために, 菌株 (3株), コーチゾン投与量 (0, 2, 4, 8mg/mouse), 経過時間 (菌液接種後3, 6, 24時間) の3種類の要因を取り上げ72匹のマウスを用いた3元配置の要因実験を行った. 菌株は先に我々が30株を用いて行った尿路感染実験で増殖部位に比較的傾向のみられた3菌株を用いた. 即ち, 株H70は尿路上皮細胞内での増殖 (細胞内増殖型) が多く, 株H99は膀胱腔内での増殖 (腔内増殖型) が, また株K88は高度に両部位 (混合型) で増殖がみられたものである.
    菌株H70, H99, K88を接種されたマウスでの菌の検出された割合はそれぞれ25.0, 41.7, 79.2%であった. コーチゾン0, 2, 4, 8mg/mouse投与群での検出率は, それぞれ38.9, 55.6, 55.6, 44.4%であった.
    菌液接種3, 6, 24時間後での, 腔内増殖型の検出率は45.8, 20.8, 20.8%で, 混合型は4.2, 16.7, 4.2%, 細胞内増殖型は4.2, 16.7, 12.5%で, 3種のいずれかが検出されたものは54.2, 54.2, 37.5%であった. これは感染当初は膀胱腔内での菌の増殖が優勢で, その後, 細胞内への侵入が起こり, 腔内の菌が排除された後も細胞内の菌は留まるためと考えられた.
    しかし, 菌株により増殖部位と程度が異なり, 特に, 検出率の低いH70株で細胞内増殖型が検出されたのに対し, 検出率がそれより高いH88株では細胞内増殖型は観察されなかったこと, またコーチゾン処理による影響や経過時間による増殖様式の推移にも菌株で違いがみられたことから, 尿路感染症の機序が単一ではなく, 菌株や宿主性状により異なると結論された.
  • 金子 明寛, 山根 伸夫, 佐々木 次郎
    1997 年 71 巻 7 号 p. 659-663
    発行日: 1997/07/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    口腔外科領域において重症な感染症患者から分離されたStreptococczas intermediusおよびStreptococcus oralisに対する貧食殺菌能をヴェノグロブリン-IHが投与された患者血清および好中球を用いて検討を行った.
    その結果, 両菌種に対する好中球貧食能はヴェノグロブリン-IHの投与に関係なく約10cells/好中球であったが, 殺菌能はヴェノグロブリン-IHの投与後3日目の血清および好中球で軽度患者血清および好中球に比べ10倍程度高かった. また, 両試験菌に対するヴェノグロブリン-IHの凝集抗体価を測定した結果S. intermediusに対しては32倍, S. oralisには16倍で同菌種の基準株に比べ明らかに高い値を示した.
    この事から口腔外科領域における重症感染症患者から分離されるoral streptococciには常在菌とは異なる何らかの抗原性を有しヴェノグロブリン-IHが投与された患者好中球に貧食され易くなっている事が示唆された.
  • 浅野 隆司, 村杉 栄治, 山本 芳郎
    1997 年 71 巻 7 号 p. 664-667
    発行日: 1997/07/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    Zoonosisとしての腸管内寄生虫症の感染経路に関する基礎資料の1とするために, 1994年から1996年にかけて横浜市立金沢動物園 (神奈川県) に保護されたホンドタヌキ87頭について糞便検査を実施し, 腸管内寄生虫の保有率を調査した.寄生虫保有率は87頭中72頭 (82.8%) であり, 鉤虫, 犬鞭虫, 回虫およびイソスポラが多く検出された.また寄生虫保有タヌキのうち2種類以上の寄生虫の混合感染が43頭 (59.7%) に認められた.人畜共通感染の可能性の高い鉤虫, 回虫およびイソスポラが比較的高率に検出されたことから, タヌキが腸管内寄生虫のヒトへの感染源になり得ることが示唆された.
  • 権田 秀雄, 野田 康信, 大石 尚史, 谷川 吉政, 吉田 憲生, 吉田 光伸, 山本 景三, 水野 裕文, 西村 豊, 水藤 秀明
    1997 年 71 巻 7 号 p. 668-671
    発行日: 1997/07/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    This report concerns a male patient aged 25 years, diagnosed at the age of 12 years as suffering from chronic granulomatous disease. This patient had p47-phox deficiency. He was admitted to this hospital because of fever and dyspnea accompanied by right spontaneous pneumothorax. He failed to respond to medical treatment. He died from respiratory failure four months after admission. Autopsy demonstrated pigmented lipid histiocytes characteristic of CGD. These characteristic pigmented cells were distributed in the spleen, liver, lymph nodes and in the smal intestine. As for the nature of the pigment, lipofuschin-like compound were identified. Granulomatous component was seen in the mucosa of the stomach obtained by operation.
    The presence and characteristic distribution of such pigmented macrophages in tissue in young adults may suggest the diagnosis of CGD.
  • 大西 健児
    1997 年 71 巻 7 号 p. 672-674
    発行日: 1997/07/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    25歳の日本人女性が, 1994年5月から9月までアフリカ諸国を約20人で観光旅行した.その後イギリスに滞在し, 同年12月に日本に帰国した.イギリスに滞在中のアフリカ旅行同行者がビルハルツ住血吸虫症と診断されたため, ビルハルツ住血吸虫感染の検査目的で1995年2月16日に当院を受診した.受診時に自覚症状はなく, 尿中に虫卵を認めなかった.1996年7月15日に再度当院を受診したところ, 自覚症状はなかったが末梢血液検査で好酸球増多および尿中にビルハルツ住血吸虫卵を認めた.無症候性ビルハルツ住血吸虫症と診断し, プラジカンテルで治療した.ビルハルツ住血吸虫は日本国内には存在せず, その感染症は日本人医師にはなじみの薄い疾患である.熱帯や亜熱帯地域から帰国した人には, 国内に存在しない本症のような感染症も考えて対処する必要がある
  • 山内 保生, 岡田 貴典, 横田 英介, 松本 勲
    1997 年 71 巻 7 号 p. 675-679
    発行日: 1997/07/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    Infective endocarditis caused by Kingella denitrificans occurs rarely. A review of the literature reveals only 6 cases of endocarditis caused by the bacillus. K. denitrificans is normally a commensal of the upper respiratory airways, may exceptionally be responsible for endocarditis. A case of possible prosthetic endocarditis caused by K. denitrificans is presented.
    A 78-year-old male with Type II diabetes was admitted to the hospital complaining of fever, a sore throat and arthralgia. He underwent replacement surgery of a St. Jude medical prosthesis for aortic stenosis at the age of 75. The only physical findings at admission were a temperature of 38.2°C and murmus of mild mitral regurgitation. The liver and spleen were not palpable, and there were no skin or eye lesions. Laboratory findings were as follows: white blood cell count 9500/μl with 77% neutrophils, erythrocyte sedimentation rate 71 mm/h (Westergren), blood urea nitrogen 50.2 mg/dl, serum creatinine 1.7 mg/dl and C-reactive protein 22.2 mg/dl. The Gram-negative bacillus isolated from the blood Was identified as K. denitrificans by the identification system, namely ID test·EFN-20 rapid®(Nissui, Japan). Although an echocardiogram detected no vegetation, infective endocarditis was diagnosed because the same bacillus was detected by separate blood cultures and an obvious source of infection was not found other than the prosthetic valve. Initial treatment was flomoxef, which was changed to Ampicillin 2g/day after K. denitrificans was identified. Ampicillin was continued for 6 weeks. The clinical course was good and he did not require further surgery. He has been afebrile for 2 years after completing treatmen.
    This case represents the first report of prosthetic valve endocarditis caused by K. denitrificans in Japan.
  • 東山 康仁, 坂田 英雄, 尾長谷 靖, 坂田 慎吾, 嶋藤 登美子, 森 理比古, 石野 徹, 河野 茂, 斎藤 厚, 原 耕平
    1997 年 71 巻 7 号 p. 680-683
    発行日: 1997/07/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    A 75-year-old female with diabetes mellitus, who was born and lived in West north Kyusyu, was admitted to our hospital, because of unconsciousness and loss of appetite. The physical examination showed neck stiffness and a high fever. The laboratory data showed accentuation of inflammatory reaction and azotemia and positive HTLV-1 antibody. The spinal fluid showed increase of cell count and amount of protein. A stool and sputum smear revealed rhabditis form larvae of the nematode. Antibiotics and ivermectin were administered for the bacterial meningitis and hyperinfection of the strongyloides, respectively. Consequently, meningitis and strongyloidiasis improved. It was considered that the patient was infected with strongyloides from her husband who served in the army during World-War II, and hyperinfection of strongyloides resulted from the immunosuppressive state of diabetes mellitus. Ivermectin, an anti-strongyloides agent, was effective, and no side effects were seen. However, the therapeutic resistance in this case was associated with the positive HTLV-1 antibody.
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