感染症学雑誌
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80 巻, 6 号
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  • 近藤 成美, 山田 俊彦, 佐藤 尚武, 西園寺 克, 小栗 豊子, 猪狩 淳
    2006 年 80 巻 6 号 p. 651-655
    発行日: 2006/11/20
    公開日: 2011/02/07
    ジャーナル フリー
    目的: 血液由来検体より分離される病原菌のうち, 黄色ブドウ球菌, 緑膿菌, カンジダが3大起炎菌とされる. これまで我々は, 塩化メチルロザリニンの有効性を主にMRSAを対象に報告してきた. 今回はカンジダ属を中心に真菌へのMICから見た有効性の基礎的検討を行った.
    対象と方法: 血液由来のCandida alhicans40株Candida parapsilosis32株, Candida glabrata10株, Candida tropicalis13株, Candida guillermondii5株, Candia krusei1株, Candida lusitaniae1株, Trichosporonspp. 4株を対象とし, 菌株に対するMIC測定は, 塩化メチルロザリニンを加えたサブロー培地を用いた寒天平板希釈法によった.
    結果: 塩化メチルロザニリンのC. albicansおよびC. tropicalisに対するMICは, 全て1μg/mL以下であった. 一方, C. glabrataに対するMIC80は10μg/mL, C. parapsilosis, Trichosporonspp. に対するMICは, 100μg/mLであった.
    考察: 真菌とくにカンジダ属は主に表在的感染症として口内炎, 食道炎, 膣炎, おむつかぶれなどの原因菌として知られ, ときに全身感染症を来たし重篤化することがある. 今回, 塩化メチルロザリニンのカンジダ属に対するMICが極めて低い濃度を示したことから, 使用にあたっての安全性のみならず臨床的有効性もさらに検討する必要がある. なおMRSAとの同時検出例もしばしば報告されており, MRSAに対する塩化メチルロザリニンのMICも極めて低値であることから, 塩化メチルロザリニンは, 院内感染対策の有効な薬剤の一つと考えられる
  • 小栗 豊子, 三澤 成毅, 中村 文子, 近藤 成美, 猪狩 淳, 森 健
    2006 年 80 巻 6 号 p. 656-664
    発行日: 2006/11/20
    公開日: 2011/02/07
    ジャーナル フリー
    1994年から2002年までの9年間に, 血液, 血管カテーテルから分離された酵母様真菌の検出状況と薬剤感受性について検討した.
    血液, 血管カテーテルからの主要分離真菌はCandida albicans, Candida parapsilosis, Candida glabrata, Candida tropicalisの順に多く, この4菌種で酵母様真菌の86.1%, 78. 1%を占め, 血管カテーテルからの分離頻度では最近増加傾向が認められた.
    MICに及ぼす培養時間の影響を24時間, 48時間の2点につき標準菌株4株および臨床分離株116株について検討した結果, MICは同等ないし1管大きくなる程度であり, 大きな変動は認められなかった. C.albicans, C. grabrataおよびC. tropicalisに対するMCFGのMIC90は≦0.03μg/mLであり, 検討薬剤中最も抗菌力が強く, 一方, Candida guilliermondii (MIC90;0.5μg/mL), C. parapsilosis (同;1μg/mL), その他のCandida (同;1μg/mL) に対してはやや弱かった.Candida属中FLCZに耐性を示す菌種はC. alhicans5株 (4.6%) であった. これらの5株はITCZにも耐性, MCZにも≧4μg/mLのMIC値であったが, MCFGは≦0.03μg/mL, 5-FCは0.125~0.25μg/mL, AMPH-Bは0.25~1μg/mLであった.5-FC耐性株はC. parapsilosisで2株 (同一症例) 認められた. 耐性株が分離された6例の患者背景をみると, 4例は悪性腫瘍, 2例は糖尿病を基礎疾患に有する重症例で, 6例中4例は菌検出後1カ月以内に死亡していた.
  • Streptococcus pyogenesおよびA群多糖体抗原を有するその他のStreptococcusspp.を対象として
    光野 典子, 播 智宏, 玉川 信吉, 糸井 壽一, 池田 英治, 濱崎 和子, 勝川 千尋, 奥山 道子
    2006 年 80 巻 6 号 p. 665-673
    発行日: 2006/11/20
    公開日: 2011/02/07
    ジャーナル フリー
    現在国内で入手可能な8社のA群レンサ球菌迅速診断キットについて, 同一条件下で基礎的検討を行った. 検討を行ったキットはイムノクロマトグラフィーを原理とする, QuickVue Dipstick Strep A (住友製薬バイオメディカル), TESTPACK Plus STREP A (ABOTT JAPAN CO.), CLEAVIEW STREP A (日本シェーリング), QuickVue STREP A (和光純薬工業), ImmunoCard STAT!STREP A (TFB), DIPSTICK'Eiken' STREP A (栄研化学), Rapid Testa Strep A (第一化学薬品), StatCheck Strep A (カイノス) である. 検出感度試験では, 最も高感度であり, 供試したS. pyogenes5株すべてにおいて1.0×105CFU/mL (1.0×104CFU/test) まで検出可能であったのはQuickVue Dipstick Strep A, TESTPACK Plus STREP A, Rapid Testa Strep A, StatCheck Strep Aの4キットであった. また比較試験として, S. pyogenes以外でA群多糖体抗原を有するAnginosus groupとS. dysgalactiaesubsp.equisimilisについても, S.pyogenesと同程度の検出感度を認めた. その中でもS.dysgalactiaesubsp.equisimilisは, 血液寒天培地上でS. pyogenesとよく似たコロニーを形成し, バシトラシン試験も陽性であることから, 同定にはPYR試験など生化学的性状の確認が必要であると考えられる. 中でもA群を持つS. dysgalactiaesubsp. equisimilisについては近年G群レンサ球菌による劇症型レンサ球菌感染症が増加していることもあり, これらの確認が重要である.
  • 松本 裕子, 山田 三紀子, 鈴木 正樹, 北爪 晴恵, 武藤 哲典, 鳥羽 和憲
    2006 年 80 巻 6 号 p. 674-679
    発行日: 2006/11/20
    公開日: 2011/02/07
    ジャーナル フリー
    2002年9月から10月にかけて横浜市内で中国への渡航者のS.Paratyphi Aによる2件の集団事例が発生した. この2つの事例の関連性を調査するために, 分離した6株についてファージ型別と, XhaI, BlnI, SpeI, XhoIを用いたPFGEによる分子疫学的解析を行った. これらの6株は全てファージ型がUntypableとなり, 4種の制限酵素を用いたPFGE法では全ての制限酵素で同一のバンドパターンとなり, その類似度も100%となった.
    また, これらの株は薬剤感受性試験ではナリジクス酸ホスホマイシン耐性で, なおかつフルオロキノロン系薬剤について低感受性であった. サイクルシークエンス法によりDNAジャイレースサブユニットA遺伝子(gyrA)上のキノロン耐性決定領域(QRDR)において, 83位のアミノ酸がセリンからフェニルアラニンに置換していた. また, トポイソメラーゼIV遺伝子(parC)上のQRDRには変異は見られなかった.
    患者や家族からの発生状況の調査等に加えて薬剤感受性試験とPFGE解析により, 今回の2つの事例は中国からの輸入事例であり, フルオロキノロン低感受性の株がその地域に蔓延していることが示唆された.
  • 大石 浩隆, 浦 由紀子, 三溝 慎次, 中島 幹夫
    2006 年 80 巻 6 号 p. 680-689
    発行日: 2006/11/20
    公開日: 2011/02/07
    ジャーナル フリー
    Vibrio vulnificusは世界中の沿岸海水中に存在し, 本菌に汚染された魚介類の生食や創傷への海水曝露から感染する. 本症は四肢の壊死性筋膜炎を呈し, 急激な敗血症ショック状態へと移行する極めて予後不良の食水系感染症である. 1980年代になり西日本を中心に比較的多くの報告がなされはじめたが, 感染者が散発的に発生することから十分な疫学的調査はなされていない. 今回我々は1975年から2005年までの30年間におけるわが国の本症患者の誌上報告を基に, その疫学的, 臨床的特徴等に関する調査を行った. 医学中央雑誌, 国立情報学研究所論文情報ナビゲータ及びPubMedを用いて検索を行ったところ, 30年間で185例が報告されていた. 年齢中央値は59歳で, 男性が女性の約8倍の報告数であったが死亡率に差はなかった. 年別発生推移では, 九州北部地方が長期間の梅雨にみまわれた2001年に多数の報告例があり, また月別発生推移では海水温が上昇する7月から9月までに患者の約8割が発生していた. 地域別に見てみると約4割が有明海を取り囲む九州北部四県からの報告であった. 患者の約9割は何らかの肝機能障害を有し, その死亡率は経口感染型と創傷感染型で差が認められなかった. 症状の進行が速く致死率が高い本症に対しては予防活動が重要であり, 特に肝機能障害を有する患者には, 夏季の生鮮魚介類生食や海水浴を控えさせる啓発活動が必要である.
  • 羽根田 淳, 塩原 康正, 乾 真美, 関口 朋子, 佐藤 義則, 高山 陽子, 菊野 理津子, 奥田 舜治, 井上 松久, 笹原 武志
    2006 年 80 巻 6 号 p. 690-693
    発行日: 2006/11/20
    公開日: 2011/02/07
    ジャーナル フリー
    本邦において破傷風菌 (Clostridium tetani) は金沢, 沖縄, そして東京周辺に分布することが明らかにされている. しかし, その他の地域での分布調査はあまり行われていない. 今回, 相模原周辺地域を中心に民家の庭, 公道の路肩, 大学構内敷地, 山麓および畑などから土壌を採取してC. tetaniの分離を行った. 全検体 (35検体) に占めるC. tetaniの検出率は22.9%であり, それらの菌株のうち87.5%は破傷風毒素産生能を有していた.破傷風菌は相模原市の西部に位置する津久井郡から山梨県の南都留郡, 上野原市そして甲州市にかけての山間部地域の土壌中に偏って分布する傾向を示した. これらの成績から, 破傷風毒素産生能を有するC. tetaniが相模原周辺, 特に, 西部の山間部という地理的に類似した地域に分布することが明らかとなった.
  • 依田 清江, 横山 栄二, 内村 眞佐子
    2006 年 80 巻 6 号 p. 694-700
    発行日: 2006/11/20
    公開日: 2011/02/07
    ジャーナル フリー
    M小学校の生徒とその家族に集団食中毒が発生し, 17人からCampylobacter jejuni 17株が分離された. 17人中14人は発症の数日前に, M小学校子供会主催のバス旅行に参加していた. 分離株のpulsed-field gelelec-trophoresis (PFGE) 解析を行ったところ, 制限酵素Sma I処理では9型に, Ksp I処理およびKpn I処理ではそれぞれ10型に分類されたが, これらの型とバス旅行参加の有無など疫学調査結果は相関しなかった. 次に, 1つの株を2種類の制限酵素で二重に処理するdouble-digestion法によるPFGEを行った. Ksp I処理後, さらにSma Iで処理した検体のPFGEパターンをクラスター解析したところ4型に分類された. D1型はバス旅行に参加した生徒とその家族由来の13株で, Pennerの血清型およびflagellin genotypeが一致したことからバス旅行に関わる集団発生の原因菌と考えられた. D2型はバス旅行に参加したM小学校生由来の1株D3型はバス旅行に不参加のM小学校生由来の2株で, D2型とD3型の血清型およびflagellingenotypeは一致した. D4型はM小学校生徒でバス旅行不参加者由来の1株であった. 以上のことから, バス旅行に関わる集団発生とM小学校に関わる, 複数の食中毒が同時期に発生したと考えられた.
    Double-digestion法を用いたPFGE解析の結果が血清型別, flagellin genotypingおよび疫学調査結果と良く相関したことから, 本法はCampylobacterによる集団食中毒の分子疫学的解析法として単独酵素処理によるPFGE法より有用であることが示唆された.
  • 従来法との比較
    吉田 耕一郎, 宮下 修行, 尾長谷 靖, 福田 実, 小司 久志, 矢木 真一, 毛利 圭二, 小橋 吉博, 二木 芳人, 岡 三喜男
    2006 年 80 巻 6 号 p. 701-705
    発行日: 2006/11/20
    公開日: 2011/02/07
    ジャーナル フリー
    ファンギテックGテストMK (MK法) のアルカリ前処理液の改良によって非特異反応出現率が著しく低下する. 我々は前処理液改良後のMK法 (改良MK法) の検査性能を臨床的に評価した. 川崎医科大学附属病院で2003年4月23日から6月4日の期間にβ-グルカンが測定された全121例から採取された保存血漿121検体を材料とした. 血漿中のβ-グルカン値を改良前後のMK法で測定し, 感度, 特異度, positivepredictive value (PPV), negative predictive value (NPV) を求めた. また, 各々のreceiver operating char-acteristic (ROC) 解析も行った.従来法の感度と特異度, および陽性的中率と陰性的中率は91.7%, 85.3%, 44.0%, 98.8%, 改良MK法は75.0%, 91.6%, 52.9%, 96.7%であった. また従来法のAUCは0.9175, 改良MK法のAUCは0.9123であり, 改良MK法のAUCが従来法に比して僅かに縮小していたが統計学的有意差は認めなかった. これまで, MK法は本邦の他のβ-グルカン測定キットよりも高い感度を有していると評価されてきた. 今回の前処理液改良により, 従来法の問題であった特異度も大きく改善され, 改良MK法の臨床的有用性はさらに高くなった.
  • 水野 泰孝, 藤元 瞳, 横田 恭子, 加藤 康幸, 源河 いくみ, 金川 修造, 川名 明彦, 岡 慎一, 木村 哲, 工藤 宏一郎, 狩 ...
    2006 年 80 巻 6 号 p. 706-710
    発行日: 2006/11/20
    公開日: 2011/02/07
    ジャーナル フリー
    We report a 54-year-old Japanese man who contracted severe falciparum malaria after visiting West African countries. The patient presented with Plasmodium falciparum parasitemia of 10% on admission and was successfully treated with intravenous artesunate combined with continuous hemodiafiltration. We found that intravenous artesunate had excellent antimalarial activity with rapid parasite clearance and that few adverse effects were observed compared to those reported for intravenous quinine treatment. Supportive therapy was indispensable for saving the life of the patient. Few cases of intravenous artesunate treatment are reported in Japan because the drug has not been legally registered. We wish to emphasize the efficacy of intravenous artesunate with general supportive therapy in the treatment of possible imported severe malaria patients in Japanese medical settings.
  • 中島 宏和, 澤口 博千代, 中島 重徳
    2006 年 80 巻 6 号 p. 711-715
    発行日: 2006/11/20
    公開日: 2011/02/07
    ジャーナル フリー
    A 30-year-old woman with malnutrition due to alcoholism and eating disorders was found to have acute respiratory distress syndrome (ARDS) and sepsis due to severe Streptococcus pneumoniae pneumonia. S. pneumoniae was detected by an in vitro rapid immunochromatographic assay for S. pneumoniae antigen in urine on the day of admission and by blood culture 2 days after admission. Symptoms and laboratory findings improved after treatment with sivelestat sodium hydrate, antibiotics, and mechanical ventilation. Treatment with sivelestat sodium hydrate also decreased serum neutrophil elastase activity. This case demonstrates the usefulness of early treatment with sivelestat sodium hydrate in ARDS due to severe pneumonia.
  • 関 雅文, 廣松 賢治, 小佐井 康介, 福田 雄一, 角川 智之, 中村 ふくみ, 泉川 公一, 柳原 克紀, 東山 康仁, 宮崎 義継, ...
    2006 年 80 巻 6 号 p. 716-720
    発行日: 2006/11/20
    公開日: 2011/02/07
    ジャーナル フリー
    A 76 year-old man admitted for general malaise with fever was found in clinical examination on admission to have eosinophilic pleural effusion, peripheral eosinophilia, and a slightly elevated inflammatory reaction. Immunological examination, including microplate ELISA, showed a high titer of specific antibody againstToxocara canisin both the serum and pleural effusion. We started treatment using albendazole, and found inflammatory findings and serum IgE were ameliorated. Parasitic disease is an important consideration in the differential diagnosis of eosinophilic pleural effusion, and serology is useful in screening for this.
  • 中村 茂樹, 三原 智, 一ツ松 勤, 副島 佳文, 泉川 公一, 関 雅文, 大野 秀明, 柳原 克紀, 東山 康仁, 宮崎 義継, 平潟 ...
    2006 年 80 巻 6 号 p. 721-725
    発行日: 2006/11/20
    公開日: 2011/02/07
    ジャーナル フリー
    Nocardia is typically regarded as an opportunistic infection, with pulmonary nocardiosis frequently disseminated to organs hematogenous by, and nearly half of these cases resulting in complicated nocardia brain abscess. Disseminated nocardia has a dismal prognosis with high mortality, and should be checked for multiple organs including the brain when nocardiosis is diagnosed.
    We describe the successful treatment of nocardia brain abscesses in an immunocompetent older people with pneumoconiosis by combining trimethoprim-sulfamethoxazole and ciprofloxacin. Patients had no history of fever, headache, or respiratory symptoms such as cough, or sputum until the acute hemiplegia episode. Nocardia infection is not as rare as generally assumed and should be considered as a possibility in the elderly due to its high mortality.
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