生活習慣の欧米化と高齢化社会の到来により, 近年糖尿病患者が急増している.特に, 様々な合併症を持った高齢者糖尿病では感染症を併発する機会が多く, それに対する適切な処置が, 患者のQOL向上, 医療費削減にとって重要な課題と考えられる.
2002年~2005年の間, 当科に入院し, 抗菌薬の経静脈投与を行った比較的重症と考えられる感染症合併糖尿病者98例 (男性60名, 女性38名) について, 血糖コントロール状態, 糖尿病性腎症の程度と炎症反応, 治療への反応を比較検討した.
入院時HbA1cを, 良 (6.5%未満) 可,(6.5~8.0%未満) 不可,(8.0%以上), 悪 (10%以上) で分け, 白血球数CRP, 抗菌薬投与期間を検討したところ, コントロール不良群で, より抗菌薬の投与期間が長かった.また, 治療中断または未治療群や, 低アルブミン血症を認める群では, より長期の抗菌薬の投与が必要であった.
入院中のインスリン投与量を検討したところ, 感染症の合併に伴って, インスリン需要量は増加し, 感染症の改善と共に, 減少することが示された.
糖尿病の早期介入, 加療継続糖尿病の厳格な血糖コントロールと良好な栄養状態の保持, 病態に合わせた適切な抗菌薬の投与が, 糖尿病患者に合併した感染症の治癒, QOLの向上, 抗菌薬投与期間の短縮, 各種耐性菌感染症への防止, ひいては医療費削減へつながると思われた.
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