1973年から1984年の間に, 東京都養育院付属病院で経験された老年者における黄色ブドウ球菌 (黄色ブ菌) 敗血症93例について, 臨床的検討を行なった.
同期間における黄色ブ菌敗血症は, 全敗血症の11%を占めた.血液より黄色ブ菌単独検出例80例, 複数菌検出例13例であった.基礎疾患は, 悪性腫瘍が37.6%, 脳血管障害が20.4%を占めた.主要原発巣は, 尿路21例, 静脈内留置カテーテル17例であった.静脈内留置カテーテル由来の黄色ブ菌敗血症のうち, 鼠径部より挿入した例の発症までの平均日数は6日で, 他の部位に比して短かった.黄色ブ菌単独菌敗血症80例中22例にshock併発をみた.
黄色ブ菌敗血症発症後1ヵ月以内の死亡率は47.3%であった.原発巣別の死亡率では, 呼吸器由来が60.0%と高い死亡率を示した.各種要因の有無と死亡率の関係をみると, 悪性腫瘍患者, DIC, shock併発例での死亡率が, それぞれ68.6%, 88.9%, 86.7%と有意に高かった.悪性腫瘍もなく, DIC, shockを併発しない場合の死亡率は, 約16%であった.メチシリン耐性 (MIC≧25μg/ml) 黄色ブ菌敗血症と, メチシリン感受性黄色ブ菌敗血症の死亡率の間には推計学的有意差を認めなかった.
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